高血圧の降圧目標は家庭血圧を重視|診察室血圧との違いと看護のポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、診察室では血圧が高いのに、患者さんから「家ではそんなに高くありません」と言われたことはありませんか?
反対に、病院では正常に見えるのに、家庭では血圧が高い人もいます。
このようなとき、「病院で測った血圧」と「家庭で測った血圧」のどちらを基準に考えればよいのか、迷いますよね。
今回は、高血圧の降圧目標を考えるときに家庭血圧を重視する理由と、看護師・看護学生が確認したいポイントについて解説します。
結論:降圧目標を考えるときは、診察室血圧より家庭血圧を重視する
結論からいうと、高血圧の診断や治療では、診察室血圧だけで判断せず、家庭血圧を優先して評価するのが基本です。
家庭血圧を確認するときは、次の点をセットで見ます。
- 朝・晩など、いつ測定した血圧なのか
- 1回だけの値ではなく、複数日の血圧がどうか
- 測定時の姿勢やタイミングは適切か
- 診察室血圧と家庭血圧に差があるか
- 年齢やCKD、糖尿病、脳心血管病の既往などがあるか
一般的な高血圧の診断基準は、診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上です。家庭血圧の基準は、診察室血圧より低く設定されています。血圧手帳の説明資料
ただし、降圧目標はすべての人で同じではありません。年齢や合併症などによって異なるため、自己判断で薬を増減するのではなく、医師の治療方針と家庭血圧の記録を合わせて判断します。
ざっくり言うと、
病院での1回の血圧ではなく、家庭で繰り返し測った血圧と測定条件を確認する
読了目安
約8分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 家庭血圧を重視する理由
- 診察室血圧と家庭血圧の違い
- 白衣高血圧と仮面高血圧の考え方
- 看護師・看護学生が家庭血圧を確認するときのポイント
- 降圧治療中に見逃したくない血圧の変化
根拠:家庭血圧は普段の血圧を反映しやすい
家庭血圧が重視される大きな理由は、診察室よりも日常生活に近い状態で測定できるからです。
医療機関では、診察を受ける緊張や待ち時間などの影響で、普段より血圧が高くなることがあります。これが白衣高血圧です。
一方で、診察室では血圧が正常でも、家庭や職場などでは血圧が高い場合があります。これが仮面高血圧です。
このように、診察室血圧だけでは、患者さんの普段の血圧を十分に把握できない場合があります。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子では、脳心血管病の発症予測は、診察室血圧よりも家庭血圧のほうが優れていると説明されています。また、高血圧の判定では家庭血圧を優先する考え方が示されています。
さらに、日本高血圧学会の「高血圧の10のファクト」でも、家庭血圧の測定が高血圧の診断や治療に役立つことが示されています。
つまり、家庭血圧は単なる「自宅で測った血圧」ではありません。
治療が足りているのか、反対に血圧が下がりすぎていないかを考えるための重要な情報になります。
詳しい解説:診察室血圧と家庭血圧が違うときの考え方
診察室血圧が高く、家庭血圧が正常な場合
この場合は、白衣高血圧の可能性を考えます。
病院で測ると緊張して血圧が高くなる人では、診察室血圧だけを見て治療を判断すると、普段の血圧より高く評価してしまうことがあります。
ただし、「家庭では正常」と聞いただけで判断するのは不十分です。
- 何日間測っているのか
- 朝・晩のどちらで測ったのか
- 測定前の行動はどうだったか
- 血圧計の使い方に問題はないか
などを確認します。
診察室血圧が正常で、家庭血圧が高い場合
この場合は、仮面高血圧の可能性を考えます。
診察室で正常だからといって、家庭での高血圧を見過ごしてよいとは限りません。家庭で高い血圧が続いている場合は、家庭血圧の記録を医療者へ共有し、評価につなげます。
日本老年医学会の「かかりつけ医のための適正処方の手引き」などの資料でも、診察室血圧と家庭血圧が異なる場合には、家庭血圧を重視する考え方が示されています。
家庭血圧の目標は診察室血圧より低く考える
資料によって目標値の示し方には違いがありますが、家庭血圧の目標は、診察室血圧よりもおおむね5mmHg低い値として案内されることがあります。順天堂医院の解説や日本医学会連合関連資料でも、家庭血圧と診察室血圧の目標には差があることが説明されています。
ただし、ここで注意したいのは、135/85mmHgという値は一般的な高血圧の診断基準であり、すべての患者さんの降圧目標を意味するわけではないという点です。
目標血圧は、次のような背景を踏まえて個別に決められます。
- 年齢
- CKDの有無
- 糖尿病の有無
- 脳心血管病の既往
- 治療中の薬剤
- 血圧が下がったときの症状
したがって、看護師・看護学生が「この数値だから薬を調整する」と判断するのではなく、家庭血圧の傾向や症状を整理して、医師への報告・相談につなげることが大切です。
実践ポイント:看護師・看護学生が家庭血圧を確認するときのポイント
1.「どこで測った血圧か」を確認する
血圧の値を見る前に、測定場所を確認します。
- 病院で測ったのか
- 自宅で測ったのか
- 施設や職場で測ったのか
同じ患者さんの血圧でも、測定場所によって意味が変わることがあります。
2.朝・晩の血圧を確認する
家庭血圧は、朝・晩など、いつ測定した値なのかを確認します。
また、朝の血圧であれば、降圧薬を飲む前なのか、飲んだ後なのかによっても記録の意味が変わります。
日本腎臓学会の解説や血圧手帳の資料でも、朝・晩の測定や複数日の記録を確認することが示されています。
3.1回の値だけで判断しない
血圧は、体調や活動、緊張などによって変動します。
そのため、「今日だけ高かった」「病院で1回だけ高かった」という情報だけで、普段の血圧を決めつけないようにします。
看護では、次のように確認すると整理しやすくなります。
- いつから高いのか
- 何日くらい続いているのか
- 朝と晩で差があるのか
- 家庭血圧の平均はどうか
- 診察室血圧と比べてどうか
4.血圧が下がりすぎていないかも見る
家庭血圧を確認する目的は、治療不足を見つけることだけではありません。
降圧治療中に家庭血圧が低くなりすぎている場合や、血圧低下に伴う体調変化がある場合には、過降圧の可能性も含めて確認します。
ただし、薬の中止や減量を自己判断で行うのではなく、血圧の記録と症状を医師へ共有します。
筆者の体験談:私が看護師をしていた頃の体験
私が病棟で勤務していた頃、患者さんから「家では血圧はそんなに高くないのに、病院に来ると高くなるんです」と言われたことがありました。
その日の診察室血圧は、普段の記録よりかなり高く出ていました。私は最初、「今日は少し緊張しているのかな」と考えました。
ただ、薬の調整を検討している患者さんだったため、病院での値だけを見てよいのか、少し迷いました。
そこで、患者さんに家庭血圧の記録を見せてもらいました。記録には朝と晩の血圧が数日分書かれていて、病院で測った値より低い値が続いていました。測定した時間帯や、薬を飲む前かどうかも一緒に記録されていました。
私はその記録をそのままにせず、診察室血圧と家庭血圧の違いがあることを医師に伝えました。医師からは、「家庭での記録も確認して治療を考えます」と説明があり、患者さんも少し安心した様子でした。
そのときの私は、血圧の数字が高いことに目が向きやすくなっていました。しかし、あとから振り返ると、「その数字がどこで、いつ、どのように測られたのか」を確認することが大切だったと感じます。
この経験があってから、私は血圧の値だけでなく、測定場所や記録の経過を見るようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、家庭血圧を確認する際の看護場面をイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 高血圧の診断・治療では、診察室血圧より家庭血圧を重視するのが基本
- 一般的な基準は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上
- 診察室で高く、家庭で正常なら白衣高血圧を考える
- 診察室で正常でも、家庭で高ければ仮面高血圧を考える
- 家庭血圧は、朝・晩の測定、複数日の記録、測定条件と合わせて確認する
- 降圧目標は年齢や合併症によって異なるため、数値だけで薬の調整を判断しない
- 看護では「病院での1回の血圧」ではなく、「家庭での反復測定の平均と測定条件」を見る
血圧を評価するときは、数字だけでなく、どこで測ったのか、いつ測ったのか、普段からどうなのかを確認することが重要です。
FAQ
Q1.家庭血圧が135/85mmHg未満なら、高血圧の心配はありませんか?
必ずしもそうとは限りません。
家庭血圧135/85mmHg以上は一般的な高血圧の診断基準ですが、血圧は測定条件や体調によって変動します。また、年齢や合併症などによって治療目標も異なります。
1回の値だけではなく、複数日の記録や診察室血圧と合わせて判断します。
Q2.病院で血圧が高くても、家で正常なら薬は必要ありませんか?
自己判断で薬を中止したり、減量したりしてはいけません。
白衣高血圧の可能性はありますが、家庭血圧の測定方法や記録期間なども確認する必要があります。家庭血圧の記録を医師に見せ、治療方針を相談します。
Q3.家庭血圧と診察室血圧のどちらを記録すればよいですか?
どちらも記録します。
診察室血圧は医療機関での状態を示し、家庭血圧は日常生活に近い状態での血圧を把握するのに役立ちます。両方を比較することで、白衣高血圧や仮面高血圧の可能性を考えやすくなります。
参考文献
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子:日本高血圧学会
- 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」:日本高血圧学会
- 血圧手帳資料:日本ジェネリック株式会社
- 日本老年医学会「かかりつけ医のための適正処方の手引き」:日本老年医学会
- 日本医学会連合関連資料「かかりつけ医の高血圧症管理」:日本医師会
- 日本腎臓学会関連資料:日本腎臓学会
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
バイタルサイン(特に血圧)を単なる数値でなく患者状態の情報として読み解く視点を学べるため、家庭血圧の評価や変動の意味を深めるのに最適です。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
フィジカルアセスメントの方法と根拠を実践的に整理しており、家庭での測定条件や姿勢・測定タイミングの確認など現場で使える技術を身につけられます。
看護学生のための臨床判断
著者:三浦友理子
出版社:照林社
複数事例で臨床判断の思考過程を学べるため、診察室血圧と家庭血圧が異なる場合の評価・報告や優先度の判断力向上に役立ちます。
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