抗菌薬を使っても熱が下がらないとき|看護師が確認したい観察ポイントと報告の考え方
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんに抗菌薬が開始されたあとも熱が続いているとき、「この薬は効いていないのだろうか」「追加や変更が必要なのだろうか」と迷ったことはありませんか?
体温が下がらないと、抗菌薬の効果がないように感じますよね。しかし、熱が続く理由は、抗菌薬だけにあるとは限りません。感染症の見立て、感染源、投与方法、患者さんの背景などを、もう一度整理する必要があります。
今回は、抗菌薬を使用しても熱が下がらないときに、看護師・看護学生が確認したい観察項目と、報告につなげる考え方について解説します。
結論:熱が下がらないときは、抗菌薬の変更より先に「診断・感染源・投与・別の原因」を再評価する
抗菌薬を使っても熱が続くときは、すぐに「薬が効いていない」と判断しません。
まずは、次の順番で確認します。
- 本当に細菌感染が原因なのか
- 感染している場所の見立ては合っているのか
- 抗菌薬が予定どおり投与されているのか
- 感染源が残っていないか
- 薬剤熱や深部静脈血栓症など、感染以外の原因がないか
看護師は、体温だけでなく、血圧・脈拍・呼吸数・SpO₂・意識状態などのバイタルサイン、症状の推移、創部やデバイス、尿量、薬剤歴をセットで確認します。
そして、次のように整理して報告します。
「熱が下がらない」
ではなく、
「いつから、どの程度の熱が続き、全身状態や感染源の所見がどう変化しているか」
特に、バイタルサインの悪化、意識状態の変化、呼吸状態の悪化、尿量低下、局所症状の進行がある場合は、発熱の持続日数だけで判断せず、速やかに報告・評価につなげます。
この記事の要点:「解熱しない=抗菌薬が効いていない」と即断せず、診断、感染源、投与状況、感染源のコントロール、感染以外の原因を再評価することが大切です。
判断の注意点:抗菌薬の追加・変更は、体温やCRPだけで決めるものではありません。患者さんの全身状態、症状、検査結果、感染源の所見を合わせて、医師や医療チームで判断します。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 抗菌薬を使っても熱が下がらない主な理由
- 体温以外に確認したい観察項目
- 感染源や抗菌薬投与を再確認するポイント
- 薬剤熱や深部静脈血栓症などを考える視点
- 看護師・看護学生が医師へ報告するときの整理方法
根拠:解熱しないときは「抗菌薬が効かない」と即断しない
厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・入院編」では、入院患者の発熱について、まず感染症の可能性からアセスメントすることが示されています。
ただし、発熱が続く場合には、感染症だけを前提にして抗菌薬を追加するのではなく、診断や感染源、治療内容を再評価する必要があります。
また、『内科』誌の「抗菌薬を開始しても熱が続く場合の対応」では、次のような可能性が整理されています。
- 感染症の診断が誤っている
- 治療効果の判定を誤っている
- 抗菌薬の投与量や投与方法に問題がある
- 感染源のコントロールが不十分である
- 抗菌薬が原因微生物をカバーしていない
- 感染症以外の発熱である
- 治療中に新しい感染源が出現している
つまり、熱が下がらないときは、
抗菌薬が効いていない
↓
抗菌薬を変更する
と直線的に考えるのではありません。
まずは、
そもそもの診断は合っているか
感染源は残っていないか
治療は適切に行われているか
感染以外の発熱ではないか
を確認することが重要です。
抗菌薬を使っても熱が下がらない主な理由
1.細菌感染ではない可能性がある
発熱があると、細菌感染を考えて抗菌薬が使用されることがあります。しかし、発熱の原因が細菌感染とは限りません。
たとえば、ウイルス感染や、感染症以外の病態でも発熱することがあります。
厚生労働省の抗微生物薬適正使用に関する資料でも、発熱を感染症だけで説明せず、診断を再評価する視点が示されています。
看護師が「細菌感染ではない」と判断するわけではありません。しかし、抗菌薬開始後も熱が続くときには、症状の経過や全身状態を整理し、当初の見立てを再検討できる情報を提供することが大切です。
2.感染している場所の見立てが違っている
感染源を肺炎と考えて治療していたものの、実際には尿路、腹腔内、皮膚・軟部組織、カテーテル関連など、別の部位に問題がある可能性もあります。
そのため、次のような症状を確認します。
- 咳、痰、呼吸苦
- 排尿時痛、頻尿、尿の混濁や悪臭
- 腹痛、腹部膨満、下痢
- 創部の発赤、腫脹、熱感、排液
- 褥瘡の変化
- 点滴ルートやカテーテル挿入部の発赤・腫脹・疼痛
- 関節痛や局所の腫れ
- 皮疹
厚生労働省関連資料でも、感染臓器の推定と確認には、診察、検査、画像診断などを組み合わせることが示されています。
ざっくり言うと、抗菌薬の効果を考える前に、
どこに感染があるのか
をもう一度見直す必要があります。
3.感染源が残っている
抗菌薬で細菌の増殖を抑えようとしても、膿瘍などの感染源が残っている場合には、発熱が続くことがあります。
また、カテーテルやドレーンなどのデバイスが感染に関係している可能性もあります。
看護師が確認したいのは、次のような変化です。
- 創部や挿入部の発赤・腫脹・熱感
- 排液の量や性状の変化
- ドレーン周囲の疼痛
- カテーテル周囲の皮膚変化
- 褥瘡の悪化
- 局所の圧痛や腫れ
入院患者の発熱に関する医療機関公開資料でも、創部、褥瘡、デバイスなどを感染源として確認する視点が示されています。
ここでいう感染源の処置やデバイスの交換・抜去などは、医師や関連職種の判断が必要です。
看護師は、局所の変化を見逃さず、時間経過とともに記録して報告します。
4.抗菌薬の投与に問題がある
抗菌薬が処方されていても、実際に予定どおり投与されているとは限りません。
確認したいのは、次の項目です。
- 抗菌薬の開始日
- 投与回数
- 投与経路
- 投与間隔
- 投与中止や延期の有無
- 内服薬の場合の飲み忘れや服薬状況
- 点滴時のルートトラブル
- 腎機能など、投与設計に関係する患者背景
『内科』誌の総説では、抗菌薬の投与量や投与法の問題も、熱が続くときに確認する項目として挙げられています。
ただし、看護師が自己判断で投与量や薬剤を変更することはありません。
「処方されている薬を使っているか」だけではなく、
予定された方法で、予定されたタイミングに投与できているか
を確認し、気になる点があれば報告します。
5.原因微生物が抗菌薬の対象外である
抗菌薬には、それぞれ効果が期待できる微生物の範囲があります。
そのため、原因となっている微生物と、使用している抗菌薬の対象が合っていない場合には、熱が続くことがあります。
また、耐性菌など、一般的な抗菌薬が効きにくい微生物が関係する場合もあります。
看護師が薬の選択を判断するのではなく、次の情報を整理して医師へ伝えることが重要です。
- 抗菌薬を開始してからの体温推移
- 全身状態の変化
- 感染源と思われる部位の変化
- 培養結果の有無
- 過去の抗菌薬使用歴
- 薬剤アレルギー歴
- 抗菌薬の投与状況
6.感染症以外の発熱である
抗菌薬を使用しても熱が下がらないときは、感染以外の発熱も考えます。
『内科』誌の総説では、院内での非感染性発熱として、次のような原因が挙げられています。
- 結晶性関節炎
- 深部静脈血栓症
- 薬剤熱
薬剤熱では、抗菌薬を含めた薬剤歴が重要になります。
確認する内容としては、
- 新しく開始された薬
- 薬剤が変更された時期
- 発熱が始まった時期
- 皮疹の有無
- 関節痛や下肢の腫れ
- 呼吸苦や胸痛の有無
などがあります。
ただし、これらの症状があれば薬剤熱や血栓症と決めつけることはできません。発熱との時間関係や他の症状を記録し、評価につなげます。
看護師がまず確認したい観察項目
1.体温以外のバイタルサイン
最初に確認したいのは、体温の数字だけではありません。
- 血圧
- 脈拍
- 呼吸数
- SpO₂
- 意識状態
- 顔色や発汗
- 呼吸状態
- 悪寒や戦慄の有無
看護師向けの発熱観察資料や報告時のバイタルサイン確認に関する解説でも、体温だけでなく、心拍数、呼吸数、血圧などを合わせて確認することが示されています。
熱が同じでも、全身状態が安定している場合と、血圧低下や呼吸状態の悪化がある場合では緊急性が異なります。
2.全身状態と経過
次のような変化も確認します。
- 倦怠感の増強
- 食事や水分摂取量の低下
- 発汗
- 悪寒や戦慄
- 尿量の減少
- 嘔吐や下痢
- 意識状態の変化
- 活動性の低下
発熱が何日続いているかは大切ですが、日数だけで判断するのは不十分です。
たとえば、熱が続いていても全身状態が改善している場合があります。一方で、体温の変化が大きくなくても、呼吸状態や意識状態が悪化していることがあります。
3.感染源になりそうな場所
全身を一度に見るのが難しい場合は、症状と治療経過から感染源を考えます。
- 呼吸器:咳、痰、呼吸苦、呼吸数の変化
- 尿路:排尿時痛、尿の性状、尿量
- 皮膚・創部:発赤、腫脹、熱感、排液
- 点滴やカテーテル:挿入部の発赤、疼痛、浸出液
- 消化器:腹痛、下痢、嘔吐、腹部膨満
- 関節・下肢:腫脹、疼痛、左右差
- 口腔内:歯肉や粘膜の異常、口腔内の痛み
入院患者の発熱に関する公開資料では、創部、デバイス、皮膚、尿・便、呼吸器症状などを確認する視点が示されています。
4.検査値と検査結果の推移
医師や記録から、次のような検査結果の推移を確認します。
- 白血球数
- CRPなどの炎症反応
- 腎機能や肝機能
- 血液培養や尿培養などの結果
- 胸部画像などの画像検査結果
ただし、CRPなどの炎症反応が下がらないことだけを理由に、抗菌薬を追加・変更するとは限りません。
『内科』誌の総説でも、解熱しないことやCRPが下がらないことだけで抗菌薬を開始・追加・変更しない考え方が示されています。
検査値は単独で見るのではなく、症状やバイタルサイン、感染源の所見と一緒に確認します。
報告するときは「熱が下がらない」から一歩進める
医師へ報告するとき、次のように整理すると伝わりやすくなります。
報告の整理例
- 抗菌薬を開始した日時
- その後の体温の推移
- 現在のバイタルサイン
- 意識状態や全身状態
- 呼吸器症状、尿路症状、腹部症状など
- 創部やデバイスの状態
- 食事・水分摂取量
- 尿量
- 検査値や培養結果の推移
- 抗菌薬の投与状況
- 新しく始まった薬
- 発疹、関節痛、下肢の腫れなどの新しい症状
たとえば、次のような報告です。
「抗菌薬開始後も発熱が続いています。開始は昨日の夕方で、今朝の体温は○℃です。血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂は前回と比べて○○です。昨夜から食事摂取が低下し、尿量も減っています。右前腕の点滴挿入部に発赤と疼痛があり、昨日より広がっています。投与は予定どおり実施されています」
このように伝えると、単に「熱が下がらない」という報告よりも、診断の再評価や感染源の確認が必要かどうかを判断しやすくなります。
注意したい状態
次のような変化がある場合は、発熱の原因を考えるだけでなく、患者さんの全身状態の悪化として速やかに報告します。
- 血圧低下
- 脈拍の増加
- 呼吸数の増加
- SpO₂低下や呼吸苦
- 意識状態の変化
- 尿量低下
- 強い悪寒や戦慄
- 局所の発赤・腫脹・疼痛の進行
- 新たな胸痛や下肢の腫れ
- 経口摂取が大きく低下している
体温の数字だけを待つのではなく、患者さんが悪化していないかを確認します。
実践ポイント
最初に見ること
- 体温の推移だけでなく、血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂、意識状態を確認する。
- 尿量、食事摂取、脱水所見、発汗を確認する。
- 抗菌薬開始日、投与回数、投与経路、飲み忘れや中断の有無を確認する。
感染源の再確認
- 創部、褥瘡、点滴ルート、カテーテル、デバイス、歯科・口腔内、皮膚発疹、関節痛、下痢、咳痰、排尿症状を確認する。
- 必要に応じて、血液・尿・喀痰培養、胸部X線、炎症反応、臓器機能の推移を確認する。
抗菌薬が効かない理由の整理
- 感染臓器の診断が正しいか。
- その抗菌薬が原因菌をカバーしているか。
- 投与量・投与法・投与間隔が適切か。
- ドレナージや除去が必要な感染源が残っていないか。
- 薬剤熱、DVT、結晶性関節炎など非感染性発熱ではないか。
報告のしかた
- 「熱が下がりません」ではなく、いつから、どの程度、何回、どのバイタルがどう変化したか、局所所見はどうか、検査値はどう推移したかを整理して報告する。
- これにより、医師が抗菌薬の見直しが必要か、まず診断再評価かを判断しやすくなります。
筆者の体験談:体温以外の変化を報告した場面
私が看護師をしていた頃、抗菌薬が開始されて数日たっても、患者さんの熱が続いていたことがありました。
記録を見たとき、私は最初に「まだ薬の効果が出ていないのかな」と考えました。患者さんは会話ができていて、強い苦痛も訴えていませんでした。そのため、急いでいるようには見えなかったのです。
ただ、バイタルサインを測ると、前日より呼吸数が増えていました。体温は大きく変わっていなかったので、最初は見落としそうになりました。
「熱は同じだけれど、呼吸が少し速いな」と思い、患者さんに息苦しさを尋ねると、「動くと少し苦しい」と話されました。
さらに観察すると、点滴ルートの挿入部に軽い赤みがありました。はっきりした腫れではなかったため、これが発熱の原因かどうかは分かりませんでした。私は、抗菌薬を変更するべきかどうかを考えるより先に、まずこの変化を報告することにしました。
先輩看護師に相談すると、「熱の数字だけではなく、昨日と比べて何が変わったのかを伝えてみよう」と言われました。
そこで、抗菌薬の開始時刻、体温の推移、呼吸数、患者さんの息苦しさ、点滴部位の発赤を順番に伝えました。その後、医師の診察と検査につながりました。
そのときの私は、熱が下がらないことに意識が向きすぎていました。しかし、患者さんの状態を見直すと、体温以外にも変化が出ていました。
この経験があってから、私は「熱が下がらない」という言葉を聞いたとき、体温だけを確認しないようになりました。前日と比べて何が変わったのかを、まず考えるようになったのです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 抗菌薬を使っても熱が下がらないからといって、すぐに「薬が効いていない」とは判断しない
- 診断、感染源、投与状況、感染源のコントロール、非感染性発熱を順に再評価する
- 体温だけでなく、血圧・脈拍・呼吸数・SpO₂・意識状態を確認する
- 創部、褥瘡、点滴ルート、カテーテル、尿路、呼吸器、皮膚などを観察する
- 抗菌薬の開始日、投与経路、投与間隔、飲み忘れや中断の有無を確認する
- 薬剤熱、深部静脈血栓症、結晶性関節炎など、感染以外の原因も考える
- 報告では「熱が下がらない」だけでなく、経過・バイタル・症状・局所所見・投与状況を整理する
- バイタル悪化、意識変化、呼吸状態悪化、尿量低下がある場合は、速やかに報告する
抗菌薬を使っても熱が続くときに大切なのは、薬の効果だけを見ることではありません。
「感染症の見立ては合っているか」
「感染源は残っていないか」
「患者さんの全身状態は改善しているか」
この3つを意識しながら、観察と報告につなげていきましょう。
FAQ
Q1.抗菌薬を使い始めて、何日熱が続いたら効いていないと考えますか?
熱が続く日数だけで、抗菌薬の効果を判断することはできません。
体温の推移に加えて、バイタルサイン、症状、感染源の所見、検査値、全身状態の変化を合わせて評価します。日数だけで抗菌薬の追加や変更を決めるのではなく、医師へ経過を整理して報告します。
Q2.CRPが下がらない場合は、抗菌薬を変更しますか?
CRPが下がらないことだけで、抗菌薬を変更するとは限りません。
『内科』誌の総説でも、解熱しないことやCRPが下がらないことだけで抗菌薬を開始・追加・変更しない考え方が示されています。
患者さんの症状やバイタルサイン、感染源の有無などを合わせて判断します。
Q3.看護師が抗菌薬の変更を提案してもよいですか?
看護師が観察結果をもとに、「感染源の再評価が必要ではないか」「投与状況を確認したほうがよいのではないか」と報告することは重要です。
一方で、抗菌薬の変更や中止を看護師が自己判断で行うことはできません。患者さんの状態と確認した事実を整理し、医師やチームでの評価につなげます。
Q4.熱があっても患者さんの状態が安定していれば、急いで報告しなくてもよいですか?
発熱の持続だけで緊急性を決めることはできません。
患者さんの状態が安定しているように見えても、呼吸数の増加、尿量低下、意識状態の変化、局所症状の進行などがあれば報告が必要です。
反対に、全身状態が安定している場合でも、発熱の経過や感染源の変化を記録し、必要なタイミングで共有します。
参考文献
- 厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・入院編」PDF
- 厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」PDF
- 厚生労働省関連資料「抗微生物薬適正使用の手引き」資料
- 『内科』129巻2号「抗菌薬を開始しても熱が続く場合の対応」Webview
- 医学書院「FAQ 解熱しない患者と向き合うためのTips」記事
- 医療機関公開資料「入院患者の発熱」PDF
- ナース専科「発熱時の観察に関する解説」記事
- 看護roo!「発熱時の報告に関する解説」記事
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