【限定公開】全教科で「優」が取れた実習教材

術後合併症 ~術後イレウス(腸管麻痺)~

事前学習
この記事は約10分で読めます。

こんにちは、ユウです。

腹部手術のあと、「おならが出ない」「お腹が張る」「吐き気がする」と訴える患者さんがいます。術後早期には腸の動きが一時的に弱くなることがありますが、症状が強くなったり、いったん落ち着いたあとに悪化したりする場合は、術後イレウス(腸管麻痺)を疑って観察する必要があります。

術後イレウスは、単に排ガスがないだけで判断できるものではありません。手術の種類、麻酔や鎮痛薬、腹部の張り、嘔吐、バイタルサイン、検査結果などを時系列で確認し、機械的な腸閉塞や縫合不全など、緊急性の高い状態と区別することが大切です。

今回は、術後イレウスのしくみ、症状、観察項目、看護師の対応を、実習で使いやすいように整理します。

術後イレウス(術後腸管麻痺)とは

イレウスは、腸内容物が先へ進みにくくなった状態の総称です。大きく分けると、腸管が物理的にふさがる機械的腸閉塞と、明らかな閉塞がないのに腸の動きが低下する機能的イレウスがあります。術後にみられる腸管運動の一時的な低下は、主に機能的イレウス(麻痺性イレウス)として説明されますが、腹部手術後は癒着による機械的腸閉塞も起こり得ます。

医療機関によって「イレウス」と「腸閉塞」の用語の使い方が異なる場合があります。この記事では、術後の腸管麻痺を中心に説明しつつ、緊急性の高い機械的・絞扼性腸閉塞を見逃さないための視点も扱います。

詳しい分類や症状は、北里大学北里研究所病院の腸閉塞の解説や、一般向けのおなかの健康ドットコムの解説も参考になります。

術後の腸管運動はどのように回復するか

腹部の手術では、腸管を操作すること、麻酔薬や鎮痛薬の影響、炎症反応、活動量の低下などが重なり、術後しばらく腸の動きが弱くなることがあります。排ガスや排便が遅れていても、術後日数だけで異常と判断することはできません。術式、手術時間、麻酔、既往歴、食事開始後の経過、腹部症状を合わせて評価します。

一方で、腹部膨満が増強する、嘔吐を繰り返す、腹痛が強くなる、発熱や頻脈が出現するなど、経過が悪化している場合は、単なる回復遅延ではない可能性があります。術後の経過が「予定どおりか」だけでなく、前回の観察から何が変化したかを記録しましょう。

術後イレウスの出現しやすい時期

術後イレウスは、手術直後から術後数日にかけて、腸管運動の低下が表面化しやすい合併症です。とくに術後1~3日頃は、麻酔や手術操作、鎮痛薬の影響が重なり、排ガスの遅れや腹部膨満に気づくことがあります。

ただし、「術後何日なら必ずイレウス」という一律の基準があるわけではありません。術式、手術時間、腸管を操作した範囲、麻酔・鎮痛薬、患者さんの栄養状態や電解質、活動量によって回復の速さは変わります。術後日数だけで判断せず、症状の推移と全身状態を合わせて評価しましょう。

1.術後1~3日頃:生理的な回復遅延との見分け

術後早期は、排ガスがまだみられなくても、腹部膨満や痛みが軽く、嘔吐がなく、バイタルサインが安定していることがあります。この場合も、排ガス・排便の有無、腹囲、腹痛、嘔気、腸蠕動音を経時的に記録し、回復傾向があるかを確認します。

2.術後4日以降:症状が続く・悪化する場合

術後4日を過ぎても排ガスがなく、腹部膨満、嘔吐、腹痛などが改善しない場合は、遷延する術後イレウスだけでなく、癒着性腸閉塞、縫合不全、腹腔内感染なども考えます。術後4日という日数は診断を確定する基準ではありませんが、回復が遅れているサインとして、医師へ報告して評価を受ける目安になります。

3.術後日数に関係なく緊急評価が必要な場合

強い、または持続する腹痛、腹膜刺激症状、繰り返す嘔吐、発熱、頻脈、血圧低下、尿量減少、意識レベルの変化がある場合は、術後何日目であっても緊急性があります。絞扼性腸閉塞や腹膜炎、腸管壊死の可能性を考え、直ちに報告します。

術後の腸閉塞の原因や治療については、北里大学北里研究所病院の解説も参考になります。

術後イレウスの原因

1.機能的イレウス(腸管麻痺)

腸管に物理的な閉塞がなくても、次のような要因で蠕動運動が低下することがあります。

  • 腹部手術による腸管への刺激や炎症反応
  • 全身麻酔、オピオイド鎮痛薬など薬剤の影響
  • 低カリウム血症などの電解質異常
  • 脱水、感染、循環不全
  • 疼痛や安静による活動量の低下
  • 腹腔内膿瘍や縫合不全など、腹膜を刺激する病態

2.機械的腸閉塞

腸管の癒着、狭窄、ヘルニア、腫瘍などによって、腸内容物の通過が物理的に妨げられる状態です。腹部手術後は癒着性腸閉塞が起こることがあり、北里大学北里研究所病院も、手術後の癒着が腸閉塞の原因になり得ると説明しています。

3.絞扼性腸閉塞

腸管が締め付けられ、腸管への血流まで障害される状態です。腸管壊死や腹膜炎、ショックにつながる危険があるため、強い持続痛、腹膜刺激症状、発熱、頻脈、血圧低下、全身状態の悪化があるときは、緊急性の高い病態として直ちに報告します。

症状と観察項目

1.主な症状

  • 排ガス・排便の減少または停止
  • 腹部膨満、腹囲の増加
  • 吐き気、嘔吐、食欲低下
  • 腹痛、腹部の不快感、圧痛
  • 腸蠕動音の変化

症状の現れ方には個人差があります。麻痺性イレウスでは腹部全体の張りや腸蠕動の低下が目立つことが多い一方、機械的腸閉塞では疝痛様の痛みや嘔吐が先行することもあります。ただし、症状だけで原因を確定することはできません。

2.全身状態の変化

次の変化を認めた場合は、腸閉塞の進行、絞扼、腹膜炎、脱水やショックを考えて、速やかに医師へ報告します。

  • 発熱、頻脈、呼吸数増加、血圧低下
  • 冷汗、顔面蒼白、意識レベルの変化
  • 持続する強い腹痛、筋性防御、反跳痛
  • 嘔吐の反復、吐物量の増加、血性の吐物や便
  • 尿量の減少、口腔内乾燥など脱水所見

3.看護師が確認する情報

  • 最終排ガス・排便の時刻と性状
  • 腹部膨満の程度、腹囲の推移、圧痛の部位
  • 腹痛の部位・性質・強さ・増悪因子
  • 嘔気・嘔吐の有無、回数、量、色、臭気
  • 腸蠕動音の左右差と経時的な変化
  • バイタルサイン、尿量、輸液量、出納バランス
  • 電解質、炎症反応、腎機能、必要に応じた乳酸値などの検査結果
  • 創部、ドレーン排液、胃管・イレウス管の位置と排液量

腸蠕動音の有無や「金属音」だけで、イレウスの有無や重症度を判断することはできません。聴診所見は、患者さんの訴え、腹部所見、排液、バイタルサインと組み合わせて、変化の推移を確認します。

術後イレウスと鑑別したい状態

1.術後の生理的な腸管運動低下

術後早期の排ガス遅延だけでは、病的なイレウスとは限りません。症状が軽く、全身状態が安定し、腹部所見が改善傾向にあるかを確認します。食事や飲水の開始時期は、術式と施設の方針、医師の指示に従います。

2.機械的腸閉塞・絞扼性腸閉塞

癒着などによる閉塞では、腹痛、腹部膨満、嘔吐、排ガス・排便の停止がみられます。絞扼性の場合は腸管の血流障害が加わるため、持続痛、腹膜刺激症状、発熱、頻脈、ショックなどに注意が必要です。機械的閉塞が疑われる場合は、画像検査などを含めた医師の評価を急ぎます。

3.縫合不全・腹腔内感染

発熱、頻脈、腹痛の増強、腹膜刺激症状、ドレーン排液の変化などがある場合は、縫合不全や腹腔内感染も鑑別に入ります。術後イレウスに似た症状を示すことがあるため、手術部位と術後日数を踏まえて報告します。

術後イレウスへの対応

1.まずは状態を確認して報告する

腹部膨満や嘔吐を認めたら、症状が出た時刻、排ガス・排便の状況、腹痛の変化、バイタルサイン、尿量、ドレーン排液を確認します。強い腹痛、腹膜刺激症状、血圧低下、意識変化などがあれば、緊急性を明確にして直ちに報告します。

2.絶飲食・輸液・減圧

イレウスが疑われるときは、医師の指示や施設の基準に従って飲食を中止し、輸液で水分・電解質を補正します。嘔吐が続く場合や腸管の減圧が必要な場合には、胃管やイレウス管を留置することがあります。看護師はチューブの固定、排液量・性状、閉塞や屈曲の有無、鼻腔や皮膚の状態を確認します。

3.活動と疼痛を整える

離床や歩行は、循環状態と手術部位、ドレーン類を確認し、許可された活動範囲で行います。無理のない体位変換や早期離床は、術後の回復を支える方法の一つです。北里大学北里研究所病院も、術後の状態をみながら歩行を進め、腸管の回復後に食事を再開する流れを説明しています。

疼痛が強いと深呼吸や離床が妨げられます。鎮痛薬の効果と副作用(眠気、呼吸抑制、便秘など)を評価し、薬剤の調整は医師の指示に基づいて行います。

4.誤嚥と脱水を予防する

嘔吐がある患者さんは誤嚥しやすいため、側臥位や頭部の位置を整え、吸引器を準備します。口腔内の清潔を保ち、摂取量・排出量、尿量、皮膚・粘膜の乾燥を観察します。

5.緊急手術の可能性を意識する

絞扼性腸閉塞、腸管壊死、腹膜炎が疑われる場合は、保存的治療だけで経過をみることはできません。画像検査や手術を含む治療方針が検討されるため、症状の変化を遅らせずに報告します。

看護師の報告例(SBAR)

S(状況):術後2日目の患者さんです。今朝から腹部膨満と嘔気があり、排ガスがありません。

B(背景):昨日から食事は開始されておらず、腹部手術後です。鎮痛薬を使用しています。

A(評価):腹囲は昨日より3cm増加し、脈拍は98回/分から112回/分へ上昇しています。嘔吐は1回、尿量は減少傾向です。腹痛は臍周囲にあり、持続しています。

R(提案):術後イレウスや腸閉塞の評価が必要と考えます。診察と必要な検査、飲食の指示をお願いします。

筆者の体験談

私が外科病棟で勤務していた頃、腹部手術を受けた患者さんで、食事開始の予定日になっても排ガスがなく、腹部膨満が続いていたことがありました。強い腹痛はありませんでしたが、前日より腹囲が増え、吐き気も出ていたため、排ガス・排便の時刻、嘔気の回数、腹部所見、腸蠕動音、尿量、体温と脈拍を時系列で整理して医師へ報告しました。

そのとき、私は「術後だから、もう少し様子をみてもよいのではないか」と迷いました。しかし、前日との違いを具体的に伝えることが必要だと考え、報告内容を整理してから相談しました。結果として、腸蠕動音を一度聞いただけで判断せず、患者さんの訴えと腹部の変化、全身状態を組み合わせて評価する重要性を学びました。

この経験は、術後イレウスを観察するとき、単に「排ガスがある・ない」ではなく、時間の経過に沿って小さな変化を拾うことが大切だと実感した場面です。

よくある質問

排ガスがないだけで、イレウスですか?

いいえ。術後早期は腸管運動の回復に時間がかかることがあります。排ガスの有無だけでなく、腹部膨満、痛み、嘔吐、腸蠕動音、バイタルサイン、検査結果の推移を合わせて判断します。

金属音が聞こえたら、腸閉塞ですか?

金属音は機械的腸閉塞でみられることがありますが、聞こえないから否定できるわけでも、聞こえたから確定できるわけでもありません。聴診だけで判断せず、患者さんの症状と全身状態を確認して報告します。

イレウスなら、必ず手術になりますか?

必ずではありません。機能的イレウスでは、絶飲食、輸液、電解質補正、減圧、原因薬剤の見直しなどで改善することがあります。一方、絞扼や腸管壊死が疑われる機械的腸閉塞では、緊急手術が必要になる場合があります。

患者さんが水を飲みたがるときはどうしますか?

自己判断で飲水を進めず、現在の食事・飲水指示を確認します。嘔吐や誤嚥の危険がある場合は、口腔ケアなどで口渇を和らげながら、医師へ相談します。

まとめ

術後イレウスは、手術や麻酔、薬剤、炎症、活動量低下などにより腸管運動が弱くなる合併症です。術後早期に排ガスがないことだけで診断はできませんが、腹部膨満の増加、嘔吐、持続する腹痛、発熱、頻脈、血圧低下などがあれば、腸閉塞や腹膜炎を含めて早急に評価します。

看護では、排ガス・排便、腹部所見、嘔吐、腸蠕動音、バイタルサイン、尿量、ドレーン排液を経時的に記録し、変化を具体的に報告することが重要です。離床や疼痛管理、誤嚥・脱水予防は、患者さんの状態と指示を確認しながら行いましょう。

術後合併症まとめ

それぞれの術後合併症について詳しくまとめましたのでご活用ください。

術後合併症の種類と出現時期

  1. 術後合併症の種類と出現時期
  2. 術後合併症 ~術後出血~
  3. 術後合併症 ~縫合不全~
  4. 術後合併症 ~術後疼痛~
  5. 術後合併症 ~術後感染症~
  6. 術後合併症 ~呼吸器合併症~
  7. 術後合併症 ~深部静脈血栓症(DVT)~
  8. 術後合併症 ~離床遅延~
  9. 術後合併症 ~術後イレウス(腸管麻痺)~
  10. 術後合併症 ~術後せん妄~

参考になる書籍「術前・術後ケアの基本」

術前・術後の観察項目とケアをまとめて復習したい方には、次の書籍も参考になります。

術前・術後ケアの基本

「術前・術後ケアの基本」の詳細はこちら

実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!

実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢

そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。

\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /

LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊


LINEで友だち追加

ユウのアドバイス

術後イレウスは、排ガスがないという一つの情報だけで判断しないことが大切です。昨日との違い、症状の組み合わせ、全身状態の変化を意識して観察しましょう。特に、腹痛の増強、繰り返す嘔吐、発熱や頻脈、血圧低下がある場合は、緊急性を考えてすぐに報告してください。

参考文献

※この記事は看護学習を目的とした一般的な解説です。実際の観察・食事や飲水の開始・薬剤調整・処置は、患者さんの状態と施設の手順、医師の指示に従ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました