低血糖ではなぜブドウ糖を使う?看護師・看護学生が知っておきたい対応と観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、低血糖の患者さんを見たときに、「砂糖をなめてもらえばいいの?」「ジュースなら何でもいい?」「意識がぼんやりしているときはどうする?」と迷ったことはありませんか?
低血糖は、対応が遅れると意識障害につながる可能性があります。
しかも、意識状態によっては、口から食べてもらうこと自体が危険になる場合もあります。
今回は、低血糖でブドウ糖が使われる理由と、意識レベルに応じた対応、看護師・看護学生が確認したいポイントについて解説します。
結論:意識があり、安全に飲み込めるならブドウ糖を速やかに補給する
低血糖時の基本は、次のように考えます。
- 意識があり、経口摂取できる
- ブドウ糖10g、またはブドウ糖を含む飲料150〜200mLを速やかに摂取する
- α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している
- 砂糖ではなく、ブドウ糖を使用する
- 意識障害、強いふらつき、嚥下困難がある
- 口から食べさせない
- 静脈路確保や医師への報告、救急対応につなげる
ブドウ糖が第一選択になりやすいのは、体内で分解する手間がほとんどなく、吸収されて血糖を上げやすいからです。
ただし、低血糖の対応で最初に確認したいのは、血糖値だけではありません。
「安全に口から摂取できる状態か」
ここを確認して、行動を切り替えることが重要です。
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 低血糖でブドウ糖を使う理由
- 砂糖とブドウ糖の違い
- 低血糖時に示されているブドウ糖の量
- 意識レベルで対応を変える理由
- 看護師・看護学生が観察・確認したいポイント
- α-グルコシダーゼ阻害薬使用中の注意点
根拠:ブドウ糖は分解をほぼ必要とせず吸収されやすい
ブドウ糖は、糖の最小単位のひとつです。
このような糖を単糖類といいます。
一方、砂糖の主成分であるショ糖は、ブドウ糖などが結びついた形をしています。体内で利用されるまでには、分解される過程が必要です。
ざっくり言うと、
- ブドウ糖:そのまま吸収されやすい
- 砂糖:分解されてから吸収される
という違いがあります。
そのため、速やかに血糖を上げたい低血糖時には、砂糖よりもブドウ糖が使われやすくなります。
糖の種類や吸収の違いについては、糖尿病専門医療機関の解説や、砂糖とブドウ糖の違いに関する解説でも説明されています。
低血糖では、脳が使えるエネルギーが不足します。
進行すると、意識障害や昏睡に至る危険があります。
だからこそ、低血糖が疑われるときは、症状の変化を見ながら、できるだけ早く適切な補糖や医療的対応につなげます。
低血糖ではどのような症状が出るのか
低血糖の初期には、交感神経が刺激されることで、次のような症状が出ることがあります。
- 冷汗
- 動悸
- 手指のふるえ
- 強い空腹感
さらに低血糖が進むと、脳の働きに影響して、次のような症状がみられることがあります。
- 集中できない
- 受け答えがおかしい
- ぼんやりする
- 強い眠気がある
- 意識を失う
ただし、低血糖の症状はいつも同じとは限りません。
糖尿病治療中の患者さんでは、本人が「いつもの低血糖の感じ」と表現することもあります。
症状だけで判断せず、可能であれば血糖値を測定し、食事量、インスリンや糖尿病治療薬の使用状況なども確認します。
低血糖の症状については、糖尿病情報センターの資料にも整理されています。
低血糖時に示されているブドウ糖の量
公的性格を持つ糖尿病情報センターの資料では、低血糖時の対応として、次の量が示されています。
- ブドウ糖10g
- ブドウ糖を含む飲料150〜200mL
ただし、実際の対応では、製品によってブドウ糖の含有量が異なります。
「ラムネなら何粒」「この飲料なら何mL」と一律に考えるのではなく、製品表示や施設の手順を確認します。
また、補糖後も症状が改善しない場合や、経口摂取できない場合は、口からの補糖を繰り返すのではなく、医師への報告や医療的な対応が必要です。
砂糖ではなくブドウ糖が必要になる薬がある
低血糖時には、砂糖を使えばよいと考える人もいるかもしれません。
しかし、α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している患者さんでは注意が必要です。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、食物に含まれる糖質の分解を遅らせる薬です。
そのため、砂糖を摂取しても、ブドウ糖として利用されるまでに時間がかかる可能性があります。
この薬を使用している患者さんの低血糖では、砂糖ではなくブドウ糖を使用します。
ここは、低血糖対応で見落としやすいポイントです。
看護師・看護学生が確認する場合は、糖尿病治療薬の種類を確認し、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用があるかを薬歴や看護記録で確認します。
意識レベルによって対応を変える理由
低血糖時に最も注意したいのが、意識障害のある患者さんに無理に飲食させることです。
意識が低下していると、飲み込む動作がうまくできないことがあります。
その状態で水分やブドウ糖を口に入れると、気道に入る危険があります。
つまり、低血糖が疑われたら、いきなりブドウ糖を口に入れるのではなく、
「この患者さんは、安全に飲み込めるか」
を先に考えます。
経口摂取が可能な場合
次のような状態であれば、施設の手順に沿って経口補糖を行います。
- 意識が保たれている
- 指示が理解できる
- 飲み込むことができる
- 強いふらつきや嚥下困難がない
この場合は、ブドウ糖10g、またはブドウ糖を含む飲料150〜200mLが対応の目安として示されています。
補糖後は、症状が改善しているかを確認します。
必要に応じて血糖を再測定し、改善しない場合は医師へ報告します。再評価のタイミングや追加対応は、施設の手順や医師の指示に従います。
経口摂取が危険な場合
次のような状態では、口から食べさせないことが重要です。
- 意識がない
- 呼びかけへの反応が乏しい
- 強いふらつきがある
- 飲み込むことが難しい
- 口に入れても指示どおりに飲み込めない
- 低血糖症状が改善しない
この場合は、経口補糖ではなく、静脈路確保や静注ブドウ糖、グルカゴンなどの医療的対応が必要になります。
どの方法を選択するかは、患者さんの状態や処置の可否、医師の指示、施設の体制によって異なります。
糖尿病情報センターの低血糖資料では、意識障害がある場合に口からの摂取を避け、医療機関への連絡や医療的処置につなげる考え方が示されています。
また、病院前救護における20%ブドウ糖投与について検討した原著論文では、血糖上昇と意識レベル改善に一定の効果が報告されています。
「低血糖かどうか」だけでなく「経口摂取できるか」を見る
低血糖が疑われたとき、血糖値を確認することは大切です。
しかし、看護の現場では、血糖値だけを見て次の行動を決めるのでは不十分なことがあります。
たとえば、血糖値が低くても、意識障害があれば口からの補糖は危険です。
反対に、意識が保たれていて安全に飲み込めるなら、速やかな経口補糖を検討します。
そのため、次のような順番で考えると整理しやすくなります。
- 患者さんの反応や意識レベルを確認する
- 安全に飲み込めるかを確認する
- 可能であれば血糖値を測定する
- 経口補糖が可能か判断する
- 経口摂取が難しければ、すぐに医療的対応へつなげる
- 補糖後の症状や血糖値の変化を確認する
ここでのポイントは、
「低血糖だからブドウ糖を口に入れる」ではなく、「経口摂取が安全ならブドウ糖を使う」
ということです。
看護師・看護学生が確認したい観察ポイント
低血糖が疑われる患者さんを見たときは、次の内容を確認します。
1.意識レベルと反応
まず、呼びかけに対する反応を見ます。
- いつもどおり会話できるか
- 名前や場所を答えられるか
- 指示を理解できるか
- 反応が遅くなっていないか
- 眠り込んでいないか
「目を開けているから大丈夫」とは限りません。
会話の内容や指示への反応も含めて、普段との違いを確認します。
2.嚥下の状態
経口補糖を行う前に、飲み込めるかを確認します。
- むせていないか
- 声が濡れたようになっていないか
- 口の中にため込んでいないか
- 指示どおりに飲めるか
- 強いふらつきがないか
少しでも安全に飲み込めない可能性があれば、無理に口から摂取させません。
3.低血糖を疑う症状
次のような症状がないかを確認します。
- 冷汗
- 動悸
- 手指のふるえ
- 強い空腹感
- ぼんやりしている
- 受け答えが不自然
- 強い眠気
- 意識障害
低血糖では、交感神経症状が目立つこともあれば、意識や認知機能の変化が中心になることもあります。
4.血糖値と測定後の変化
血糖値を測定できる場合は、測定結果を確認します。
ただし、測定値だけでなく、患者さんの症状と合わせて考えます。
補糖を行った場合は、症状が改善したか、血糖値がどう変化したかを再確認します。
5.食事・薬剤・インスリンの状況
低血糖の背景を考えるために、次の内容も確認します。
- 食事をどの程度摂取したか
- 食事を抜いていないか
- インスリンを使用しているか
- 糖尿病治療薬を使用しているか
- α-グルコシダーゼ阻害薬を使用しているか
- いつ薬剤を使用したか
低血糖を繰り返す場合は、その場の補糖だけで終わらせず、原因を医師やチームで共有することが必要です。
起こりやすい間違い
意識が悪い患者さんに飲ませようとする
「低血糖だから早くブドウ糖を」と考えるあまり、意識障害のある患者さんに飲ませようとすることがあります。
しかし、口からの摂取が安全かどうかを確認しないまま飲食させると、誤嚥につながる危険があります。
砂糖なら何でもよいと考える
α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している場合は、砂糖ではなくブドウ糖が必要です。
患者さんの薬剤を確認せずに、砂糖入りの食品だけで対応しないようにします。
補糖後の再評価を忘れる
ブドウ糖を摂取しても、症状が改善するとは限りません。
症状が続く場合は、追加の補糖を自己判断で繰り返すのではなく、血糖値を再確認し、医師へ報告します。
原因を確認しない
低血糖が起きたときは、補糖して終わりではありません。
食事摂取量、薬剤、インスリン、患者さんの訴えなどを確認し、なぜ低血糖が起こったのかを記録・共有します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃の経験
私が看護師をしていた頃、昼食前に患者さんの様子がいつもと少し違うことがありました。
会話はできていたのですが、返事が遅く、手元も落ち着きません。患者さんに「気分が悪いですか」と聞くと、「少し汗が出るような感じがします」と話されました。
最初は、食事前の緊張や体調不良かなと思いました。けれど、冷汗と手指のふるえがあり、糖尿病の治療中だったことが気になりました。
血糖を確認すると、低い値でした。
私はすぐにブドウ糖を準備しようとしたのですが、そのときに「このまま飲んでもらって大丈夫だろうか」と少し迷いました。患者さんは会話ができていましたが、反応が普段より遅かったからです。
そこで、先輩看護師に患者さんの状態を伝え、飲み込みの様子をもう一度確認しました。指示は理解でき、むせずに飲み込める状態だったため、施設の手順に沿ってブドウ糖を摂取してもらい、その後の様子を観察しました。
しばらくすると、患者さんは「汗が引いてきました」と話し、会話の反応も戻ってきました。その後、食事摂取量や薬剤の使用状況を確認し、スタッフ間で共有しました。
この経験の前は、低血糖を見たら「まずブドウ糖」という考えが強かったように思います。
でも、そのときから、ブドウ糖を準備する前に、患者さんの意識や飲み込みの状態を見るようになりました。
今振り返ると、あのときの迷いが、低血糖対応では「何を使うか」だけでなく、「安全に使える状態か」を考えるきっかけになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- ブドウ糖は分解をほぼ必要とせず、吸収されて血糖を上げやすい
- 意識があり、安全に経口摂取できる場合は、ブドウ糖10gまたはブドウ糖を含む飲料150〜200mLが目安として示されている
- α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している場合は、砂糖ではなくブドウ糖を使う
- 意識障害、強いふらつき、嚥下困難がある場合は、口から食べさせない
- 低血糖では、血糖値だけでなく意識レベルと経口摂取の可否を確認する
- 経口摂取できない場合や症状が改善しない場合は、速やかに医療的対応へつなげる
低血糖対応で覚えておきたいのは、
「ブドウ糖を使うこと」だけではなく、「安全に口から摂取できるかを判断すること」
です。
患者さんの意識状態と嚥下状態を確認し、施設の手順や医師の指示に沿って対応しましょう。
FAQ
Q1.低血糖なら砂糖入りのジュースでもよいですか?
意識があり、安全に飲み込める場合は、ブドウ糖を含む飲料が対応の目安として示されています。
ただし、α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している患者さんでは、砂糖ではなくブドウ糖を使用します。飲料の糖分やブドウ糖の含有量は製品によって異なるため、表示や施設の手順を確認してください。
Q2.意識がない患者さんにブドウ糖を口に入れてもよいですか?
いいえ。意識障害がある場合は、口からブドウ糖や飲料を入れないことが重要です。
誤嚥の危険があるため、医師への報告、静脈路確保、静注ブドウ糖やグルカゴンなどの医療的対応につなげます。
Q3.ブドウ糖を摂取しても症状が改善しない場合はどうしますか?
血糖値と意識状態を再確認し、症状が改善しないことを医師へ報告します。
経口摂取が可能であっても、自己判断で補糖を繰り返すのではなく、施設の手順や医師の指示に従って対応します。
Q4.低血糖の患者さんが会話できていれば、必ず飲ませてよいですか?
会話ができていても、反応が遅い、むせる、指示が理解できない、強いふらつきがある場合は注意が必要です。
会話の可否だけでなく、安全に飲み込める状態かを確認して判断します。
想定読了時間:約8分
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