鎮痛薬を使っているのに痛みが残るときの看護|追加で確認したい評価項目
こんにちは、ユウです。
みなさんは、鎮痛薬を使っている患者さんから「まだ痛い」と言われたとき、どのように対応していますか?
NRSやVASで痛みの強さを聞いて、薬が効いていないと判断してよいのでしょうか。それとも、痛みの場所や性質、薬の副作用まで確認したほうがよいのでしょうか。
今回は、鎮痛薬を使っていても痛みが残るときに、看護師・看護学生が追加で確認したい評価項目を中心に解説します。
結論:痛みの数字だけでなく「痛み・効果・副作用・生活への影響」を見る
結論からいうと、鎮痛薬を使っているのに痛みが残る場合は、痛みの強さを数値で確認するだけでは不十分です。
まずは、次の項目を確認します。
- 痛みの強さ
- 痛む部位
- 痛みの性質
- いつから、どのように続いているか
- 持続痛か、突然出る突出痛か
- 体動や体位、咳、排泄などとの関係
- 睡眠、食事、移動などへの影響
- 定期薬やレスキュー薬が効いているか
- レスキュー薬を使った後の効果と副作用
- 眠気、呼吸抑制、せん妄などの有害事象
ざっくり言うと、
「痛みが何点か」だけでなく、
「どんな痛みが、いつ、何によって起こり、薬でどの程度変化し、生活にどれだけ影響しているか」
を確認します。
また、痛みが残っているからといって、すぐに「薬が効いていない」と決めつけることも避けます。痛みの原因が変化している可能性や、副作用のために十分な治療が行えない状態も考えます。
想定読了時間
約15分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 鎮痛薬使用中でも痛みの評価が必要な理由
- 数値以外に確認したい痛みの評価項目
- レスキュー薬の効果と副作用の見方
- 自己申告が難しい患者さんの観察ポイント
- 看護師・看護学生が起こしやすい判断の間違い
根拠:痛みは「強さ」だけでは評価できない
日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン』では、痛みの評価項目として、痛みの強さだけでなく、次のような内容が示されています。
- 日常生活への影響
- 痛みのパターン
- 痛みの部位
- 痛みの経過
- 痛みの性状
- 痛みの増悪因子・軽快因子
- 現在行っている治療への反応
- レスキュー薬の効果と副作用
つまり、痛みの評価は「何点ですか?」という質問だけでは終わりません。
日本がん治療学会関連のがん診療ガイドラインでも、痛みの原因や性質、治療への反応などを含めた包括的な評価が重要とされています。
さらに、厚生労働省の『医療用麻薬適正使用ガイダンス』では、NRSやVASなどを使って、治療前後の痛みの強さを評価し、鎮痛効果を確認することが示されています。
ここで大切なのは、治療前後で痛みがどう変化したかを見ることです。
たとえば、レスキュー薬を使う前のNRSが8で、使用後に4になったとします。
痛みは残っていますが、薬によって変化している可能性があります。一方、NRSが8から8のままで、痛みの部位や性質も変化している場合は、治療内容だけでなく痛みの原因を再評価する必要があります。
詳しい解説
痛みの強さは、NRSやVASで確認する
痛みを数値で確認する方法として、NRSやVASがあります。
NRSとは
NRSは、痛みがない状態を0、想像できる最も強い痛みを10として、現在の痛みを数字で表してもらう方法です。
「今の痛みは、0から10でいうとどのくらいですか?」
と尋ねます。
VASとは
VASは、痛みがない状態から最も強い痛みまでの線上で、現在の痛みがどの位置にあるかを示してもらう方法です。
患者さんが数値で答えにくい場合は、表情のイラストを使うFPSなど、患者さんの状態に合った方法を検討します。
ただし、数値はあくまで患者さんが感じている痛みを共有するための手段です。
同じ「NRS4」でも、眠れない人もいれば、歩行や食事ができている人もいます。数値だけを比較するのではなく、生活への影響と合わせて評価します。
追加で確認したい痛みの評価項目
1.痛みの部位
まず、どこが痛いのかを確認します。
- 手術創部なのか
- 腹部や胸部など別の場所なのか
- 痛みが広がっているのか
- 複数の場所が痛いのか
- 以前と同じ部位なのか
痛みの部位が変わっている場合や、新しい部位に痛みが出ている場合は、これまでの痛みと同じものとして扱ってよいのかを考えます。
2.痛みの性質
患者さんの言葉で、どのような痛みなのかを確認します。
たとえば、
- ズキズキする
- 刺されるような痛み
- 灼けるような痛み
- 重苦しい
- 締めつけられる
- 電気が走るような痛み
などです。
「痛い」という言葉だけでは、痛みの特徴が分かりません。
「ズキズキしますか?」「焼けるような感じですか?」のように、患者さんが答えやすい表現を使うと、痛みの性質を確認しやすくなります。
3.痛みの経過
次のような内容を確認します。
- いつから始まったのか
- 急に出たのか、徐々に強くなったのか
- 以前より強くなっているのか
- ずっと続いているのか
- 時間帯による変化があるのか
痛みが増悪している場合は、薬の効果だけでなく、痛みの原因そのものが変化していないかを考えます。
4.持続痛か、突出痛か
痛みのパターンも重要です。
ずっと続いている痛みは、持続痛と呼ばれます。一方、普段は落ち着いていても、体動などをきっかけに急に強くなる痛みは、突出痛として評価されることがあります。
たとえば、
- 安静にしていても痛い
- 起き上がると急に痛い
- 排泄時に痛い
- 咳をすると痛い
- 薬が切れる頃に痛くなる
などです。
「いつ痛いのか」を確認すると、定期薬の効果が途切れる時間帯や、動作に関連した痛みが見えてくることがあります。
5.増悪因子と軽快因子
何をすると痛みが強くなり、何をすると楽になるのかを確認します。
- 体動
- 体位
- 咳
- 排泄
- 食事
- 深呼吸
- 安静
- 冷罨法や温罨法などのケア
たとえば、「横になっていれば大丈夫だが、起き上がると痛い」という場合と、「何をしても痛みが続く」という場合では、必要な評価が異なります。
6.日常生活への影響
痛みが生活に与えている影響も確認します。
- 眠れているか
- 食事がとれているか
- 移動できているか
- 清潔ケアや排泄ができているか
- リハビリテーションに参加できているか
- 仕事や学習に影響しているか
痛みの数値が下がっていても、睡眠や移動に大きな影響が残っていることがあります。
反対に、痛みが残っていても、患者さんが希望する活動を行えている場合もあります。
そのため、痛みの強さと生活機能を別々に確認することが大切です。
レスキュー薬は「使ったか」だけでなく、効果と副作用を見る
レスキュー薬を使用している場合は、使用の有無だけで終わらせません。
次の内容を確認します。
- 使用前の痛みの強さ
- 使用した時刻
- どのくらいで効果を感じたか
- 使用後に痛みがどの程度変化したか
- 効果がどのくらい続いたか
- 眠気や悪心、便秘などがないか
- 使用後も痛みが続いているか
「薬を使いましたか?」だけでは、治療の反応を評価できません。
たとえば、薬を使った後に痛みが軽くなっても、強い眠気が出ている場合があります。この場合は、単純に「効いたからよかった」と判断するのではなく、鎮痛効果と安全性を一緒に見ます。
厚生労働省の『医療用麻薬適正使用ガイダンス』では、治療前後の疼痛強度だけでなく、生活への影響や眠気などの有害事象を総合的に確認することが示されています。
痛みが残るときに確認したい副作用
鎮痛薬を使用している患者さんでは、痛みだけでなく有害事象も確認します。
特に重要なのは、
- 眠気
- 呼吸抑制
- せん妄
です。
痛みが強いからといって、薬の追加や増量だけに意識が向くと、副作用の見落としにつながる可能性があります。
眠気が強い、呼吸状態に変化がある、意識や行動に変化があるなどの場合は、施設の手順に沿って速やかに報告・対応します。
「痛みがあるから薬を足す」という一方向の判断ではなく、
痛みはどの程度か
薬は効いているか
安全に継続できる状態か
をセットで確認します。
自己申告が難しい患者さんでは、行動や反応を観察する
患者さんが自分で痛みを伝えられる場合は、NRSやVASなどを使って本人の訴えを確認します。
一方で、認知機能障害がある患者さんや、意思疎通が難しい患者さんでは、自己申告だけで評価することが困難な場合があります。
そのような場合は、
- 表情の変化
- 体動
- しかめ面
- 声やうめき
- ケアや体位変換への反応
- 落ち着きのなさ
- いつもと違う行動
などを観察します。
日本緩和医療学会の『がん疼痛治療の概要』では、認知機能障害がある患者さんについて、痛みに関連する行動や不快感を観察することが示されています。
また、ICU領域では、自己申告が可能な場合はNRSやVAS、困難な場合はBPSやCPOTを用いることが推奨されています。日本版PADガイドラインでは、ICUにおける介入の目安として、NRSが3を超える場合、VASが3を超える場合、BPSが5を超える場合、CPOTが2を超える場合が示されています。
ただし、これはICU領域の評価基準です。すべての患者さんにそのまま適用するのではなく、患者さんの状態や施設の評価方法に合わせて使用します。
「薬が効いていない」と判断する前に考えること
鎮痛薬を使っても痛みが残るとき、看護では次の順番で考えると整理しやすくなります。
1.今の痛みを確認する
まず、現在の痛みを確認します。
- 強さ
- 部位
- 性質
- 経過
- 痛みのパターン
ここでは、患者さんの現在の訴えをそのまま受け止めます。
2.薬の効果を確認する
次に、治療の反応を見ます。
- 定期薬は効いているか
- レスキュー薬は効いたか
- 効果が出るまでに時間がかかったか
- 効果は短時間で切れていないか
- 使用前後で生活動作が変化したか
3.副作用を確認する
痛みが残っている一方で、
- 強い眠気
- 呼吸状態の変化
- せん妄
- 悪心
- 便秘
などがないかを確認します。
4.痛みの原因を再評価する
痛みの場所や性質が変化している場合、薬の調整だけではなく、痛みの原因そのものを再評価する必要があります。
日本がん治療学会関連のがん診療ガイドラインでも、鎮痛薬の効果だけでなく、痛みの原因を含めて評価することが示されています。
実践ポイント
短時間で確認するなら「5つ」に分ける
忙しい場面では、すべてを一度に詳しく聞くことが難しい場合もあります。
そのときは、次の5つに分けて確認します。
- どこが痛いか
- どんな痛みか
- いつ、何をすると痛いか
- 薬を使ってどう変わったか
- 眠気や呼吸状態などに問題がないか
そのうえで、睡眠や食事、移動などへの影響を確認します。
記録では「痛みあり」だけで終わらせない
「疼痛あり」「鎮痛薬使用」とだけ記録すると、治療の評価が分かりにくくなります。
たとえば、
- 右下腹部の持続痛
- 安静時NRS4、体動時NRS7
- レスキュー薬使用後、30分でNRS4へ低下
- 眠気の訴えあり
- 食事摂取には影響なし
のように、痛みの特徴、治療反応、副作用、生活への影響を分けて記録すると、経過を共有しやすくなります。
数値の変化だけで「改善」と判断しない
NRSが8から5になったとしても、患者さんが眠れない、食事ができない、移動できない場合があります。
反対に、数値が大きく変わらなくても、患者さんが休めるようになったり、動作が可能になったりすることもあります。
痛みの数値は重要ですが、生活機能と組み合わせて評価します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、鎮痛薬を使っている患者さんから「薬を飲んだのに、まだ痛い」と言われたことがありました。
記録を見ると、定期薬も使用されていて、必要時の薬も一度使われていました。最初の私は、「薬が効いていないのかもしれない」と考えました。
そこで、痛みの数字を確認すると、患者さんは「今は5くらい」と答えました。
私はその数字を見て、前よりは下がっているのかもしれないと思いました。でも、患者さんの表情は硬く、ベッド上でほとんど動かずにいました。
「どこが一番痛いですか?」と聞くと、安静にしているときは創部の痛みが中心でしたが、起き上がろうとすると別の場所に引っ張られるような痛みが出るとのことでした。
さらに話を聞くと、夜に痛みで何度も目が覚めており、トイレに行くことも控えていました。
そのとき私は、痛みの数字だけを見て「少し下がっている」と考えかけていたことに気づきました。薬を使った後の眠気や呼吸状態を確認すると、強い眠気はなく、会話も普段と変わりませんでした。
私は、安静時と体動時の痛みが違うこと、睡眠と移動に影響が出ていること、薬を使った後の変化を記録し、先輩看護師に相談しました。
「薬が効いているかどうかは、数字だけでは分からないね」と言われたことを覚えています。
その経験があってから、私は痛みを聞くときに、数字の後で必ず「何ができなくなっているか」を見るようになりました。今振り返ると、あのときの「まだ痛い」という言葉を、薬の効果だけの問題として終わらせなくてよかったと思っています。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、痛みの評価を実際の看護場面と結び付けて理解するためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 鎮痛薬を使用中でも痛みが残る場合は、痛みの強さだけで判断しない
- 痛みの部位、性質、経過、パターン、増悪・軽快因子を確認する
- 睡眠、食事、移動など、日常生活への影響を見る
- 定期薬やレスキュー薬の効果は、使用前後の変化で評価する
- 眠気、呼吸抑制、せん妄などの有害事象も確認する
- 痛みが変化した場合は、薬の効果だけでなく痛みの原因も再評価する
- 自己申告が難しい患者さんでは、表情や体動、行動の変化を観察する
結局のところ、鎮痛薬を使っていても痛みがあるときは、
「薬が効いていない」とすぐに決めつけず、
「どんな痛みが残り、治療でどう変化し、安全に継続できているか」
を確認することが重要です。
FAQ
Q1.NRSが高ければ、すぐに鎮痛薬の追加を考えますか?
NRSは重要な評価方法ですが、数値だけで薬の追加を判断するわけではありません。
痛みの部位や性質、治療への反応、生活への影響、眠気や呼吸抑制などの有害事象も確認し、施設の手順や医師の指示に沿って対応します。
Q2.痛みが残っていても、NRSが下がっていれば問題ありませんか?
NRSが下がっていることは、治療による変化を示す情報になります。
ただし、睡眠、食事、移動などへの影響が残っていれば、十分に改善したとは限りません。数値と生活機能を合わせて評価します。
Q3.レスキュー薬を使った後は、何を確認すればよいですか?
使用前後の痛みの強さ、効果が現れるまでの時間、効果の持続、痛みの変化を確認します。
同時に、眠気、呼吸抑制、せん妄、悪心、便秘などの副作用も観察します。
Q4.患者さんが痛みをうまく説明できない場合はどうしますか?
自己申告が難しい場合は、表情、体動、声、ケアへの反応、落ち着きのなさ、普段と異なる行動などを観察します。
ICUでは、状態に応じてBPSやCPOTなどの評価指標が使用されます。患者さんの状態と施設の方法に合わせて評価します。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
術後アセスメント・ケア ポケットBOOK
著者:慶應義塾大学病院看護部
出版社:照林社
術後患者の痛み評価・合併症・ケアをコンパクトにまとめており、鎮痛薬使用中の痛みの部位・体動時疼痛やレスキュー薬の評価を現場で確認しやすいため。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
フィジカルアセスメントの根拠と実践法が示されており、NRS/VAS以外の観察(表情・体動・呼吸評価など)や非自己申告患者の評価力を高められるため。
看護の現場ですぐに役立つ 症状別看護過程
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
症状別の看護過程を学べるため、痛みの性質・増悪因子・生活機能への影響を整理してケア計画に結びつける学習に適しているため。
※本ページにはPRが含まれています。
実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢
そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。
\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /
LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊



