こんにちは、ユウです。
患者さんを手術室へ送り出したあと、病棟では帰室に向けてベッドや部屋を準備します。
看護学生さんのなかには、「術後ベッドには何を準備すればいいの?」「枕は置かない方がいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
術後のベッドメイキングは、単にシーツや物品をきれいに並べる作業ではありません。
患者さんが病室へ戻った直後から、呼吸・循環・体温・疼痛・ドレーン類を安全に管理できる環境をつくることが目的です。
今回は、術後患者さんを迎えるためのベッドの作り方と部屋の準備について、現在の周術期管理の考え方を踏まえて解説します。
術後ベッドは「帰室直後の安全」を考えて準備する
結論として、すべての患者さんに同じ術後ベッドを準備するのではなく、術式・麻酔方法・患者さんの状態・帰室時の指示に合わせて準備することが重要です。
患者さんが病室へ戻った直後は、麻酔や手術侵襲の影響によって状態が変化する可能性があります。
そのため、ベッドや部屋を準備するときには、次のことを考えます。
- どのような手術を受けたのか
- 全身麻酔・区域麻酔・局所麻酔のどれか
- 酸素投与やモニター管理が必要か
- 点滴、輸液ポンプ、シリンジポンプが何台あるか
- ドレーン、尿道留置カテーテル、胃管などがあるか
- 術後の安静度や体位に指示があるか
- 低体温、褥瘡、転倒・転落などのリスクがあるか
「術後だからこの物品を置く」ではなく、「この患者さんが安全に帰室するために何が必要か」を考えて準備する。
これが術後ベッドメイキングの基本です。
この記事でわかること
- 術後ベッドを準備する目的
- ベッド上に準備する主な物品
- 病室内で確認する設備と医療機器
- 患者さんが帰室する前のチェック項目
- 術後ベッドに枕を置くかどうかの考え方
- 脊髄くも膜下麻酔後の体位に関する現在の根拠
術後のベッドメイキングが必要な理由
手術と病棟看護は、別々のものではありません。
患者さんを手術室へ送り出す「オペ出し」も、手術が終わった患者さんを迎える「オペ迎え」も、病棟看護師の大切な役割です。
帰室してから酸素配管や吸引器を探したり、点滴台を準備したりしていては、必要な観察や処置が遅れる可能性があります。
術後ベッドと部屋をあらかじめ整えておくことで、帰室直後から次の対応を行いやすくなります。
- 気道・呼吸・循環の観察
- 酸素投与とモニター装着
- 創部・出血・ドレーン排液の確認
- 点滴や持続注入薬の継続
- 疼痛・悪心・低体温への対応
- 安全な移乗と体位調整
米国麻酔科学会(ASA)の麻酔後ケア基準でも、麻酔後は患者さんの状態に応じた観察とモニタリングを行い、酸素化・換気・循環・意識・体温などに注意することが示されています。
準備を始める前に確認すること
物品を集める前に、まず患者情報と指示を確認します。
- 手術名・術式・手術部位
- 麻酔方法
- 予定帰室時刻
- 術後の体位・安静度
- 酸素投与方法と流量
- モニター管理の内容
- 輸液・輸血・持続注入薬
- ドレーンやカテーテルの種類・本数
- 創部の位置と固定用物品
- 加温の必要性
- 褥瘡・転倒転落リスク
- 必要となる緊急物品
手術内容や帰室時の状態は予定から変わることがあります。準備後も、手術室や回復室からの申し送り内容に合わせて追加・変更します。
術後のベッドの作り方

ここからは、術後ベッドで準備することが多い物品と、その目的を説明します。
防水シーツ・吸水シート
血液、排液、尿、嘔吐物などで寝具が汚染される可能性がある場合に使用します。
創部やドレーンの位置を予測し、必要な範囲を保護します。ただし、防水性のある素材を広範囲に重ねると、蒸れやずれにつながることがあります。枚数や敷く位置は一律に決めず、患者さんの状態と施設の手順に合わせます。
バスタオル・スライディングシート
体位調整や移乗を行うために準備します。
患者さんを持ち上げたり引きずったりすると、患者さんにも介助者にも負担がかかります。施設で採用されているスライディングシートや移乗用具を使用し、必要な人数で安全に移乗します。
腹帯・胸帯・T字帯
腹帯や胸帯は、創部の保護や患者さんの安心感につながることがありますが、すべての手術で必要になるわけではありません。
使用の有無、巻く位置、締めつけの強さは、術式と医師の指示、施設の手順に従います。ドレーンを圧迫したり、呼吸運動を妨げたりしないよう注意します。
T字帯や術後用下着についても、創部、尿道留置カテーテル、排液チューブなどの位置を確認して準備します。
マットレス・体圧分散寝具
長時間手術、高齢、低栄養、循環不全、自力で体位変換できないなど、褥瘡リスクが高い患者さんでは、体圧分散寝具を検討します。
「手術が6時間以上なら必ずエアマット」という一律の基準ではなく、褥瘡リスク評価、術後の安静度、皮膚状態、施設の基準をもとに選択します。日本褥瘡学会は、褥瘡予防・管理ガイドラインを公開しています。
掛け物と加温用具
手術後は、麻酔、手術室の環境、体腔の露出、輸液などの影響で低体温になりやすくなります。
NICEの周術期低体温予防ガイドラインでは、体温を測定し、必要に応じて温風式加温装置などによる能動的加温を行うことが推奨されています。
毛布、温風式加温装置、施設で承認された加温機器などを、患者さんの体温と指示に合わせて準備します。
家庭用の電気毛布や湯たんぽを自己判断で使用するのは避けます。麻酔後は熱さを訴えにくいことがあり、低温熱傷の危険があるためです。機器の設定温度、皮膚状態、体温を継続して確認します。
酸素投与器具
酸素マスク、鼻カニューレ、酸素チューブなどを、帰室時の指示に合わせて準備します。
全身麻酔後だからといって、全員に同じ流量で酸素を投与するわけではありません。酸素投与の方法と流量は、麻酔科医・主治医の指示、SpO2、呼吸状態などに基づいて決めます。
搬送中に酸素投与が必要な場合は、酸素ボンベの残量、流量計、接続、マスクの適合を確認します。病室へ戻ったら、中央配管への切り替えが必要かも確認します。
パルスオキシメーター・生体情報モニター
帰室後すぐに測定できるよう、電源、ケーブル、センサー、アラーム設定を確認します。
パルスオキシメーターは酸素化の評価に有用ですが、換気の状態を直接示すものではありません。SpO2だけでなく、呼吸数、呼吸の深さ、胸郭運動、意識状態、気道音なども観察します。
点滴棒・点滴台・輸液ポンプ
輸液、輸血、鎮痛薬、昇圧薬などを継続できるように準備します。
使用するポンプの台数、電源、バッテリー残量、ルートの長さを確認します。移乗時に点滴ルートが引っ張られないよう、患者さんと点滴台の位置関係も考えます。
ガーグルベースン・嘔吐物処理用品
術後は、患者背景、麻酔薬、オピオイド、手術の種類などによって、術後悪心・嘔吐(PONV)が起こることがあります。
術後悪心・嘔吐に関する第4版コンセンサスガイドラインでは、リスク評価に基づく予防と治療が推奨されています。
ガーグルベースン、ティッシュ、吸引器などをすぐに使用できるようにし、嘔吐時には誤嚥を防ぐため、意識状態と体位にも注意します。
ベッドの高さとサイドレール
患者さんをストレッチャーから移乗するときは、ベッドとストレッチャーの高さを合わせ、双方のブレーキを確実にかけます。
移乗が終わったら、ベッドを最低位に戻し、必要なサイドレールを使用します。ナースコールが使える状態になっているかも確認します。
「ベッドを高くしておく」のは移乗しやすくするための一時的な調整です。患者さんを高い位置のままにしないことが重要です。
術後患者を迎える部屋の準備

酸素配管・酸素流量計
酸素配管、流量計、加湿の要否、接続チューブを確認します。酸素投与の指示がある場合は、帰室後すぐに搬送用酸素から切り替えられるようにします。
吸引器・吸引セット
電源または配管への接続、吸引圧、チューブ、吸引カテーテル、貯留容器を確認します。
吸引器は置いてあるだけでは準備完了ではありません。帰室前に実際に作動することを確認し、必要時にすぐ使用できる位置へ配置します。
生体情報モニター
心電図、血圧、SpO2など、指示された項目を測定できるようにします。必要に応じて観血的動脈圧、呼気二酸化炭素、体温などのモニタリング機器も準備します。
患者さんごとに適切なアラーム範囲を設定し、前の患者さんの設定が残っていないか確認します。
点滴台・輸液ポンプ・シリンジポンプ
帰室時に接続されている輸液や薬剤を、ベッド周囲で安全に継続できるように配置します。
コンセントの位置、電源コードによる転倒リスク、ポンプのアラームが確認できる向きにも注意します。
ドレーン・尿道留置カテーテルの管理用品
ドレーンバッグや尿バッグをベッドより低い適切な位置に固定できるようにします。
帰室後は、ドレーンの種類、本数、挿入部位、接続、固定、屈曲、排液量・性状を申し送り内容と照合します。移乗時の抜去や牽引を防ぐため、患者さんを動かす前にチューブ類の位置を全員で確認します。
救急対応に必要な動線
ベッド周囲に不要な物を置かず、観察・処置・急変対応ができるスペースを確保します。
救急カート、バッグバルブマスク、除細動器などの場所も把握しておきます。すべてを個室内に置くという意味ではなく、必要時にすぐアクセスできることが重要です。
術後患者が帰室する前のチェックリスト
- 患者氏名・手術名・術式を確認した
- 麻酔方法と帰室予定時刻を確認した
- 術後の体位・安静度を確認した
- 酸素投与の方法と流量を確認した
- 酸素・吸引器が作動することを確認した
- モニターの電源・センサー・アラームを確認した
- 点滴台と必要なポンプを準備した
- ドレーンやバッグを固定する場所を確保した
- 加温方法と体温計を準備した
- 嘔吐・誤嚥に対応できる物品を準備した
- 移乗人数と移乗用具を確認した
- ベッド・ストレッチャーのブレーキを確認できる
- 帰室後にベッドを最低位へ戻せる
- ナースコールと必要なサイドレールを確認した
- 患者さんの観察・処置ができる動線を確保した
WHOの手術安全チェックリスト実施マニュアルでも、手術チームから術後管理上の重要事項を共有することが示されています。物品だけでなく、申し送りによる情報の準備も欠かせません。
術後ベッドに枕は置かないの?
「全身麻酔後は必ず枕なし」と一律に決めるのは適切ではありません。
術後の頭頸部の位置は、患者さんの意識状態、気道の開通、呼吸状態、手術部位、誤嚥リスク、麻酔科医・主治医の指示によって決めます。
麻酔後に舌根沈下や気道閉塞が疑われる場合は、頭部の位置を調整し、下顎挙上などの気道確保を行い、必要に応じて気道確保器具を使用します。枕を置かなければ必ず気道が確保できるわけではありません。
反対に、上体を挙上した方が呼吸しやすい患者さんや、誤嚥リスクを考慮して体位を調整する患者さんもいます。頸椎手術、頭頸部手術、脳神経外科手術などでは、術式特有の体位指示が出ることがあります。
そのため、術後ベッドを準備するときは、枕を置くか置かないかを暗記するのではなく、帰室時の体位指示と気道・呼吸の状態を確認することが大切です。
脊髄くも膜下麻酔後は頭を上げてはいけないの?
脊髄くも膜下麻酔後に、硬膜穿刺後頭痛を予防する目的で長時間の仰臥位安静や頭部挙上禁止を一律に行う考え方には、十分な根拠がありません。
体位と水分摂取による硬膜穿刺後頭痛予防を検討したCochraneレビューでは、硬膜穿刺後のルーチンなベッド上安静は頭痛を予防せず、むしろ頭痛を増やす可能性が示されました。
ただし、麻酔の効果が残っている間は、下肢の感覚・運動機能低下、血圧低下、転倒などに注意が必要です。
離床や頭部挙上は、麻酔方法、循環動態、運動・感覚の回復、手術内容、医師の指示、施設の基準に従って行います。
患者さんが帰室したら確認すること
術後ベッドの準備は、患者さんが戻ってきたら終わりではありません。帰室時には、手術室・回復室からの申し送りと患者さんの実際の状態を照合します。
- 患者確認、手術名、麻酔方法
- 意識状態と気道の開通
- 呼吸数、呼吸状態、SpO2、酸素投与
- 血圧、脈拍、心電図
- 体温と加温の必要性
- 疼痛、悪心・嘔吐
- 創部、出血、ドレッシング
- ドレーンの種類・本数・排液
- 輸液、輸血、持続注入薬、ルート
- 尿量と尿道留置カテーテル
- 体位・安静度・離床条件
- 術中の特記事項と今後の観察項目
準備した物品が、本当にその患者さんに適しているかを確認し、不足や不要な物品があれば調整します。
筆者の体験談
私が外科病棟で勤務していた頃、術後ベッドの準備は、最初のうちは「決められた物品をそろえる作業」のように感じていました。
防水シーツ、酸素、吸引器、モニター、点滴台などをチェックし、準備できていればそれでよいと思いがちでした。
しかし、術後患者さんを何度も迎えるうちに、同じ手術後でも必要な準備は患者さんによって違うことが分かってきました。
点滴やドレーンが多い患者さんでは、物品がそろっていても、配置が悪いと移乗するときにルートが交差したり、ドレーンが引っ張られたりします。
また、酸素や吸引器も「置いてある」だけでは十分ではありません。接続できるか、作動するか、患者さんが戻った瞬間に使えるかまで確認して、初めて準備したといえます。
この経験から、術後ベッドを作るときには、
「患者さんが今ここへ戻ってきたら、どこに移乗し、どの機器を、どの順番で接続するか」
を頭の中で一度シミュレーションするようになりました。
物品の名前を覚えるだけでなく、帰室から観察・処置までの流れを想像すると、必要な準備と配置が見えやすくなります。
ユウのアドバイス
術後ベッドの作り方は、病院や病棟、手術の種類によって異なります。
実習では、この記事の物品をそのまま全部並べるのではなく、まず実習先の手順と指導者の指示を確認してください。
そのうえで、一つひとつの物品について、
- なぜ必要なのか
- どの合併症や危険に備えているのか
- どこに置けば安全に使えるのか
- 本当に作動する状態か
まで考えてみましょう。
「何を置くか」だけでなく、「患者さんが戻ったあとにどう使うか」を説明できると、術後看護の理解が深まります。
まとめ
- 術後ベッドは、帰室直後から安全に観察・処置を行うために準備する
- 必要な物品は、術式・麻酔・患者状態・帰室時指示によって異なる
- 酸素、吸引器、モニター、ポンプは、置くだけでなく作動確認まで行う
- 体圧分散寝具は、手術時間だけでなく患者さんの褥瘡リスクを評価して選ぶ
- 加温は、体温と指示に合わせて施設で承認された方法で行う
- 移乗時は高さとブレーキを確認し、移乗後はベッドを最低位に戻す
- 全身麻酔後の枕の有無は、一律ではなく気道・呼吸・体位指示で判断する
- 脊髄くも膜下麻酔後の一律なベッド上安静は、硬膜穿刺後頭痛の予防にならない
- 施設の手順を基本に、帰室後の流れを想像して準備する
よくある質問(FAQ)
術後ベッドには必ず酸素マスクを置きますか?
全患者に一律で必要とは限りません。酸素投与の必要性、器具の種類、流量は、麻酔科医・主治医の指示と患者さんの呼吸状態に合わせます。ただし、帰室直後に酸素が必要になる可能性を考え、設備や物品をすぐ使える状態にしておくことは重要です。
術後ベッドには防水シーツを2枚敷きますか?
枚数を一律に決める必要はありません。創部、ドレーン、失禁、嘔吐などによる汚染が予測される場所を保護できるように準備します。施設の手順に従い、蒸れやずれにも注意します。
全身麻酔後は枕を使ってはいけませんか?
必ずしもそうではありません。意識状態、気道の開通、呼吸状態、誤嚥リスク、術式、医師の指示に応じて頭頸部の位置を調整します。「枕なし」と暗記せず、患者さんの気道・呼吸が安全に保たれているかを評価します。
脊髄くも膜下麻酔後は水平に寝かせますか?
硬膜穿刺後頭痛を予防する目的で、全員に長時間の水平仰臥位を行う根拠はありません。ただし、麻酔効果が残っている間は血圧低下、下肢の感覚・運動機能、転倒などに注意し、離床は指示と施設基準に従います。
温風式加温装置と電気毛布はどちらがよいですか?
患者さんの体温、手術内容、設備、施設の手順によって異なります。温風式加温装置は周術期の能動的加温に用いられますが、どの方法でも温度設定、皮膚状態、体温を確認することが重要です。家庭用の電気毛布などを自己判断で使用してはいけません。
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参考文献・情報源
- American Society of Anesthesiologists. Standards for Postanesthesia Care. ASA
- National Institute for Health and Care Excellence. Hypothermia: prevention and management in adults having surgery(CG65). NICE
- Gan TJ, et al. Fourth Consensus Guidelines for the Management of Postoperative Nausea and Vomiting. Anesth Analg. 2020;131(2):411-448. PubMed
- Arevalo-Rodriguez I, et al. Posture and fluids for preventing post-dural puncture headache. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(3):CD009199. PubMed
- World Health Organization. Implementation Manual WHO Surgical Safety Checklist 2009. WHO
- 一般社団法人 日本褥瘡学会. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版(補訂). 日本褥瘡学会





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