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看護師・看護学生向け 痛みを訴えない患者の疼痛評価

フィジカルアセスメント
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痛みを訴えない患者さんの疼痛評価|看護師・看護学生が観察したいポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、患者さんが痛みを訴えていないとき、「痛みはない」と判断してよいのか迷ったことはありませんか?

意識がぼんやりしている患者さんや、認知機能の低下がある患者さん、言葉で伝えることが難しい患者さんでは、痛みがあっても自分から訴えないことがあります。

今回は、痛みを訴えない患者さんの疼痛をどのように見つけるのか、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントを中心に解説します。

  1. 結論:訴えがなくても、行動・表情・体動・生活の変化から痛みを評価する
  2. この記事でわかること
  3. 根拠:痛みは「強さ」だけでなく、多面的に評価する
  4. 自己申告できるかを最初に確認する
    1. NRS:0〜10の数字で答えてもらう
    2. VRS:言葉で答えてもらう
    3. VAS:線の位置で痛みを示してもらう
  5. 自己申告が難しいときは、観察式の評価を使う
    1. PAINAD
    2. Abbeyペインスケール
  6. 痛みを疑う観察ポイント
    1. 1.表情の変化を見る
    2. 2.体動や姿勢の変化を見る
    3. 3.発声や声の変化を見る
    4. 4.ケアの前後で変化を比べる
    5. 5.睡眠・食事・ADLへの影響を見る
    6. 6.生理学的変化は補助的に見る
  7. 痛みの評価は「同じ尺度」で続けて見る
  8. 鎮痛薬の効果は、痛みの変化と副作用を一緒に見る
  9. 看護師・看護学生が実践するときのポイント
    1. 観察するときは「普段との違い」を記録する
    2. 痛みの部位やきっかけを探す
    3. 「痛くない」という言葉だけで終わらせない
  10. 筆者の体験談
  11. まとめ:痛みを訴えない患者さんほど、普段との変化を見る
  12. FAQ
    1. Q1.患者さんが「痛くない」と言ったら、疼痛評価は終了してよいですか?
    2. Q2.痛みを訴えられない患者さんには、必ず観察式スケールを使いますか?
    3. Q3.脈拍が速ければ、痛みがあると考えてよいですか?
    4. Q4.鎮痛薬を使った後、何を見ればよいですか?
  13. 参考文献
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結論:訴えがなくても、行動・表情・体動・生活の変化から痛みを評価する

痛みを訴えない患者さんでは、まず「自己申告できる状態か」を確認します。

本人が答えられる場合は、NRSやVRSなどを使って、できるだけ患者さん自身に痛みを表現してもらいます。

一方で、自己申告が難しい場合は、次のような変化を組み合わせて評価します。

  • 顔をしかめる、眉間にしわを寄せる
  • うめき声や否定的な発声が増える
  • 体をこわばらせる、動かなくなる
  • 痛い部位をかばう
  • 体位変換や清拭を嫌がる
  • 眠れない、食べない
  • いつもより落ち着かない
  • ケアの前後で表情や動きが変化する
  • 脈拍や呼吸などの生理学的変化がみられる

ざっくり言うと、

「痛いですか?」と聞いて「痛くない」と答えたかどうかだけで、痛みの有無を判断しない

ということです。

痛みの評価では、痛みの強さだけでなく、部位、性状、経過、生活への影響、治療後の変化などを組み合わせて見ていきます。

想定読了時間:約15分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 痛みを訴えない患者さんにも疼痛評価が必要な理由
  • 自己申告できる患者さんと、難しい患者さんの評価方法
  • 表情・体動・発声・生活変化から見る観察ポイント
  • NRS、VRS、FRS、PAINADなどの使い分け
  • 看護記録や申し送りで共有したい内容

根拠:痛みは「強さ」だけでなく、多面的に評価する

痛みというと、「0から10でどれくらいですか?」と聞く場面を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、痛みの強さを確認することは大切です。

しかし、痛みの評価は強さだけではありません。

日本癌治療学会のがん診療ガイドラインでは、痛みの評価項目として、次のような内容が示されています。

  • 痛みの部位
  • 痛みの強さ
  • 痛みが始まった時期や経過
  • 痛みの性状
  • 痛みが悪化する要因、軽くなる要因
  • 日常生活への影響
  • 治療への反応
  • レスキュー薬の効果や副作用

また、日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020」でも、痛みの部位・経過・性状・増悪因子・軽快因子・治療反応などを確認することが示されています。

つまり、痛みは一つの質問だけで判断するものではありません。

患者さんが痛みを言葉にできない場合は、行動や表情、体の動き、生活への影響などから、痛みの可能性を考えていきます。

自己申告できるかを最初に確認する

痛みの評価で最初に確認したいのは、患者さんが自分の痛みを言葉や数字で表現できるかどうかです。

意識が清明で、質問の意味を理解できる場合は、できるだけ本人に聞きます。

NRS:0〜10の数字で答えてもらう

NRSは、痛みを0〜10の11段階で表す方法です。

  • 0:痛みなし
  • 10:想像できる最大の痛み

「今の痛みは0から10でいうと、どのくらいですか?」と尋ねます。

NRSは数字で答えられる患者さんに向いていますが、数字の意味を理解することが難しい場合には使いにくいことがあります。

VRS:言葉で答えてもらう

VRSは、痛みを言葉で表現してもらう方法です。

たとえば、

  • 痛くない
  • 少し痛む
  • かなり痛む
  • 耐えられないほど痛む

といった段階で確認します。

数字での表現が難しい患者さんでも、言葉の選択なら答えられる場合があります。

VAS:線の位置で痛みを示してもらう

VASは、10cmの線を使って痛みの程度を示してもらう方法です。

左端を「痛みなし」、右端を「想像できる最大の痛み」として、現在の痛みに近い位置を指してもらいます。

これらの評価方法については、日本ペインクリニック学会の痛みの評価に関する資料で確認できます。

ただし、どの尺度を使うかは、患者さんの理解力や視力、意識状態、施設の運用などに合わせて選びます。

自己申告が難しいときは、観察式の評価を使う

自己申告が難しい患者さんでは、観察式の疼痛評価ツールが使われることがあります。

調査結果では、次のようなツールが紹介されています。

PAINAD

PAINADは、次の5項目を観察する評価スケールです。

  • 呼吸
  • 否定的な発声
  • 表情
  • ボディランゲージ
  • 慰めやすさ

それぞれを0〜2点で評価します。

Abbeyペインスケール

Abbeyペインスケールでは、次のような項目を確認します。

  • 発声
  • 表情
  • ボディランゲージ
  • 行動の変化
  • 生理学的変化
  • 身体的変化

ただし、今回確認できた資料では、PAINADやAbbeyペインスケールの公式原典や、診断精度を示す一次研究までは確認できていません。

そのため、これらは「観察式評価の例」として扱い、実際に使用する場合は、勤務施設の手順や採用している評価方法を確認する必要があります。

痛みを疑う観察ポイント

1.表情の変化を見る

患者さんの表情は、痛みを考える手がかりになります。

  • 顔をしかめる
  • 眉間にしわを寄せる
  • 目を閉じている
  • 表情がこわばっている
  • いつもより無表情になっている

ただし、患者さんによって普段の表情は異なります。

大切なのは、他の患者さんと比べることではなく、その患者さんの普段と比べて変化があるかを見ることです。

2.体動や姿勢の変化を見る

痛みがあると、体を動かさなくなったり、痛い場所をかばう姿勢をとったりすることがあります。

たとえば、

  • 寝返りをしなくなった
  • 体位変換を嫌がる
  • ある部位を押さえている
  • 動作の途中で止まる
  • ベッド上で体をこわばらせる
  • 移動や排泄動作を避ける

といった変化です。

「動かない」のが、安静にしているだけなのか、痛くて動けないのかを考える必要があります。

3.発声や声の変化を見る

言葉で「痛い」と言わなくても、声や発声に変化が出ることがあります。

  • うめき声
  • ため息
  • 叫び声
  • いつもと違う声
  • ケア中の拒否的な発言

ただし、発声の変化だけで痛みと断定することはできません。

不安やせん妄、環境の変化など、ほかの要因も考えながら観察します。

4.ケアの前後で変化を比べる

体位変換、清拭、吸引、移動、リハビリなどの前後で、患者さんの様子を比べます。

ケアの前は落ち着いていたのに、体位変換後に顔をしかめる、体をこわばらせる、拒否が強くなるという場合は、ケアに伴う痛みがないか考えます。

反対に、体位を整えた後に表情がゆるみ、動きが戻る場合もあります。

ケア前後の変化は、痛みを推定する材料になります。

5.睡眠・食事・ADLへの影響を見る

痛みは、日常生活にも影響します。

  • 眠れていない
  • 食事量が減っている
  • 会話が減っている
  • 移動しなくなった
  • 排泄動作を避けている
  • 清潔ケアを拒否する

このような変化がある場合は、「なぜできなくなったのか」を考えます。

痛みが原因とは限りませんが、痛みの可能性を確認するきっかけになります。

6.生理学的変化は補助的に見る

脈拍や呼吸などの生理学的変化が、痛みの手がかりになることもあります。

ただし、生理学的変化は痛みだけで起こるとは限りません。

発熱、不安、呼吸状態の変化、薬剤の影響など、さまざまな要因で変化します。

そのため、脈拍や呼吸だけで痛みを判断するのではなく、表情・体動・発声・生活への影響などと組み合わせて考えます。

痛みの評価は「同じ尺度」で続けて見る

痛みは、人によって感じ方が異なります。

そのため、患者さん同士のスコアを単純に比較するよりも、同じ患者さんの時間経過による変化を見ることが重要です。

たとえば、次のように記録します。

  • 体位変換前後の表情や体動
  • 鎮痛薬使用前後の様子
  • 食事や睡眠への影響
  • 夜間の発声や落ち着き
  • いつもと違う行動の有無

痛みの評価に関する医療者向け解説でも、患者さんごとの経時的な変化を見ることが重要とされています。

一度の観察で「痛みがある・ない」と決めるのではなく、同じ視点で繰り返し確認します。

鎮痛薬の効果は、痛みの変化と副作用を一緒に見る

鎮痛薬を使用した後は、痛みが軽くなったかを確認します。

自己申告できる患者さんなら、痛みの強さや生活への影響を再度聞きます。

自己申告が難しい患者さんでは、次のような変化を見ます。

  • 表情が穏やかになったか
  • 体のこわばりが減ったか
  • 体位変換への反応が変わったか
  • 睡眠や食事が改善したか
  • 発声や落ち着きのなさが変化したか

同時に、鎮痛薬による副作用にも注意します。

調査結果では、眠気、便秘、呼吸抑制、せん妄などの有害事象も観察する必要があるとされています。

「痛みが軽くなったように見える」だけでなく、患者さんの全身状態を合わせて確認します。

看護師・看護学生が実践するときのポイント

観察するときは「普段との違い」を記録する

「落ち着きがない」「表情が険しい」だけでは、ほかの看護師に伝わりにくいことがあります。

次のように、できるだけ具体的に記録します。

  • 体位変換時に眉間にしわを寄せ、右腰部を押さえた
  • 清拭中に声を出し、体をこわばらせた
  • ケア終了後、表情がゆるみ、発声が減った
  • 昨日より食事摂取量が減り、ベッド上で動かなくなった

観察した事実と、自分の判断を分けて記録すると、情報共有しやすくなります。

痛みの部位やきっかけを探す

自己申告が難しくても、次のような確認ができる場合があります。

  • 「ここですか?」と部位を示して反応を見る
  • 体位変換で反応が変わるか確認する
  • 触れる前後で表情や体動を比べる
  • 動作のどの場面で拒否が出るかを見る

ただし、痛みが疑われる部位に無理に触れたり、ケアを続けたりしないようにします。

判断に迷う場合は、先輩看護師や担当看護師、医師などに相談します。

「痛くない」という言葉だけで終わらせない

患者さんが「痛くない」と答えていても、次のような変化があれば、評価を続けます。

  • いつもより動かない
  • 触れられるのを嫌がる
  • ケアで表情が変わる
  • 睡眠や食事に変化がある
  • 鎮痛薬使用後に明らかな変化がある

もちろん、観察だけで痛みを断定することはできません。

しかし、訴えがないからといって、痛みの可能性を最初から外してしまうのも適切ではありません。

筆者の体験談

私が看護師をしていた頃、言葉でのやり取りが難しい患者さんを受け持ったことがありました。

その患者さんは、普段からあまり話をせず、ケアにも大きな拒否はありませんでした。

ある日、体位変換をしようとすると、いつもより体に力が入っていました。顔も少しこわばっていて、手でベッド柵を強く握っています。

最初は、「今日は不安が強いのかな」と考えました。

声をかけても、患者さんは痛みを訴えません。そこで、私はそのままケアを進めてよいのか、少し迷いました。

もう一度、体位変換の前後を見てみることにしました。

体を動かすと顔をしかめ、終わったあともしばらく同じ姿勢で動きません。いつもなら体位を整えると表情が戻るのですが、その日は戻りませんでした。

私は、担当の先輩看護師に「痛みの訴えはないのですが、体位変換のときに体がこわばり、表情が変わります」と相談しました。

その後、普段の様子や前回のケア記録と見比べながら、部位や体位による変化を確認しました。医師にも情報を共有し、鎮痛薬の使用後に表情や体動がどう変化するかを観察することになりました。

薬を使った後、すぐにすべてが変わったわけではありません。ただ、体位変換時のこわばりが少し減り、ベッド上での動きも変化しました。

この経験があってから、私は「痛いですか?」という質問への答えだけでなく、その患者さんが普段どのように動き、ケアにどう反応しているのかを見るようになりました。

当時の私は、訴えがないことに少し安心していたのだと思います。今振り返ると、言葉にならない変化に気づくことが、疼痛評価の始まりになるのだと感じています。

まとめ:痛みを訴えない患者さんほど、普段との変化を見る

今回の記事のポイントをまとめます。

  • 痛みを訴えないことと、痛みがないことは同じではない
  • まず、患者さんが自己申告できるかを確認する
  • 自己申告できる場合は、NRS・VRS・VASなどを使って本人に評価してもらう
  • 自己申告が難しい場合は、表情・発声・体動・姿勢・生理学的変化を組み合わせて観察する
  • ケア前後の変化や、睡眠・食事・ADLへの影響も確認する
  • 痛みの評価は1回で終わらせず、同じ患者さんの経時的な変化を見る
  • 鎮痛薬の効果だけでなく、眠気や便秘、呼吸抑制、せん妄などの副作用も観察する
  • 観察式スケールを使う場合は、施設の手順や採用している評価方法を確認する

ざっくり言うと、

痛みを訴えない患者さんでは、「言葉がない」ことではなく、「普段と何が違うのか」に注目する

ということです。

FAQ

Q1.患者さんが「痛くない」と言ったら、疼痛評価は終了してよいですか?

痛みの訴えがなくても、表情、体動、ケアへの反応、睡眠や食事などに変化があれば、評価を続けます。

ただし、観察だけで痛みと断定するのではなく、ほかの症状や環境の変化も含めて考えます。

Q2.痛みを訴えられない患者さんには、必ず観察式スケールを使いますか?

自己申告が難しい場合は、観察式スケールが選択肢になります。

ただし、どのスケールを使うかは、患者さんの状態や施設の方針によって異なります。PAINADやAbbeyペインスケールなどが紹介されていますが、勤務施設の手順を確認して使用します。

Q3.脈拍が速ければ、痛みがあると考えてよいですか?

脈拍の変化だけで痛みを判断することはできません。

発熱、不安、呼吸状態の変化など、ほかの要因でも脈拍は変化します。表情、体動、発声、ケアへの反応などと組み合わせて評価します。

Q4.鎮痛薬を使った後、何を見ればよいですか?

痛みの強さだけでなく、表情、体動、体位変換への反応、睡眠や食事への影響を確認します。

同時に、眠気、便秘、呼吸抑制、せん妄などの副作用にも注意します。

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