心不全患者の呼吸困難が悪化したときの観察ポイント|看護師・看護学生が最初に見ること
こんにちは、ユウです。
みなさんは、心不全の患者さんから「息が苦しい」と訴えられたとき、最初に何を確認しますか?
肺うっ血や体重増加を思い浮かべる人も多いと思います。でも、呼吸困難が悪化したときは、原因を考える前に「本当に呼吸状態が悪化しているのか」「命に関わる状態ではないか」を見極める必要がありますよね。
今回は、心不全患者さんの呼吸困難が悪化したときに、看護師・看護学生が最初に確認したい観察項目と、緊急性を判断するポイントについて解説します。
結論:まず「呼吸」と「循環」の状態を確認する
心不全患者さんの呼吸困難が悪化したときは、まず次の項目を確認します。
- 呼吸数
- 呼吸パターン
- SpO₂
- 意識状態
- 血圧
- 脈拍
- 会話ができるか
- 起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難の有無
- 湿性ラ音、頸静脈怒張、浮腫などのうっ血所見
- 四肢冷感、冷汗、チアノーゼ、尿量低下などの循環不全のサイン
特に、SpO₂の低下、著しい呼吸困難、意識低下、血圧低下、ショックの所見がある場合は、緊急性が高いと考えます。
まずは患者さんを楽な姿勢、基本的には半坐位や端座位にしながら、バイタルサインと全身状態を確認し、必要に応じてすぐに上級者や医師へ報告・相談します。
ざっくり言うと、
息苦しさの原因を考える前に、呼吸不全や循環不全が起きていないかを見る
ということです。
読了目安
約10分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 心不全患者さんの呼吸困難で最初に見る項目
- 肺うっ血と低心拍出のサイン
- 起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難を確認する理由
- 緊急性が高い状態の見分け方
- 看護師・看護学生が報告するときのポイント
根拠:心不全では「呼吸」と「循環」を分けて評価する
心不全の患者さんに呼吸困難が出たとき、単に「肺に水がたまったのかな」と考えるだけでは不十分です。
心不全では、大きく分けて次の2つの状態を評価します。
1つ目は、肺に血液や水分がうっ滞する肺うっ血です。
2つ目は、心臓から全身へ血液を送り出せなくなる低心拍出です。
大阪急性期・総合医療センターの心不全に関する資料では、肺うっ血を示す所見として、呼吸困難、湿性ラ音、Ⅲ音、頸静脈怒張などが挙げられています。
一方、低心拍出を示す所見として、四肢冷感、冷汗、チアノーゼ、意識障害、乏尿、脈圧低下などが整理されています。
つまり、呼吸困難がある患者さんでは、
- 肺にうっ血があるのか
- 全身に血液を送れていないのか
- その両方が起きているのか
を考える必要があります。
また、厚生労働省掲載の「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」でも、心不全患者さんを評価するときに、呼吸回数や呼吸パターンの変化を慎重に観察することが示されています。
詳しい解説
1.最初に呼吸数と呼吸パターンを見る
呼吸困難の訴えがあったら、まず患者さんの呼吸を直接観察します。
確認するのは、次のような項目です。
- 呼吸数が増えていないか
- 浅く速い呼吸になっていないか
- 呼吸のリズムが乱れていないか
- 肩で息をしていないか
- 会話の途中で息継ぎが増えていないか
- 横になると苦しくなるか
- チアノーゼがないか
呼吸数は、1回測定した数値だけで判断するよりも、普段と比べて増えているかを見ることが重要です。
心不全患者さんでは、数値そのものだけではなく、「いつもより息が速い」「会話が続かない」といった変化も大切な情報になります。
2.SpO₂は数値だけでなく、症状と合わせて見る
SpO₂を測定したら、数値だけで判断しないようにします。
確認したいのは、
- いつもより低下しているか
- 息苦しさの訴えと一致しているか
- 呼吸数が増えていないか
- 意識状態に変化がないか
- 測定条件に問題がないか
です。
今回確認できた心不全診療ガイドラインの資料では、SpO₂について一律の具体的なカットオフ値は示されていません。
そのため、絶対値だけで安心したり、反対に数値だけで重症度を決めたりしないことが大切です。
SpO₂が低下しているうえに、著しい呼吸困難や意識低下、血圧低下などがある場合は、緊急性が高い可能性があります。
3.起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難を確認する
「横になると苦しい」「座ると少し楽になる」という訴えがある場合は、起坐呼吸を考えます。
また、夜間に息苦しさで目が覚め、起き上がると楽になる場合は、夜間発作性呼吸困難の可能性があります。
大阪急性期・総合医療センターの資料では、呼吸困難の重症度について、一般に労作時息切れ、発作性夜間呼吸困難、起坐呼吸の順で重くみる考え方が示されています。
患者さんに呼吸困難の訴えがあったら、次のように尋ねると状況を確認しやすくなります。
- 「横になると苦しくなりますか?」
- 「座ると楽になりますか?」
- 「夜中に息苦しくて目が覚めることはありますか?」
- 「いつ頃から、どのように苦しくなりましたか?」
単に「息苦しいですか」と聞くだけでなく、体位との関係を確認することがポイントです。
4.肺うっ血のサインを確認する
肺うっ血を疑うときは、呼吸状態に加えて次の項目を観察します。
- 湿性ラ音
- 頸静脈怒張
- 浮腫
- 体重増加
- 尿量低下
- 横になると増悪する呼吸困難
短期間の体重増加は、体液貯留の手がかりになります。厚生労働省掲載の心不全診療ガイドラインでも、短期間の体重増加は心不全を評価するうえで重要な観察項目とされています。
ただし、体重だけで心不全の悪化を判断するのではなく、呼吸状態や浮腫、尿量などと合わせて評価します。
5.低心拍出やショックのサインを確認する
心不全の悪化では、肺うっ血だけでなく、心臓から血液を送り出せない状態が問題になることがあります。
次のような変化がないか確認します。
- 血圧低下
- 頻脈
- 四肢冷感
- 冷汗
- チアノーゼ
- 意識レベルの低下
- 尿量低下
- 脈圧の低下
呼吸困難があり、さらに意識状態や血圧、末梢循環にも異常がある場合は、単なる息切れとして様子を見るのは危険です。
患者さんの状態に応じて、院内の急変対応の手順に沿って、医師や上級看護師へ速やかに報告します。
6.呼吸困難の原因が心不全とは限らない
心不全の患者さんが息苦しさを訴えた場合でも、原因が必ず心不全の悪化とは限りません。
肺炎、COPD、喘息、貧血、肺塞栓など、ほかの原因も考える必要があります。
そのため、「心不全の患者さんだから肺うっ血だろう」と最初から決めつけるのではなく、発症時期や症状の経過、発熱、咳、胸痛、呼吸音などを確認します。
今回確認できた資料では、これらの鑑別を一つの一覧で体系的に示す一次資料は限定的でした。ただし、心不全の評価では、症状、身体所見、検査結果を組み合わせて判断することが前提になります。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
まずはABCDEを意識して観察する
呼吸困難の訴えがあったら、最初から病名を決めようとするのではなく、まず生命に関わる変化がないかを見ます。
特に確認したいのは次の項目です。
呼吸
- 呼吸数
- 呼吸パターン
- SpO₂
- 呼吸音
- 会話の可否
- 起坐呼吸の有無
循環
- 血圧
- 脈拍
- 四肢冷感
- 冷汗
- チアノーゼ
- 尿量
意識
- 声かけへの反応
- いつもと比べた意識状態
- ぼんやりしていないか
- 会話が成立するか
楽な体位をとる
呼吸困難がある患者さんには、状態を確認しながら半坐位や端座位など、呼吸がしやすい姿勢をとります。
日本内科学会雑誌の資料では、心不全患者さんの体位は半坐位を原則とする記載があります。
ただし、患者さんの血圧や意識状態などによって対応は異なるため、無理に体位を変えるのではなく、状態を見ながら行います。
「普段と比べてどうか」を報告する
報告するときは、測定値だけでなく、普段との違いを伝えると状況が共有しやすくなります。
例えば、
- 普段より呼吸数が増えている
- いつもは横になれるが、今日は座っていないと苦しい
- SpO₂が普段より低下している
- 会話の途中で息継ぎが増えている
- 体重が短期間で増えている
- 四肢が冷たく、冷汗がある
といった形です。
「息苦しいと言っています」だけで終わらせず、観察した事実と変化をまとめて伝えます。
緊急性が高いサインを見逃さない
次のような状態があれば、緊急性が高い可能性があります。
- 意識低下
- 血圧低下
- 著しい呼吸困難
- 明らかな低酸素
- 会話が困難
- 冷汗や四肢冷感
- チアノーゼ
- 尿量低下
- ショックを疑う所見
このようなときは、原因を一人で判断しようとせず、院内の急変対応に沿って、医師や上級看護師への報告、応援要請につなげます。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、夕方になって「息がしにくい」と訴えた心不全の患者さんを受け持ったことがありました。
最初に訪室したとき、患者さんはベッド上で上体を起こしていました。私は「いつもの息切れが少し強くなったのかな」と考えました。
ところが、会話を始めると、患者さんは短い言葉で話し、途中で何度も息継ぎをしていました。記録上の呼吸数やSpO₂を確認しましたが、そのときの私は、数値が極端に悪くなければ、もう少し様子を見てもよいのではないかと迷っていました。
そのとき、先輩看護師に「普段は横になって眠れている方ですか」と聞かれました。
患者さんに確認すると、「昼間は大丈夫だったけれど、横になると苦しくなるので、さっきからずっと起きています」と話されました。
私はそこで、測定値だけを見ていたことに気づきました。患者さんがどの姿勢で過ごしているのか、会話の様子が普段と違うのかを、十分に見られていなかったのです。
その後、先輩と一緒に呼吸状態や血圧、脈拍、呼吸音などを確認し、患者さんが楽な姿勢を保てるようにしながら、医師へ報告しました。
この経験があってから、私は呼吸困難の患者さんを見たとき、モニターの数字だけでなく、「その人がどの姿勢で、どのように話しているか」を意識して見るようになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 心不全患者さんの呼吸困難が悪化したら、まず呼吸と循環を確認する
- 呼吸数、呼吸パターン、SpO₂、意識、血圧、脈拍を最初に見る
- 起坐呼吸や夜間発作性呼吸困難は、心不全の悪化を考える手がかりになる
- 湿性ラ音、頸静脈怒張、浮腫、体重増加は肺うっ血のサインとして確認する
- 四肢冷感、冷汗、チアノーゼ、意識低下、尿量低下は低心拍出や循環不全のサインとして注意する
- 数値は単発で判断せず、普段との変化や患者さんの様子と合わせて見る
- 著しい呼吸困難、低酸素、血圧低下、意識低下などがあれば、速やかに報告・相談する
心不全患者さんの「息苦しい」という訴えは、肺うっ血だけでなく、循環不全やほかの疾患が隠れている可能性もあります。
まずは呼吸と循環の状態を確認し、患者さんの普段との違いを捉えることが大切です。
FAQ
Q1.SpO₂がそれほど低くなければ、心不全の悪化は否定できますか?
いいえ。SpO₂が大きく低下していなくても、呼吸数の増加、起坐呼吸、会話困難、血圧低下、意識状態の変化などがあれば注意が必要です。
SpO₂は単独で判断せず、普段の値や呼吸困難の程度、ほかのバイタルサインと合わせて評価します。
Q2.呼吸困難がある患者さんは、すぐに横にして休ませればよいですか?
横になると呼吸困難が悪化する患者さんもいます。
患者さんの状態を確認しながら、半坐位や端座位など、呼吸がしやすい姿勢をとります。体位変換によって状態が悪化する場合や、血圧低下・意識低下がある場合は、無理に動かさず、すぐに応援を要請します。
Q3.心不全患者さんの呼吸困難は、すべて心不全の悪化と考えてよいですか?
いいえ。肺炎、COPD、喘息、貧血、肺塞栓など、ほかの原因も考えられます。
発症時期、発熱、咳、胸痛、呼吸音、バイタルサインなどを確認し、必要に応じて医師へ報告します。
参考文献
- 厚生労働省「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」:厚生労働省掲載資料
- 厚生労働省「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」:厚生労働省掲載資料
- 大阪急性期・総合医療センター「心不全(循環器科)」:大阪急性期・総合医療センター公式資料
- 日本内科学会雑誌「日本内科学会雑誌 第100巻第11号」:J-STAGE掲載資料
- 看護roo!「急性心不全症状の対応」:看護roo!
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版
著者:新東京病院看護部
出版社:照林社
心不全・循環器領域を総合的に整理しており、肺うっ血や低心拍出のサインの理解とアセスメント力向上に直結するため。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
呼吸・循環を含むフィジカルアセスメントの方法と根拠を実習で使える形で学べ、記事の「まず観察する」方針に合うため。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
呼吸数・SpO₂・血圧・脈拍などバイタルサインの意味を患者の状態判断に結びつけて学べ、記事の評価ポイントを深めるのに適しているため。
※本ページにはPRが含まれています。
実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢
そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。
\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /
LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊



