「病態関連図までは書けたけれど、患者さんの生活情報をどこに入れればいいのかわからない」
「情報を追加するほど線が増えて、何を伝えたい図なのかわからなくなる」
全体関連図に取りかかった看護学生さんから、よく聞く悩みです。
看護大学で学生さんの関連図を見ていると、病態関連図の周囲にアセスメント情報をすべて並べ、無理に矢印で結んでいるケースが少なくありません。しかし、全体関連図は集めた情報の量を示す図ではなく、「この患者さんに、なぜこの看護が必要なのか」を可視化する図です。
私自身も学生の頃は、用紙を文字と線で埋めるほどよい関連図になると思っていました。ところが、指導者から一つひとつの矢印について「なぜつながるの?」と尋ねられると、説明できない線がいくつもありました。そこで、事実・解釈・看護問題を分け、矢印を言葉で説明できるか確認するようにしたところ、図がすっきりし、看護計画まで考えやすくなりました。
この記事では、病態関連図を土台にして、患者さんの身体・心理・生活・家族背景・強みを統合し、看護問題へつなげる手順を具体的に解説します。
全体関連図の書き方
1.全体関連図とは
全体関連図とは、疾患の成り立ちだけでなく、治療、症状、検査データ、ADL、心理状態、生活習慣、家族・社会背景、患者さんの強みなどを関連づけ、その人に生じている看護上の問題を全体として捉えるための図です。
病態関連図が主に「疾患がどのような仕組みで症状や検査値の変化を生じさせるか」を示すのに対し、全体関連図では、さらに次の情報を統合します。
- 現在の症状、バイタルサイン、検査データとその推移
- 治療・処置・薬剤と、その効果や有害事象
- 食事、排泄、清潔、移動、睡眠などのADL
- 病気や入院に対する思い、不安、理解、価値観
- 発達段階、役割、仕事、経済面、家族関係、支援者
- 住環境や退院後の生活に影響する条件
- 本人ができていること、意欲、対処行動などの強み
- 現在の看護問題と、今後起こる可能性のある問題
概念マップは、事実や考えを表す項目と、それらの関係を示す線・矢印から構成されます。したがって全体関連図でも、情報を置くだけでなく、項目同士がどのような関係にあるのかを示すことが大切です。
※参考文献: University of Waterloo
2.病態関連図と全体関連図の違い
病態関連図は全体関連図の土台です。まず疾患の原因や病態から、症状・検査・治療へつながる流れを整理し、そこへ患者さん固有の情報を加えていきます。
病態関連図
疾患の原因・誘因 → 病態生理 → 症状・徴候 → 検査所見 → 治療、という医学的なつながりを中心に表します。
全体関連図
病態関連図に、患者さんの反応、ADL、心理、生活、家族・社会背景、強みなどを加え、看護問題や必要な支援へつなげます。
つまり、全体関連図は病態関連図を大きくしただけのものではありません。疾患や治療がその患者さんの生活にどう影響し、患者さんの背景が回復や療養にどう影響するのかを双方向に考えることがポイントです。
関連図の基本から確認したい方は、「関連図とは何か?実習対策」、病態のつなげ方は「病態関連図の書き方!実習対策」を先に読むと理解しやすくなります。
3.完成形をイメージする
まず、病態関連図の例を見てみましょう。
ここへ、患者さん固有の生活情報、心理状態、家族背景、ADL、強み、看護問題などを加えたものが全体関連図です。
提出形式や図形のルールは学校・実習施設によって異なります。画像は構造を理解するための一例として使用し、実際には学校の指定と受け持ち患者さんの情報に合わせて作成してください。
4.全体関連図を書く前に準備すること
患者情報を項目別に整理する
最初から大きな用紙に書き始めると、後から重要な情報を入れる場所がなくなりがちです。先に実習記録やメモ上で、次のように情報を分類します。
- 基本情報:年齢、性別、診断名、入院目的、治療方針
- 身体面:症状、バイタルサイン、検査値、既往歴、合併症
- 治療面:手術、薬剤、点滴、酸素療法、安静度、食事制限
- 生活面:食事、排泄、清潔、活動、睡眠、コミュニケーション
- 心理面:病状の受け止め、不安、希望、理解度、対処方法
- 社会面:家族、仕事、経済状況、役割、利用できる制度や支援
- 環境面:住居、段差、寝室、移動手段、通院方法
- 強み:意欲、知識、セルフケア能力、支援者、これまでの成功体験
ゴードンの機能的健康パターンなど、学校で指定されたアセスメント枠組みがある場合は、それに沿って整理して構いません。ただし、11項目すべてをそのまま図に写す必要はありません。患者さんの現在の問題や回復に関係する情報を選びます。
事実・解釈・問題を分ける
関連図では、観察した事実と自分の解釈が混ざりやすいため、書き分けが重要です。
- 事実:「歩行時SpO2 89%」「『息が苦しい』との発言」「妻と2人暮らし」
- 解釈:「労作により酸素需要が増え、呼吸困難が増強している」
- 看護問題:「呼吸困難に関連した活動耐容能の低下」
検査値やバイタルサインには日付や経時変化も添えます。単独の数値だけでなく、「入院時より改善」「離床後に悪化」などの変化がわかると、解釈の根拠が明確になります。
5.全体関連図の書き方:9つの手順
手順1 中心となる患者情報を置く
用紙の中央または上部に、年齢、性別、主疾患、入院・手術日、治療の段階などを簡潔に置きます。氏名や生年月日など、提出に不要な個人情報は記載しません。
手順2 病態関連図を配置する
疾患の原因・誘因から病態、症状、検査、治療までをつなげます。教科書にある一般的な病態だけで終わらせず、受け持ち患者さんに実際に認められる所見を区別して示しましょう。
手順3 治療の効果とリスクをつなげる
治療は名称だけを書かず、「何を目的に行われているか」「患者さんにどのような反応があるか」「どのような有害事象に注意するか」までつなげます。
例えば、利尿薬であれば、体液量の減少や呼吸状態の改善だけでなく、脱水、血圧低下、電解質異常などの観察点にもつながります。薬剤の作用・副作用は、添付文書や信頼できる医薬品情報で確認してください。
手順4 症状がADLに及ぼす影響を加える
看護につなげるには、症状が生活行動にどう影響しているかを考えます。
例えば「呼吸困難」から、「歩行困難」「トイレ移動に介助が必要」「清潔行動が十分に行えない」「夜間の不眠」へ広げます。この部分に患者さん固有の生活が表れます。
手順5 心理・価値観・発達段階を加える
患者さんの言葉を手がかりに、病気の受け止め、治療への理解、不安、希望、役割の変化などを配置します。
「迷惑をかけたくない」という発言は、遠慮して援助を求めにくいことにつながる場合もあれば、自立への意欲という強みになる場合もあります。一つの発言を決めつけず、追加の情報で確かめましょう。
手順6 家族・社会・住環境を加える
同居家族の有無だけではなく、実際に支援できる人、家族の理解や負担、仕事や家庭での役割、退院後の住環境を考えます。
例えば「自宅の寝室が2階」という情報は、階段昇降に必要な体力、退院時の活動耐容能、家屋調整の必要性と関連します。「娘が近隣に住み、週3回訪問できる」は、退院後の支援資源になります。
手順7 患者さんの強みを加える
関連図が問題やリスクだけで埋まると、患者さんが回復する力を見落としてしまいます。
「リハビリの必要性を理解している」「自分で血圧を記録していた」「家族に相談できる」「退院後に再開したい活動がある」といった情報は、セルフケア支援や目標設定に活用できる大切な強みです。
手順8 情報を解釈し、看護問題へつなげる
集めた手がかりを分析し、まとまりごとに看護問題へつなげます。NCSBNの臨床判断モデルも、臨床状況から手がかりを捉え、判断と意思決定を行う考え方を示しています。
参考: Clinical Judgment Measurement Model
看護問題には、その根拠となる患者情報から矢印が到達するようにします。反対に、どの情報ともつながらない看護問題は、根拠が不足している可能性があります。
手順9 優先順位をつけ、更新する
看護問題が複数ある場合は、生命への影響、安全性、緊急性、苦痛、患者さんの希望、回復への影響などを考えて優先順位をつけます。
全体関連図は、一度完成したら終わりではありません。新しい検査結果、患者さんの反応、援助後の変化を加え、不要になった仮説は修正します。実習中の関連図は、患者さんの状態とともに更新されるものです。
6.矢印を正しく引くコツ
矢印を引く前に、2つの項目を一文で読んでみてください。
- 「肺胞内の炎症によってガス交換が障害される」
- 「呼吸困難のため活動量が低下する」
- 「活動量の低下により筋力低下のリスクが高まる」
- 「独居であるため退院後の支援方法を検討する必要がある」
「~によって」「~のため」「~の結果」「~を促進する」などの言葉を入れて説明できれば、関係が明確です。説明できないときは、根拠を調べるか、無理に結ばないようにします。
原因から結果へ向かう一方向の矢印、互いに影響する双方向の矢印など、記号の意味は図の中で統一します。必要であれば用紙の隅に凡例を置きましょう。
7.肺炎患者さんを例にしたつなげ方
例えば、肺炎で入院した患者さんに、発熱、湿性咳嗽、痰、労作時のSpO2低下があり、「トイレまで歩くと苦しい」と話しているとします。
身体面の流れ
感染 → 肺胞の炎症・滲出液の増加 → ガス交換の障害 → SpO2低下・呼吸困難 → 歩行困難 → トイレ移動に介助が必要 → 活動量低下による筋力低下のリスク
心理・生活面の流れ
呼吸困難 → 「また苦しくなるのが怖い」 → 離床への不安 → 活動を避ける → 廃用が進む可能性
退院支援の流れ
自宅の寝室が2階 → 階段昇降が必要 → 退院時の活動耐容能を評価する必要性
強みからの流れ
「早く自分で歩けるようになりたい」 → 離床への意欲 → 症状に合わせた段階的な活動拡大に活用できる
このように、同じ「呼吸困難」でも、身体機能、心理、ADL、退院後の生活へ影響が広がります。そこへ患者さんの強みを加えると、問題を挙げるだけでなく、どのような看護が回復を支えられるか見えてきます。
8.見やすくするレイアウトの工夫
- 病態、治療、生活、心理、家族・社会背景などを近い位置にまとめる
- 重要な情報と看護問題を大きめの枠や統一した色で示す
- 1つの枠には1つの内容を、短い言葉で書く
- 線が交差しすぎる場合は、項目の位置を変える
- 事実と解釈で枠線や色を分ける場合は、凡例をつける
- 余白を残し、実習中に情報を追加できるようにする
用紙を隙間なく埋めることが目的ではありません。項目の数よりも、必要な情報が選ばれ、重要な関係が読み取れることを優先します。
9.よくある失敗と修正方法
教科書の病態だけで終わっている
修正方法:受け持ち患者さんに実際にある症状、検査値、発言、ADLへの影響を加えます。一般論と患者さんの事実を区別してください。
収集した情報をすべて書いている
修正方法:現在の状態、看護問題、回復、退院後の生活に関係する情報を選びます。関連が説明できない情報は、無理に図へ入れなくても構いません。
矢印に根拠がない
修正方法:矢印を一文で読み、因果関係なのか、影響関係なのか、単なる併存なのかを確認します。わからない関係は教科書や文献で調べます。
看護問題が突然現れる
修正方法:看護問題の根拠となる主観的情報・客観的情報・解釈から線をつなぎます。根拠が少ない場合は、追加で観察・質問すべき情報も明らかになります。
問題や弱みしか書いていない
修正方法:本人の意欲、セルフケア能力、支援者、理解力、利用できる制度など、看護に活用できる強みも加えます。
見本をそのまま写している
修正方法:見本は病態の構造やレイアウトを学ぶために使い、患者さん固有のデータで組み直します。同じ疾患でも、年齢、重症度、治療、生活背景、目標によって全体関連図は変わります。
10.提出前のチェックリスト
- 病態から症状・検査・治療までのつながりが説明できる
- 一般的な病態と、患者さんに実際にある情報を区別している
- 症状や治療がADLへ及ぼす影響を書いている
- 心理、価値観、家族、社会背景、住環境を必要に応じて含めている
- 患者さんの強みや希望を含めている
- 検査値・バイタルサインに日付や経時変化がある
- すべての矢印を言葉で説明できる
- 看護問題に根拠となる情報がつながっている
- 看護問題の優先順位を説明できる
- 個人を特定できる不要な情報を書いていない
11.全体関連図を作る意味
関連図は、きれいな図を完成させるためだけの課題ではありません。ばらばらに見える情報を関連づけ、重要な手がかりを見つけ、看護問題と優先順位を考えるための思考ツールです。
看護教育における概念マップを検討した系統的レビュー・メタ解析では、従来の教育方法と比べ、批判的思考の向上に役立つ可能性が示されています。ただし、研究方法の統一や質の高い研究がさらに必要ともされています(Yueら, 2017)。
大切なのは、完成した図の項目数ではなく、患者さんの情報から何を読み取り、なぜその看護を優先するのか説明できることです。
12.よくある質問
Q.全体関連図は病態関連図から書かないといけませんか?
A.必須ではありませんが、病態を先に整理すると、患者さんの症状・検査・治療のつながりを作りやすくなります。病態関連図を土台にし、患者さん固有の情報を追加する方法が初心者には取り組みやすいでしょう。
Q.ゴードンの11パターンを全部書く必要がありますか?
A.学校の指定がなければ、11パターンを見出しごと写す必要はありません。情報収集の漏れを確認する枠組みとして活用し、患者さんの看護に関係する情報を選んで図にします。学校や実習施設の基準がある場合は、そちらを優先してください。
Q.矢印が多すぎて見にくくなります
A.関連する情報を近くに配置し、同じ意味の項目をまとめます。重要度の低い線や、言葉で説明できない線は見直しましょう。必要なら下書きの段階で付箋やパソコンを使い、配置を動かしてから清書します。
Q.看護問題はどこに置けばよいですか?
A.根拠となる情報が集まる先に置くと、読み手が理解しやすくなります。用紙の右側や下部へまとめる方法が一般的ですが、学校の指定に従ってください。
Q.関連図は毎日書き直す必要がありますか?
A.一から書き直す必要はありません。状態の変化、新しい情報、援助への反応を追記し、解釈や看護問題に変更があれば修正します。日付を入れると変化を追いやすくなります。
まとめ
全体関連図は、病態関連図に情報を大量に追加する課題ではありません。病態・治療・症状と、患者さんのADL、心理、生活、家族・社会背景、強みを関連づけ、個別性のある看護問題と必要な支援を見いだすための図です。
迷ったときは、矢印を一つ選び、「なぜこの2つがつながるのか」を声に出して説明してみてください。説明できない線を見直し、患者さんの事実に戻るだけでも、関連図はぐっと読みやすくなります。
最初から完璧な一枚を作ろうとせず、病態関連図を土台に、患者さん固有の情報を少しずつ重ねていきましょう。患者さんの全体像が見えてくると、看護計画にも根拠と一貫性が生まれます。
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病態関連図の書き方!実習対策
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参考文献
- Yue M, Zhang M, Zhang C, Jin C. The effectiveness of concept mapping on development of critical thinking in nursing education: A systematic review and meta-analysis. Nurse Educ Today. 2017;52:87-94.
- University of Waterloo, Centre for Teaching Excellence:Concept Mapping Tools
- National Council of State Boards of Nursing:Clinical Judgment Measurement Model
※この記事は看護学生の学習を支援する一般的な解説です。関連図の形式、用語、評価基準は学校や実習施設によって異なります。担当教員・実習指導者の指示を優先してください。






コメント
とても役に立ちました
コメントありがとうございます。
お役に立てて光栄です!他の記事も参考にしていただけると幸いです。
お世話になっております
看護学生2年生です
関連図で悩んでいて詳しく解説していただけているので本当に助かっております
よろしければパソコンで関連図を描きたいのですがどのソフトを使われているか教えていただけないでしょうか
よろしくお願いします
コメントありがとうございます。
関連図の書き方の参考になり、うれしく思います。
私もパソコンで書きたいと思いましたが、あまり良いソフトがないんですよね。
そこで、私の場合は、ワードを使って作成しました。
図形の挿入から「正方形/長方形」を選び、コメントを追加、あとは図形の「線」にある「カギ線矢印コネクタ」を使ってつなげていくだけです。
もしもっと詳しく知りたい場合は、記事を書きますが、記事にしてみたほうがよろしいでしょうか?
ありがとうございます
ワードですね
記事にしていただけたらすごく助かります
こんばんは。お世話になっております。看護学生2年です。今、とっても関連図に悩まされています。辛すぎます。既往歴を主として書いてはいけないんですか?
コメントありがとうございます。関連図、大変ですよね。
お悩み察しします。既往歴を主にすることはあまりないと思います。
関連図は、患者さんという”人”が主になります。その人が過去にどんな既往歴や経験を抱えていて、現在どんな病気になっているのか、どんな環境にいるのか、そして今後どのようになっていく可能性があるのかというように、人を中心に、過去⇒現在⇒未来といった流れで書いていくと分かりやすくなりますよ。頑張ってくださいね!