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術後の早期離床が必要な理由と観察ポイント|看護師・看護学生向け

周手術期看護
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術後に早期離床を行う理由|看護師・看護学生が確認したい観察ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、術後の患者さんに「できるだけ早く離床しましょう」と声をかける理由を疑問に思ったことはありませんか?

手術後は傷の痛みもありますし、点滴やドレーンがついていることもあります。「まだベッドで休んでいたほうがよいのでは?」と考える人もいると思います。

今回は、術後に早期離床を行う理由と、看護師・看護学生が離床前後に確認したいポイントについて解説します。

結論:早期離床は、術後合併症と廃用を防ぎ、回復を促すために行う

結論からいうと、術後に早期離床を行う主な理由は、長時間の臥床による廃用症候群や術後合併症を防ぎ、回復を促すためです。

特に、次のような問題を予防する目的があります。

  • 無気肺や肺炎などの呼吸器合併症
  • 深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓
  • 腸蠕動の低下や術後イレウス
  • 筋力低下や関節拘縮
  • 褥瘡
  • せん妄やADLの低下

ただし、「早ければ早いほどよい」と単純に考えるわけではありません。

離床前には、出血の有無、血圧・脈拍・SpO₂などのバイタルサイン、呼吸状態、疼痛、意識レベル、ふらつき、ドレーンや点滴ルートの状態を確認します。

そして、患者さんの状態に合わせて、

ベッド上での体位変換

端座位

立位

歩行

というように、段階的に進めます。

ざっくり言うと、術後の早期離床は、無理に歩かせることではなく、安全を確認しながら、できるだけ早く活動を再開することです。

この記事の概要

想定読了時間:約12分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 術後に早期離床を行う目的
  • 臥床が続くことで起こりやすい問題
  • 離床前後に確認したい観察項目
  • 安全に離床を進めるときの考え方
  • 看護師・看護学生が患者さんへ説明するときのポイント

根拠:長時間の臥床は、全身の機能低下につながる

手術後に安静が続くと、患者さんの身体は思っている以上に影響を受けます。

ベッド上で過ごす時間が長くなる

呼吸が浅くなりやすい

下肢の筋ポンプが働きにくくなる

腸蠕動や筋力も低下する

合併症やADL低下につながる可能性がある

このような流れです。

「リハビリテーションから見た早期離床の注意点や工夫点」では、早期離床について、術後の全身状態を確認しながら、安全に活動を進めることの重要性が説明されています。

また、開腹術後患者における早期離床を促進する看護師の判断に関する研究では、看護師が早期離床を判断するときに、全身状態、疼痛、出血リスク、バイタルサイン、患者さんの不安や理解などを考慮していることが示されています。

つまり、早期離床は「時間がきたから行う」というより、患者さんの状態を見ながら判断する看護実践です。

術後の早期離床で期待されること

1.呼吸器合併症を予防する

術後は、麻酔の影響や創部痛によって、深く息を吸いにくくなることがあります。

痛みを避けようとして呼吸が浅くなり、長く寝たままになると、肺が十分に広がりにくくなる場合があります。

座位や立位になると、仰臥位のままよりも身体を起こした状態になります。これにより、呼吸をしやすくすることが期待されます。

術後患者さんの離床では、体温や創部だけでなく、呼吸数、SpO₂、呼吸苦の有無なども確認します。

2.血栓を予防する

ベッド上で動かない時間が続くと、下肢の筋肉が血液を心臓へ戻す働きが低下します。

この状態では、下肢の静脈に血液がうっ滞しやすくなり、深部静脈血栓症、いわゆるDVTのリスクにつながります。

離床によって下肢を動かすと、筋ポンプが働き、下肢の血流を促すことが期待されます。

ただし、離床だけで血栓を完全に予防できるわけではありません。弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法、薬剤による予防などが行われている場合は、患者さんごとの指示を確認します。

3.腸蠕動の回復を促す

手術後は、麻酔や手術侵襲などの影響で、腸の動きが低下することがあります。

そのため、腹部膨満、排ガスの有無、排便状況、悪心・嘔吐などを観察します。

離床は腸蠕動の回復を促す方法の一つとして説明されています。看護roo!の術後離床に関する解説でも、離床と腸蠕動の回復、術後合併症予防との関係が紹介されています。

ただし、腹部症状が強い場合や、医師から安静の指示がある場合は、自己判断で離床を進めません。

4.筋力低下やADL低下を防ぐ

臥床が長くなると、身体を動かす機会が減ります。

すると、立つ・歩く・トイレへ行くといった日常生活動作にも影響することがあります。

早い段階から座る、立つ、歩くなどの活動を再開することは、筋力低下や関節拘縮、ADL低下を防ぐ意味があります。

ここで重要なのは、最初から長距離を歩くことではありません。

患者さんが今できる活動を見極め、少しずつ活動範囲を広げていくことです。

5.せん妄や回復意欲にも関係する

術後は、痛みや睡眠不足、環境の変化、薬剤などが重なり、せん妄が起こることがあります。

早期離床は、身体機能だけでなく、患者さんが「少しずつ元に戻っている」と感じるきっかけになる場合もあります。

一方で、せん妄や意識レベルの変化がある患者さんでは、転倒リスクにも注意が必要です。

早期離床にはメリットがありますが、すべての患者さんに同じ方法で行うものではありません。

早期離床は「何時間以内」と決まっているのか

「術後何時間以内に離床するのですか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

今回確認した資料の中には、すべての手術・患者さんに共通する「何時間以内」という全国一律の基準は示されていません。

術式、出血の有無、麻酔方法、循環動態、呼吸状態、疼痛、ドレーンやカテーテルの状態、医師の指示などによって判断が変わるためです。

看護系の解説では、術後の出血リスクが高い時期を過ぎた後や、安静の指示が解除された後に、なるべく早く離床するという考え方が示されています。看護roo!「早期離床」でも、術後の状態と安静度を確認しながら離床することが説明されています。

したがって、看護師・看護学生は、

「術後○時間だから必ず歩かせる」

と考えるのではなく、

「現在、安全に活動できる状態か」

を確認する必要があります。

実践ポイント:看護師・看護学生が離床前に確認したいこと

全身状態

まず、患者さんの全身状態を確認します。

  • 血圧
  • 脈拍
  • SpO₂
  • 呼吸数や呼吸苦
  • 意識レベル
  • 体温
  • ふらつきや気分不良

特に、ベッド上では問題がなくても、座位や立位になったときに血圧低下やふらつきが出ることがあります。

そのため、いきなり歩行へ進めず、まずは端座位で反応を確認します。

出血や創部の状態

術後は、創部やドレーン排液の状態も確認します。

  • 創部からの出血がないか
  • ドレーン排液の急な変化がないか
  • 創部痛が急に強くなっていないか
  • 腹部膨満や強い腹痛がないか

出血が疑われる場合や、全身状態が不安定な場合は、離床を進める前に報告・相談します。

疼痛の程度

痛みが強いと、深呼吸や体動が難しくなります。

「痛いですか?」と聞くだけでなく、寝返りや起き上がりのときにどの程度痛むのかを確認します。

看護roo!「鎮痛薬を投与してでも離床したほうがいいって本当?」では、疼痛を調整しながら離床を進める考え方が紹介されています。

ただし、鎮痛薬を使用すれば必ず離床できるという意味ではありません。鎮痛後の眠気、呼吸状態、ふらつきなども含めて評価します。

ルート・ドレーン類

点滴、酸素チューブ、尿道カテーテル、ドレーンなどがある場合は、離床によって抜けたり引っ張られたりしないように準備します。

離床前に、

  • どのルートがどこにつながっているか
  • 移動時に誰が何を持つか
  • ドレーンバッグの位置
  • 酸素チューブの長さ
  • 輸液ポンプの移動が可能か

を確認しておくと、安全に進めやすくなります。

離床は段階的に進める

術後の患者さんを、いきなり立たせて歩かせるのは安全とはいえません。

基本的には、次のように段階を踏みます。

  1. ベッド上で体位を整える
  2. ベッドを起こす、または端座位にする
  3. 顔色、気分不良、ふらつきを確認する
  4. 立位をとる
  5. その場で足踏みや方向転換を確認する
  6. 状態が安定していれば歩行する

それぞれの段階で、患者さんの反応を見ます。

「立てたから歩ける」とは限りません。

立位でふらつきがある場合や、気分不良を訴えた場合は、無理に次の段階へ進めないことが大切です。

患者さんには、離床の目的を説明する

患者さんの中には、「痛いのに、なぜ動かなければいけないのですか?」と感じる人もいます。

そのときに「手術後はみなさん動きます」とだけ説明しても、不安は軽くならないかもしれません。

たとえば、

「痛みがある中で動くのはつらいと思います。ただ、少し身体を起こすことは、肺や腸の働きを戻したり、足の血流を促したりする目的があります。無理に長く歩くのではなく、まずは座るところから一緒に進めます」

と説明すると、離床の意味を理解してもらいやすくなります。

早期離床に関する看護研究でも、患者さんの不安や理解、回復への意欲が、離床を進めるうえで重要な要素として扱われています。山口大学リポジトリ「消化器疾患術後患者の早期離床を促す看護介入」や、「術後早期離床に関する不安を軽減する看護介入」も参考になります。

筆者の体験談:腹部手術後の患者さんの離床を担当したとき

私が看護師をしていた頃、腹部の手術を受けた患者さんの離床を担当したことがあります。

術後の翌日、患者さんはベッド上で目を覚ましていましたが、身体を動かそうとすると顔をしかめていました。

「今日は歩くんですよね。でも、傷が開きそうで怖いです」

そう言われて、私は最初、「痛みが強いから、もう少し時間を置いたほうがよいかもしれない」と考えました。

一方で、離床を遅らせることで活動が進まなくなる可能性もあります。どのタイミングで始めるのがよいのか、私自身も少し迷いました。

そこで、創部の状態やドレーン、点滴ルートを確認し、バイタルサインを測りました。患者さんに痛みの程度を聞くと、安静にしているときよりも、起き上がるときに痛みが強くなるとのことでした。

先輩看護師に相談すると、「歩けるかどうかを最初から決めずに、まずは座ってみて、患者さんの反応を見よう」と言われました。

私は患者さんにそのことを説明し、ベッドをゆっくり起こしました。端座位になったあと、患者さんは少し不安そうな表情をしていましたが、顔色の変化や強い気分不良はありませんでした。

その日は長く歩くことを目標にせず、立位まで進めて終了しました。

患者さんは、「立てただけでも少し安心しました」と話していました。

この経験があってから、私は早期離床を「歩かせること」と考えなくなりました。患者さんの状態を確認しながら、その時点でできる活動を一つ進めることも、早期離床の大切な一歩だと感じています。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめます。

  • 術後の早期離床は、術後合併症や廃用症候群を予防し、回復を促すために行う
  • 呼吸器合併症、DVT・肺塞栓、腸蠕動低下、筋力低下、ADL低下などの予防につながる
  • 「術後何時間以内」という全国共通の基準があるわけではない
  • 術式、出血、循環・呼吸状態、疼痛、意識、ルート類、医師の指示を確認する
  • 離床は、端座位・立位・歩行のように段階的に進める
  • 早く動かすことよりも、安全に動ける状態かを評価することが重要
  • 患者さんへ目的を説明し、不安や痛みに配慮しながら進める

ざっくり言うと、術後の早期離床は、「無理に歩かせるケア」ではなく、「合併症を防ぎ、回復に向けて安全に活動を再開するケア」です。

FAQ

Q1.術後は、早く歩けるほどよいのですか?

早く活動を再開する意義はありますが、歩行の開始時期や方法は患者さんの状態によって異なります。

出血、循環・呼吸状態、疼痛、意識レベル、ドレーンやルートの状態などを確認し、安全に段階的に進めます。

Q2.痛みがある患者さんは、離床させないほうがよいですか?

痛みがあるからといって、必ず離床できないとは限りません。

ただし、痛みが強いままでは体動が難しくなります。鎮痛の効果や眠気、ふらつきなどを確認し、必要に応じて医師や先輩看護師へ相談します。

Q3.離床中にふらつきが出たらどうしますか?

無理に歩行を続けず、安全を確保します。

患者さんを支えながら座位やベッド上へ戻すなど、施設の手順に従って対応します。その後、血圧や脈拍、意識状態、症状の経過などを確認し、必要に応じて報告します。

Q4.点滴やドレーンがあっても離床できますか?

点滴やドレーンがあることだけで、離床できないとは限りません。

ただし、抜去や牽引が起こらないよう、移動方法や固定状態を事前に確認します。離床の可否や方法について、医師の指示や施設の手順も確認してください。

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この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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