利尿薬を使っている患者の電解質異常|看護師・看護学生が確認したい症状と観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、利尿薬を使っている患者さんに「足がつる」「何となくだるい」「ふらつく」と言われたとき、どのように考えますか?
疲れや加齢のせいに見える症状でも、利尿薬による脱水や低ナトリウム血症、低カリウム血症などが隠れていることがあります。
今回は、利尿薬を使用している患者さんに電解質異常を疑う症状と、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて解説します。
結論:利尿薬使用中に新しい症状が出たら、まず電解質異常を疑う
利尿薬を使っている患者さんに、次のような症状が新しく出た場合は、電解質異常や脱水を考えます。
- 脱力、筋力低下
- こむら返り、しびれ
- 強い倦怠感
- 動悸、不整脈感
- 頭痛、嘔気、食欲低下
- めまい、ふらつき
- ぼんやりする、意識レベルの変化
さらに、下痢・嘔吐・発熱・食事や水分の摂取低下、急な体重変化、尿量の変化がある場合も注意が必要です。
ざっくり言うと、
利尿薬を使っている患者さんの「いつもと違う体調変化」は、電解質異常を含めて考える
ということです。
症状がある場合は、利尿薬の種類や変更の有無、脱水の状況を確認し、血液検査でNa・K・腎機能などを確認する必要があるか、医師へ報告・相談します。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 利尿薬で電解質異常が起こりやすい理由
- 低カリウム血症と低ナトリウム血症で見られやすい症状
- 電解質異常を疑ったときの確認項目
- 看護師・看護学生が見逃しやすいポイント
- 報告や検査につなげるときの考え方
根拠:利尿薬はナトリウムやカリウムの異常につながる
利尿薬は、腎臓でのナトリウム再吸収を抑え、尿として水分や電解質を排泄しやすくする薬です。
そのため、利尿薬の種類や患者さんの状態によっては、ナトリウムやカリウムのバランスが崩れることがあります。
医書.jp掲載の利尿薬に関する解説では、ループ利尿薬はナトリウムの再吸収を強力に抑制し、カリウムやカルシウムを喪失しやすい薬剤として整理されています。
また、日経DIの電解質に関する解説では、サイアザイド系利尿薬は低ナトリウム血症の原因として注意が必要とされています。
利尿薬を使用している患者さんでは、薬そのものの影響だけでなく、下痢や嘔吐、発熱、食事・水分摂取の低下などが重なることで、電解質異常や脱水が進みやすくなります。
そのため、症状だけを見るのではなく、
- 利尿薬を使っているか
- 最近、薬剤が変更されたか
- 水分や食事がとれているか
- 下痢や嘔吐がないか
- 尿量や体重に変化がないか
を合わせて確認することが大切です。
詳しい解説
低カリウム血症では、脱力やこむら返りに注意する
カリウムは、筋肉や神経の働き、心臓の収縮に関係する電解質です。
低カリウム血症では、次のような症状が見られることがあります。
- 筋力低下
- 脱力
- 倦怠感
- こむら返り
- しびれ
- 動悸
- 不整脈
一般に、低カリウム血症は血清カリウム値が 3.5 mEq/L以下 で定義されます。
ただし、検査値が軽度の変化であっても、患者さんの症状や基礎疾患、薬剤の組み合わせによって注意が必要です。
日経DIの解説では、血清カリウム値が 2.5 mmol/Lを下回ると、四肢脱力などの症状が表れることが多い とされています。
ここで注意したいのは、「足がつるだけだから大丈夫」と決めつけないことです。
こむら返りや脱力は、患者さんが最初に訴える変化かもしれません。動悸や不整脈感がある場合は、循環器症状としても確認が必要です。
低ナトリウム血症では、頭痛や意識の変化に注意する
ナトリウムは、体液のバランスや神経機能に関係する電解質です。
低ナトリウム血症では、次のような症状が出ることがあります。
- 食欲低下
- 嘔気
- 頭痛
- 倦怠感
- ふらつき
- ぼんやりする
- 意識レベルの変化
症状が進むと、意識障害などにつながる可能性があります。
特に高齢患者さんでは、「元気がない」「食事が進まない」「少しぼんやりしている」といった変化として現れることもあります。
そのため、認知機能の変化やせん妄を疑う場面でも、利尿薬の使用状況や水分バランスを確認します。
「認知症が進んだ」「年齢のせい」と考える前に、電解質異常や脱水など、身体的な原因がないかを考えることが重要です。
電解質異常を疑ったときに確認すること
1.利尿薬の種類と変更の有無
まず、どの利尿薬を使用しているのかを確認します。
確認したいのは、次のような情報です。
- 利尿薬の種類
- 服用量
- 追加や増量があったか
- 服薬開始後に症状が出ていないか
- 他の薬剤も変更されていないか
ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬では、低カリウム血症や低ナトリウム血症が問題になりやすいとされています。
薬剤変更後に、ふらつきや脱力、食欲低下などが出ていないかを確認しましょう。
2.下痢・嘔吐・発熱の有無
利尿薬を使用している患者さんに、下痢や嘔吐、発熱が重なると、水分や電解質がさらに失われる可能性があります。
確認する内容は、次のとおりです。
- 下痢の回数や性状
- 嘔吐の有無
- 発熱や発汗の有無
- 食事量・飲水量
- 口渇の有無
- ふらつきや倦怠感
「昨日からあまり食べられていない」「下痢が続いている」といった情報は、電解質異常を考えるうえで重要です。
3.体重と尿量の変化
利尿薬を使用している患者さんでは、体重や尿量の変化も確認します。
特に注意したいのは、次のような変化です。
- 急に体重が減った
- 尿量が減った
- いつもより尿が多い
- 浮腫が変化した
- 飲水量と尿量のバランスが変わった
急な体重減少や尿量の変化がある場合は、体液量の変化や脱水を考える材料になります。
4.血圧とふらつき
利尿薬によって体液量が減ると、血圧低下やふらつきが起こることがあります。
確認したいのは、単に血圧の数値だけではありません。
- 立ち上がったときのふらつき
- 歩行時の不安定さ
- めまい
- 転倒しそうになったことがあるか
- 起立前後の血圧変化
調査結果では、仰臥位から立位への体位変換で収縮期血圧が 20 mmHg以上低下 することが、脱水の指標として扱われる場合があります。
ただし、血圧の変化だけで判断するのではなく、症状や尿量、摂取状況などと合わせて評価します。
5.血液検査の結果
電解質異常が疑われる場合は、次の検査値を確認します。
- Na
- K
- Cl
- BUN
- Cr
- eGFR
- 必要に応じてMg
日経DIの解説でも、利尿薬使用患者の確認項目として、ナトリウム、カリウム、腎機能などが挙げられています。
検査値を見るときは、今回の値だけでなく、以前の値と比べてどう変化しているかも確認します。
実践ポイント:看護師・看護学生が確認したいこと
「何となく元気がない」を具体化する
患者さんの「何となく調子が悪い」という訴えは、そのままにしないようにします。
例えば、次のように具体化します。
- いつから症状があるのか
- だるさは一日中あるのか
- 歩ける距離に変化はあるか
- 足がつるのはいつか
- 動悸は安静時にもあるのか
- 食事や水分はどの程度とれているか
- 下痢や嘔吐はないか
電解質異常の症状は非特異的です。
つまり、「この症状があれば低K血症」と決められるものではありません。症状と薬剤、摂取状況、体重、尿量、検査値をまとめて考える必要があります。
利尿薬を使っていることを情報収集の出発点にする
患者さんの症状を見たとき、最初から電解質異常だと決めつける必要はありません。
しかし、利尿薬を使用している場合は、電解質異常を候補から外さないことが大切です。
特に次のような患者さんでは注意します。
- 高齢者
- 腎機能が低下している患者さん
- 複数の薬剤を使用している患者さん
- 下痢や嘔吐がある患者さん
- 食事や水分摂取が低下している患者さん
- 利尿薬の追加・増量後に症状が出た患者さん
高齢者や腎機能が低下した患者さんでは、利尿薬に関連する電解質異常のモニタリングが重要とされています。CareNetで紹介された利尿薬誘発性電解質異常に関する報告でも、年齢や腎機能などによる違いが取り上げられています。
報告では「症状・背景・変化」をセットにする
医師や先輩看護師へ報告するときは、「何となく元気がない」だけではなく、次のように整理します。
- 利尿薬の種類と変更日
- 症状が出た時期
- 脱力、こむら返り、動悸などの具体的な症状
- 食事・水分摂取量
- 下痢・嘔吐・発熱の有無
- 体重と尿量の変化
- 血圧や脈拍
- Na・K・腎機能の検査値
- 以前の検査値との違い
例えば、
「利尿薬が増量されてから、ふらつきと食欲低下があります。昨日から飲水量も減り、体重と尿量にも変化があります。電解質と腎機能の確認が必要か相談したいです」
のように伝えると、状況が共有しやすくなります。
なお、利尿薬を自己判断で中止したり、追加で飲んだりすることは避けます。薬剤調整が必要な場合は、患者さんの状態を報告したうえで医師や薬剤師と相談します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、利尿薬を使っている高齢の患者さんを受け持ったことがありました。
その患者さんは、朝の訪室時に「昨日から少し足がつるんです」と話していました。表情は落ち着いていて、会話も普段と大きく変わりません。
最初の私は、「夜間に同じ姿勢が続いたのかな」と考えました。こむら返り自体は、病棟でよく聞く訴えの一つだったからです。
ただ、記録を確認すると、数日前に利尿薬が追加されていました。
「あれ? 薬が変わった後から症状が出ているのかな」
そう思って、患者さんにもう一度、足がつり始めた時期を聞きました。すると、薬が追加された翌日から、朝方に足がつるようになったとのことでした。
さらに確認すると、食事は普段の半分ほどで、水分もあまりとれていませんでした。前日には少しふらつきもあったそうです。
私は、最初に考えたような「姿勢の問題だけ」ではないかもしれないと思い、先輩看護師に相談しました。先輩からは、「利尿薬が増えていて、摂取も落ちているなら、検査値と尿量も一緒に見てみよう」と言われました。
その後、尿量や血圧、採血結果を確認し、医師へ報告しました。薬剤の調整を含めて対応することになり、患者さんにも自己判断で薬を中止しないよう説明しました。
この経験があってから、私は「足がつる」「少しだるい」という訴えを聞いたときにも、薬剤の変更や食事・水分摂取の変化を一度確認するようになりました。
最初に考えたことが間違っていることもあります。だからこそ、「ほかに見落としている背景はないか」と一度立ち止まることが大切だと感じています。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、利尿薬を使用している患者さんの観察場面を具体的にイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 利尿薬使用中に新しい症状が出たら、電解質異常や脱水を考える
- 脱力、こむら返り、倦怠感、動悸は低カリウム血症の可能性を考えるきっかけになる
- 頭痛、嘔気、食欲低下、意識の変化では低ナトリウム血症にも注意する
- 下痢、嘔吐、発熱、摂取不良、体重変化、尿量変化を確認する
- 利尿薬の種類・変更、Na・K・腎機能の検査値を確認する
- 症状が強い場合や不整脈、意識変化、脱力がある場合は、早めに報告・相談する
- 利尿薬は自己判断で中止せず、薬剤調整は医師や薬剤師と相談する
利尿薬を使用している患者さんの「いつもと違う変化」は、単なる疲労や加齢だけではないかもしれません。
症状、薬剤、摂取状況、体重、尿量、検査値をつなげて考えることが、電解質異常の早期発見につながります。
FAQ
Q1.利尿薬を飲んでいて足がつるだけなら、様子を見てもよいですか?
足がつるだけに見えても、利尿薬の変更、食事・水分摂取の低下、下痢や嘔吐、尿量の変化などがあれば、電解質異常を疑うきっかけになります。
特に脱力や動悸、ふらつきがある場合は、症状を具体的に記録して報告・相談します。
Q2.低カリウム血症は、カリウム値がいくつからですか?
一般に、低カリウム血症は血清カリウム値が 3.5 mEq/L以下 で定義されます。
ただし、症状の有無や基礎疾患、薬剤、検査値の変化も合わせて判断します。
Q3.利尿薬を飲んでいて、食欲がありません。電解質異常と関係ありますか?
食欲低下は、低ナトリウム血症や脱水などで見られることがあります。
ただし、食欲低下だけで原因を決めることはできません。利尿薬の変更、飲水量、体重、尿量、下痢や嘔吐の有無などを合わせて確認します。
Q4.利尿薬は自己判断で中止してもよいですか?
自己判断で中止したり、服用量を変更したりするのは避けます。
症状がある場合は、利尿薬の使用状況と患者さんの状態を医師や薬剤師へ報告し、必要な調整について相談します。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
利尿薬使用患者の観察では具体的な身体診察とバイタルや所見の読み取りが重要であり、フィジカルアセスメントの方法と根拠を学べる本は観察力向上に直結します。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
利尿薬による体液量変化や起立性低血圧、めまい・ふらつきなどバイタルサインの解釈が記事の主題と密接に関連しており、数値から臨床判断へつなげる学びに役立ちます。
もっとよくわかる ナースのための急性期(ICU・救急)の輸液
著者:北別府孝輔
出版社:照林社
脱水や電解質異常が疑われる場面での輸液管理と観察の考え方を、病態と結びつけて学べるため実践での対応力を高められます。
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