起立性低血圧で臥位・座位・立位の血圧を測る理由|看護師・看護学生が確認したいポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんの血圧を測るとき、「なぜ臥位・座位・立位で測る必要があるのだろう」と疑問に思ったことはありませんか?
安静にしているときの血圧が正常でも、立ち上がった途端に血圧が下がり、めまいやふらつきが出ることがあります。では、起立性低血圧を疑うとき、どのように血圧を測ればよいのでしょうか。
今回は、起立性低血圧で臥位・座位・立位の血圧を確認する理由と、看護師・看護学生が観察したいポイントについて解説します。
結論:起立性低血圧は「安静時の血圧」ではなく「体位変換による変化」を見る
起立性低血圧を評価するときは、まず臥位または座位で基準となる血圧を測定します。
そのうえで立位になり、血圧や脈拍がどのように変化するかを確認します。
つまり、見るべきなのは、
- 臥位・座位での血圧
- 立位になったあとの血圧
- 立位後1分・3分の変化
- めまい、ふらつき、眼前暗黒感などの症状
- 転倒につながる危険がないか
です。
起立性低血圧は、立位後3分以内の血圧低下を評価する考え方が基本です。代表的な目安として、収縮期血圧が20mmHg以上低下する、拡張期血圧が10mmHg以上低下する、または収縮期血圧が90mmHg未満になることなどが示されています。
ただし、測定中に強い症状が出た場合は、数値を確認することよりも安全を優先します。無理に立位を続けず、座位または臥位に戻して報告します。
測定のポイントは、血圧の数値だけでなく、体位変換による変化、症状、転倒リスクをセットで見ることです。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 起立性低血圧で体位ごとの血圧を測る理由
- 臥位・座位・立位での測定方法
- 立位後1分・3分で確認する意味
- 血圧の数値と症状を合わせて見るポイント
- 看護師・看護学生が起立時に注意したい安全面
根拠:起立性低血圧は「体位変換による血圧低下」で評価する
起立性低血圧は、仰向けや座位から立位になったときに、血圧が低下する状態です。
そのため、安静時の血圧だけを測っても、立ち上がったときの血圧低下は分かりません。
ざっくり言うと、
起立性低血圧は、血圧の「一つの数字」ではなく、体位を変えたときの「変化」を見る状態
ということです。
MSDマニュアル日本語版「起立性低血圧」では、仰臥位で安静にしたあと、立位1分後・3分後に血圧と心拍数を測定する方法が示されています。立位が難しい場合は、座位で評価する方法も記載されています。
また、J-STAGE掲載資料「起立(血圧)試験」でも、起立直後からの血圧変化を確認することの重要性が示されています。
詳しい解説
なぜ立ち上がると血圧が下がるのか
人が立ち上がると、重力の影響で血液が下半身に移動します。
すると、一時的に心臓へ戻ってくる血液が減ります。これを静脈還流の低下といいます。
通常は、脈拍を調整したり、血管を収縮させたりすることで、血圧を保とうとします。
しかし、この調整が十分に働かないと、立ち上がったときに血圧が下がります。
その結果、
- めまい
- ふらつき
- 目の前が暗くなる感じ
- 冷汗
- 悪心
- 立っていられない感じ
などが起こることがあります。
つまり、臥位と立位の血圧を比べることで、
立ち上がったときに、血圧を維持できているか
を確認しています。
起立性低血圧の測定方法
施設の手順や医師の指示を確認したうえで、一般的には次のように測定します。
1.臥位で安静にする
まず、患者さんを臥位にして安静にします。
その後、臥位で血圧と脈拍を測定します。この値が、立位後の変化を見るための基準値になります。
資料によって安静時間には違いがありますが、MSDマニュアルでは、仰臥位で5分間安静にしたあとに測定する方法が示されています。
2.座位または立位へ体位を変える
次に、患者さんを座位または立位にします。
立位が可能であっても、最初から一人で立ってもらうのではなく、ふらつきや転倒に注意して介助します。
立位が難しい患者さんでは、無理に立たせず、座位で評価することがあります。
3.立位後1分・3分で測定する
立位になったあと、1分後・3分後を目安に血圧と脈拍を確認します。
立った直後に症状が出る人もいれば、少し時間が経ってから血圧が低下する人もいます。そのため、1回だけではなく、時間を分けて確認することが大切です。
ただし、患者さんが強いめまいやふらつきを訴えた場合は、測定時間を待つ必要はありません。安全を優先して、座位または臥位に戻します。
血圧の変化はどのように見るのか
調査結果に含まれる資料では、起立性低血圧の判断の目安として、次の数値が示されています。
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下
- 収縮期血圧が90mmHg未満
たとえば、臥位の血圧が130/70mmHgで、立位後に108/58mmHgになったとします。
この場合、
- 収縮期血圧:22mmHg低下
- 拡張期血圧:12mmHg低下
となります。
このように、立位後の血圧だけを見るのではなく、臥位の血圧と比べてどれだけ変化したかを確認します。
ただし、数値だけで患者さんの状態を決めるわけではありません。
血圧の低下があっても症状がない場合があります。一方で、数値の低下が基準に届いていなくても、強いふらつきや転倒しそうな状態になることがあります。
したがって、
血圧の変化と症状をセットで見る
ことが重要です。
起立時に確認したい症状
体位変換を行うときは、血圧計の数字だけでなく、患者さんの様子も観察します。
具体的には、次のような変化です。
- めまい
- ふらつき
- 眼前暗黒感
- 冷汗
- 悪心
- 顔色の変化
- 立位保持が難しい
- つかまる場所を探す
- 意識がぼんやりする
- 転倒しそうになる
患者さんには、
「立ってみて、めまいやふらつきはありませんか?」
「目の前が暗くなる感じはありませんか?」
「気分が悪くなっていませんか?」
などと、具体的に確認します。
「大丈夫です」と答えていても、足元が不安定になっていないか、表情が変化していないかを観察します。
座位で評価する場合
患者さんが立ち上がれない場合、無理に立位にする必要はありません。
MSDマニュアルでは、起立できない患者について、座位で評価してよいとする記載があります。
座位で測定する場合も、
- 体位変換前の血圧
- 座位になったあとの血圧
- 脈拍の変化
- めまいやふらつき
- 顔色や冷汗
などを確認します。
ただし、座位での評価が立位での評価と同じ意味になるとは限りません。
患者さんの状態に合わせて安全な方法を選び、測定条件を記録して報告することが大切です。
薬剤や食事など、測定条件も確認する
血圧は、薬剤や食事などの影響を受けることがあります。
J-STAGE掲載論文「起立性低血圧」では、起立性低血圧の評価において、食事や降圧薬の影響を考慮することが示されています。
そのため、報告するときは血圧の数値だけでなく、
- いつ測定したか
- 食事との時間関係
- 降圧薬などの薬剤を使用しているか
- 服薬後に症状が出ていないか
- どの体位で測定したか
- 立位後何分で変化したか
なども整理します。
「血圧が低かった」とだけ報告するよりも、
「臥位で128/72mmHg、立位1分後に104/60mmHgとなり、立位時にめまいを訴えました」
のように、体位・時間・数値・症状をセットにすると、状態が伝わりやすくなります。
実践ポイント:看護で大切なのは「測定」よりも「安全」
起立性低血圧の評価では、正確な血圧を測ることも大切です。
しかし、測定のために患者さんを立たせた結果、転倒してしまっては本末転倒です。
起立時には、次のような点を確認します。
- 立位が可能な状態か
- ふらつきがないか
- 介助者が必要ではないか
- ベッド周囲に障害物がないか
- すぐに座れる場所があるか
- 血圧測定中に姿勢を保持できるか
ふらつきが出た場合は、立位を続けません。
座位や臥位に戻し、症状が出たタイミングと血圧・脈拍を記録します。
起立性低血圧が疑われる患者さんでは、測定そのものが転倒のきっかけになる可能性があります。だからこそ、測定前から安全を考えておく必要があります。
看護師・看護学生が報告するときの整理方法
起立性低血圧を疑う変化があった場合は、次の順番で整理すると報告しやすくなります。
1.どの体位で測定したか
- 臥位
- 座位
- 立位
2.それぞれの血圧・脈拍
- 臥位の血圧・脈拍
- 立位1分後の血圧・脈拍
- 立位3分後の血圧・脈拍
3.どのくらい変化したか
- 収縮期血圧の変化
- 拡張期血圧の変化
- 脈拍の変化
4.症状の有無
- めまい
- ふらつき
- 眼前暗黒感
- 冷汗
- 悪心
- 転倒しそうになったか
5.測定を中止したか
症状が出て途中で臥位に戻した場合は、そのことも報告します。
「立位3分まで測れなかった」という情報も、状態を判断するうえで重要です。
よくある間違い
安静時の血圧だけで判断する
安静時の血圧が正常でも、立位で血圧が低下することがあります。
起立性低血圧を考える場合は、臥位または座位と立位を比較する必要があります。
立位後すぐの血圧だけを見る
立った直後の血圧だけでは、時間が経ってから起こる変化を見逃すことがあります。
可能であれば、立位後1分・3分を目安に確認します。
ただし、症状が強いときは測定を続けません。
数値だけで判断する
基準となる数値はありますが、患者さんの症状や安全面も同時に確認します。
血圧の変化、症状、立位の安定性を合わせて評価します。
ふらついているのに立位を続ける
測定を完了させることより、患者さんの安全が優先です。
ふらつきが出た場合は、座位または臥位に戻し、症状と測定値を記録して報告します。
筆者の体験談:血圧の数字だけを見ていた頃
私が看護師をしていた頃、患者さんの離床前に血圧を確認したことがありました。
臥位で測定した血圧は、特に大きな問題がないように見えました。私はその数字を見て、「これなら座っても大丈夫そうだ」と考えました。
患者さんに声をかけてベッド上で座ってもらったところ、患者さんが少し黙り込みました。
「どうしましたか?」と聞くと、
「少し、目の前が暗いです」
と話されました。
そのとき私は、血圧の数値だけを確認して、患者さんの表情や返答の変化を十分に見ていなかったことに気づきました。
すぐに座位を続けるのをやめ、患者さんの状態を確認してから臥位に戻しました。その後、座位になる前後の血圧や症状の経過を整理して、先輩看護師に相談しました。
当時の私は、「血圧が極端に低くなければ大丈夫」と、数字を中心に考えていたのだと思います。
この経験があってから、体位変換のときは測定値だけでなく、患者さんの表情、返事、足元の安定性を見るようになりました。今振り返ると、患者さんの「少し変だ」という言葉を、そのままにしなかったことが大きな学びになっています。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、体位変換時の観察と安全確保を具体的にイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 起立性低血圧は、安静時の血圧だけでは評価できない
- 臥位または座位を基準にして、立位後の血圧変化を見る
- 立位後1分・3分を目安に血圧と脈拍を確認する
- 収縮期血圧20mmHg以上の低下、拡張期血圧10mmHg以上の低下などが判断の目安になる
- めまい、ふらつき、眼前暗黒感などの症状を数値と合わせて見る
- 強い症状がある場合は、測定を続けず安全を優先する
- 立位が難しい患者さんは、無理に立たせず座位で評価することがある
- 報告では、体位・測定時間・血圧・脈拍・症状をセットにする
起立性低血圧で臥位・座位・立位の血圧を測る理由は、体位変換によって血圧がどのように変化するかを確認するためです。
「血圧が低いか」だけではなく、「立つとどのくらい変化するか」「症状が出ているか」「安全に立位を保てるか」を合わせて見ることが大切です。
FAQ
Q1.起立性低血圧は、立位の血圧だけで判断できますか?
いいえ。立位の血圧だけでは、どの程度血圧が変化したのか分かりません。
臥位または座位の血圧を基準にして、立位後の血圧と比較します。
Q2.患者さんが立てない場合はどうしますか?
無理に立たせず、座位で評価する方法があります。
座位で測定したこと、測定時の血圧や症状を記録し、必要に応じて医師や先輩看護師へ報告します。
Q3.立位後3分まで測定する必要がありますか?
立位後3分以内の血圧低下を評価する考え方が基本です。
ただし、立位中に強いめまいやふらつきが出た場合は、3分を待たずに座位または臥位に戻します。
Q4.血圧が基準値まで下がっていなければ問題ありませんか?
基準値に達していなくても、強いめまいやふらつきがある場合は注意が必要です。
血圧の変化だけでなく、症状や転倒リスクも合わせて確認します。
参考文献
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「起立性低血圧」:MSDマニュアル日本語版
- 「起立(血圧)試験」:J-STAGE掲載資料、J-STAGE
- 「起立性低血圧」:J-STAGE掲載論文、J-STAGE
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