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術後合併症 ~術後出血~

周手術期看護
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こんにちは、ユウです。

術後の患者さんを受け持つと、ドレーンに血性排液が見られて、「これは手術後として正常なのか、それとも出血が続いているのか」と迷うことがありますよね。

手術では組織や血管を切開するため、術中・術後にある程度の出血が生じることはあります。しかし、止血した部位から再び出血したり、凝固機能が低下したりすると、短時間で循環血液量が減少し、出血性ショックに至る危険があります。

私が呼吸器外科を含む外科病棟で勤務していた頃も、術後のドレーン排液を観察するときは、量だけでなく、色が鮮血に変化していないか、増加する速度はどうか、凝血塊がないか、血圧・脈拍・尿量に変化がないかを必ず一緒に確認していました。排液量が少ない場合でも、ドレーンが閉塞していたり、胸腔や腹腔内に血液がたまっていたりする可能性があるためです。

この記事では、術後出血の原因、起こりやすい時期、観察項目、出血性ショックのサイン、発見時の対応について、看護学生にもわかりやすく解説します。

  1. 術後出血とは
    1. 1.手術後に止血部位から再出血する状態
  2. 術後出血が起こる時期
    1. 2.多くは術後早期だが、遅れて起こることもある
  3. 術後出血の原因
    1. 3.手術部位の止血に関連する原因
    2. 4.凝固機能に関連する原因
    3. 5.低体温が出血を助長する理由
  4. 術後出血の観察項目
    1. 6.バイタルサインは単独の値ではなく推移で見る
    2. 7.ドレーン排液は「量・色・速度・性状」を見る
    3. 8.創部と体腔内出血のサイン
    4. 9.皮膚・意識・尿量を観察する
    5. 10.血液検査を確認する
  5. 出血性ショック
    1. 11.血圧低下を待たずに気づくことが重要
  6. 術後出血を発見したときの対応
    1. 12.応援要請と報告を最優先する
    2. 13.ドレーンや創部を独自に操作しない
  7. 医師への報告例
    1. 14.SBARで簡潔に伝える
  8. 実習記録で押さえたい看護のポイント
    1. 15.「出血の有無」ではなく、根拠のある観察計画にする
  9. よくある質問
    1. Q1.ドレーン排液が100mL/時を超えたら、必ず術後出血ですか?
    2. Q2.排液が減ったら出血は止まったと考えてよいですか?
    3. Q3.血圧が正常なら、出血性ショックではありませんか?
    4. Q4.Hbが低下していなければ、出血は否定できますか?
    5. Q5.術後出血は術後48時間以内だけ注意すればよいですか?
  10. まとめ
  11. 実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
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  12. 参考文献

術後出血とは

1.手術後に止血部位から再出血する状態

術後出血とは、手術終了後に手術部位やその周辺から出血する合併症です。創部やドレーンから見える出血だけでなく、胸腔、腹腔、後腹膜、消化管などに生じる外から見えにくい出血も含まれます。

少量の血性排液があるだけで、直ちに異常とは限りません。重要なのは、術式ごとに想定される経過と比べて、次のような変化がないか確認することです。

  • 出血量が急に増加している
  • 時間が経過しても鮮血が続いている
  • いったん淡くなった排液が再び鮮血になった
  • 凝血塊を伴っている
  • バイタルサインや全身状態が悪化している
  • 血液検査で貧血や凝固異常が進行している

出血量だけに共通の正常値・異常値があるわけではありません。手術部位、術式、患者さんの体格、術中出血量、ドレーンの種類、施設の報告基準によって判断が異なります。

術後出血が起こる時期

2.多くは術後早期だが、遅れて起こることもある

術後出血は、手術室からの帰室直後を含む術後早期に起こることが多いため、帰室後は短い間隔で全身状態と排液を確認します。

麻酔からの覚醒、血圧の上昇、咳嗽や体動などをきっかけに、止血部位から再出血することがあります。術後早期は、麻酔の影響、鎮痛薬、低体温などによって症状がわかりにくい場合もあります。

一方、術後数日以上経過してから、感染、縫合不全、血管壁の障害、仮性動脈瘤、抗凝固療法の再開などに関連して出血することもあります。そのため、「48時間を過ぎたから術後出血は起こらない」とは判断できません。

術後出血の原因

3.手術部位の止血に関連する原因

  • 結紮糸や血管クリップの脱落・ずれ
  • 電気凝固などで止血した部位からの再出血
  • 細い血管から持続する出血
  • 組織損傷や血管損傷
  • 咳嗽、嘔吐、いきみ、急な体動などによる手術部位への負荷
  • 術後の血圧上昇

ドレーンやチューブの刺激、固定不良によって出血する場合もあります。刺入部だけでなく、チューブの深さ、固定、屈曲、牽引の有無を確認します。

4.凝固機能に関連する原因

血液を止めるには、血管収縮、血小板による一次止血、凝固因子によるフィブリン形成が適切に働く必要があります。次のような状態では、この仕組みが障害され、出血しやすくなります。

  • 抗凝固薬・抗血小板薬の影響
  • 血小板減少や血小板機能低下
  • 肝機能障害などによる凝固因子の低下
  • 大量出血・大量輸液による血小板や凝固因子の希釈
  • DICなどによる凝固因子・血小板の消費
  • 低体温
  • アシドーシス

術前の内服薬は、薬剤名だけでなく、最終内服日、休薬期間、再開時期を確認します。腎機能や肝機能によって薬剤の影響が長く残る場合もあります。

5.低体温が出血を助長する理由

全身麻酔では体温調節反応が抑制され、血管拡張による体熱の再分布、手術室の低い室温、皮膚や体腔の露出、冷たい輸液、長時間の手術などによって低体温になりやすくなります。

低体温になると、血小板機能や凝固反応が低下し、出血が止まりにくくなる可能性があります。大量出血では、低体温・アシドーシス・凝固障害が互いに悪化させ合うため、体温管理は重要です。

危機的出血時の体温・凝固管理や輸血体制については、日本麻酔科学会・日本輸血・細胞治療学会の「危機的出血への対応ガイドライン」が参考になります。

術後出血の観察項目

6.バイタルサインは単独の値ではなく推移で見る

  • 血圧:低下していないか、脈圧が狭くなっていないか
  • 脈拍:頻脈になっていないか、徐々に増加していないか
  • 呼吸:呼吸数増加、努力呼吸、SpO2低下がないか
  • 体温:低体温がないか
  • 意識:不安、不穏、反応低下、意識障害がないか

出血初期には代償機転が働くため、血圧が保たれていることがあります。特に若い患者さんでは、出血が進行してから急激に血圧が低下することもあります。反対に、β遮断薬を使用している患者さんやペースメーカー装着中の患者さんでは、出血していても頻脈が目立たない場合があります。

心拍数を収縮期血圧で割るショックインデックスは、循環状態をみる参考になりますが、薬剤、年齢、不整脈などの影響を受けます。数値だけで出血量や重症度を決めず、全身所見と合わせて評価します。

7.ドレーン排液は「量・色・速度・性状」を見る

ドレーン排液は、次の点をセットで確認します。

  • 一定時間あたりの排液量と累積量
  • 漿液性、淡血性、血性、鮮血などの色
  • 増加する速度と前回からの変化
  • 凝血塊の有無
  • ドレーンの屈曲、閉塞、抜去、接続外れ
  • 陰圧の作動状況
  • 刺入部からの漏れや出血

原文のように「100mL/時以上なら、どの手術でも危険」と一律に判断することはできません。胸部、腹部、心臓血管、整形外科など、術式によって報告基準は異なります。術後指示と施設基準を確認し、基準に達していなくても、鮮血化、急増、全身状態の変化があれば速やかに報告します。

また、排液が急に減った場合も注意が必要です。ドレーンが凝血塊で閉塞し、体内に血液がたまっている可能性があるため、患者さんの状態、ドレーンの走行、呼吸音、腹部膨満、創部周囲などを確認します。施設の指示がない状態で、強くしごいたり吸引したりしてはいけません。

8.創部と体腔内出血のサイン

創部では、ドレッシング材への血液の広がり、創部の腫脹、皮下血腫、疼痛の増強、創離開などを観察します。

胸腔や腹腔、後腹膜などへの出血では、外から出血が見えない場合があります。次のような変化に注意してください。

  • 腹部膨満、腹痛、腹膜刺激症状
  • 胸痛、呼吸困難、左右の呼吸音の差
  • 腰背部痛、側腹部の腫脹や皮下出血
  • 手術部位周辺の張りや圧迫感
  • 原因が明確でない頻脈、血圧低下、尿量減少

9.皮膚・意識・尿量を観察する

循環血液量が減少すると、身体は心臓や脳への血流を維持するため、末梢血管を収縮させます。その結果、顔面蒼白、冷感、冷汗、毛細血管再充満時間の延長などがみられます。

脳への血流が低下すると、不安、不穏、落ち着きのなさ、反応低下、意識障害が現れることがあります。「何となく様子が違う」という変化も軽視できません。

腎血流が低下すると尿量が減少します。時間尿量、尿の濃さ、輸液量とのバランスを確認します。ただし、尿量は腎機能、利尿薬、尿道カテーテルの閉塞などにも影響されるため、原因を総合的に考えます。

10.血液検査を確認する

術後出血が疑われる場合は、次の検査が評価されます。

  • ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)、赤血球数
  • 血小板数
  • PT-INR、APTT
  • フィブリノゲン、FDP、Dダイマー
  • 血液ガス、乳酸値、酸塩基平衡
  • 電解質、腎機能、肝機能

急性出血の直後は、血液と血漿が同時に失われるため、HbやHtがすぐに大きく低下しないことがあります。その後の体液移動や輸液によって低下が明らかになる場合があるため、初回値だけで出血を否定せず、臨床所見と経時変化を確認します。

出血性ショック

11.血圧低下を待たずに気づくことが重要

出血性ショックとは、出血によって循環血液量が不足し、組織へ十分な酸素を届けられなくなった状態です。進行すると、腎障害、意識障害、心筋虚血、凝固障害、多臓器障害などにつながります。

早期には、頻脈、不安、冷汗、末梢冷感、皮膚蒼白、尿量減少などがみられ、血圧はまだ保たれている場合があります。さらに進行すると、血圧低下、意識障害、呼吸状態の悪化、乳酸値上昇などが現れます。

「血圧が下がっていないから大丈夫」と判断せず、変化の組み合わせと進行速度を見ることが重要です。

術後出血を発見したときの対応

12.応援要請と報告を最優先する

大量出血やショックが疑われる場合は、一人で対応しようとせず、直ちに医師、リーダー看護師、院内迅速対応チームなどへ連絡します。緊急度に応じて、院内の急変対応手順を開始してください。

看護師が行う対応は、施設の手順や医師の指示に従います。一般的には次の対応が必要になります。

  • 気道・呼吸・循環を評価する
  • 意識、バイタルサイン、SpO2を継続的に観察する
  • 安静を保ち、安全な体位にする
  • 指示に基づいて酸素投与を準備・実施する
  • 静脈路の状態を確認し、輸液・輸血に備える
  • 出血部位、排液量、排液の性状を確認する
  • 採血、血液型検査、交差適合試験などに備える
  • 保温し、低体温を予防する
  • 絶飲食を確認し、再手術・血管内治療・内視鏡治療などに備える

危機的出血では、赤血球製剤だけでなく、凝固因子や血小板を含めた輸血療法が必要になることがあります。輸血の適応や製剤の選択は、出血の速度、循環動態、検査結果、臨床状況をもとに医師が判断します。

輸血の実施方法と安全管理については、厚生労働省・日本輸血・細胞治療学会の「輸血療法実践ガイド」を参照してください。

13.ドレーンや創部を独自に操作しない

出血しているドレーンを自己判断でクランプすると、体内に血液がたまり、状態を悪化させる可能性があります。また、凝血塊を除去しようとしてドレーンを強くしごくことも、組織損傷や急激な陰圧につながる可能性があります。

圧迫止血が可能な体表の出血では、清潔なガーゼなどを用いた圧迫が指示される場合があります。一方、胸腔・腹腔内出血などは体表から圧迫できません。出血部位と術式を踏まえ、必ず医師の指示と施設手順に従います。

医師への報告例

14.SBARで簡潔に伝える

S:状況
「肺切除術後2時間の患者さんです。胸腔ドレーンから鮮血が急に増えています」

B:背景
「帰室後は淡血性排液でした。術中出血量は記録上○mLで、抗凝固薬は術前から休薬中です」

A:評価
「直近30分の排液は○mLで、前の30分より増加しています。血圧は○/○mmHgから○/○mmHgへ低下、脈拍は○回/分から○回/分へ上昇しています。冷汗と顔面蒼白があり、尿量も減少しています」

R:提案・依頼
「術後出血が疑われます。至急診察をお願いします。採血と輸血準備を進めてよいでしょうか」

実際の報告では、患者さんの手術名、術後時間、ドレーンの種類、施設の報告基準に合わせて内容を調整してください。

実習記録で押さえたい看護のポイント

15.「出血の有無」ではなく、根拠のある観察計画にする

看護学生さんの記録では、「術後出血に注意する」「ドレーン排液を観察する」だけで終わってしまうことがあります。しかし、それだけでは何を異常と判断するのかが伝わりません。

次のように患者さんの危険因子と結びつけると、個別性のある計画になります。

  • 抗凝固薬を使用していたため、再開時期と凝固検査を確認する
  • 長時間手術で術中出血量が多かったため、低体温と凝固障害に注意する
  • 胸腔内出血を早期発見するため、排液だけでなく呼吸音、呼吸状態、胸部症状を観察する
  • 体腔内出血では外から見えないため、脈拍、血圧、意識、皮膚、尿量、腹部所見を組み合わせて評価する

看護大学で学生さんに説明するときは、「排液が○mLだった」だけでなく、何分間の量か、前回と比べてどうか、色や性状はどうか、患者さんの循環状態はどうかまで確認するように伝えていました。出血量と全身状態をセットで考えると、報告の根拠が明確になります。

よくある質問

Q1.ドレーン排液が100mL/時を超えたら、必ず術後出血ですか?

一律には判断できません。術式、手術部位、患者さんの体格、術後経過、施設基準によって異なります。数値が基準未満でも、鮮血化、急増、頻脈、血圧低下、尿量減少などがあれば報告が必要です。術後指示に記載された報告基準を必ず確認してください。

Q2.排液が減ったら出血は止まったと考えてよいですか?

排液の減少は止血を示す場合もありますが、ドレーンの屈曲・閉塞や位置のずれによって排出されていない可能性もあります。ドレーンの状態と、患者さんのバイタルサイン、創部、胸腹部所見を確認します。

Q3.血圧が正常なら、出血性ショックではありませんか?

出血初期には代償機転によって血圧が保たれることがあります。頻脈、末梢冷感、冷汗、不安・不穏、尿量減少などが先に現れる可能性があるため、血圧だけで判断しません。

Q4.Hbが低下していなければ、出血は否定できますか?

否定できません。急性出血直後は、HbやHtの低下が明確でないことがあります。体液移動や輸液の影響で後から低下する場合があるため、臨床症状、出血量、バイタルサイン、検査値の推移を総合して評価します。

Q5.術後出血は術後48時間以内だけ注意すればよいですか?

術後早期に多い合併症ですが、感染、縫合不全、血管障害、抗凝固療法の再開などによって遅れて出血する場合もあります。退院指導では、創部出血、吐血・下血、血尿、急な息苦しさ、めまい、意識が遠のく感じなどがあれば、医療機関へ連絡するよう説明します。

まとめ

術後出血の早期発見では、ドレーンの排液量だけでなく、色、性状、増加速度、凝血塊、ドレーンの閉塞を確認し、バイタルサイン、意識、皮膚、尿量、血液検査の推移と組み合わせて評価することが大切です。

特に覚えておきたいのは、血圧低下は出血性ショックの早期から必ず現れるとは限らないこと、排液の減少がドレーン閉塞を示す場合があること、急性出血直後はHb低下が目立たない場合があることです。

出血が疑われるときは、一人で判断を続けず、患者さんの変化を時系列で整理して速やかに報告しましょう。術式ごとの報告基準と院内の急変対応手順を事前に確認しておくことが、迅速な対応につながります。

それぞれの術後合併症について詳しくまとめましたのでご活用ください。

術後合併症の種類と出現時期

  1. 術後合併症の種類と出現時期
  2. 術後合併症 ~術後出血~
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  5. 術後合併症 ~術後感染症~
  6. 術後合併症 ~呼吸器合併症~
  7. 術後合併症 ~深部静脈血栓症(DVT)~
  8. 術後合併症 ~離床遅延~
  9. 術後合併症 ~術後イレウス(腸管麻痺)~
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参考文献

※本記事は、看護学生・看護師の学習を目的とした一般的な解説です。術後出血の報告基準、ドレーン管理、酸素投与、輸液・輸血などの対応は、患者さんの状態、術式、医師の指示、各医療機関の手順を優先してください。

この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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