リハビリ中にふらつき・血圧低下が出たらどうする?看護師が確認するポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、リハビリ中に患者さんが「ふらっとする」「目の前が暗くなる」と訴えたとき、血圧を測るだけでよいのか迷ったことはありませんか?
血圧が低いと、起立性低血圧を思い浮かべるかもしれません。しかし、ふらつきや血圧低下の背景には、心血管イベントや脳血流低下など、別の問題が隠れていることもあります。
今回は、リハビリ中にふらつきや血圧低下が出たとき、看護師・看護学生が最初に確認したいことと、運動を中止する判断の考え方について解説します。
結論:いったん中止し、血圧だけでなく全身状態を確認する
まず結論をいうと、リハビリ中にふらつきや血圧低下が出た場合は、無理に継続せず、座位または臥位で休んでもらいながら、次の項目を確認します。
- 血圧
- 脈拍
- 意識状態、会話への反応
- 呼吸状態、SpO2
- 顔色、冷汗、蒼白の有無
- 胸痛、息切れ、頭痛、嘔気などの症状
- ふらつきが出たときの姿勢や動作
- 普段の血圧からどの程度変化したか
特に、胸痛、強い息切れ、失神、意識や反応の低下、冷汗、蒼白、強い頭痛、嘔気・嘔吐などがある場合は、リハビリを継続せず、速やかに再評価・報告します。
血圧の数値だけで「大丈夫」「危険」と決めるのではなく、自覚症状とバイタルサインの変化を組み合わせて判断することが大切です。
判断の基本は、運動を中止して安全な姿勢を確保し、症状・バイタルサイン・普段からの変化を確認することです。症状が改善しても、原因を再評価してからリハビリ再開を考えます。
想定読了時間
約8分
この記事でわかること
- リハビリ中のふらつき・血圧低下で最初に確認すること
- 起立性低血圧の基準
- 血圧の数値だけで判断してはいけない理由
- リハビリを中止・再評価するときのポイント
- 看護師・看護学生が報告するときに整理したい情報
根拠:リハビリ中は「症状」と「バイタル」を一緒に見る
日本リハビリテーション医学会関連の「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」では、訓練中の安全管理において、血圧や脈拍、意識、呼吸などのバイタルサインだけでなく、胸痛、頭痛、嘔気、めまい、強い疲労感などの症状を確認する考え方が示されています。
また、同ガイドライン第2版の解説でも、訓練中の観察項目として、血圧、脈拍、意識、呼吸、胸痛、嘔気・嘔吐、めまいなどが挙げられています。
つまり、リハビリ中に血圧が下がったときは、次の2つを同時に確認します。
血圧が低いかどうか
+
患者さんに症状があるかどうか
血圧が普段より低くても症状がない場合と、数値の低下が大きくなくても強いふらつきや冷汗がある場合では、考え方が変わります。
詳しい解説
起立性低血圧とは?
起立性低血圧は、横になった状態や座った状態から立ち上がったときに、血圧が低下して症状が出る状態です。
調査結果に含まれる学術資料では、起立性低血圧の基準として、立位3分以内に次のいずれかを満たすことが示されています。
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下する
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下する
この定義については、J-STAGE掲載のリハビリテーション関連資料などで確認できます。
ざっくり言うと、立ち上がったあとに血圧が下がり、ふらつきや目の前が暗くなるなどの症状が出る場合は、起立性低血圧の可能性を考えます。
ただし、ふらつきがあれば、必ず起立性低血圧とは限りません。
不整脈などの心血管系の問題、脳血流の低下、脱水、薬剤の影響など、複数の原因が関係していることがあります。原因を一つに決めつけず、全身状態を確認することが重要です。
リハビリ中にふらつきが出たときの対応
1.まず運動を中止して安全な姿勢にする
ふらつきがある状態で歩行や立位練習を続けると、転倒につながる可能性があります。
まずは運動を中止し、患者さんを座位または臥位に戻します。姿勢を変えるときも、急に動かさず、安全を確保しながら対応します。
「もう少しだけ頑張れそうです」と患者さんが話していても、ふらつきがある場合は継続しないことが基本です。
2.血圧だけでなく、症状とバイタルを確認する
確認したい項目は、次のとおりです。
- 血圧
- 脈拍数や脈の乱れ
- 意識状態、会話の反応
- 呼吸状態、息苦しさ
- SpO2
- 顔色、蒼白、冷汗
- 胸痛
- 頭痛
- 嘔気・嘔吐
- 視野が狭くなる感じ
- 強い疲労感や脱力感
- 失神の有無
ふらつきだけでなく、胸痛や息切れ、冷汗、顔面蒼白、反応の低下などがある場合は、循環不全や心血管イベントなども考えます。
3.普段の血圧からの変化を見る
血圧は、単発の数値だけでは判断しにくいことがあります。
たとえば、普段の血圧が高めの患者さんと、普段から低めの患者さんでは、同じ血圧値でも意味が異なる場合があります。
そのため、次の内容を確認します。
- リハビリ前の血圧
- 症状が出たときの血圧
- 休息後の血圧
- 普段の血圧
- 血圧低下に伴う症状の有無
- 立位や歩行など、どの動作で症状が出たか
「血圧が何mmHgだったか」だけでなく、「いつもよりどの程度変化したか」を整理します。
4.必要に応じて臥位・座位・立位の変化を確認する
起立性低血圧を考える場合は、臥位、座位、立位で血圧がどのように変化したかを確認します。
ただし、すでに強いふらつきや意識状態の変化がある場合、無理に立位測定を行うのは危険です。安全を優先し、必要な測定や評価は、患者さんの状態と施設の手順に沿って行います。
血圧の中止基準はどう考える?
リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版の関連資料では、リハビリ中止の参考値として、収縮期血圧が180~200mmHgを超える場合、または70~90mmHg未満の場合が示されています。
ただし、これらは一律に適用する絶対的な基準ではありません。
同資料では、この血圧基準の推奨は弱く、エビデンスの確実性も高くないとされています。
収縮期血圧が何mmHgだから中止
その数値でなければ継続
と単純に判断するのは適切ではありません。
血圧の数値に加えて、めまい、ふらつき、嘔気、胸痛、息切れ、頭痛、強い疲労感などの症状を確認し、総合的に判断します。
また、外傷性頚髄損傷の急性期など、特定の状況では収縮期血圧30mmHg以上の低下を中止の目安とする資料もあります。しかし、これは特定の文脈での基準であり、すべての患者さんやリハビリ場面にそのまま当てはめることはできません。J-STAGEの資料でも、適用する場面には注意が必要です。
実践ポイント
看護師・看護学生が報告するときの整理
医師やリハビリスタッフへ報告するときは、単に「血圧が下がりました」と伝えるだけではなく、次のように整理すると状況が伝わりやすくなります。
報告に含めたい内容
- どの動作中に症状が出たか
- どのような症状だったか
- 症状が出た時刻
- 症状が出たときの血圧・脈拍・SpO2
- 意識や会話の反応
- 顔色や冷汗の有無
- 胸痛、息切れ、頭痛、嘔気の有無
- 休息後に症状が改善したか
- 休息後のバイタル
- リハビリ前の血圧
- 服用中の薬剤
- 既往歴や普段の血圧
降圧薬、利尿薬、鎮静薬などの薬剤が、ふらつきの背景に関係する可能性もあります。薬剤だけが原因と決めつけることはできませんが、内服内容や服用時刻を確認しておくと、評価の材料になります。
再開するかどうかは原因を確認してから考える
休んで症状が改善したとしても、すぐにリハビリを再開してよいとは限りません。
症状がなぜ起こったのか、血圧や脈拍がどう変化したのか、再び立位にしても問題がないのかなどを確認します。
再開するかどうかは、看護師だけで判断せず、必要に応じて医師、PT、OTなどと共有します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、歩行練習を終えた患者さんが、ベッドの横で「少し目の前が暗くなった」と話したことがありました。
そのとき、私はまず血圧を測りました。数値は、リハビリ前より少し下がっていましたが、すぐに危険だと判断するほどの値には見えませんでした。
最初は、「少し休めば大丈夫かもしれない」と考えました。
しかし、患者さんの顔色を見ると、先ほどよりも少し白く見えました。額には冷汗もあり、会話はできていましたが、返事がいつもよりゆっくりでした。
私はそこで、血圧の数字だけを見ていたことに気づきました。
先輩看護師に相談すると、「胸は痛くない?息苦しさはない?」と患者さんへ確認していました。私は血圧の再測定だけを考えていましたが、先輩は症状を一つずつ聞きながら、脈拍や呼吸状態も確認していました。
その後、患者さんを安全な姿勢で休ませ、リハビリスタッフとも状況を共有しました。休息によって症状は落ち着きましたが、その日のリハビリは再開せず、経過を報告することになりました。
当時の私は、「血圧がそれほど低くないなら、重い状態ではないかもしれない」と考えかけていました。
この経験があってから、私はリハビリ中のふらつきを見たとき、血圧の数値だけで安心しないようになりました。患者さんの顔色や返事の速さ、訴えの変化にも目を向けるようになったのです。
FAQ
Q1.リハビリ中にふらついたら、まず血圧を測ればよいですか?
血圧測定だけでは不十分です。まず運動を中止して座位または臥位で安全を確保し、血圧、脈拍、意識、呼吸、SpO2、顔色、冷汗、胸痛や息切れなどを確認します。
Q2.ふらつきがあれば、起立性低血圧ですか?
必ずしもそうとは限りません。不整脈などの心血管系の問題、脳血流の低下、脱水、薬剤の影響など、複数の原因が関係することがあります。原因を一つに決めつけず、全身状態を確認します。
Q3.起立性低血圧の基準は何ですか?
立位3分以内に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下することが基準です。ただし、測定時は転倒リスクに注意し、強いふらつきや意識状態の変化がある場合は無理に立位測定を行いません。
Q4.血圧が中止基準に該当しなければ、リハビリを続けてもよいですか?
血圧の数値だけで継続を判断することはできません。めまい、ふらつき、嘔気、胸痛、息切れ、頭痛、強い疲労感などの症状や、普段の血圧からの変化を合わせて判断します。
Q5.休んで症状が改善したら、リハビリを再開できますか?
症状が改善しても、すぐに再開してよいとは限りません。症状の原因、血圧や脈拍の変化、再び立位にしても問題がないかなどを確認し、必要に応じて医師、PT、OTなどと共有して判断します。
まとめ
- リハビリ中にふらつきや血圧低下が出たら、まず運動を中止する
- 座位または臥位で安全を確保し、転倒を予防する
- 血圧だけでなく、脈拍、意識、呼吸、SpO2、顔色、冷汗を確認する
- 胸痛、息切れ、強い頭痛、嘔気、失神、反応低下などがあれば注意する
- 起立性低血圧は、立位3分以内に収縮期血圧20mmHg以上、または拡張期血圧10mmHg以上低下することが基準となる
- リハビリ中止の血圧値は参考であり、症状や普段からの変化と合わせて判断する
- 症状が改善しても、原因を再評価してから再開を考える
ざっくり言うと、リハビリ中のふらつきは、「血圧が低いか」だけでなく、「患者さんの全身状態がどう変化したか」を見ることが重要です。
参考文献
- 日本リハビリテーション医学会関連資料『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン』PDF
- 『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版』関連ページ(診断と治療社)訓練中の確認項目
- 『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版』関連ページ(診断と治療社)訓練中止の目安
- J-STAGE掲載資料『理学療法』、起立性低血圧・リハビリテーション関連資料本文
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