低血糖を疑ったときに最初に確認すること|看護師・看護学生の観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんに「手が震える」「冷や汗が出る」「気分が悪い」と言われたとき、最初に何を確認しますか?
低血糖の症状を思い浮かべる人も多いと思います。でも、症状だけでは本当に低血糖なのか判断できません。また、意識が低下していたり、飲み込めない状態だったりすると、糖分を口から摂ってもらうことが危険になる場合があります。
今回は、低血糖を疑ったときに、看護師・看護学生が最初に確認したい血糖値、意識状態、経口摂取の可否について解説します。
結論:まず血糖値を測定し、意識と「口から摂れるか」を同時に確認する
低血糖を疑ったときは、次の順番で考えるのが基本です。
- 血糖値を測定して、低血糖の有無を確認する
- 意識状態を確認する
- 安全に口から飲食できるかを確認する
- 必要に応じて、速やかに糖質補給や医師への報告・相談につなげる
ざっくり言うと、
症状だけで低血糖と決めつけず、血糖値・意識・経口摂取の可否を確認する
ということです。
血糖値が低く、意識が保たれていて安全に飲み込める場合は、施設の手順や指示に従って糖質補給を行います。
一方、意識障害がある、飲み込めない、誤嚥のおそれがある場合は、口から無理に飲ませてはいけません。医師や上級者へ速やかに報告し、静脈内グルコース投与などの対応を検討する場面です。日本糖尿病学会「低血糖およびシックデイ」
想定読了時間:約8分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 低血糖を疑ったときに最初に行うこと
- 血糖値と低血糖症状の考え方
- 意識状態と経口摂取の可否を確認する理由
- 看護師・看護学生が観察するときのポイント
- 低血糖の対応後に確認したい原因
根拠:低血糖は症状だけで判断せず、血糖値を確認する
低血糖では、手の震え、冷汗、動悸、空腹感、集中力の低下などがみられることがあります。
しかし、これらの症状は低血糖以外でも起こる可能性があります。そのため、症状だけを見て「低血糖だ」と判断するのではなく、まず血糖値を測定して確認します。
厚生労働省の「医療関係者の皆様へ 早期発見と早期対応のポイント」では、低血糖を思わせる症状がある場合、まず血糖値を測定して確認することが示されています。
また、日本糖尿病学会の「低血糖およびシックデイ」でも、直ちに血糖値を測定し、低血糖であることを確かめる流れが示されています。
低血糖を疑う血糖値の目安
複数の資料では、血糖値70 mg/dL未満が低血糖を疑う目安として示されています。
厚生労働省資料では、次のように整理されています。
- 60~70 mg/dL未満:交感神経症状が出現しうる
- 50 mg/dL未満:中枢神経症状が出現しうる
交感神経症状とは、手の震え、冷汗、動悸などの症状です。中枢神経症状では、集中力の低下、意識障害などが問題になります。厚生労働省「医療関係者の皆様へ 早期発見と早期対応のポイント」
ただし、血糖値が70 mg/dL以上だからといって、低血糖を完全に否定できるわけではありません。
血糖値が急激に低下している場合には、70 mg/dL以上でも低血糖のような症状が出ることがあります。厚生労働省資料や日本糖尿病協会の資料でも、この点が説明されています。
つまり、血糖値は重要ですが、数値だけで患者さんの状態を切り離して判断しないことも大切です。
低血糖を疑ったときの詳しい確認ポイント
1.まず血糖値を測定する
患者さんに次のような症状がないか観察します。
- 手の震え
- 冷汗
- 動悸
- 強い空腹感
- 倦怠感
- めまい
- 集中力の低下
- 眠気
- 反応の鈍さ
- 意識の変化
ただし、症状が低血糖らしく見えても、最初から原因を決めつけないようにします。
まず血糖値を測定し、
- 測定値はいくつか
- いつ測定したか
- 食事や薬剤との関係はあるか
- 症状は続いているか
を確認します。
2.意識状態を確認する
血糖値を測定するときは、意識状態も同時に見ます。
声かけへの反応があるか、会話が成立するか、普段と比べて反応が遅くないかを確認します。
低血糖が進行すると、中枢神経症状として意識障害などが出現することがあります。血糖値の数字だけを見るのではなく、患者さんがどの程度反応できているかを確認することが必要です。
「血糖値は低いけれど、会話はできるのか」
「声かけに反応しないのか」
この違いによって、口から糖質を摂ってもらえる状態かどうかが変わります。
3.安全に経口摂取できるか確認する
次に確認するのは、口から飲食できるかどうかです。
具体的には、
- 意識が保たれているか
- 指示に従えるか
- 飲み込む動作ができるか
- むせずに飲める状態か
- 嘔吐していないか
などを確認します。
意識が低下している患者さんや、飲み込むことが難しい患者さんに、無理に飲み物や食べ物を入れると、誤嚥につながるおそれがあります。
そのため、経口摂取が難しい場合は、口から補給するのではなく、速やかに医師や上級者へ報告・相談します。日本糖尿病学会「低血糖およびシックデイ」
4.糖質補給後は改善を確認する
低血糖が確認され、経口摂取が可能であれば、施設の手順や医師の指示に従って糖質補給を行います。
PMDAの「患者の皆様へ 低血糖」では、低血糖に対して速やかな糖質補給が必要とされています。
対応後は、
- 症状が改善したか
- 意識状態が戻っているか
- 血糖値が改善しているか
を確認します。
血糖値が改善していても、患者さんの意識や症状が戻っているとは限りません。数値だけでなく、患者さんの表情や会話、反応も合わせて観察します。
低血糖の原因を考えるのは、その後
低血糖への初期対応が終わったら、原因を振り返ります。
確認したい項目としては、
- 糖尿病治療薬の使用状況
- 食事の量や食事時間
- 運動量
- 飲酒
- 発熱や食欲低下などの体調変化
などがあります。
ただし、これらは最初に行う緊急対応よりも後の確認です。
患者さんが低血糖症状を示しているときに、先に「なぜ低血糖になったのか」を長く考えてしまうと、血糖値の確認や安全な糖質補給が遅れる可能性があります。
まずは、
血糖値を確認する
意識を確認する
口から摂れるかを確認する
この順番を意識します。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
症状だけで判断しない
冷汗や手の震えがあると、低血糖を疑いやすくなります。
しかし、低血糖以外の原因でも似た症状が起こることがあります。症状の観察は大切ですが、血糖測定による確認とセットで考えます。
血糖値と意識状態を別々に見ない
血糖値が低いかどうかだけではなく、患者さんの反応も確認します。
たとえば、同じ低血糖でも、
- 会話ができる患者さん
- 反応が鈍い患者さん
- 意識が低下している患者さん
では、必要な対応が異なります。
「飲めますか」だけでなく、安全に飲み込めるかを見る
患者さんが「飲める」と答えていても、意識がはっきりしない場合や、むせがある場合は注意が必要です。
声かけへの反応、指示理解、嚥下の様子を確認し、無理な経口投与は避けます。
70 mg/dL以上でも症状を軽視しない
血糖値が70 mg/dL以上でも、急激な血糖低下によって症状が出る場合があります。
「70 mg/dL以上だから大丈夫」と機械的に判断せず、症状の経過や血糖値の変化、患者さんの意識状態を合わせて観察します。
私が看護師をしていた頃の体験
私が看護師をしていた頃、糖尿病の患者さんから「なんとなく気持ちが悪くて、手に力が入らない」と言われたことがありました。
その患者さんは会話ができていたので、私は最初、「少し疲れているのかな」と考えました。ただ、表情がいつもよりぼんやりしていて、手元も落ち着きませんでした。
「何かおかしいな」と思い、食事の摂取状況を確認すると、その日は食事がほとんど摂れていませんでした。そこで低血糖の可能性を考え、血糖値を測定しました。
測定結果を見たとき、私はやはり低血糖だったのだと気づきました。でも、その次に迷ったのが、「この患者さんに今すぐ口から摂ってもらってよいのか」ということでした。
会話はできていましたが、反応が少し遅く、飲み込みの様子も気になったからです。
私は一人で判断せず、先輩看護師に患者さんの反応と測定値を伝えて相談しました。その後、患者さんの状態を確認しながら対応し、しばらくして症状と反応が落ち着いていきました。
当時の私は、低血糖といえば「糖分を摂ってもらう」というイメージが強くありました。でも、この経験から、実際にはその前に血糖値だけでなく、意識や飲み込みの状態を見なければならないと感じました。
今でも低血糖を疑う場面では、症状を見てすぐに結論を出すのではなく、「この患者さんは安全に口から摂れる状態だろうか」と一度立ち止まって考えるようにしています。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 低血糖を疑ったら、まず血糖値を測定して確認する
- 血糖値の確認と同時に、意識状態を観察する
- 口から安全に摂取できるかを確認する
- 意識障害や嚥下困難がある場合は、無理に経口投与しない
- 低血糖が確認されたら、施設の手順や指示に従って速やかに糖質補給を行う
- 対応後は症状、意識、血糖値の改善を確認する
- 原因の振り返りは、初期対応が終わった後に行う
ざっくり言うと、
低血糖では「血糖値」「意識」「口から摂れるか」をセットで確認する
ことが重要です。
FAQ
Q1.低血糖らしい症状があるのに、血糖値が70 mg/dL以上ならどう考えますか?
急激に血糖値が低下している場合、70 mg/dL以上でも低血糖のような症状が出ることがあります。
そのため、数値だけで完全に否定せず、症状の経過や意識状態、血糖値の変化を合わせて観察します。厚生労働省「医療関係者の皆様へ 早期発見と早期対応のポイント」
Q2.意識が悪い患者さんにも、ジュースなどを飲ませてよいですか?
意識障害がある場合や、飲み込むことが難しい場合は、誤嚥のおそれがあるため、無理に口から飲ませてはいけません。
速やかに医師や上級者へ報告・相談し、静脈内グルコース投与などの対応を検討します。日本糖尿病学会「低血糖およびシックデイ」
Q3.低血糖の原因として、最初に何を確認すればよいですか?
初期対応の後に、薬剤の使用状況、食事量や食事時間、運動、飲酒、体調変化などを確認します。
ただし、患者さんに症状があるときは、原因探しよりも先に血糖値、意識状態、経口摂取の可否を確認します。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
まるごと図鑑 糖尿病看護&血糖コントロール
著者:土方ふじ子
出版社:照林社
糖尿病の看護と血糖コントロールを図解で整理しており、低血糖の観察・対応(血糖測定や糖質補給)の理解を深めるのに最適です。
写真でわかる急変時の看護アドバンス 新訂版
著者:松月みどり
出版社:インターメディカ
急変時の観察と看護技術を写真で具体的に示しており、誤嚥リスクのある患者への対応や静脈内グルコース投与など実践的知識を補強できます。
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