抗凝固薬使用中の患者で観察すること|看護師・看護学生が確認したい出血徴候
こんにちは、ユウです。
みなさんは、抗凝固薬を使用している患者さんを受け持ったとき、「検査値以外に何を見ればよいのだろう」と迷ったことはありませんか?
ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬は、血栓を予防するために重要な薬です。一方で、出血が起こりやすくなる可能性があるため、皮膚や尿・便の変化だけでなく、貧血や腎機能なども合わせて確認する必要があります。
今回は、抗凝固薬使用中の患者さんで観察したい出血徴候と、看護師・看護学生が報告につなげるときの考え方について解説します。
結論:抗凝固薬使用中は「出血の有無」と「出血しやすい背景」をセットで見る
抗凝固薬を使用している患者さんでは、検査値だけで判断しません。
まずは、次の4つをセットで確認します。
- 皮膚・粘膜からの出血
- 尿・便・吐物などに血液が混じっていないか
- Hb低下、血圧低下、頻脈などの全身変化
- 腎機能、既往歴、併用薬などの出血リスク
具体的には、次のような変化を観察します。
- 鼻出血、歯肉出血
- あざ、皮下出血の増加
- 血尿、黒色便、血便
- 吐血
- 創部や穿刺部からの止血遅延
- 倦怠感、顔色不良、ふらつき
- Hbの低下
- 急な血圧低下や脈拍上昇
- 新しく出現した強い頭痛、意識変化、片麻痺
特に、急なHb低下、血圧低下、持続する出血、強い頭痛や意識変化がある場合は、見えない出血や重篤な出血を考え、速やかに報告・対応につなげます。
この記事の所要時間
この記事は、約15分で読めます。
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 抗凝固薬使用中に確認したい出血徴候
- 検査値と全身状態を合わせて見る理由
- 腎機能や併用薬を確認するポイント
- 緊急性が高い症状と報告の考え方
- 患者さんへの説明で伝えたいこと
根拠:出血は「目に見える変化」と「全身状態」の両方に現れる
抗凝固療法中の患者さんでは、鼻出血や皮下出血のように外から確認できる出血だけでなく、消化管出血や頭蓋内出血のように、初期には見えにくい出血にも注意が必要です。
StatPearlsの抗凝固療法に関する解説では、鼻出血、歯肉出血、あざ、血尿、黒色便、吐血、月経過多などが観察すべき症状として挙げられています。また、背部痛・側腹部痛、呼吸困難、新しい強い頭痛や神経症状にも注意が必要とされています。
また、エリキュース適正使用ガイドでは、投与中は出血や貧血の徴候を十分に観察し、必要に応じてHbや便潜血を確認することが示されています。急激なHb低下や血圧低下も、出血の徴候として扱われます。
つまり、抗凝固薬使用中の患者さんでは、
「血が出ているか」だけではなく、
「出血によって全身状態が変化していないか」
を見ることが大切です。
抗凝固薬使用中に観察したい項目
1.皮膚や粘膜の出血
まず確認しやすいのは、皮膚や粘膜の出血です。
- 鼻出血
- 歯磨き時の歯肉出血
- あざや紫斑
- 皮下出血の拡大
- 注射や採血部位からの出血
- 手術創や外傷部位からの出血
あざがある場合は、単に「ある・ない」だけで終わらせず、いつからあるのか、増えているのか、痛みや腫れがあるのかを確認します。
採血後や注射後の穿刺部では、止血できているか、ガーゼに血液が広がっていないかを確認します。
2.尿・便・吐物の変化
尿や便の変化も重要です。
- 赤色や褐色の尿
- 血尿の持続
- 黒色便
- 血便
- 吐血
- コーヒーかすのような吐物
黒色便は、消化管内で出血した血液が消化された結果として見られることがあります。ただし、食事や薬剤などで便の色が変化する場合もあるため、色の変化だけで判断せず、患者さんの症状や検査値と合わせて確認します。
患者さんから「便が黒い」と訴えがあった場合は、見た目だけでなく、いつからか、回数は増えているか、腹痛やふらつきがあるかも聞き取ります。
3.貧血を示す症状
出血が目に見えなくても、貧血症状として現れることがあります。
- 倦怠感
- 顔色不良
- ふらつき
- 息切れ
- 動悸
- 立ち上がったときの気分不良
特に、以前と比べて急に元気がなくなった、歩行時にふらつくようになったという変化には注意します。
エリキュース適正使用ガイドでは、貧血などの徴候を観察し、必要に応じてHbを確認することが示されています。
Hbが低下している場合は、出血が原因とは限りません。しかし、抗凝固薬を使用中で、出血症状や血圧低下などを伴っている場合は、出血の可能性を考える材料になります。
4.血圧・脈拍などのバイタルサイン
出血が進行すると、血圧低下や脈拍上昇が見られることがあります。
確認したいのは、次のような変化です。
- いつもより血圧が低い
- 脈拍が速くなっている
- 冷汗がある
- 顔色が悪い
- 意識がぼんやりしている
- ふらつきや脱力感がある
一回の測定値だけで判断するのではなく、普段の値や直前の値と比較します。
たとえば、血圧がもともと低い患者さんと、普段は正常だった患者さんでは、同じ血圧でも意味が異なる可能性があります。
5.頭痛や神経症状
抗凝固薬使用中に、新しく強い頭痛が出現した場合は注意が必要です。
- 突然の強い頭痛
- 意識状態の変化
- ろれつが回らない
- 片側の手足に力が入らない
- ふらつきが急に強くなった
- けいれん
- 嘔吐を伴う頭痛
これらは、頭蓋内出血など重篤な状態の可能性を考えるきっかけになります。
「いつもの頭痛かもしれない」と決めつけず、発症時期、強さ、意識状態、麻痺の有無などを確認し、速やかに報告します。
出血リスクを高める背景も確認する
抗凝固薬使用中の患者さんでは、出血徴候がない場合でも、出血しやすい背景がないか確認します。
腎機能
腎機能は、抗凝固薬の安全管理で重要な項目です。
宮崎大学の研究成果紹介では、腎機能が低下している患者さんでは出血イベントのリスクが高く、そのリスクが時間経過で下がりにくいことが示されています。
実際には、次のような検査値を確認します。
- eGFR
- 血清クレアチニン
- BUN
- これまでの腎機能の推移
1回の値だけでなく、以前と比べて低下していないかを見ることが大切です。
既往歴
開始前や受け持ち時には、次のような既往歴も確認します。
- これまでの出血歴
- 消化管潰瘍
- 脳出血や脳梗塞の既往
- 肝疾患
- 腎疾患
- 転倒リスク
転倒しやすい患者さんでは、外傷後の出血にも注意が必要です。転倒があった場合は、外傷の有無だけでなく、頭部を打っていないか、意識や神経症状に変化がないかを確認します。
併用薬
抗凝固薬以外の薬剤も確認します。
- 抗血小板薬
- NSAIDsなどの鎮痛薬
- その他、出血リスクに関係する薬剤
薬剤名をすべて暗記する必要はありませんが、「抗凝固薬を飲んでいるから、この薬は関係ない」と考えず、併用薬全体を確認する姿勢が必要です。
ワルファリンとDOACでは検査値の見方が異なる
抗凝固薬には複数の種類があります。
ワルファリンでは、PT-INRを凝固状態の評価に用います。一方で、DOACではPT-INRだけで薬の効果や出血リスクを十分に評価できるとは限りません。
そのため、DOACを使用している患者さんでは、PT-INRの数値だけを見て「問題ない」と判断しないことが重要です。
薬剤の種類、最終内服時刻、腎機能、出血症状、Hb、バイタルサインなどを合わせて確認します。
看護師・看護学生が報告するときの整理方法
異常を見つけたときは、次の順番で情報を整理すると報告しやすくなります。
1.何が起きたのか
例:
- 今朝から血尿がある
- 鼻出血が続いている
- 昨日より皮下出血が広がっている
- 黒色便が出た
- 新しく強い頭痛を訴えている
2.いつから、どのくらいか
- 発症時刻
- 回数
- 出血量の変化
- 止血できているか
- 症状が強くなっているか
3.全身状態はどうか
- 血圧
- 脈拍
- 意識状態
- 顔色
- ふらつき
- 息切れ
- 倦怠感
4.関連する検査値や背景
- Hbの変化
- 血小板数
- 腎機能
- 抗凝固薬の種類と最終内服時刻
- 併用薬
- 転倒や外傷の有無
「血尿があります」だけでなく、
「本日朝から血尿が3回あり、昨日より濃くなっています。血圧は普段より低く、脈拍は上昇しています。Hbも前回より低下しています」
のように、時間経過と全身状態を合わせて伝えると、状況が共有しやすくなります。
出血があったときの患者さんへの説明
患者さんには、出血があった場合に自己判断で薬を中止しないこと、そしてどのようなときに連絡するかを説明します。
小さな傷の場合は、服薬指導資料で圧迫止血が案内されています。第一三共エスファの服薬指導資料では、鼻出血は5分程度、傷の圧迫止血は10分程度で止まらない場合に医療機関へ連絡するよう示されています。
ただし、これは患者さんの状態や施設の指示によって対応が異なる場合があります。看護師は、施設の基準や医師の指示に沿って説明します。
特に、次のような症状がある場合は、早めの連絡が必要です。
- 止まらない鼻出血
- 黒色便や血便
- 血尿が続く
- 吐血
- 急な強い頭痛
- 意識や手足の動きの変化
- 強いふらつきや息苦しさ
出血が疑われる場合、抗凝固薬を中止するかどうかは、出血の程度や薬剤の種類、血栓リスクなどを踏まえて判断します。患者さんが自己判断で中止するのではなく、医療者へ相談するように伝えます。
実践ポイント
抗凝固薬使用中の患者さんを受け持つときは、次のように観察と報告を整理すると実践につなげやすくなります。
開始前・受け持ち時に確認すること
- 抗凝固薬の種類
- 最終内服時刻
- これまでの出血歴
- 消化管潰瘍、脳出血や脳梗塞、肝疾患、腎疾患の既往
- 腎機能とこれまでの推移
- 転倒リスク
- 抗血小板薬やNSAIDsなどの併用薬
日々の観察で確認すること
- 歯肉出血、鼻出血、皮下出血
- 血尿、黒色便、血便、吐血
- 創部や穿刺部の出血と止血状況
- 倦怠感、顔色不良、ふらつき、息切れ、動悸
- 血圧や脈拍の急な変化
- 新しく出現した頭痛、意識変化、片麻痺などの神経症状
検査データの見方
検査値は単独で見るのではなく、症状やバイタルサインと合わせて評価します。
- 急激なHb低下がないか
- 血小板数を確認する
- eGFR、血清クレアチニン、BUNなどの腎機能を確認する
- 以前の値と比べて腎機能が低下していないか確認する
- ワルファリンではPT-INRを確認する
- DOACではPT-INRだけで判断しない
緊急性が高い所見
次のような症状がある場合は、頭蓋内出血や大量出血などを疑い、直ちに報告・対応につなげます。
- 吐血
- 黒色便の増加
- 血尿の持続
- 止まらない鼻出血
- 急な強い頭痛
- 意識変化
- 片麻痺
- 急な血圧低下や頻脈
- 強いふらつき、息苦しさ、冷汗
報告のポイント
異常を報告するときは、症状、発症時期、程度、経過、バイタルサイン、検査値、服薬状況をまとめます。
「いつから」「どのくらい」「以前と比べてどうか」を意識して伝えると、受け手が緊急度を判断しやすくなります。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、抗凝固薬を使用している患者さんを受け持ったことがあります。
その患者さんは、朝の検温では普段と大きな変化がありませんでした。ただ、配膳のときに「今日は少しふらつく」と話されました。
最初、私は睡眠不足や食事量の影響かもしれないと思いました。血圧を測ると、普段より少し低い程度でしたが、脈拍はいつもより速くなっていました。
記録を確認すると、前回の採血よりHbが低下していました。
そのとき私は、目に見える出血がないのに、どこから出血しているのだろうと迷いました。患者さんに確認すると、本人は気づいていませんでしたが、「昨日から便がいつもより黒っぽい気がする」と話されました。
私は便の状態を確認し、バイタルサインとHbの変化、抗凝固薬の使用状況をまとめて先輩看護師に相談しました。その後、医師へ報告し、追加の評価につながりました。
当時の私は、出血というと血尿や鼻血のように、目で見て分かるものを最初に考えていました。しかし、この経験から、ふらつきやHb低下のような小さな変化も、患者さんの普段の状態と比べて考えるようになりました。
今振り返ると、「出血が見えないから大丈夫」と思い込まなかったことが、次の確認につながったのだと思います。
この体験談は、医学的根拠を示すものではなく、抗凝固薬使用中の患者さんを観察する際の看護場面をイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 抗凝固薬使用中は、検査値だけでなく出血徴候と全身状態を確認する
- 鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、黒色便、吐血を観察する
- Hb低下、血圧低下、頻脈、ふらつきは見えない出血の手がかりになる
- 腎機能低下、出血歴、転倒リスク、併用薬も確認する
- 強い頭痛、意識変化、片麻痺、止まらない出血は緊急性が高い
- 出血の状況は、発症時期・程度・バイタルサイン・検査値をまとめて報告する
- 抗凝固薬の中止は自己判断で行わず、医療者へ相談する
抗凝固薬使用中の患者さんでは、「出血しているか」だけでなく、「出血が起こりやすい状態になっていないか」「全身状態に変化がないか」まで含めて観察することが大切です。
FAQ
Q1.抗凝固薬を飲んでいる患者さんのPT-INRが正常なら、出血の心配はありませんか?
いいえ。PT-INRだけで出血リスクを判断することはできません。
ワルファリンではPT-INRを評価に用いますが、DOACではPT-INRだけで薬の効果や出血リスクを十分に判断できない場合があります。出血症状、Hb、血圧、腎機能、薬剤の種類などを合わせて確認します。
Q2.少量の鼻血なら、報告しなくてもよいですか?
少量で止まっている場合でも、抗凝固薬使用中であれば、出血の有無や止血までの時間を記録し、必要に応じて報告します。
鼻出血が続く、繰り返す、止血できない、他の出血徴候を伴う場合は、早めに医療者へ相談します。
Q3.黒色便があった場合、必ず消化管出血ですか?
黒色便の原因は一つではありません。食事や薬剤の影響で便が黒くなることもあります。
ただし、抗凝固薬使用中で、ふらつき、倦怠感、血圧低下、Hb低下などを伴っている場合は、消化管出血の可能性も考えて報告・評価につなげます。
Q4.抗凝固薬を飲み忘れた場合は、2回分をまとめて飲めばよいですか?
自己判断で2回分をまとめて服用しないでください。
薬剤によって対応が異なるため、処方医や薬剤師、施設の指示を確認します。
参考文献
- StatPearls, “Anticoagulation Safety”, National Center for Biotechnology Information. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK519025/
- ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社・ファイザー株式会社『エリキュース適正使用ガイド』。https://www.bmshealthcare.jp/assets/buildeasy/apac-commercial/bms-healthcare-jp/ja/documents/products/eliquis/ELIQUIS_guide.pdf
- 第一三共エスファ株式会社『抗凝固薬に関する服薬指導資料』。https://med2.daiichisankyo-ep.co.jp/cardiology/knowledge/vte03.php?certification=1
- 第一三共エスファ株式会社『抗凝固薬の適正使用に関する情報』。https://med2.daiichisankyo-ep.co.jp/cardiology/skillup/skillup13.php?certification=1
- 宮崎大学『腎機能低下と抗凝固療法に関する研究成果紹介』。https://www.miyazaki-u.ac.jp/newsrelease/edu-info/post-798.html
- 日本血栓止血学会『抗血栓薬服用者に対する出血時の対応に関する資料』。https://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/04/oyakudachi_202104_04.pdf
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