起立性低血圧で脈拍を見る理由とは?看護師・看護学生が押さえたい血圧と脈拍の見方
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんの起立時に血圧が下がったとき、脈拍まで確認できているでしょうか?
起立性低血圧というと、「血圧がどれくらい下がったか」に注目しがちです。でも、血圧だけを見ていると、その背景にある脱水や出血、薬剤の影響、自律神経の障害などを考えにくいことがあります。
今回は、起立性低血圧で脈拍を見る理由と、看護師・看護学生が起立時に確認したいポイントについて解説します。
結論:起立性低血圧は、血圧と脈拍をセットで見る
結論からいうと、起立性低血圧を評価するときは、血圧だけでなく、起立後の脈拍の変化も同時に確認することが重要です。
起立後に血圧が下がったとき、
- 脈拍がしっかり増えているのか
- 脈拍の増加が乏しいのか
- めまいやふらつきなどの症状があるのか
を確認します。
ざっくり言うと、
- 血圧が下がり、脈拍が大きく増える
→ 脱水、出血、薬剤などによる循環血液量の減少や血圧低下を考える手がかりになる - 血圧が下がっているのに、脈拍の増加が乏しい
→ 自律神経の働きが十分でない神経原性起立性低血圧を疑う手がかりになる
という見方をします。
ただし、脈拍の反応だけで原因を確定できるわけではありません。患者さんの症状、服薬状況、出血や脱水の可能性、基礎疾患などを合わせて判断します。
この記事では、起立時の血圧と脈拍の変化をどのように見ればよいのか、根拠とともに整理します。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 起立すると血圧が下がる仕組み
- 起立性低血圧で脈拍を見る理由
- 血圧低下と脈拍の変化から考えること
- 起立試験で確認したい観察ポイント
- 看護師・看護学生が起こしやすい判断の間違い
根拠:起立性低血圧の評価では、脈拍の反応が重要
起立性低血圧は、立ち上がったときに血圧が低下し、めまいやふらつきなどの症状が出る状態です。
代表的な診断基準として、起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下することが示されています。Clinical SupやMedulavaの起立性低血圧に関する解説でも、この基準が紹介されています。
また、資料によっては、起立後に収縮期血圧が90mmHg未満に低下した場合を基準として示しているものもあります。診断や評価では、使用する基準や施設の手順を確認する必要があります。
ここで大切なのが、血圧の数字だけで終わらないことです。
起立すると、重力によって血液が下肢にたまりやすくなります。すると、心臓へ戻る血液、つまり静脈還流が減少します。
その結果、
血液が下肢にたまる
↓
心臓へ戻る血液が減る
↓
心拍出量が低下する
↓
血圧が下がりやすくなる
という変化が起こります。
このとき、正常な身体では交感神経が働きます。心拍数を増やしたり、末梢の血管を収縮させたりして、血圧を保とうとします。
つまり、起立時の脈拍上昇は、血圧を維持するための代償反応の一つです。
MSDマニュアルの起立性低血圧の解説では、起立時の血圧変化に対して、通常は反射性の心拍数増加や血管収縮が起こることが説明されています。
詳しい解説:血圧低下と脈拍の変化から何を考えるのか
脈拍が増えている場合
起立後に血圧が低下し、脈拍が大きく増えている場合は、脱水や出血などによって循環血液量が減少している可能性を考える手がかりになります。
また、薬剤の影響などによって血圧が下がり、身体がそれを補おうとして脈拍が増えている場合もあります。
ざっくり言うと、
「血圧が下がったため、心拍数を増やして補おうとしている」
という状態です。
ただし、脈拍が増えたからといって、脱水や出血と決めつけることはできません。発熱、疼痛、不安、活動による影響など、脈拍が変化する別の要因もあります。
そのため、次のような情報を合わせて確認します。
- 水分摂取量や食事摂取量
- 嘔吐や下痢の有無
- 発汗の有無
- 出血の有無
- 尿量や尿の性状
- 使用している薬剤
- 発熱や疼痛の有無
- 起立時の症状
脈拍の増加が乏しい場合
血圧が下がっているにもかかわらず、脈拍の増加が乏しい場合は、神経原性起立性低血圧を疑う手がかりになります。
神経原性とは、自律神経の働きが低下し、起立時に必要な心拍数の増加や血管収縮が十分に起こらない状態を指します。
医学書院の医療情報サービスでは、神経原性の起立性低血圧では、血圧が低下しているにもかかわらず代償性の心拍数増加が乏しいことが説明されています。
つまり、
血圧が下がる
↓
本来なら脈拍が増える
↓
しかし、脈拍が十分に増えない
↓
自律神経による代償反応が弱い可能性を考える
という流れです。
日本心電図・不整脈関連の学会系資料でも、起立試験では血圧と心拍数を同時に測定する必要があるとされています。J-STAGE掲載資料「起立(血圧)試験」では、起立時の血圧だけでなく心拍数の変化も評価することが示されています。
起立時の脈拍は「原因を推定する手がかり」
起立性低血圧で脈拍を見る目的は、単に脈拍数を記録するためではありません。
脈拍の変化を確認することで、
- 身体が血圧低下を補おうとしているか
- 自律神経による代償反応が働いているか
- 脱水や出血などの循環血液量減少を疑うか
- 神経原性の要因を考えるか
を整理しやすくなります。
ただし、これはあくまでも「原因を推定する手がかり」です。
例えば、起立後に脈拍が増えていても、必ず脱水とは限りません。反対に、脈拍の増加が乏しくても、必ず神経原性とは限りません。
脈拍の反応だけで判断せず、血圧の変化、症状、既往歴、薬剤、全身状態を組み合わせて評価します。
起立性低血圧と体位性頻脈症候群は同じではない
血圧が下がらず、起立時に脈拍だけが著しく増える状態もあります。
起立性調節障害の説明資料では、起立時に血圧低下が目立たない一方で、脈拍が大きく増加する病型として、体位性頻脈症候群が紹介されています。大正健康ナビの起立性調節障害の解説や、起立性調節障害の専門情報サイトでも説明されています。
このことからも、「血圧が下がったかどうか」だけでは、起立時の循環変化を十分に捉えられないことが分かります。
血圧と脈拍を一緒に見て、
- 血圧が下がっているのか
- 脈拍が増えているのか
- 症状があるのか
を確認することが大切です。
起立試験では、どのように測定するのか
起立性低血圧の評価では、一般に臥位で安静にした後に血圧と脈拍を測定し、その後に起立して再度測定します。
資料によって、起立後2〜5分、または3分以内など、測定する時間の示し方には違いがあります。Medulavaの解説では起立後の経時的な測定が紹介され、Clinical Supでは起立後3分以内の血圧変化が基準として示されています。
実際の臨床では、施設の手順や医師の指示に従って測定します。
看護師・看護学生が意識したい流れは、次のようなものです。
- 患者さんを臥位にして安静を保つ
- 臥位で血圧と脈拍を測定する
- 起立できる状態か、転倒リスクがないかを確認する
- 必要な介助を行いながら起立する
- 起立後の血圧と脈拍を測定する
- めまい、ふらつき、眼前暗黒感などの症状を確認する
- 起立後の変化を経時的に記録する
起立試験は、測定そのものよりも安全確保が優先です。
強いふらつきや失神前症状がある患者さんを、一人で立たせることは避けます。患者さんの状態に応じて、介助者をつける、ベッドサイドで行う、座位をはさむなど、施設の手順に沿って実施します。
実践ポイント:看護師・看護学生が確認したい観察ポイント
1.血圧の変化
まずは、臥位から起立後に血圧がどのように変化したかを確認します。
代表的には、起立後3分以内に、
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下
した場合が、起立性低血圧の基準として示されています。
ただし、数値だけで判断するのではなく、患者さんの症状も確認します。
2.脈拍の変化
次に、起立前と起立後で脈拍がどう変化したかを見ます。
確認したいのは、脈拍の絶対値だけではありません。
- 起立後に脈拍が増えたか
- どの程度変化したか
- 血圧低下に対して代償反応がありそうか
- 脈拍のリズムに変化がないか
「脈拍80回/分」という数字だけでは、起立前が60回/分だったのか、起立前から80回/分だったのかが分かりません。
そのため、起立前後の値を並べて記録することが重要です。
3.自覚症状
次のような症状がないかを確認します。
- めまい
- ふらつき
- 眼前暗黒感
- 気が遠くなる感じ
- 脱力感
- 動悸
- 失神前の症状
血圧が基準値ほど低下していなくても、強い症状が出ることがあります。
反対に、血圧が低下していても症状を訴えない場合もあります。
そのため、血圧の数値と自覚症状の両方を記録します。
4.脱水や出血を疑う情報
脈拍が大きく増えている場合には、循環血液量が減少していないかを確認します。
具体的には、
- 水分を十分に摂取できているか
- 嘔吐や下痢がないか
- 発汗が続いていないか
- 出血がないか
- 尿量が減っていないか
- 食事や飲水ができているか
などです。
ただし、これらは原因を確定するための項目ではありません。患者さんの状態を整理し、必要時に報告や追加評価につなげるために確認します。
5.薬剤や基礎疾患
薬剤の影響や自律神経機能に関係する疾患がないかも確認します。
薬剤については、自己判断で中止や変更を行うのではなく、処方内容を確認したうえで、医師や薬剤師に相談します。
また、神経疾患や自律神経障害が疑われる背景がある場合は、起立時の脈拍反応が乏しくないかを含めて観察します。
起立性低血圧で起こりやすい間違い
血圧が下がったら、すぐに「脱水」と考える
血圧が下がると、脱水を考えることはあります。
しかし、血圧低下の原因は一つとは限りません。脈拍の反応がどうだったのか、自覚症状があるのか、薬剤や基礎疾患はどうかを合わせて考えます。
脈拍が増えたら、問題ないと考える
脈拍が増えているのは、身体が血圧低下を補おうとしている反応かもしれません。
しかし、脈拍が増えたから安全という意味ではありません。血圧低下が続いている場合や、めまい・ふらつきがある場合は、転倒や失神につながる可能性があります。
血圧の基準値だけで判断する
起立性低血圧では、基準値を知っておくことが大切です。
一方で、数値だけを見ていると、起立時の症状や脈拍の変化を見落とすことがあります。
「血圧は何mmHg下がったか」だけでなく、
「脈拍はどう変化したか」
「患者さんは何を訴えているか」
「起立を安全に続けられる状態か」
まで確認します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、離床を進めていた患者さんの血圧が、起立後に低下したことがありました。
患者さんはベッドサイドに座った時点では会話ができていましたが、立ち上がってしばらくすると、「少し目の前が暗い」と話しました。
最初、私は「臥床時間が長かったから、起立時に血圧が下がったのだろう」と考えました。血圧を測ると、臥床時よりも明らかに低下していました。
そのとき、記録に血圧の値だけを書こうとして、ふと手を止めました。
「脈拍はどうだっただろう」
もう一度、起立前後の測定値を確認すると、血圧は下がっていましたが、脈拍の増加は大きくありませんでした。患者さんは「もう少し休めば大丈夫」と言っていましたが、立位を続けるのは危険に感じました。
私は患者さんに座ってもらい、状態を見ながら先輩看護師に相談しました。先輩からは、「血圧が下がったことだけでなく、脈拍がどのように反応したかも報告して」と言われました。
その言葉を聞いて、私は自分が「血圧が下がった」という一つの情報だけで判断しようとしていたことに気づきました。
それ以降、起立時の測定では、血圧の値と一緒に脈拍の変化を記録するようになりました。患者さんの症状と数値を並べて見ると、同じ血圧低下でも、そこに至る経過が違って見えることがあります。
今振り返ると、あのときの「脈拍はどうだっただろう」という小さな疑問が、バイタルサインを単独の数字ではなく、身体の反応として見るきっかけになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、起立時の観察を臨床場面と結び付けて考えるためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 起立性低血圧の評価では、血圧だけでなく脈拍も同時に確認する
- 起立すると、血液が下肢にたまり、血圧が下がりやすくなる
- 正常な反応では、脈拍増加や血管収縮によって血圧を保とうとする
- 血圧低下に対して脈拍が大きく増える場合は、脱水・出血・薬剤などを考える手がかりになる
- 血圧が下がっているのに脈拍の増加が乏しい場合は、神経原性を疑う手がかりになる
- 脈拍の変化だけで原因を確定せず、症状、服薬、出血や脱水の可能性などを組み合わせて判断する
- 起立試験では、転倒予防と患者さんの安全を優先する
起立性低血圧を見たときは、「血圧が下がった」で終わらせず、脈拍がどう反応したのかまで確認してみてください。
FAQ
Q1.起立性低血圧では、脈拍が増えれば問題ないのでしょうか?
いいえ。脈拍が増えていても、血圧低下やめまい、ふらつきがあれば注意が必要です。
脈拍の増加は、血圧低下を補おうとする反応の可能性があります。しかし、患者さんの症状や血圧の変化を含めて評価します。
Q2.血圧が下がったのに脈拍が増えない場合は、必ず神経原性ですか?
必ずとはいえません。
血圧低下に対して脈拍の増加が乏しい場合、神経原性起立性低血圧を疑う手がかりになりますが、脈拍に影響する他の要因もあります。
自律神経機能、薬剤、基礎疾患、測定条件などを含めて、医師や多職種と評価します。
Q3.起立試験では、血圧と脈拍を何分後に測定しますか?
資料によって、起立後2〜5分、または3分以内などの示し方があります。
代表的な基準では、起立後3分以内の血圧低下を評価します。実際の測定では、施設の手順や医師の指示に従い、起立直後から経時的に血圧と脈拍を確認します。
Q4.起立時にめまいがある場合、測定を続けてもよいですか?
患者さんの安全を優先します。
強いめまい、ふらつき、眼前暗黒感、失神前症状などがある場合は、無理に立位を続けません。座位や臥位に戻すなど、施設の手順に従って対応し、必要時は報告します。
参考文献
- MSDマニュアル「起立性低血圧」:MSDマニュアル
- 医学書院 医療情報サービス「起立性低血圧」:医学書院 医療情報サービス
- 「起立(血圧)試験」:J-STAGE掲載資料
- Clinical Sup「起立性低血圧症」:Clinical Sup
- 「起立性低血圧」:Medulava
- 「起立性調節障害」:大正健康ナビ
- 「起立性調節障害とは」:西日本の医療機関による解説
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