炎症で白血球が増える理由|看護師・看護学生が確認したいポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、採血結果で白血球数が高くなっているとき、「なぜ炎症があると白血球が増えるのだろう」と疑問に思ったことはありませんか?
白血球は、感染や炎症から体を守る細胞です。とはいえ、白血球が増える仕組みや、白血球数だけで感染を判断してよいのかは、少し分かりにくいですよね。
今回は、炎症で白血球が増える理由と、看護師・看護学生が白血球数を確認するときの考え方について解説します。
結論:炎症では、白血球が作られ、血液中へ動員されるため増える
結論からいうと、炎症で白血球が増える主な理由は、次のとおりです。
- 炎症性サイトカインなどの刺激によって、骨髄で白血球の産生が促される
- 骨髄などに待機していた白血球が、血液中へ放出される
- 白血球が炎症部位へ移動し、病原体や壊死した組織などに対応する
ざっくり言うと、体の中で炎症が起こると、
「白血球を集めて、炎症に対応しよう」
という反応が起こります。
その結果、血液中の白血球数が増えることがあります。
ただし、白血球数が高いからといって、必ず細菌感染があるとは限りません。白血球数だけで判断せず、次の項目を合わせて確認することが重要です。
- 好中球が増えているか
- 未熟な好中球が増える「左方移動」があるか
- 発熱や悪寒などの症状があるか
- 呼吸器、尿路、創部などに炎症所見があるか
- CRPがどう変化しているか
- 薬剤や腫瘍など、感染以外の原因がないか
読了目安
約15分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 炎症で白血球が増える仕組み
- 骨髄で白血球が作られる流れ
- 白血球が炎症部位へ移動する過程
- 好中球や左方移動を確認する理由
- 白血球数とCRPを組み合わせて見るときの注意点
- 看護師・看護学生が観察したいポイント
根拠:炎症では、白血球の産生と動員が進む
白血球増多の成因についてまとめた「白血球増多の成因に関する解説」では、白血球数の変化には、次のような要素が関係すると説明されています。
- 白血球の産生
- 骨髄と末梢血の間での移動
- 血液中から組織への移動
- 組織での消費
つまり、血液中の白血球数は、「どれだけ作られたか」だけで決まるわけではありません。
骨髄から血液中へ出てくる量、血液中に存在する量、炎症部位へ移動する量などのバランスによって変化します。
炎症性サイトカインが白血球産生を促す
細菌感染などが起こると、マクロファージや単球、骨髄の細胞などが刺激されます。
その結果、G-CSF、IL-1、TNF-αなどの物質が関係し、顆粒球、とくに好中球の産生や動員が促されます。
この仕組みについては、日本内科学会の「白血球増加症」に関する資料で解説されています。
流れで表すと、次のようになります。
炎症や感染が起こる
↓
免疫細胞が刺激される
↓
サイトカインなどが放出される
↓
骨髄で白血球、とくに好中球の産生が促される
↓
白血球が血液中へ放出される
↓
白血球数が増えることがある
ただし、この反応が起きる速さや白血球数の変化は、炎症の種類、程度、患者さんの状態などによって異なります。
「炎症が起きたら、何時間後に必ず何%増える」という一律の基準が示されているわけではありません。
詳しい解説
白血球は炎症部位へ移動する
白血球の役割は、血液中にとどまることではありません。
炎症が起きた場所へ移動し、細菌や異物、壊死した組織などに対応します。
炎症部位では、白血球が血管の内側にある血管内皮へ接着し、その後、血管の外へ出て組織へ移動します。この過程を血管外遊走といいます。
白血球の血管外遊走については、関東中央病院の病理学資料や炎症における白血球の移動を解説した資料で説明されています。
流れとしては、次のようなイメージです。
炎症部位で化学物質が放出される
↓
血管内の白血球が炎症部位に近づく
↓
血管内皮に接着する
↓
血管のすき間から組織へ出る
↓
炎症部位に集まり、病原体などに対応する
つまり、白血球は血液中で増えるだけではありません。
必要な場所へ移動し、そこで働くために、血液中と組織の間を行き来しています。
なぜ好中球が注目されるのか
白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球などがあります。
炎症、とくに細菌感染などでは、好中球の増加がみられることがあります。
好中球は、細菌などを取り込んで処理する働きを持つ白血球です。そのため、細菌感染が疑われる場面では、白血球の総数だけでなく、白血球分画を確認します。
たとえば、次のような情報です。
- 好中球の割合や実数
- リンパ球の割合や実数
- 単球、好酸球などの変化
- 未熟な好中球の出現
- 前回の採血結果からの変化
左方移動とは
左方移動とは、血液中に未熟な好中球が増えている状態を指します。
炎症が強く、好中球が多く必要になると、骨髄は成熟した好中球だけでなく、やや未熟な段階の細胞も血液中へ送り出すことがあります。
そのため、白血球数だけでなく、未熟な好中球が増えているかを確認することが、炎症の状態を考える手がかりになります。
ただし、左方移動があるから必ず細菌感染と断定できるわけではありません。検査結果は、患者さんの症状や経過と合わせて考えます。
白血球とCRPは同じように変化するとは限らない
炎症の評価では、白血球数とCRPが一緒に確認されることがあります。
CRPは、炎症の刺激を受けて肝臓で作られる急性期蛋白です。炎症性サイトカインの働きによって産生が促され、血液中のCRPが上昇します。
この仕組みについては、オレゴン州立大学Linus Pauling Instituteの炎症に関する解説や、炎症と急性期反応に関する資料で説明されています。
ただし、白血球数とCRPは、常に同じタイミングで変化するとは限りません。
白血球数が先に変化している場合もあれば、時間が経過してからCRPが変化する場合もあります。そのため、1回の検査結果だけで炎症の有無や重症度を判断するのではなく、時系列で確認することが大切です。
たとえば、次のように考えます。
- 白血球数は高いが、CRPはまだ大きく変化していない
- 白血球数は低下してきたが、患者さんの症状は悪化している
- 白血球数とCRPがどちらも上昇している
- 検査値は大きく変わらないが、局所症状が強くなっている
このように、検査値の組み合わせと経過をみる必要があります。
白血球が増えない炎症もある
炎症がある場合、必ず白血球が増えるとは限りません。
感染初期や重症例、患者さんの免疫状態などによっては、白血球数が増えないことがあります。白血球が高くないからといって、炎症や感染がないとは判断できません。
白血球数が低下している場合でも、次のような変化があれば注意が必要です。
- 発熱や悪寒
- 呼吸状態の悪化
- 血圧低下
- 意識状態の変化
- 局所の腫脹、発赤、熱感、疼痛
- 排尿時痛や尿の混濁
- 創部の排液や発赤
- 倦怠感や食欲低下
白血球増多の成因に関する総説でも、白血球数は産生、移動、消費などのバランスによって変化すると説明されています。
そのため、白血球数が基準範囲内でも、患者さんの全身状態や局所所見を確認する必要があります。
白血球が増える原因は感染だけではない
白血球数が高いと、まず感染を考えることがあります。
しかし、白血球増多は感染以外でも起こる可能性があります。
たとえば、炎症、腫瘍、薬剤などが関係する場合があります。白血球増多の原因については、白血球増多の成因に関する解説で整理されています。
したがって、白血球が高い場合には、
白血球が高い=細菌感染
と短絡的に判断しないことが大切です。
患者さんの病歴、手術や処置の有無、使用薬剤、症状、バイタルサイン、画像検査や培養検査などを含めて、総合的に考えます。
実践ポイント:看護師・看護学生が確認したいポイント
白血球数の結果を確認するときは、単独の数値だけに注目しないようにします。
1.白血球数の推移を確認する
今回の値だけでなく、前回と比べてどう変化しているかを確認します。
- 上昇しているのか
- 低下しているのか
- 高値が続いているのか
- いったん低下した後に再上昇しているのか
検査値は、経過と一緒に見ることで意味を考えやすくなります。
2.白血球分画を確認する
白血球の総数だけではなく、好中球やリンパ球などの分画を確認します。
とくに炎症や細菌感染が疑われる場合には、好中球優位か、未熟な好中球が増えているかを確認します。
3.CRPとの組み合わせを見る
白血球数とCRPの両方を確認します。
ただし、白血球数とCRPは変化するタイミングが異なることがあるため、値が一致しないからといって、すぐにどちらかを否定するわけではありません。
採血日、症状が出た時期、治療開始後の経過なども確認します。
4.感染巣の可能性を考えて観察する
白血球高値がある場合には、感染や炎症が起きている場所がないかを確認します。
観察する場所の例は、次のとおりです。
- 呼吸器:咳、痰、呼吸困難、SpO₂の変化
- 尿路:排尿時痛、頻尿、尿の混濁
- 創部:発赤、腫脹、熱感、疼痛、排液
- 皮膚:発赤、びらん、褥瘡部位の変化
- 点滴やカテーテル刺入部:発赤、腫脹、疼痛、排膿
ただし、これらは白血球数だけで診断するものではありません。全身状態や医師の診察、検査結果と合わせて評価します。
5.感染以外の可能性も確認する
白血球数が高いときは、感染だけでなく、薬剤や腫瘍などの可能性も考えます。
患者さんの既往歴や治療内容、最近開始された薬剤などを確認し、気になる変化があれば医師や先輩看護師へ共有します。
筆者の体験談:白血球数だけを見てしまった場面
私が看護師をしていた頃、術後の患者さんの採血結果を確認していたときのことです。
白血球数が前回より高くなっていて、私は最初に「感染が始まったのかもしれない」と考えました。患者さんに発熱がないかを確認し、創部も観察しましたが、明らかな発赤や排液の変化はありませんでした。
そのときは、白血球が高いという結果が頭に残っていて、少し焦っていたと思います。
先輩看護師に相談すると、「白血球だけでなく、好中球やCRPはどうなっている?」と聞かれました。
検査結果を見直すと、白血球数だけでなく、好中球の割合、CRPの推移も確認する必要があることに気づきました。さらに、患者さんの呼吸状態や尿の性状、創部の観察結果も合わせて整理しました。
その場で感染の有無を決めることはできませんでしたが、少なくとも「白血球が高いから感染」とすぐに結びつけるのは早いと感じました。
それ以来、検査結果を見るときは、最初に目に入った数値だけで判断しないようになりました。白血球数を見たら、分画、CRP、症状、バイタルサイン、前回からの変化を順番に確認するようにしています。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 炎症で白血球が増えるのは、骨髄での産生と血液中への動員が促されるため
- 白血球は血液中で増えるだけでなく、炎症部位へ移動して働く
- 細菌感染などでは、好中球の増加や左方移動がみられることがある
- 白血球数とCRPは同じタイミングで変化するとは限らない
- 白血球数が高いからといって、必ず感染とは限らない
- 白血球数が正常または低値でも、炎症や重症化を否定できない
- 看護では、白血球数だけでなく、白血球分画、CRP、症状、バイタルサイン、局所所見、経時的な変化を合わせて確認する
ざっくり言うと、炎症で白血球が増えるのは、体が炎症に対応するために白血球を作り、血液中へ送り出し、炎症部位へ集めているからです。
ただし、検査値は単独で見るのではなく、患者さんの状態と合わせて判断することが重要です。
FAQ
Q1.白血球が高ければ、必ず細菌感染ですか?
いいえ。白血球増多は、感染だけでなく、炎症、腫瘍、薬剤などでも起こる可能性があります。
好中球や左方移動、CRP、発熱、局所所見などを組み合わせて考えます。
Q2.白血球が正常なら、感染は否定できますか?
否定できません。
感染初期や重症例などでは、白血球数が増えないことがあります。白血球数だけでなく、患者さんの症状やバイタルサイン、局所の炎症所見を確認します。
Q3.白血球とCRPは、どちらを重視すればよいですか?
どちらか一方だけを重視するのではなく、両方の推移を確認します。
白血球数とCRPは変化するタイミングが異なることがあるため、症状が出た時期や治療経過と合わせて評価します。
Q4.左方移動があれば、細菌感染と考えてよいですか?
左方移動は炎症や感染を考える手がかりになりますが、それだけで細菌感染と断定することはできません。
患者さんの症状、診察所見、他の検査結果と合わせて判断します。
参考文献
- 「白血球増多の成因に関する解説」医学書院、公開情報:https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542913575
- 「白血球増加症」日本内科学会、公開資料:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/7/96_1352/_pdf
- 「炎症における白血球の血管外遊走」関東中央病院病理学資料:https://www.kanto-ctr-hsp.com/patient/department/images/byori/pdf/201207.pdf
- 「炎症と白血球の移動」関東中央病院病理学資料:https://www.kanto-ctr-hsp.com/patient/department/images/byori/pdf/201209.pdf
- 「炎症」Linus Pauling Institute, Oregon State University:https://lpi.oregonstate.edu/jp/mic/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%81%A8%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%82%8E%E7%97%87
- 「炎症と急性期反応」Linus Pauling Institute, Oregon State University:https://lpi.oregonstate.edu/book/export/html/2506
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