発熱で脈拍が速くなる理由|体温と脈拍の目安・看護の観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんに発熱があるとき、「脈が速いのは熱のせい」と考えてよいのか迷ったことはありませんか?
発熱している患者さんでは、脈拍が100回/分を超えることもあります。しかし、発熱だけで説明できる頻脈なのか、脱水や敗血症などが隠れているのかは、体温と脈拍だけでは判断できません。
今回は、発熱で脈拍が速くなる理由と、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて解説します。
結論:発熱時の頻脈は生理的反応。ただし「熱のわりに速い脈」には注意する
結論からいうと、発熱で脈拍が速くなるのは、基本的に体温上昇に対する生理的な反応です。
体温が上がると、体の代謝や酸素需要が増えます。さらに、熱を逃がすために皮膚の血管が広がったり、発汗によって水分が失われたりします。
その結果、循環を保つために心臓が拍動数を増やし、脈拍が速くなります。
発熱時の脈拍を見るときは、次のように考えます。
- 発熱にともなう脈拍上昇は起こり得る
- 体温が1℃上がると、脈拍が約8〜10回/分増えるという目安がある
- 一方で、体温0.5℃の上昇ごとに約10回/分増えると説明する資料もある
- 体温に比べて脈拍が不釣り合いに速い場合は注意する
- 脱水、低血圧、呼吸苦、胸痛、意識の変化があれば、発熱だけの問題と決めつけない
ざっくり言うと、
「熱があるから脈が速い」はあり得る。でも、「熱のわりに脈が速すぎる」ときは、ほかの異常を探す
この記事の読了目安
約10分
この記事でわかること
- 発熱で脈拍が速くなる仕組み
- 体温と脈拍の関係を考えるときの目安
- 発熱による生理的頻脈と病的頻脈の見分け方
- 看護師・看護学生が確認したい観察項目
- 発熱患者の脈拍を経時的に評価するポイント
根拠:発熱すると代謝と酸素需要が増える
発熱時に脈拍が速くなる主な理由は、体温上昇によって代謝が活発になり、全身で必要とする酸素やエネルギーが増えるためです。
体は、増えた酸素需要に対応しようとします。その方法の一つが、心拍数を増やして血液を多く送り出すことです。
また、発熱時には熱を外へ逃がすために、皮膚の血管が広がります。発汗や呼吸数の増加によって水分が失われることもあります。
血管が広がり、水分も失われる
↓
循環を保つために心臓が拍動数を増やす
↓
脈拍が速くなる
このような流れです。
看護roo!の解説では、発熱時には代謝が亢進し、酸素需要が増えることで脈拍が増加すると説明されています。
また、時事メディカルの解説でも、発熱にともなう頻脈は急性感染症などでみられる変化として説明されています。
詳しい解説
体温と脈拍の関係には目安がある
発熱と脈拍の関係については、次のような目安が紹介されています。
- 体温が1℃上昇すると、脈拍は約8〜10回/分増加する
- 体温が0.5℃上昇するごとに、脈拍は約10回/分増加する
ただし、資料によって表現には少し違いがあります。
そのため、「体温が何℃なら脈拍は必ず何回」という固定的な基準として使うのではなく、患者さんの普段の値や経過と合わせて考える必要があります。
たとえば、普段の脈拍が70回/分の患者さんで、発熱とともに80〜90回/分になっている場合と、体温の上昇がわずかなのに脈拍が急に130回/分になっている場合では、受ける印象が異なります。
重要なのは、数字を単独で見ることではありません。
体温の上がり方に対して、脈拍の増え方は見合っているか
発熱時の頻脈が「熱だけ」とは限らない理由
発熱による脈拍上昇は生理的な反応ですが、頻脈の原因が発熱だけとは限りません。
発熱の背景には感染症があることが多く、感染の程度によっては全身状態が悪化している可能性もあります。
また、発汗や飲水量の低下によって脱水が進むと、循環血液量が減少し、脈拍がさらに速くなることがあります。
さらに、低血圧や呼吸状態の悪化、心臓や肺の疾患がある場合にも、脈拍が増えることがあります。
時事メディカルの解説や、J-STAGE掲載の医学文献では、体温に比べて脈拍が不釣り合いに速い場合に、脱水、敗血症、心疾患、呼吸器疾患などを考える視点が示されています。
つまり、発熱患者の脈拍が速いときは、
「発熱による自然な反応かもしれない」
と考えつつ、
「ほかに循環や呼吸を悪化させる要因がないか」
を確認します。
生理的頻脈と病的頻脈を考える視点
発熱患者の脈拍を評価するときは、次のように整理すると考えやすくなります。
発熱にともなう生理的反応として考えやすい場合
- 発熱と脈拍上昇のタイミングが一致している
- 血圧が大きく変化していない
- 呼吸苦や胸痛がない
- SpO₂が安定している
- 意識状態に変化がない
- 水分摂取ができている
- 全身状態が大きく悪化していない
ほかの原因を疑う必要がある場合
- 体温の上昇に比べて脈拍が非常に速い
- 脈拍が時間とともに上がり続けている
- 血圧が低下している
- 呼吸苦や胸痛がある
- SpO₂が低下している
- 尿量低下や強い口渇がある
- 意識や反応に変化がある
- 冷汗や顔色不良がある
これは、脈拍の数値だけで判断するというより、全身状態を含めて「その頻脈は患者さんの状態に見合っているか」を考える作業です。
看護の観察ポイント
発熱と頻脈がある患者さんでは、脈拍だけでなく、次の項目をまとめて確認します。
1.体温と脈拍の推移
まずは、現在の体温と脈拍を確認します。
そのうえで、過去の値と比べます。
- いつから体温が上がっているか
- 体温の上昇にともなって脈拍も増えているか
- 解熱後に脈拍が落ち着いているか
- 急激な変化がないか
- 体温に比べて脈拍が速すぎないか
一時点の数値だけでは、患者さんの変化を見逃すことがあります。
体温・脈拍・呼吸数・血圧などを時間軸に沿って並べると、状態の変化を捉えやすくなります。
2.血圧と循環状態
脈拍が速いときは、血圧も確認します。
特に、頻脈に加えて血圧低下がある場合は、発熱による生理的反応だけではなく、循環状態の悪化を考える必要があります。
観察では、次のような変化がないかを見ます。
- 血圧が普段より低下していないか
- 顔色が悪くないか
- 冷汗がないか
- 倦怠感が強くなっていないか
- 末梢の冷感がないか
発熱があるからといって、脈拍の速さを当然のものとして扱わないことが大切です。
3.呼吸状態
発熱時には、呼吸数が増えることもあります。
そのため、脈拍だけでなく、呼吸数やSpO₂も確認します。
- 呼吸数が増えていないか
- 息苦しさを訴えていないか
- SpO₂が低下していないか
- 会話が続けにくくなっていないか
- 胸痛がないか
頻脈と呼吸苦、SpO₂低下、胸痛が組み合わさっている場合は、単に「熱があるから脈が速い」とは考えにくくなります。
4.脱水のサイン
発熱中は、発汗や飲水量の低下によって水分が不足することがあります。
次のような変化がないかを確認します。
- 口渇があるか
- 口腔内が乾燥していないか
- 皮膚の乾燥がないか
- 尿量が減っていないか
- 飲水できているか
- 嘔吐や下痢がないか
発熱そのものに加えて、脱水が重なると、脈拍がさらに速くなる可能性があります。
5.意識や全身状態
発熱と頻脈があり、意識状態にも変化がある場合は注意が必要です。
- いつもより反応が鈍い
- 会話がかみ合わない
- ぼんやりしている
- 強い眠気がある
- 急に落ち着きがなくなった
このような変化がある場合は、体温と脈拍だけを見て経過観察にしないことが重要です。
実践ポイント
「脈拍110回/分なら、発熱のせい」と決めつけない
脈拍が速くても、発熱にともなう変化として説明できることはあります。
しかし、脈拍の数字だけで原因を決めることはできません。
体温、血圧、呼吸数、SpO₂、意識、尿量などを合わせて確認します。
普段の値と比べる
患者さんによって、普段の脈拍は異なります。
そのため、基準値だけでなく、その患者さんの平常時と比較します。
「いつもは70回/分なのに、今日は120回/分」という変化は、体温と同じくらい重要な情報です。
解熱後の変化も見る
発熱中だけでなく、解熱後に脈拍がどう変化したかも確認します。
体温が下がっても脈拍が高いままなのか、全身状態が改善しているのかを経時的に見ていきます。
報告時は数値を並べて伝える
医師や先輩看護師へ報告するときは、現在の値だけでなく、変化を伝えます。
- 体温がいつからどのように変化したか
- 脈拍がいつからどの程度増えたか
- 血圧やSpO₂の変化
- 呼吸苦、胸痛、意識変化の有無
- 飲水量や尿量の変化
「熱があって脈が速い」と伝えるだけではなく、時間経過と全身状態を合わせて伝えると、状況を共有しやすくなります。
臨床での実践ポイント
- 「熱のわりに脈が速すぎるか」を見る
- 発熱時の脈拍上昇がある場合でも、血圧、呼吸数、SpO₂、意識レベル、尿量・口渇・皮膚乾燥などの脱水所見、胸痛、呼吸苦、冷汗をセットで確認する
- 単なる発熱による生理的頻脈と、敗血症や脱水などによる代償性頻脈を区別する視点が必要
- 看護記録では、体温・脈拍・呼吸・血圧の推移を時間軸で並べて評価する
詳しい背景については、時事メディカル、J-STAGE掲載医学文献、Biomedicus、Dr.Oracleなどの解説も参考になります。
筆者の体験談:発熱のせいだと思った脈拍上昇
私が看護師をしていた頃、午後の検温で、患者さんの体温が少し上がっていたことがありました。
その患者さんは「少しだるい」と話していましたが、会話はできており、見た目には大きな変化がありませんでした。
バイタルサインを測定すると、脈拍が普段より速くなっていました。
最初に記録を見たとき、私は「熱が上がっているから、脈も速くなっているのだろう」と考えました。発熱時には脈拍が増えることを知っていたからです。
ただ、もう一度数字を見直したときに、体温の上がり方に対して脈拍の増え方が大きいように感じました。
「発熱だけで考えてよいのかな」と、少し迷いました。
そこで、患者さんに息苦しさや胸の痛みがないかを聞き、飲水できているか、尿量に変化がないかを確認しました。血圧やSpO₂も測り直し、少し前の記録と並べてみました。
先輩看護師にも、「体温は上がっていますが、脈拍の変化が気になります」と相談しました。
その後、患者さんの状態を再評価し、経過とバイタルサインの変化を報告しました。
振り返ると、最初から異常を見抜けたわけではありません。「発熱で脈が速くなる」という知識があったからこそ、逆にそこで考えるのを止めそうになりました。
この経験があってから、私は発熱患者さんの脈拍を見るとき、体温だけではなく、血圧や呼吸、意識、飲水状況まで一緒に見るようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、発熱患者さんを観察する場面を具体的にイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 発熱で脈拍が速くなるのは、基本的に生理的な反応
- 体温上昇によって代謝と酸素需要が増え、心拍数が増加する
- 末梢血管の拡張や発汗による水分喪失も、頻脈に関係する
- 体温1℃上昇で脈拍約8〜10回/分増加という目安がある
- ただし、資料によっては0.5℃上昇ごとに約10回/分と説明される
- 数値は固定的な基準ではなく、患者さんの普段の値や経過と合わせて考える
- 体温に比べて脈拍が不釣り合いに速い場合は、脱水、敗血症、心疾患、呼吸器疾患などに注意する
- 血圧、呼吸数、SpO₂、意識、尿量、口渇、胸痛、呼吸苦をセットで観察する
結局のところ、
発熱時の頻脈を見たら、「熱のせいかもしれない」と考えながらも、「熱だけで説明できる状態か」を確認する
ことが大切です。
FAQ
Q1.発熱していて脈拍が速いのは、必ず異常ですか?
必ずしも異常とは限りません。
発熱にともなって代謝や酸素需要が増えるため、脈拍が速くなることはあります。ただし、体温に比べて脈拍が不釣り合いに速い場合や、血圧低下、呼吸苦、胸痛、意識変化などをともなう場合は注意が必要です。
Q2.体温が1℃上がると脈拍はどのくらい増えますか?
代表的な目安として、体温1℃上昇で脈拍が約8〜10回/分増えると説明されています。
一方で、体温0.5℃上昇ごとに約10回/分増えるとする資料もあります。資料によって表現が異なるため、決まった計算式として使うのではなく、患者さんの状態や経過と合わせて評価します。
Q3.発熱時に脈拍が速いとき、まず何を観察すればよいですか?
体温と脈拍だけでなく、次の項目を確認します。
- 血圧
- 呼吸数
- SpO₂
- 意識レベル
- 胸痛や呼吸苦
- 冷汗や顔色
- 口渇や皮膚乾燥
- 尿量や飲水状況
特に、頻脈に血圧低下、呼吸状態の悪化、意識変化が加わっていないかを確認します。
Q4.解熱すれば、脈拍も必ず下がりますか?
必ず下がるとは限りません。
発熱以外に脱水や循環・呼吸状態の問題がある場合、解熱後も脈拍が高いままのことがあります。体温だけでなく、脈拍や全身状態がどのように変化したかを経時的に確認します。
参考文献
- 看護roo!「発熱時に脈拍が増加する理由」看護roo!
- 時事メディカル「発熱と頻脈に関する解説」時事メディカル
- J-STAGE掲載医学文献(PDF)J-STAGE
- 医学系資料PDF「発熱と脈拍の関係に関する資料」医学書院系PDF
- 体温と脈拍の関係に関する解説 仕事リトリーバー
- 発熱と動悸に関する解説 動悸ナビ
- 脈拍が早い際の原因に関する解説 岡島内科クリニック
- 速い脈・頻脈に関する解説 つつじの里
- 発熱と頻脈の機序に関する解説 note
- 発熱による頻脈の解説 Biomedicus
- 発熱が頻脈を起こす機序に関する解説 Dr.Oracle
- 急速な心拍に関する解説 バンコク病院
- 発熱と脈拍に関する解説 平成会
- 発熱時の脈拍120回に関する解説 Clarity Seeker
- 発熱と脈拍に関する臨床情報 ユビー
- 体調不良時の心拍数に関する解説 AFC Urgent Care
- 発熱・脈拍に関する医療情報 Medical Note系情報
- 発熱に関する解説 百度健康
- 発熱 Wikipedia
- 関連する解説 note
今回の検索結果には、厚生労働省、国立感染症研究所、学会ガイドラインなどの明確な一次情報は含まれていませんでした。そのため、現時点で確認できた根拠は主に医療専門メディアの解説、医学系資料、J-STAGE掲載の医学文献断片、一般医療情報サイトです。
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