Hbが低下したときに見るべき観察項目|看護師・看護学生が確認したいポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、採血結果でHb(ヘモグロビン)が低下している患者さんを見たとき、「数値以外に何を観察すればよいのだろう」と迷ったことはありませんか?
Hbが低いと貧血を考えますが、患者さんによって症状の出方は異なります。出血が隠れている場合もあれば、黄疸やしびれなどが原因を考える手がかりになることもあります。
今回は、Hb低下時にまず確認したい症状と身体所見、原因を考えるときの観察ポイントについて解説します。
結論:Hb低下時は、数値だけでなく「症状」と「原因を示す所見」を同時に見る
Hbが低下しているときは、まず次の2つを確認します。
- 酸素不足による症状があるか
- 出血や溶血、栄養欠乏などの原因を示す所見があるか
具体的には、次の項目を確認します。
- 倦怠感、易疲労感
- めまい、立ちくらみ、頭痛
- 息切れ、動悸、頻脈
- 顔色や眼瞼結膜、口腔粘膜、爪床の蒼白
- 血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂、意識状態
- 便や尿、創部などからの出血
- 黄疸や脾腫
- しびれ、歩行障害などの神経症状
- 舌炎、口角炎
- 発熱や体重減少などの全身症状
ざっくり言うと、Hb低下時は、
「Hbはいくつか」だけではなく、
「患者さんにどのような変化が起きているか」を見る
ことが重要です。
判断では、Hbの数値だけでなく、症状の有無と程度、Hbが低下した速さ、出血の有無、循環動態、基礎疾患を合わせて確認します。強い息苦しさ、意識状態の変化、血圧低下、頻脈、明らかな出血などがある場合は、速やかに状態を再評価し、医療チームへ報告・相談します。
推定読了時間:約10分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- Hbが低下したときに現れやすい症状
- Hb低下と酸素供給の関係
- 出血や溶血など、原因を考える観察項目
- 看護師・看護学生が確認したいバイタルサインと身体所見
- 輸血を考えるときの基本的な注意点
根拠:Hb低下では症状と原因を示す所見を確認する
貧血の自覚症状は、組織への酸素供給低下と、それを補う代償反応で説明できます。一般的な症状として、倦怠感、易疲労感、めまい、頭痛、失神、動悸、息切れなどが挙げられます。
日本内科学会雑誌の貧血に関する総説や、MSDマニュアルの「貧血の評価」でも、貧血の症状や身体所見が解説されています。
身体所見では、皮膚・眼瞼結膜・口腔粘膜の蒼白などを確認します。また、黄疸や脾腫は溶血性貧血、しびれや歩行障害は悪性貧血などを考える手がかりになる場合があります。
Hb 7 g/dL以下では頭痛、耳鳴り、めまい、心雑音などが出やすく、Hb 6 g/dL以下が持続すると心不全症状が増えるという記載があります。詳しくは日本内科学会雑誌の総説で解説されています。
ただし、症状があるかどうかは、Hbの低下の程度だけでなく、低下した速さや患者さんの状態などによっても変わります。輸血についても、Hbの値だけで決まるわけではありません。
Hb低下時にまず確認すること
1.低酸素による症状がないか
Hbは、血液中で酸素を運ぶ役割を担っています。
そのためHbが低下すると、全身の組織へ運ばれる酸素が不足しやすくなります。体はそれを補おうとして、心拍数を増やしたり、呼吸を速めたりすることがあります。
流れで表すと、次のようになります。
- Hbが低下する
- 酸素を運ぶ力が低下する
- 体が酸素不足を補おうとする
- 動悸、頻脈、息切れ、倦怠感などが出ることがある
貧血の症状としては、倦怠感、易疲労感、めまい、頭痛、失神、動悸、息切れなどが挙げられます。
ただし、「Hbが低いのに症状がないから大丈夫」とは限りません。反対に、症状が強い場合は、Hbの数値だけを確認して終わりにしないことが大切です。
2.バイタルサインを確認する
Hb低下時には、次のバイタルサインを確認します。
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸数
- SpO₂
- 意識レベル
特に、脈拍の増加、息苦しさ、呼吸数の変化、血圧低下、意識状態の変化などがないかを確認します。
ただし、バイタルサインの変化は貧血だけで起こるとは限りません。発熱、脱水、疼痛、不安、感染、出血など、ほかの原因も考えます。
Hb低下
+頻脈
+血圧低下
+出血所見
という場合には、単なる慢性的な貧血ではなく、出血などの急な変化がないかを考える必要があります。
Hb低下時に観察したい身体所見
1.蒼白がないか
貧血では、皮膚や粘膜が白っぽく見えることがあります。
確認する場所は、顔色だけではありません。
- 眼瞼結膜
- 口腔粘膜
- 爪床
- 皮膚
顔色は照明や本人のもともとの肌色にも影響されます。そのため、眼瞼結膜や口腔粘膜なども合わせて観察します。
ただし、蒼白の有無だけでHb低下の程度を判断することはできません。身体所見は、採血結果や患者さんの症状と合わせて考えます。
2.動作時の息切れや動悸
安静時だけでなく、活動時の症状も確認します。
- 起き上がったとき
- 立位になったとき
- 歩行したとき
- トイレへ移動したとき
- 階段を昇降したとき
「歩くと息が切れますか?」だけではなく、次の点も確認すると、患者さんの変化を捉えやすくなります。
- 以前と比べて歩く距離が変わったか
- 途中で休憩が必要になったか
- 動悸やふらつきがあるか
- 症状が安静で改善するか
3.めまい・立ちくらみ・眠気
Hb低下時には、めまいや立ちくらみ、頭痛、眠気、集中力低下などがみられることがあります。
特に起立時に症状が出る場合は、転倒につながる可能性があります。
患者さんが「少しふらつく」と話している場合でも、次の動作を急がせないことが重要です。
- ベッドから起き上がる
- 端座位になる
- 立位になる
- 歩行する
どの段階で症状が出たのかを確認し、必要に応じて援助を求めます。
Hb低下の原因を考える観察ポイント
Hbが低下する原因は一つとは限りません。
看護師・看護学生は、症状を確認しながら「出血はないか」「赤血球が壊れていないか」「造血に必要なものが不足していないか」などを考えます。
1.出血の有無
まず確認したいのは、出血です。
観察する部位や情報には、次のようなものがあります。
- 手術創やドレーンからの排液
- 皮下出血
- 点状出血
- 歯肉出血
- 鼻出血
- 血尿
- 黒色便や血便
- 月経量の変化
- 嘔吐物への血液の混入
- 便潜血の有無
また、患者さんが「便は普通です」と話していても、便の色や回数を具体的に確認すると情報が得られることがあります。
出血が疑われる場合は、Hbの数値だけでなく、脈拍や血圧、意識状態、皮膚の冷感など、全身状態の変化も合わせて確認します。
2.黄疸や脾腫
黄疸や脾腫は、赤血球が壊される溶血性貧血などを考える手がかりになります。
観察する項目としては、次のようなものがあります。
- 眼球結膜や皮膚の黄染
- 腹部の張りや不快感
- 脾腫を示唆する所見
- 尿色の変化
ただし、看護師が身体所見だけで原因を確定するわけではありません。気になる所見があれば、検査結果や経過と合わせて報告・相談します。
3.しびれや歩行障害
しびれ、知覚障害、歩行障害などの神経症状は、悪性貧血などを考える手がかりになる場合があります。
患者さんから、次のような訴えがないか確認します。
- 「足先がしびれる」
- 「まっすぐ歩きにくい」
- 「手の感覚がおかしい」
- 「ふらつきが続いている」
「めまい」と「しびれ」は、どちらも患者さんが表現しにくい症状です。どの部位に、いつから、どのような症状があるのかを聞き取ることが大切です。
4.舌炎や口角炎
舌炎や口角炎なども、貧血の原因を考えるときの手がかりになります。
口腔内を観察するときは、次の項目を確認します。
- 舌の痛み
- 舌の赤みや腫れ
- 口角のただれ
- 口腔粘膜の蒼白
- 食事や嚥下への影響
患者さんが「口内炎ができた」と話していても、単なる口内炎と考えず、食事摂取量やほかの症状も合わせて確認します。
Hbの数値はどのように見るのか
Hbの値だけで重症度を決めない
Hbの数値は重要ですが、数値だけで患者さんの状態を決めることはできません。
同じHb値でも、次のような違いがあります。
- 急にHbが低下したのか
- 以前から低値が続いているのか
- 出血が続いているのか
- 安静時にも症状があるのか
- 心疾患などの基礎疾患があるのか
- 血圧や脈拍が安定しているのか
つまり、検査結果は一時点の数字としてではなく、経過で確認します。
前回値と比較して急に低下していないか、ほかの血液検査の変化はないか、患者さんの症状が変化していないかを確認します。
Hb 7 g/dL前後は重要な判断材料になる
提示された資料では、Hb 7 g/dL以下で頭痛、耳鳴り、めまい、心雑音などが出やすく、Hb 6 g/dL以下が持続すると心不全症状が増えるという記載があります。日本内科学会雑誌の総説で解説されています。
一方で、輸血を行うかどうかについては、Hbの値だけで決まりません。
- 症状の有無と程度
- 出血が続いているか
- 循環動態が安定しているか
- 心疾患の有無
- Hbが低下した経過
今回確認できた調査結果では、輸血に関する主要ガイドラインの原典を直接確認できていません。そのため、「Hbがこの値なら必ず輸血する」と断定することは避ける必要があります。
一般にはHb 7 g/dL前後が重要な判断ラインの一つとされますが、実際の判断は患者さんの状態に応じて医師やチームで行われます。
実践ポイント:看護師・看護学生が確認すること
ポイント1:最初に患者さんの訴えを確認する
採血結果を見たら、すぐに検査値だけを追うのではなく、患者さんに症状を確認します。
- だるさはないか
- 少し動いただけで息切れしないか
- 動悸はないか
- 立ち上がったときにふらつかないか
- 頭痛や眠気はないか
- 以前より活動量が落ちていないか
患者さんが症状を「大丈夫」と表現していても、実際には歩行距離が短くなっていることがあります。
「普段どおりですか?」だけではなく、「トイレまで歩いたときはどうでしたか?」など、具体的な場面を聞くことも役立ちます。
ポイント2:出血を見逃さない
Hb低下を見たときは、出血の有無を確認します。
とくに、次のような場合では、出血の情報を丁寧に集めます。
- 術後
- 抗凝固薬などを使用している場合
- 消化管出血が疑われる場合
- 血尿がある場合
- 月経量が多い場合
排液や便の性状、皮膚の出血斑などは、記録や患者さんの訴えだけでなく、実際の状態を確認します。
ポイント3:活動時の変化を確認する
Hbが低下している患者さんでは、活動時に症状が出やすいことがあります。
ただし、症状がある患者さんを無理に歩かせて確認するのではありません。
安全を確保したうえで、起き上がりや立位など、必要な動作の中で変化を観察します。ふらつきや息切れがあれば、活動を中止し、状態を再評価します。
ポイント4:原因を示す所見をまとめて報告する
報告するときは、「Hbが低いです」だけで終わらせないことが大切です。
例えば、次のように数値と症状、身体所見をまとめて伝えます。
- Hbが前回より低下している
- 安静時の脈拍が増えている
- 歩行時に息切れがある
- 眼瞼結膜が蒼白に見える
- 便が黒色になっている
- 歯肉出血がある
- 黄疸やしびれがある
このように情報を整理すると、患者さんの状態変化や原因をチームで共有しやすくなります。
筆者の体験談:検査値と患者さんの変化を結びつける
私が看護師をしていた頃、採血結果を確認していて、前回よりHbが低下している患者さんを受け持ったことがありました。
最初に検査結果を見たときは、「貧血が進んでいるな」と思いました。ただ、その患者さんはベッド上では普段と変わらない様子に見えました。
会話もできていましたし、表情も大きく変わっていません。
私は最初、「症状はあまりないのかもしれない」と考えました。
念のため本人に聞いてみると、「特に変わりません」とのことでした。しかし、少し話を続けていると、「最近、トイレに行くときに息が切れる」と話してくれました。
私はそこで、「特に変わらない」という言葉だけで判断してはいけなかったと感じました。
歩行時の様子を確認すると、以前より歩く速度が遅く、途中で一度立ち止まっていました。脈拍や血圧などを確認し、排泄の状況や便の色についても聞き取りました。
その後、先輩看護師に相談すると、「採血結果だけでなく、普段との違いを具体的に見ていこう」と言われました。
その言葉を聞いて、私はHbの値を見たあとに、患者さんの動作や会話の内容をもう一度振り返りました。
この経験があってから、私は検査値を確認するとき、「この数値によって、患者さんの生活の中で何が変わっているのか」を考えるようになりました。数値と患者さんの様子がつながったとき、初めて状態を具体的に捉えられるように感じています。
この体験談は医学的根拠を示すものではありません。実際の観察や判断では、患者さんの状態を確認し、必要に応じて医療チームへ報告・相談してください。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- Hb低下時は、数値だけでなく症状と原因を確認する
- 倦怠感、めまい、立ちくらみ、息切れ、動悸、頻脈に注目する
- 顔色だけでなく、眼瞼結膜、口腔粘膜、爪床も観察する
- 便、尿、創部、皮膚などからの出血を確認する
- 黄疸、脾腫、しびれ、歩行障害、舌炎、口角炎も原因を考える手がかりになる
- Hb 7 g/dL前後は重要な判断材料の一つだが、輸血の判断は症状や出血、循環動態、基礎疾患などを合わせて行う
- 検査値の変化と、患者さんの普段との違いを結びつけて観察する
Hb低下を見たときは、
「Hbはいくつか」
「患者さんは何に困っているか」
「出血や原因を示す所見はないか」
の3つを意識すると、観察の方向性が整理しやすくなります。
FAQ
Q1.Hbが低くても症状がなければ問題ありませんか?
症状がない場合でも、問題がないとは限りません。
貧血の症状は、Hbの低下の程度や経過、患者さんの状態によって異なります。症状がなくても、前回値から急に低下していないか、出血がないかなどを確認します。
Q2.貧血の患者さんではSpO₂が低下しますか?
Hb低下時には、SpO₂だけでなく、息切れ、動悸、頻脈、倦怠感などの症状を合わせて確認します。
SpO₂の値だけでHb低下による影響を判断せず、患者さんの全身状態や活動時の変化も観察します。
Q3.Hbが7 g/dLなら必ず輸血になりますか?
必ず輸血になるとは限りません。
Hb 7 g/dL前後は重要な判断材料の一つですが、症状、出血の有無、循環動態、心疾患の有無などによって判断は変わります。輸血の必要性は、患者さんの状態を踏まえて医師・医療チームが判断します。
Q4.顔色が悪くなければ貧血ではありませんか?
顔色だけで貧血の有無や程度を判断することはできません。
眼瞼結膜、口腔粘膜、爪床なども観察し、採血結果や倦怠感、息切れ、動悸などの症状と合わせて評価します。
参考文献
- 日本内科学会雑誌「貧血」に関する総説(日本内科学会雑誌 第104巻第7号)PDF
- 日本内科学会雑誌「貧血の症状・身体所見」に関する総説(日本内科学会雑誌 第96巻第3号)PDF
- MSDマニュアル プロフェッショナル「貧血の評価」公式ページ
- ナース専科「貧血の看護|症状・観察項目・看護計画など」解説
- プチナースWEB「実習に役立つ看護計画2-5」解説
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