起立性低血圧で立位前に確認すること|看護師・看護学生が押さえたい離床前の観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、起立性低血圧がある患者さんを立たせる前に、何を確認していますか?
血圧を測って問題がなければ、そのまま立位へ進めてよいのでしょうか。それとも、めまいや脱水、薬剤の影響まで確認したほうがよいのでしょうか。
今回は、起立性低血圧の患者さんを立たせる前に確認したいことを中心に、離床時の安全な考え方を解説します。
結論:立位前は「今、立っても安全か」を確認する
結論からいうと、起立性低血圧がある患者さんを立たせる前は、次の項目を確認します。
- 安静時の血圧と脈拍
- 意識状態、顔色、発汗、会話の様子
- めまい、眼前暗黒感、ふらつき、気分不良の有無
- 直前の離床で症状が出ていないか
- 脱水や循環血液量の低下がないか
- 降圧薬や利尿薬など、血圧低下に関係する薬剤
- 食後、排尿後、運動後、疼痛などの状況要因
- 術後早期や長期臥床など、起立でふらつきやすい背景
ざっくり言うと、立位前には、
「血圧や脈拍は安定しているか」
「症状は出ていないか」
「血圧が下がりやすい理由はないか」
を確認します。
少しでも強いめまいやふらつきがある場合は、すぐに立位へ進めるのではなく、いったん座位や臥位で状態を確認します。
ただし、立位を中止する具体的な血圧値は、患者さんの状態や施設の手順、医師の指示によって異なります。収縮期血圧90mmHg未満は、起立性低血圧の評価に用いられる基準の一つですが、すべての患者さんに共通する離床中止基準と同じ意味ではありません。
この記事の読み方
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 起立性低血圧で立位前の確認が必要な理由
- 離床前に確認したい観察項目
- 血圧・脈拍・症状をどのように見るか
- 脱水や薬剤の影響を考えるポイント
- 看護師・看護学生が起こしやすい判断の間違い
根拠:起立性低血圧は、起立前後の変化で評価する
起立性低血圧は、横になった状態から立ち上がったときに、血圧が低下し、めまいやふらつきなどの症状が出る状態です。
代表的な基準としては、
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下
が用いられます。
また、資料によっては、起立後の収縮期血圧が90mmHg未満になることや、低血圧に伴う自覚症状も評価の要素として示されています。ClinicalSupの起立性低血圧症の解説では、起立後の血圧変化や症状を含めた評価が説明されています。
ここで大切なのは、起立後の血圧だけを測っても、変化の大きさが分からないということです。
たとえば、起立前の収縮期血圧が130mmHgで、起立後に105mmHgになった場合、起立後の数値だけを見ると「100mmHg以上ある」と考えるかもしれません。
しかし、起立前から25mmHg低下しています。
つまり、
起立前の血圧を確認する
↓
起立後の血圧と比較する
↓
症状の有無も合わせて判断する
という流れが必要です。
起立すると、なぜ血圧が下がるのか
立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動しやすくなります。
その結果、心臓へ戻る血液が一時的に減り、血圧が下がりやすくなります。
通常は、自律神経の働きによって脈拍が増えたり、血管が収縮したりして、血圧を保とうとします。
しかし、脱水や出血、薬剤、自律神経の障害などがあると、この調整が十分に働かないことがあります。
流れとしては、
立ち上がる
↓
下半身に血液がたまりやすくなる
↓
心臓へ戻る血液が減る
↓
血圧が下がりやすくなる
↓
めまいやふらつきが起こる
というイメージです。
だからこそ、立位前に「もともと血圧を保ちにくい状態ではないか」を確認します。
立位前に確認したい7つのポイント
1.安静時の血圧と脈拍
まず、安静にしている状態で血圧と脈拍を確認します。
起立性低血圧の評価は、起立前と起立後の変化を比べて行うため、起立前の値が必要です。
起立試験では、資料によって測定方法に違いがありますが、5分以上の安静臥位をとってから測定する方法や、起立後1分・3分以内の変化を確認する方法が示されています。Medulavaの起立性低血圧の解説や、ClinicalSupの解説でも、起立前後の血圧変化を確認する考え方が示されています。
ただし、実際の離床では、検査としての起立試験と同じ手順を行うとは限りません。測定時間や体位は、施設の手順や医師の指示を確認します。
2.めまい・眼前暗黒感・ふらつき
患者さんに、次のような症状がないか聞きます。
- めまい
- 目の前が暗くなる感じ
- ふらつき
- 脱力感
- 気分不良
- 失神しそうな感じ
「大丈夫です」と答えていても、表情が曇っていたり、返答が遅かったりすることがあります。
症状の有無は、単に質問するだけでなく、患者さんの表情や会話の様子も合わせて確認します。
3.意識状態・顔色・発汗
血圧や脈拍の数値だけではなく、全身状態も観察します。
たとえば、
- ぼんやりしていないか
- 顔色が悪くないか
- 冷汗がないか
- 会話が続けられているか
- いつもと反応が違わないか
を見ます。
数値に大きな変化がなくても、患者さんの様子が普段と違う場合は、立位へ進める前に再評価が必要です。
4.前回の離床時の反応
前回、ベッドから起きたときに何が起きたかを確認します。
- 座ったときにめまいがあった
- 立ったときにふらついた
- 失神しそうになった
- 血圧が大きく下がった
- 介助者につかまる必要があった
このような情報があれば、今回も同じ反応が起こる可能性を考えます。
記録だけでなく、患者さん本人に「前に起きたとき、つらくなりませんでしたか?」と聞くことも大切です。
5.脱水や循環血液量の低下
脱水や循環血液量の低下は、起立性低血圧を悪化させる要因として挙げられています。
立位前には、次のような状況がないか確認します。
- 水分摂取が少ない
- 発熱がある
- 嘔吐や下痢がある
- 食事が十分にとれていない
- 水分制限がある
- 出血が疑われる
- 発汗が多い
東京女子医科大学関連資料「神経原性起立性低血圧へのアプローチ」では、発熱、嘔吐、下痢、水分制限など、循環血漿量の低下につながる状況を確認することが示されています。
ざっくり言うと、体の中を流れる血液や水分が不足している状態では、立ったときに血圧を保ちにくくなります。
6.服薬状況
薬剤の影響も確認します。
特に、降圧薬や利尿薬など、血圧低下や体液量に関係する薬剤を使用していないかを確認します。
ただし、薬を自己判断で中止したり、内服量を変更したりしてはいけません。
薬剤の影響が疑われる場合は、内服状況や症状、血圧の推移を整理したうえで、医師や薬剤師に相談します。
7.起立を不安定にしやすい状況
起立性低血圧は、いつでも同じように起こるとは限りません。
資料では、次のような状況要因も確認項目として挙げられています。
- 排尿後
- 食後
- 運動後
- 疼痛が強いとき
- 恐怖や緊張があるとき
- 長期臥床後
- 術後早期
東京女子医科大学関連資料では、排尿、食後、運動、疼痛、恐怖などの状況性要因や、心疾患、糖尿病、薬剤歴などが確認項目として示されています。
実践ポイント:立位へは一気に進めない
立位前の確認で問題がなければ、いきなり歩行まで進めるのではなく、段階的に体位を変えます。
基本的には、
臥位
↓
端座位
↓
短時間の座位保持
↓
立位
↓
必要に応じて歩行
という流れで考えます。
端座位にしたあと、患者さんに、
「めまいはありませんか?」
「目の前が暗くなっていませんか?」
「気分が悪くないですか?」
と確認します。
症状が出た場合は、そのまま進めません。
また、立位後も血圧だけでなく、患者さんの症状を確認します。起立性低血圧の評価では、血圧の低下量だけでなく、低血圧に伴う自覚症状も重要な情報になります。
なお、起立後何秒で歩行を開始するか、どの血圧で中止するかといった具体的な基準は、すべての患者さんに共通するものではありません。患者さんごとの離床基準や施設の手順を確認してください。
起こしやすい判断の間違い
血圧が正常だから、そのまま立たせる
安静時の血圧が正常でも、起立後に血圧が下がることがあります。
安静時の血圧は、「立つ前の状態」を示す情報です。立位後の変化や症状まで確認して、初めて安全性を評価できます。
「めまいはありません」という言葉だけで判断する
患者さんが症状をうまく表現できないこともあります。
顔色、発汗、会話の様子、ふらつきの有無などを合わせて観察します。
血圧の低下量だけを見る
血圧が20mmHg以上下がっていなくても、患者さんが強い気分不良を訴える場合があります。
反対に、基準に近い血圧低下があっても、症状がない場合があります。
診断や評価の基準と、離床を続けてよいかという判断は、同じものではありません。
前回の離床状況を確認しない
前回の離床時にふらつきがあった患者さんでは、今回も同じことが起こる可能性があります。
前回の血圧、症状、介助量などを確認すると、今回の離床方法を考える材料になります。
筆者の体験談:立位前の「大丈夫です」をそのまま受け取れなかった場面
私が看護師をしていた頃、離床を進めようとしていた患者さんがいました。
臥位で測定した血圧は大きく崩れておらず、患者さんに「気分は悪くないですか?」と聞くと、「大丈夫です」と返ってきました。
最初の私は、「それなら端座位にしてみよう」と考えていました。
ところが、ベッドを起こしたとき、患者さんの返事が急に短くなりました。顔色も少し悪く見えます。
「本当に大丈夫ですか?」と聞くと、患者さんは少し間を置いてから、「目の前が白くなる感じがします」と話しました。
私は、最初の「大丈夫です」という返事だけで判断しそうになっていたことに気づきました。
すぐに体位を戻し、血圧と脈拍を再確認しました。その後、前回の離床時にも同じような症状があったこと、水分摂取が少ない時間が続いていたことが分かりました。私は先輩看護師に状況を伝え、その日の離床方法について相談しました。
そのときの私は、血圧の数字に問題がないことを確認して、次の動作へ進むことばかり考えていました。
でも、患者さんの返事の間や表情の変化も、立位前の大切な情報でした。
この経験があってから、私は「大丈夫です」という言葉だけでなく、患者さんの表情や声の変化、体位を変えた直後の様子を見るようになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 起立性低血圧の患者さんを立たせる前に、まず「今立っても安全か」を考える
- 安静時の血圧・脈拍を確認し、起立後の変化を評価できるようにする
- めまい、眼前暗黒感、ふらつき、気分不良の有無を確認する
- 顔色、発汗、意識状態、会話の様子も観察する
- 脱水、発熱、嘔吐、下痢、水分摂取不足などを確認する
- 降圧薬や利尿薬など、血圧低下に関係する薬剤を確認する
- 端座位、立位へと段階的に進め、症状があれば無理をしない
- 起立性低血圧の評価基準と、離床を中止する基準は同じとは限らない
起立性低血圧の離床では、血圧の数値だけでなく、患者さんの症状と全身状態を組み合わせて考えることが大切です。
FAQ
Q1.立位前の血圧が正常なら、起立性低血圧は否定できますか?
否定できません。
起立性低血圧は、臥位から起立した後の血圧変化と症状で評価します。立位前の血圧が正常でも、起立後に血圧が低下することがあります。
Q2.起立後、どのくらいで血圧を測定しますか?
資料によって方法に違いがありますが、起立後1分、3分以内の血圧変化を確認する方法が示されています。
検査として行うのか、日常の離床として行うのかでも手順は異なるため、施設の手順や医師の指示を確認してください。
Q3.収縮期血圧が90mmHg未満なら、必ず離床を中止しますか?
収縮期血圧90mmHg未満は、起立性低血圧の評価に用いられる基準の一つです。
ただし、すべての患者さんに共通する離床中止基準と同じではありません。症状、意識状態、普段の血圧、疾患、医師の指示、施設の基準を合わせて判断します。
Q4.立位前に脈拍を見るのはなぜですか?
起立前の循環状態を把握し、起立後の変化と比較するためです。
脈拍だけで起立性低血圧の原因を確定することはできませんが、血圧や症状と合わせて患者さんの状態を考える材料になります。
Q5.起立性低血圧がある患者さんの薬を一時的に中止してもよいですか?
自己判断で中止してはいけません。
降圧薬や利尿薬などの影響が疑われる場合は、内服状況と血圧・症状の推移を整理し、医師や薬剤師に相談します。
参考文献
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「起立性低血圧」
- 東京女子医科大学関連資料「神経原性起立性低血圧へのアプローチ」
- ClinicalSup「起立性低血圧症」
- J-STAGE「起立性低血圧」
- J-STAGE「9.起立(血圧)試験」
- Medulava「起立性低血圧」
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