こんにちは、ユウです。
術後の患者さんを受け持ったとき、「SpO2が少し下がっているけれど、まず何を確認すればよいの?」「痰が出せない患者さんには、どのような援助が必要?」と迷ったことはありませんか。
術後は、麻酔や手術侵襲、疼痛、安静などが重なり、呼吸が浅くなったり、痰を十分に排出できなくなったりします。その結果、無気肺や肺炎などの術後呼吸器合併症を起こすことがあります。
私も病棟で働き始めた頃は、SpO2の数値ばかりを追いかけていました。しかし実際には、呼吸数や呼吸の深さ、疼痛、体位、痰の性状、離床状況などを一緒に見なければ、患者さんに起きている変化を捉えられません。
この記事では、術後に起こりやすい呼吸器合併症の原因、観察項目、予防と看護について、実習で使いやすい形にまとめます。
術後呼吸器合併症とは
術後呼吸器合併症は、手術後に生じる呼吸器系の異常の総称です。代表的なものには、無気肺、肺炎、誤嚥性肺炎、呼吸不全、気管支攣縮などがあります。肺血栓塞栓症も、突然の呼吸困難や低酸素血症を起こす重要な術後合併症です。
なかでも無気肺と肺炎は看護実習で取り上げられることが多いため、この記事ではこの2つを中心に解説します。ただし、SpO2低下の原因を最初から無気肺と決めつけず、低換気、誤嚥、肺水腫、気胸、肺血栓塞栓症なども含めて評価することが大切です。
術後呼吸器合併症の全体像は、Postoperative Pulmonary Complications: Clinical and Imaging Insightsで確認できます。
術後呼吸器合併症が起こる時期
術後呼吸器合併症は、覚醒直後から退院後まで起こる可能性があります。無気肺は麻酔中から形成され、術後早期に問題となることがあります。一方、肺炎は術後数日たってから明らかになることもあります。
ただし、「無気肺は術後3日以内」「肺炎は術後3~5日」と日数だけで判断することはできません。患者さんの基礎疾患、術式、手術時間、呼吸状態、活動性などによって経過は異なります。術後日数は参考にしつつ、観察した変化を優先して判断しましょう。
術後に呼吸器合併症が起こる原因
術後呼吸器合併症は、「痰が詰まること」だけで起こるわけではありません。次の要因が複数重なって発症します。
麻酔や仰臥位による肺容量の低下
全身麻酔、筋弛緩、仰臥位などの影響で肺が十分に広がりにくくなり、肺胞が虚脱して無気肺を生じることがあります。手術中から起こり得るため、帰室後は換気状態や酸素化を継続して観察します。
麻酔薬や鎮痛薬の影響
麻酔薬やオピオイドなどの影響が残ると、呼吸中枢が抑制され、呼吸回数や一回換気量が低下することがあります。意識レベル、傾眠の程度、呼吸数、呼吸の深さを合わせて観察する必要があります。
疼痛による浅い呼吸と咳嗽の抑制
胸部や上腹部の手術では、深呼吸や咳をすると創部が痛むため、患者さんが無意識に呼吸や咳を抑えることがあります。肺が十分に広がらず、分泌物もたまりやすくなるため、疼痛コントロールは呼吸器合併症の予防にも関係します。
排痰能力の低下
気管挿管による刺激、脱水、疼痛、筋力低下、意識レベルの低下などにより、痰を出しにくくなることがあります。分泌物が貯留すると換気が妨げられ、感染のリスクも高まります。
安静や活動量の低下
同じ体位が続き、離床が進まないと、背側などの肺が十分に広がりにくくなります。患者さんの状態と術後指示を確認し、安全に体位変換や離床を進めることが重要です。
術後呼吸器合併症のリスクが高い患者
リスクは年齢や喫煙歴だけで決まるものではありません。患者側の要因と手術側の要因を組み合わせて評価します。
- 患者側の要因:高齢、術前のSpO2低下、最近の呼吸器感染、COPDなどの呼吸器疾患、貧血、肥満、睡眠時無呼吸、低栄養、フレイル、喫煙歴など
- 手術側の要因:胸部・上腹部手術、長時間手術、緊急手術、全身麻酔、術後の長期臥床など
術前リスク評価には、年齢、術前SpO2、直近の呼吸器感染、貧血、手術部位、手術時間、緊急手術などを用いるARISCATリスク指標があります。根拠となった研究は、Prediction of postoperative pulmonary complications in a population-based surgical cohortで確認できます。
喫煙歴はどう評価する?
喫煙歴を整理する際には、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が参考になります。ただし、特定の数値だけで術後呼吸器合併症の有無を判断することはできません。現在の喫煙状況、禁煙期間、呼吸器症状、肺機能、SpO2、術式などと合わせて評価します。
無気肺と肺炎の症状・観察ポイント
無気肺でみられる変化
- SpO2の低下、酸素投与量の増加
- 頻呼吸、浅い呼吸、呼吸困難感
- 患側の呼吸音低下
- 深呼吸や咳嗽が十分にできない
- 胸部画像で肺容量低下や透過性低下などがみられる
発熱を伴うことはありますが、発熱だけで無気肺と判断することはできません。術後の炎症反応や感染症など、ほかの原因も考えて評価します。
肺炎でみられる変化
- 発熱、悪寒、全身倦怠感
- 咳嗽、喀痰の増加、膿性痰
- 頻呼吸、呼吸困難、SpO2低下
- 副雑音や呼吸音の左右差
- 炎症反応の上昇
- 胸部画像で新たな浸潤影がみられる
痰の色や聴診所見だけでは肺炎と診断できません。バイタルサイン、呼吸状態、検査値、画像所見などを総合して判断します。
帰室後に観察したい項目
- 呼吸数、呼吸の深さ・リズム、努力呼吸の有無
- SpO2の推移と酸素投与方法・流量
- 呼吸音、左右差、副雑音
- 意識レベル、眠気、鎮静の程度
- 咳嗽力、痰の量・粘稠度・色・喀出状況
- 疼痛の部位と程度、深呼吸や咳嗽への影響
- 体温、脈拍、血圧
- 体位変換や離床の状況
- 必要に応じて血液ガス、血液検査、胸部画像など
麻酔後は酸素化だけでなく、換気、循環、意識、体温、疼痛なども継続して評価します。麻酔後管理の基本は、米国麻酔科学会の麻酔後ケア基準も参考になります。
術後呼吸器合併症を予防する看護
1.疼痛を評価し、適切な鎮痛につなげる
痛みが強いと、患者さんは深呼吸や咳嗽、離床を避けるようになります。安静時と体動時の痛みを評価し、鎮痛薬の効果と副作用も確認します。鎮痛後に深呼吸や離床を行うなど、援助のタイミングを工夫しましょう。
2.深呼吸と効果的な咳嗽を援助する
患者さんの覚醒状態と疼痛を確認し、無理のない範囲でゆっくり深呼吸するよう促します。咳をするときは、枕やタオルで創部を支えると、痛みへの不安が軽減し、咳をしやすくなることがあります。
インセンティブスパイロメトリーは、機器を渡すだけでは十分ではありません。適切な説明と見守りのもと、深呼吸、咳嗽、早期離床、疼痛管理などと組み合わせて行います。詳しくは、AARC Clinical Practice Guideline: Incentive Spirometry: 2011を参照してください。
3.体位変換と早期離床を進める
患者さんの循環動態、疼痛、ドレーン類、安静度を確認しながら、定期的な体位変換、座位、立位、歩行へと段階的に進めます。上体を起こすことで横隔膜が動きやすくなり、換気や排痰を促せる場合があります。
4.排痰しやすい環境を整える
水分制限がなければ、指示や患者さんの状態に沿って水分摂取を支援します。口腔内を清潔に保つことも大切です。自力で痰を出せない場合は、呼吸状態を評価し、必要に応じて吸引などを検討します。
体位ドレナージ、胸部叩打法、ネブライザー、去痰薬などは、すべての術後患者さんに一律に行うものではありません。分泌物の貯留、咳嗽力、疾患、禁忌、医師や理学療法士の指示などを確認して選択します。ルーチンの気道クリアランス療法に関する考え方は、AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patientsで確認できます。
5.酸素療法中も原因を評価する
酸素は医師の指示や院内基準に沿って投与し、SpO2の反応、呼吸状態、デバイスの装着状況を確認します。SpO2が改善しても、低換気や無気肺などの原因が解消したとは限りません。酸素化の数値だけでなく、患者さん全体を観察します。
術後呼吸器合併症を予防する介入のエビデンスは、Perioperative interventions for prevention of postoperative pulmonary complicationsでも整理されています。
抗菌薬は排痰ケアではない
抗菌薬は、細菌感染が疑われる、または診断された場合に、原因菌や患者さんの状態に応じて使用される治療です。痰を出しやすくするための薬ではなく、無気肺を改善する目的で一律に使用するものでもありません。
看護師は、抗菌薬の投与状況だけでなく、体温、呼吸状態、痰、検査値、アレルギー症状、副作用などを観察します。
すぐに報告・対応が必要なサイン
- 急激なSpO2低下、または必要酸素量の増加
- 著しい頻呼吸、徐呼吸、無呼吸、努力呼吸
- 呼びかけへの反応低下、強い傾眠、急な不穏
- 突然の呼吸困難、胸痛、冷汗、チアノーゼ
- 呼吸音の著しい左右差や消失
- 血圧低下、頻脈など循環動態の変化
異常を認めたら患者さんのそばを離れず、応援を要請し、気道・呼吸・循環を評価します。施設の急変対応手順に従い、必要な酸素投与やモニタリング、医師への報告につなげましょう。
私が病棟で意識するようになったこと
病棟で術後患者さんを受け持ち始めた頃の私は、「SpO2が保たれていれば大丈夫」と考えがちでした。しかし、酸素投与中は数値が保たれていても、呼吸が浅く、痛みで咳ができず、離床が進んでいない患者さんがいます。
そこで、数値を見る前後に、胸郭の動き、呼吸数、意識、疼痛、痰、体位を確認し、「深呼吸できますか」「痰は出せそうですか」と患者さんに尋ねるようにしました。鎮痛が効く時間に合わせて座位や歩行を進めると、呼吸が深くなり、痰を出しやすくなる場面も経験しました。
術後の呼吸管理は、モニターの値だけを整えることではありません。患者さんが痛みをコントロールしながら、呼吸し、咳をし、動ける状態をつくることが看護の大切な役割だと感じています。
実習記録に書くときの考え方
「術後だから無気肺のリスクがある」だけでは、患者さんに合ったアセスメントになりません。次のように、患者さんの情報と病態をつなげて考えます。
上腹部手術後で、創部痛により深呼吸と咳嗽が不十分である。臥床時間が長く、痰の喀出も困難なことから、肺胞の拡張不良と分泌物貯留による無気肺のリスクがある。鎮痛効果を確認したうえで深呼吸・咳嗽を援助し、安静度に沿って離床を進める。
このように、「どの情報から」「何が起こると考え」「何を観察・援助するのか」を一続きで書くと、根拠のある記録になります。
術後呼吸器合併症についてよくある質問
SpO2が正常なら無気肺ではありませんか?
SpO2が保たれていても、小範囲の無気肺や酸素投与によって変化が目立たない場合があります。呼吸数、呼吸音、胸郭の動き、疼痛、排痰状況、酸素投与条件なども合わせて評価します。
術後は全員に胸部叩打法を行いますか?
一律には行いません。分泌物の貯留や咳嗽力などを評価し、必要性と禁忌を確認して選択します。まずは疼痛管理、体位調整、深呼吸、咳嗽、早期離床などを患者さんの状態に合わせて行います。
黄色い痰が出たら肺炎ですか?
痰の色だけでは肺炎と診断できません。発熱、呼吸状態、SpO2、聴診所見、炎症反応、胸部画像などを総合して判断します。痰の量や色が変化した場合は、ほかの所見とともに報告しましょう。
まとめ
- 術後呼吸器合併症には、無気肺、肺炎、呼吸不全、誤嚥、気管支攣縮などがある
- 原因は麻酔、疼痛、低換気、排痰困難、安静などが重なって生じる
- 発症時期を日数だけで決めつけず、呼吸状態の変化を継続して観察する
- SpO2だけでなく、呼吸数、意識、疼痛、痰、体位、活動性を合わせて評価する
- 予防では、適切な鎮痛、深呼吸と咳嗽、体位変換、早期離床、口腔ケアなどを組み合わせる
- 胸部叩打法やネブライザーなどは一律に行わず、必要性を評価する
術後患者さんの呼吸状態は、短時間で変化することがあります。「数値は正常だから大丈夫」と考えず、患者さんの表情や呼吸の様子、痛み、動きまで丁寧に観察していきましょう。
術後合併症をまとめて確認する
それぞれの術後合併症について詳しくまとめましたのでご活用ください。
術後合併症の種類と出現時期
- 術後合併症の種類と出現時期
- 術後合併症 ~術後出血~
- 術後合併症 ~縫合不全~
- 術後合併症 ~術後疼痛~
- 術後合併症 ~術後感染症~
- 術後合併症 ~呼吸器合併症~
- 術後合併症 ~深部静脈血栓症(DVT)~
- 術後合併症 ~離床遅延~
- 術後合併症 ~術後イレウス(腸管麻痺)~
- 術後合併症 ~術後せん妄~
術後ケアをさらに学びたい方へ
術後の観察や看護について、もう少し詳しく学びたい方は、こちらの書籍も参考になります。

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参考文献
- Ufuk F, et al. Postoperative Pulmonary Complications: Clinical and Imaging Insights. Balkan Med J. 2025;42(5):405-418.
- Canet J, et al. Prediction of postoperative pulmonary complications in a population-based surgical cohort. Anesthesiology. 2010;113(6):1338-1350.
- Restrepo RD, et al. AARC Clinical Practice Guideline: Incentive Spirometry: 2011. Respir Care. 2011;56(10):1600-1604.
- Strickland SL, et al. AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients. Respir Care. 2013;58(12):2187-2193.
- Odor PM, et al. Perioperative interventions for prevention of postoperative pulmonary complications: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2020;368:m540.
- American Society of Anesthesiologists. Standards for Postanesthesia Care.




コメント
現在通信課程一年 52歳おばさん 事例展開 悪戦苦闘中です 大変素晴らしいです ヘンダーソンの正常に呼吸する アセスメント 難儀です
コメントありがとうございます^^
アセスメントはなかなか難しいですよね。
どんな点が難しいのか詳しく教えていただければ、アドバイスさせていただきますよ!
術後合併症のポイントをしっかり押さえて、実習に備えていきましょうね(*^u^*)
おはようございます♪ 急性期病棟復帰27年ぶり 昨夜勤務 全麻tulパス76歳女性 オペ後帰室 ルームでspo2 86 酸素3㍑でspo2 87血圧90*50 アセスメント教えて下さい
コメントありがとうございます。
そのデータだけでアセスメントと言われましても、お答えしにくいところですが・・・。^^;
酸素化が悪いので術後回復の状態を見ながら、指示に従って酸素飽和度を上昇させてあげましょう。
また、血圧はやや低めなので指示通りに対応してあげるとよいでしょう。
看護の面では、個別性を感じる情報が乏しいので有益なアドバイスができないのですが、、まずは血尿の観察と疼痛に対するケアを中心に行いましょう。