高齢患者のせん妄を疑ったら最初に確認すること|看護師・看護学生の初期対応
こんにちは、ユウです。
みなさんは、高齢患者さんが急に落ち着かなくなったり、会話がかみ合わなくなったりしたとき、最初に何を確認しますか?
「認知症が進んだのかな」「環境が変わったからかな」と考えることもあるかもしれません。しかし、急な変化の背景に、低血糖や低酸素、感染症など、すぐに対応が必要な身体的原因が隠れていることがあります。
今回は、高齢患者さんにせん妄を疑ったとき、看護師・看護学生が最初に確認したいことを中心に解説します。
結論:まず「急な変化」と「身体的な危険」を確認する
せん妄を疑ったら、最初に確認するのは次の2つです。
- 意識や認知機能に急な変化があるか
- 生命に関わる身体的な原因が隠れていないか
実際には、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- いつから、どのように変化したのか
- 意識レベルとバイタルサイン
- SpO₂、血糖、体温、疼痛
- 感染、脱水、便秘、尿閉の可能性
- 薬剤の追加・中止・変更
- 転倒、自己抜去、誤嚥などの安全面
ざっくり言うと、「認知症の悪化」と決めつける前に、「急に起こった身体の異常ではないか」を考えることが大切です。
「急な変化か」「身体的な危険がないか」「普段と何が違うか」を最初に確認しましょう。
推定読了時間
約8分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- せん妄を疑ったときに最初に見るポイント
- せん妄と認知症の変化を考えるときの視点
- 低血糖・低酸素・感染などを優先して確認する理由
- 看護師・看護学生が行う情報収集と報告のポイント
- せん妄を見逃しやすい判断の間違い
根拠:せん妄は身体疾患のサインとして現れることがある
国立長寿医療研究センターの「認知症・せん妄 サポートチームマニュアル」では、せん妄を疑った場合、脳血管障害や低血糖などの疾患が隠れていないかを考える必要があるとされています。
また、急な精神症状が見られた場合でも、バイタルサインの確認などを通して、身体状態の変化を確認することが示されています。
国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版」でも、せん妄を考えるときには、急性発症や症状の変動を確認し、身体的な原因を探すことが重要とされています。
さらに、日本老年医学会の「認知症とせん妄」では、認知症と区別する際に、まず治療可能なせん妄の可能性を考え、薬剤や身体疾患を確認することが優先されると説明されています。
つまり、せん妄は単なる「落ち着きのなさ」や「会話の乱れ」ではありません。急な身体状態の変化を知らせるサインとして現れている可能性があるため、最初に身体面を確認します。
せん妄を疑ったときの確認ポイント
1.いつから、どのように変わったのか
最初に確認したいのは、症状そのものだけではありません。
「いつから変わったのか」
「普段と何が違うのか」
という経過が重要です。
確認する相手は、患者さん本人だけとは限りません。
- 家族
- 担当看護師
- 他のスタッフ
- 診療録
- これまでの観察記録
などから情報を集めます。
国立がん研究センターのせん妄アセスメントシートでも、症状の出現時期や以前との変化を、患者・家族・スタッフから確認し、カルテを確認することが示されています。
せん妄は、症状が一日の中で変動することがあります。
朝は会話ができていたのに、夕方から急に不安が強くなる。
昨日までは点滴を気にしていなかったのに、今日は何度も抜こうとする。
このような変化があれば、発症時期や変化の程度を具体的に記録します。
2.意識レベルとバイタルサイン
次に、意識レベルとバイタルサインを確認します。
見る項目は、次のように整理できます。
- 意識レベル
- 体温
- 血圧
- 脈拍
- 呼吸状態
- SpO₂
- 血糖
せん妄を疑うと、つい会話内容や行動だけに注目してしまいます。しかし、急な意識の変化やバイタルサインの異常がないかを確認しなければ、身体疾患を見逃す可能性があります。
特に、低血糖や低酸素は、意識や行動の変化につながることがあります。
3.感染・脱水・疼痛などの身体的原因
せん妄の原因として、次のような身体的要因を確認します。
- 感染
- 脱水
- 低酸素
- 低血糖
- 疼痛
- 便秘
- 尿閉
- 脳血管障害
国立長寿医療研究センターのマニュアルや、日本老年医学会の高齢者せん妄ケアに関する資料では、せん妄の原因検索と身体状態の確認が重要とされています。
たとえば、患者さんが不穏になっているとき、「不安が強いのかな」と考えるだけでは不十分です。
痛みを我慢していないか。
水分が不足していないか。
排尿できているか。
便が何日も出ていない状態ではないか。
このように、本人がうまく訴えられていない身体症状を考えます。
4.薬剤の追加・中止・変更
薬剤の確認も忘れてはいけません。
確認するのは、現在使用している薬だけではありません。
- 新しく追加された薬
- 中止された薬
- 用量が変更された薬
- 入院前から服用していた薬
- 服薬できていない薬
高齢者は複数の薬剤を使用していることも多く、新しく薬が追加されたときや、これまでの薬が中止されたときに状態が変化する場合があります。
日本老年医学会の「認知症とせん妄」でも、高齢者のせん妄を考える際には、薬剤と身体疾患の確認が重要とされています。
「薬が変わっていないか」だけでなく、「飲めているか」「中止になっていないか」まで確認すると、情報が整理しやすくなります。
せん妄と認知症を考えるときの違い
せん妄と認知症は、どちらも見当識の低下や会話の乱れが見られることがあります。そのため、見た目だけでは区別しにくい場合があります。
ただし、せん妄を疑うときに特に注目するのは、次の点です。
- 急に始まったか
- 症状に波があるか
- 注意を向け続けることが難しくなっているか
- 身体的な原因が考えられるか
国立長寿医療研究センターの「認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版」では、急性発症や症状の変動、注意障害などがせん妄を考えるうえでの重要な視点として整理されています。
もちろん、認知症のある患者さんにせん妄が重なることもあります。
そのため、「認知症があるから、今回の変化も認知症だろう」と考えるのではなく、普段の状態から急に変化していないかを確認します。
なお、今回確認した資料の範囲では、せん妄を疑ったときに使える「統一された単一の数値基準」は示されていません。
実務では、数値だけで判断するのではなく、次の要素を組み合わせて考えます。
- 急性発症
- 症状の変動
- 注意障害
- 身体原因の有無
看護師・看護学生が実践するときのポイント
観察と情報収集を分けて考える
せん妄を疑ったときは、目の前の観察だけでなく、経過の情報収集も必要です。
目の前で確認すること
- 意識レベル
- バイタルサイン
- SpO₂
- 血糖
- 体温
- 疼痛
- 呼吸状態
- 転倒や自己抜去の危険
周囲から聞くこと
- いつから変化したか
- 普段と何が違うか
- 睡眠と覚醒のリズムに変化があるか
- 新しい薬が追加されていないか
- 薬が中止されていないか
- 排尿や排便に変化がないか
「今の状態」と「普段の状態」を比べることがポイントです。
報告するときは「せん妄です」だけで終わらせない
医師や先輩看護師へ報告するときは、「せん妄があるようです」と伝えるだけでなく、変化と身体所見を具体的に伝えます。
たとえば、次の内容を整理します。
- 何時頃から変化したのか
- どのような言動が見られるのか
- 意識レベルはどうか
- バイタルサインやSpO₂はどうか
- 血糖はどうか
- 疼痛、排尿、排便の状態はどうか
- 薬剤変更の有無はどうか
せん妄への対応では、原因検索と並行して、転倒・自己抜去・誤嚥などを防ぐ環境調整も必要です。国立長寿医療研究センターのケアマニュアルでは、安全面に配慮しながら、落ち着いた環境を整えることが示されています。
起こりやすい判断の間違い
せん妄を疑ったときに起こりやすいのは、次のような判断です。
- 「高齢だから仕方がない」と考える
- 「認知症が悪化した」と決めつける
- 行動だけを見て、バイタルサインを確認しない
- 薬剤変更や排泄状況を確認しない
- 落ち着かせることを優先し、原因検索が後回しになる
せん妄は、精神症状として目立つことがあります。しかし、最初に考えたいのは「なぜ、今この変化が起きたのか」です。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、夕方になって急に落ち着かなくなった高齢の患者さんを受け持ったことがありました。
患者さんはベッドの上で何度も起き上がろうとし、「家に帰らないといけない」と繰り返していました。点滴にも手を伸ばしていたため、私は最初、「夕方で不安が強くなったのかな」と考えました。
その患者さんには以前から認知症がありました。だからこそ、私は一瞬、「いつもの認知症の症状が強く出ているのかもしれない」と思いました。
しかし、記録を見返すと、昼間まではスタッフと普通に会話をしていました。ここで、「本当にいつもの状態なのだろうか」と少し気になりました。
先輩看護師に相談すると、「今日の昼間と比べて、何が変わったのかをもう一度見てみよう」と言われました。
そこで、意識の状態やバイタルサインを確認し、痛みの訴え、排尿・排便の状況、食事や水分の摂取状況、薬の変更がなかったかを確認しました。家族や日中の担当者からも、普段との違いを聞き取りました。
そのとき、私は患者さんの行動を止めることばかり考えていたことに気づきました。もちろん安全を守ることは必要ですが、「なぜ急にこの行動が出たのか」を考えなければ、患者さんの変化を十分に捉えられません。
この経験があってから、私は高齢患者さんの急な言動の変化を見たとき、まず「これは普段からあるものなのか、それとも今日から変わったものなのか」と考えるようになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- せん妄を疑ったら、まず急性発症かどうかを確認する
- 意識レベル、バイタルサイン、SpO₂、血糖を確認する
- 感染、脱水、低酸素、低血糖、疼痛、便秘、尿閉などを考える
- 薬剤の追加・中止・変更も確認する
- 家族やスタッフから「いつから、普段と何が違うか」を聞く
- 認知症の悪化と決めつけず、治療可能な身体的原因を先に探す
- 転倒・自己抜去・誤嚥などの安全面に配慮し、必要時は速やかに報告する
せん妄を疑ったときに大切なのは、行動を見て終わらせないことです。
「急な変化か」「身体的な危険がないか」「普段と何が違うか」
この3つを意識すると、初期対応を整理しやすくなります。
FAQ
Q1.高齢患者さんが不穏になったら、すぐにせん妄と判断してよいですか?
いいえ。不穏だけでせん妄と確定することはできません。
急な変化かどうかを確認したうえで、意識レベル、バイタルサイン、血糖、酸素化、感染、脱水、疼痛、排泄状況、薬剤変更などを確認します。
Q2.認知症がある患者さんでも、せん妄を疑う必要はありますか?
はい。認知症がある患者さんでも、急に状態が変化した場合は、せん妄が重なっている可能性を考えます。
「認知症があるから今回も認知症」と決めつけず、普段の状態との違いを確認します。
Q3.4ATやCAMを使えば、身体評価は不要ですか?
いいえ。スクリーニングツールを使う場合でも、身体状態の確認や経過の聞き取りは必要です。
今回確認した資料の範囲では、せん妄を疑う際の統一された単一の数値基準は示されていません。評価ツールだけで判断せず、身体的原因の検索と合わせて考えます。
Q4.せん妄を疑ったとき、まず環境調整をすればよいですか?
環境調整は重要ですが、それだけで終わらせないことが大切です。
転倒や自己抜去などの安全を守りながら、意識状態、バイタルサイン、血糖、酸素化、感染、脱水、疼痛、排泄、薬剤などを確認し、必要時は医師へ報告します。
参考文献
- 国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄 サポートチームマニュアル」2016年、PDF
- 国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版」、PDF
- 国立がん研究センター「せん妄アセスメントシート」、PDF
- 日本老年医学会「高齢者せん妄のケア」、PDF
- 日本老年医学会「認知症とせん妄」、PDF
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
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看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
記事で強調されるバイタルサインの意味づけ(体温・血圧・脈拍・SpO₂・意識など)を臨床で再確認し、異常の早期発見につなげやすい一冊です。
看護の現場ですぐに役立つ 感染症対策のキホン
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
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