急変時にまず見るバイタルサインは?看護師・看護学生が確認する順番と観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんが急に「苦しい」「気分が悪い」と訴えたとき、どのバイタルサインから確認しますか?
血圧を測るべきか、SpO₂を見るべきか、意識状態を確認するべきか……。急変時は、普段のように落ち着いて順番を考えることが難しいですよね。
今回は、急変時にまず優先して見るバイタルサインと、看護師・看護学生が観察するときの考え方について解説します。
結論:急変時は「重症感」を見たあと、呼吸と循環を最優先で確認する
急変時は、まず患者さんの見た目から「明らかに重症そうか」を判断します。
そのうえで、次の順番で確認するのが基本です。
- 重症感
- 呼吸状態
- 循環状態
- 意識状態
- 症状や経過、検査データなど
呼吸では、次の項目を確認します。
- 呼吸回数
- SpO₂
- 努力呼吸の有無
- 呼吸の速さや深さ
- 会話ができるか
- チアノーゼの有無
循環では、次の項目を確認します。
- 血圧
- 脈拍数と脈の状態
- 皮膚冷感
- 冷汗
- 顔色や皮膚の蒼白
- 末梢循環の状態
つまり、急変時は血圧だけ、SpO₂だけを見るのではなく、まず「呼吸と循環が保たれているか」を確認することが重要です。
呼吸や循環に異常があれば、ほかの情報収集を続ける前に、その異常への対応と応援要請を優先します。実際の対応は、施設の急変時マニュアルや医師・救急チームへの連絡基準に従います。
この記事の読了時間
読了時間の目安:約12分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 急変時に観察する基本的な順番
- 呼吸状態で確認したい項目
- 循環状態で確認したい項目
- SpO₂や呼吸回数の危険域
- 数値だけで判断してはいけない理由
- 看護師・看護学生が急変時に意識したいポイント
根拠:急変時は生理学的な異常を最優先で確認する
消防庁関連資料の「緊急度判定プロトコル」では、緊急度を判断するときの観察順として、次のような考え方が示されています。
重症感
↓
バイタルサイン
↓
非生理学的な情報
↓
症候に特異的な所見
「重症感」とは、患者さんを見たときに感じる、明らかな危険サインのことです。
たとえば、
- 顔色が悪い
- ぐったりしている
- 会話が成り立たない
- 苦しそうに呼吸している
- 冷汗が出ている
- いつもと明らかに様子が違う
といった状態です。
そのあとに、呼吸や循環などのバイタルサインを確認します。
厚生労働省の資料でも、重症度・緊急度の判断では、呼吸や循環、意識などの生理学的評価が上位に置かれています。
ざっくり言うと、
原因を詳しく調べる前に、まず生命を維持するための機能が保たれているかを確認する
ということです。
たとえば、患者さんに強い腹痛があったとしても、血圧が低く、意識がぼんやりしている場合には、腹痛の原因を調べることより、まず循環不全への対応を優先して考えます。
急変時にまず確認する「重症感」とは?
急変時は、測定機器を準備する前に、患者さんの様子を見ます。
「数値を測らなければ判断できない」と考えてしまいがちですが、明らかに苦しそうな患者さんを前にした場合、見た目から得られる情報も重要です。
確認するのは、たとえば次のような項目です。
- 意識が普段と変わっていないか
- 呼びかけに反応するか
- 会話ができるか
- 呼吸が苦しそうではないか
- 顔色が悪くないか
- ぐったりしていないか
- 冷汗がないか
患者さんが「大丈夫」と話していても、会話が途切れる、息が続かない、顔面が蒼白であるといった場合は、見た目の情報を重視します。
反対に、数値が大きく変化していなくても、「いつもと違う」という印象があるときは、その違和感を無視しないことが大切です。
呼吸状態では何を見る?
急変時の呼吸観察では、SpO₂の数値だけを確認しないようにします。
呼吸回数
呼吸回数は、呼吸状態を確認する基本的な指標です。
消防庁関連の救急現場プロトコルでは、呼吸回数について、
- 10回/分未満
- 30回/分以上
が危険域として示されています。
ただし、呼吸回数は患者さんの状態や測定状況によって変化します。
そのため、回数だけで判断せず、次の項目も一緒に確認します。
- 呼吸が浅くないか
- 呼吸に努力を要していないか
- 肩で息をしていないか
- 陥没呼吸がないか
- 呼吸音に変化がないか
- 会話が続けられるか
SpO₂
SpO₂は、血液中の酸素化の状態を知るための指標です。
同プロトコルでは、
- SpO₂ 90%未満
- SpO₂ 90%以上92%未満
が重症度判断に関係する異常所見として扱われています。
ただし、SpO₂の値だけで患者さんの重症度を決めることはできません。
たとえば、SpO₂が低下しているときには、
- 呼吸回数はどうか
- 呼吸困難があるか
- 会話できるか
- チアノーゼがあるか
- 測定条件に問題がないか
などを合わせて確認します。
また、患者さんによって普段のSpO₂が異なる場合があります。基礎疾患などによって目標値が設定されていることもあるため、記録や指示内容も確認します。
呼吸の「質」
呼吸回数が正常範囲に見えても、呼吸の質に異常があることがあります。
特に注意したいのは、
- 息苦しそう
- 呼吸が浅い
- 呼吸音が変化している
- 会話が困難
- チアノーゼがある
- SpO₂が低下している
- 呼吸に大きな努力を要している
といった状態です。
つまり、呼吸では、
何回呼吸しているかだけでなく、どのように呼吸しているかを見る
ことが重要です。
循環状態では何を見る?
呼吸状態を確認したら、次に循環状態を確認します。
血圧
血圧が低下している場合、循環血液量の低下や心拍出量の低下などが考えられます。
ただし、血圧の値だけを見て「大丈夫」「危険」と判断することはできません。
次のような症状があるかを確認します。
- ふらつき
- 意識がぼんやりしている
- 反応が鈍い
- 冷汗
- 皮膚冷感
- 顔色不良
- 強い倦怠感
特に、血圧低下と意識障害や反応低下が組み合わさっている場合は、循環が脳に十分届いていない可能性を考え、緊急度を高く判断します。
看護教育資料でも、血圧低下に脳血流低下を示す徴候が伴う場合は、画像検査などの別の課題より、ショックへの対応を優先する考え方が示されています。
脈拍
脈拍では、回数だけでなく、次の項目も観察します。
- 脈が速いか、遅いか
- リズムが整っているか
- 脈が弱くないか
- 左右差がないか
- 触れにくくなっていないか
脈拍が速くても、患者さんが落ち着いていて普段から頻脈の場合と、冷汗や血圧低下を伴っている場合では、緊急度が異なります。
反対に、脈拍数がそれほど多くなくても、脈が弱い、皮膚が冷たい、意識が変化しているといった場合には注意が必要です。
皮膚の状態
循環状態を考えるときは、皮膚も観察します。
- 冷たくないか
- 冷汗がないか
- 蒼白ではないか
- チアノーゼがないか
- 末梢の血流が悪くないか
血圧計やモニターの数値を確認するだけではなく、患者さんの手足に触れ、顔色を見ることも観察の一部です。
意識状態も急変時の重要な観察項目
急変時には、意識状態も早い段階で確認します。
- 呼びかけに反応するか
- いつも通り会話できるか
- 返答がずれていないか
- 眠気が強くないか
- 急に不穏になっていないか
- 意識レベルが低下していないか
意識の変化は、呼吸や循環の異常に伴って起こることがあります。
また、意識が低下している患者さんでは、気道を守る力が弱くなる可能性もあります。そのため、意識状態は呼吸・循環と切り離して考えるのではなく、ABCD、つまり、
- A:気道
- B:呼吸
- C:循環
- D:意識
の流れで整理すると、状況を把握しやすくなります。
急変時は「数値」より「変化の速さ」も見る
バイタルサインは、基準値に入っているかどうかだけでなく、患者さんの普段の値と比較します。
たとえば、普段は血圧が高めの患者さんが、急に血圧低下を起こしている場合です。測定値が一見すると極端な低値でなくても、本人にとっては大きな変化かもしれません。
確認したいのは、
- いつから変化したのか
- どの程度変化したのか
- 変化が続いているのか
- 症状を伴っているのか
- 直前に何があったのか
です。
研究報告では、一般病棟看護師が急変を予測するとき、バイタルサインや検査データだけでなく、「何かおかしい」という臨床的な違和感も判断材料にしていることが示されています。
つまり、
1回の測定値ではなく、普段との違いと経過を見る
ことが、急変の早期発見につながります。
急変時の観察を整理する方法
急変時は、次のように考えると整理しやすくなります。
1.患者さんを見て重症感を判断する
まず、患者さんの顔色、呼吸、意識、姿勢、反応を見ます。
「いつもと違う」「明らかに苦しそう」という印象があれば、数値を待たずに応援を求めます。
2.呼吸を確認する
- 呼吸回数
- SpO₂
- 呼吸困難
- 努力呼吸
- 会話の状態
- チアノーゼ
を確認します。
呼吸回数が10回/分未満または30回/分以上、SpO₂が90%未満などの場合は、重症度を判断するうえで重要な異常所見になります。
3.循環を確認する
- 血圧
- 脈拍
- 冷汗
- 皮膚冷感
- 顔色
- 意識や反応
を確認します。
4.意識状態を確認する
呼びかけへの反応や会話の内容を確認し、普段との違いを記録します。
5.原因を考える
呼吸・循環・意識の評価後に、症状や経過を確認します。
- 何を訴えているのか
- いつから始まったのか
- 直前に何があったのか
- 出血や外傷はないか
- 疼痛はあるか
- 検査データに変化はないか
救急現場のプロトコルでは、外傷がない場合は生理学的評価のあとに症状などを評価します。外傷の場合は、生理学的評価に加えて、解剖学的な損傷や受傷機転も確認します。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
「血圧を測ってから考える」にしない
急変時に、最初から血圧測定だけを始めると、呼吸状態や意識状態の変化を見落とすことがあります。
まずは患者さんを見て、呼吸や反応を確認します。
血圧測定が必要な場面でも、測定中に呼吸状態や顔色を観察し続けることが大切です。
数値を見たら「なぜその値なのか」を考える
たとえば、SpO₂が低下していた場合は、
SpO₂が低い
で終わらせません。
- 呼吸回数は増えているか
- 呼吸困難はあるか
- 会話できるか
- チアノーゼはあるか
- いつから低下したか
まで考えます。
血圧が低下している場合も、
- 脈拍はどうか
- 冷汗はあるか
- 皮膚は冷たいか
- 意識は清明か
- 直前の値からどれくらい変わったか
を確認します。
バイタルサインを基準値と比較する
一般病棟看護師を対象とした調査では、急変予測時にバイタルサインや検査データを基準値と比較する行動を「必ず実施する」と回答した看護師は65.8%でした。
これは、バイタルサインを測定するだけでなく、
- その患者さんの普段の値
- 前回の値
- 入院時の値
- 医師の指示に記載された目標値
と比較しているということです。
異常があれば、次の観察へ進む前に対応する
急変時は、すべての項目を完璧に確認してから報告する必要はありません。
呼吸状態や循環状態に明らかな異常があれば、その時点で応援要請や報告を行います。
「情報がそろっていないから報告できない」と考えず、
- 何が起こったのか
- いま何が異常なのか
- いつから変化したのか
- 現在のバイタルサイン
- どのような症状があるのか
を、分かる範囲で伝えます。
観察の順番にこだわりすぎない
「呼吸を見てから循環」「循環を見てから意識」と覚えることは役立ちます。
ただし、実際の患者さんは教科書どおりに変化するとは限りません。
意識が急に低下している、呼吸が止まりそう、明らかな大量出血があるなどの場合は、目の前の最も危険な異常を優先します。
順番は、患者さんの状態を安全に評価するための枠組みです。順番を守ること自体が目的にならないようにします。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、夜勤中に患者さんからナースコールがありました。
訪室すると、患者さんはベッド上で上体を起こしていました。本人は「少し気分が悪い」と話していましたが、普段より顔色が悪く、返答もゆっくりでした。
最初、私は血圧が下がっているのではないかと考えました。すぐに血圧計を準備しようとしたのですが、そのとき、患者さんの呼吸がいつもより速いことに気づきました。
「息苦しさはありますか」と聞くと、「少し苦しいかもしれない」と返ってきました。
私は、先に血圧を測るべきか、SpO₂を確認するべきか、少し迷いました。そこで、患者さんの呼吸の様子と反応を見ながら、応援を呼び、呼吸状態と循環状態を同時に確認することにしました。
測定した値だけを見ると、極端な異常とまでは言えない項目もありました。しかし、顔色、呼吸の速さ、返答の遅さを合わせると、明らかに普段とは違いました。
先輩看護師から「数値だけではなく、患者さんの見た目と変化を一緒に伝えて」と言われ、私は観察した内容を整理して報告しました。その後、医師にも状態が共有され、必要な対応につながりました。
そのときの私は、急変時には「まず血圧を測る」という意識が強かったのだと思います。
この経験があってから、患者さんの前に立ったときは、測定機器を使う前に一度全体を見るようになりました。今振り返ると、急変時に最初に必要なのは、完璧な情報ではなく、目の前の患者さんに何が起きているのかをつかむことだったのだと感じています。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 急変時は、まず患者さんの重症感を確認する
- バイタルサインでは、呼吸と循環を最優先に見る
- 呼吸は、呼吸回数・SpO₂・呼吸の質をセットで観察する
- 循環は、血圧・脈拍・皮膚冷感・冷汗・顔色を合わせて見る
- 意識状態の変化も重要な異常所見である
- 呼吸回数は10回/分未満または30回/分以上、SpO₂は90%未満などが重症度判断に関係する
- 数値だけでなく、普段の値や変化の速さ、患者さんの見た目を確認する
- 異常があれば、すべての情報がそろうのを待たずに対応や報告につなげる
急変時に大切なのは、バイタルサインを測定することだけではありません。
「この患者さんは、呼吸と循環を保てているのか」
「いつもと比べて、何が変わっているのか」
を短時間で考えることです。
FAQ
Q1.急変時は血圧とSpO₂のどちらを先に測りますか?
A.どちらか一方に固定するのではなく、まず患者さんの重症感と呼吸状態を確認します。
明らかな呼吸困難や会話困難がある場合は、呼吸の観察とSpO₂確認を優先します。顔色不良、冷汗、意識低下、脈が弱いなど循環不全が疑われる場合は、循環状態の確認も同時に進めます。
Q2.SpO₂が90%以上なら安心してよいですか?
A.SpO₂だけで安心とは判断できません。
SpO₂が90%以上でも、呼吸困難、努力呼吸、意識変化、チアノーゼなどがあれば注意が必要です。また、患者さんの普段の値や、低下してきた経過も確認します。
Q3.呼吸回数が正常なら、呼吸状態に問題はありませんか?
A.呼吸回数が正常でも、呼吸状態に異常があることはあります。
呼吸の深さ、努力呼吸、呼吸音、会話のしやすさ、SpO₂、チアノーゼなどを合わせて確認します。
Q4.急変時に原因検索を先にしてはいけませんか?
A.原因検索より、まず呼吸・循環・意識などの生理学的評価を優先します。
原因を考えることは重要ですが、生命に直結する異常がある場合は、その異常への対応を先に考えます。外傷の場合は、受傷部位や受傷機転の評価も加えて判断します。
Q5.「何かおかしい」という感覚だけで報告してもよいですか?
A.はい。違和感だけで終わらせず、観察した具体的な変化を添えて報告します。
たとえば、「顔色が悪い」「返答が遅い」「呼吸が普段より速い」「冷汗がある」など、見たこと・聞いたこと・測定した値を整理して伝えます。
参考資料
- 消防庁:緊急度判定プロトコルVer.1-救急現場
- 消防庁:救急現場
- 厚生労働省:重症度と緊急度
- 厚生労働省関連資料:第一章 呼吸/脈拍/皮膚/血圧/瞳孔
- J-STAGE:一般病棟に勤務する看護師の急変予測の実態と…
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
気づいて動ける急変対応
著者:木澤晃代
出版社:照林社
急変時の『気づき』から判断・対応まで事例で学べるため、記事で述べた重症感の把握や呼吸・循環の優先確認を深めるのに最適です。
写真でわかる急変時の看護アドバンス 新訂版
著者:松月みどり
出版社:インターメディカ
写真で急変時の観察や現場対応を視覚的に学べ、バイタルと観察の順番を実践で身につけるのに役立ちます。
教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
呼吸・SpO₂や酸素療法など呼吸評価の基礎をわかりやすく解説しており、記事の呼吸観察項目を深めるのに適しています。
※本ページにはPRが含まれています。
実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢
そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。
\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /
LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊



