トリアージの重症度判断とは?看護師・看護学生が確認したい4つのポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、トリアージで患者さんの重症度を判断するとき、「何から確認すればよいのだろう」と迷ったことはありませんか?
赤・黄・緑・黒の分類は知っていても、実際の場面では、呼吸を見るのか、意識を見るのか、それとも血圧を先に測るのか悩みますよね。
今回は、トリアージの重症度判断について、最初に確認するポイントと、看護師・看護学生が押さえておきたい考え方を解説します。
結論:診断名ではなく「今すぐ命に関わるか」を短時間で判断する
トリアージの重症度判断では、病名を確定することよりも、患者さんが今すぐ治療を必要としている状態かどうかを、短時間で見極めることが重要です。
災害トリアージでは、基本的に次の順番で確認します。
- 歩けるか
- 呼吸しているか、呼吸状態に異常がないか
- 循環が保たれているか
- 意識が保たれているか
この評価をもとに、赤・黄・緑・黒へ振り分けます。消防庁の資料や徳島赤十字病院のトリアージ資料でも、歩行、呼吸、循環、意識を段階的に確認する流れが示されています。
ただし、歩けるから必ず緑、呼吸数が正常だから必ず安全という意味ではありません。
バイタルサイン、SpO2、呼吸困難、出血、意識の変化、損傷部位、症状の悪化傾向などを組み合わせて判断します。
この記事の読み方
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この記事でわかること
- トリアージにおける「重症度」の意味
- 災害トリアージの赤・黄・緑・黒の考え方
- START法で確認する歩行・呼吸・循環・意識
- バイタルサインやSpO2を見るときの注意点
- 看護師・看護学生が報告や観察につなげるポイント
根拠:トリアージにおける重症度とは
重症度とは、患者さんの状態が、生命予後または機能予後にどの程度影響するかを示す考え方です。
ざっくり言うと、
このまま治療が遅れると、命や身体の機能に大きな影響が出る可能性があるか
を考えます。
消防庁の資料では、重症度は生命予後や機能予後に関係する概念として整理されています。
つまり、トリアージは「この患者さんは何の病気か」を決める作業ではありません。
限られた時間や医療資源のなかで、次のような患者さんを振り分ける作業です。
- 先に治療する人
- 少し待ってもらえる人
- 軽症である人
- 救命が困難、または生命徴候がない人
詳しい解説:赤・黄・緑・黒の意味
災害時のトリアージでは、一般的に次の4つに分類します。
| 区分 | 意味 | 考え方 |
|---|---|---|
| 赤 | 最優先治療群 | 直ちに治療が必要で、救命可能性がある |
| 黄 | 待機的治療群 | 多少の待機が可能 |
| 緑 | 軽症群 | 軽症で、歩行可能なことが多い |
| 黒 | 死亡群 | 生命徴候がない、または救命が困難 |
この区分は、東京都保健医療局の「トリアージ」や、愛知医科大学病院の資料などで説明されています。
ここで注意したいのは、色は「患者さんの価値」や「治療の必要性がないか」を表すものではないということです。
あくまで、その時点での状態から見た治療の優先順位を示します。
また、状態は変化します。最初に緑と判断された人でも、その後に呼吸状態や意識が悪化すれば、再評価が必要です。
START法の基本は「歩行・呼吸・循環・意識」
災害現場の一次トリアージでは、START法がよく知られています。
START法の基本的な順番は、
歩行可否 → 呼吸 → 循環 → 意識
です。災害医学に関する解説資料や徳島赤十字病院の資料でも、この流れが紹介されています。
1.歩けるか
まず、患者さんに歩行が可能かを確認します。
歩行できる人は、原則として緑の候補になります。
ただし、歩けることだけで評価を終了してはいけません。歩行できても、強い呼吸苦がある、意識がぼんやりしている、出血が続いているなどの場合は、再評価が必要です。
「歩けますか」と声をかけたときの反応や、実際の歩行状態も観察します。
- 指示を理解できているか
- ふらつきがないか
- 歩行中に息切れがないか
- 痛みで動けない様子がないか
歩行の確認は、患者さんを無理に歩かせるという意味ではありません。転倒の危険がある場合や、歩行が難しい状態では、安全を優先します。
2.呼吸しているか
次に、呼吸の有無と呼吸状態を確認します。
呼吸がない場合は、気道を確保します。それでも呼吸がなければ、START法では黒に分類する考え方が示されています。START法を解説した資料では、この流れが説明されています。
一方、呼吸がある場合も、次の点を確認します。
- 呼吸数
- 呼吸の速さや深さ
- 努力呼吸の有無
- 呼吸困難の訴え
- チアノーゼの有無
- SpO2の値
- 会話が可能か
START法の紹介資料では、呼吸数が10~29回/分の場合は黄、9回/分以下または30回/分以上の場合は赤と説明されています。GHDNetのSTART法解説やTBS NEWS DIGの解説記事で確認できます。
ただし、この数値はSTART法における判断基準です。救急外来や院内の緊急度判定では、施設の手順や別の評価基準を使用することがあります。
「呼吸数が30回未満だから大丈夫」と単純に考えるのではなく、呼吸の苦しさや努力呼吸なども合わせて見ます。
3.循環が保たれているか
呼吸の次は、循環を確認します。
ここでは、血液が全身に十分に流れているかを考えます。
観察するポイントは、次のようなものです。
- 大きな出血がないか
- 皮膚の色や冷感
- 冷汗の有無
- 脈拍の速さや触れ方
- 血圧
- 末梢循環の状態
- ショックを疑う所見がないか
出血が続いている場合や、循環が不安定と考えられる場合は、重症側に判断します。和歌山県の救急に関する資料でも、出血やショック徴候などは重症判断の重要な要素として扱われています。
循環の評価では、血圧の数字だけに注目しないことが大切です。
血圧が測定できても、冷汗がある、皮膚が冷たい、脈拍が速いなど、全身状態の変化が隠れていることがあります。
4.意識が保たれているか
最後に、意識状態を確認します。
単に「意識があるか」だけではなく、次のように観察します。
- 声かけに反応するか
- 質問に答えられるか
- 指示に従えるか
- 会話が成立しているか
- 反応が鈍くなっていないか
- 意識レベルが変化していないか
命令に従えない、反応が悪い、会話が成立しないなどの場合は、赤を考える材料になります。徳島赤十字病院の資料や災害医学の解説資料でも、意識の評価は重要な判定項目として示されています。
意識障害があるときは、原因が分からなくても重症化の可能性を考えて評価します。
バイタルサインやSpO2はどう見るのか
災害トリアージでは、歩行・呼吸・循環・意識を短時間で評価します。
一方、救急の緊急度判定では、バイタルサインや症状の強さも重要な判断材料です。
厚生労働省の資料では、次のような値が基準Ⅱの例として示されています。
- 血圧220以上
- 脈拍120以上
- 呼吸30以上
- 体温40℃以上
- 意識レベルⅡ
- SpO2 90~91%
また、SpO2 89%以下は、さらに重い判定の目安として示されています。厚生労働省のトリアージフロー資料を参照してください。
別の消防庁関連資料では、SpO2 92%未満が重度呼吸障害の目安として扱われています。消防庁の緊急度判定に関する資料
このように、資料によって示される数値や区分が異なる場合があります。
そのため、数値だけを暗記して、どの場面にも同じように当てはめるのは危険です。
確認したいのは、次の点です。
- どのトリアージ法を使っているのか
- 災害現場なのか、救急外来なのか
- 施設の基準は何か
- 患者さんに症状があるか
- 時間経過で悪化しているか
激しい痛みや症状の悪化も重症度に関係する
重症度を判断するときは、バイタルサインだけでなく、症状の強さや変化も見ます。
厚生労働省の資料では、NRS 8/10以上の痛みに加えて、冷汗、座って待てない、のたうち回るような激痛などがある場合、基準Ⅱの例として示されています。
また、患者さんの状態が時間とともに悪化している場合も注意が必要です。
たとえば、最初は会話できていた患者さんが、次第に反応が鈍くなっている場合です。
このようなときは、現在の数値だけではなく、前回からどのように変化したかを確認します。
生理学的評価と解剖学的評価
トリアージでは、まず呼吸や循環、意識などの生理学的な状態を確認します。
厚生労働省関連資料では、生理学的評価で該当しない場合に、解剖学的評価へ進む段階的な考え方が示されています。
生理学的評価は、患者さんの全身状態を見る評価です。
- 呼吸
- 循環
- 意識
- バイタルサイン
解剖学的評価は、損傷した部位や損傷の程度を見る評価です。
- 頭部や頸部の損傷
- 胸部や腹部の損傷
- 四肢の損傷
- 大きな出血
- 体の機能に影響しうる損傷
ざっくり言うと、
まず「体の機能が保たれているか」を見て、その後に「どこが、どの程度傷ついているか」を見る
という流れです。
実践ポイント:看護師・看護学生が実践するときのポイント
1.最初から診断名を考えすぎない
トリアージの場面で、「これは肺炎か」「骨折か」「脳卒中か」と診断名を考え始めると、観察の優先順位が曖昧になることがあります。
まずは、次の点を確認します。
- 歩けるか
- 呼吸しているか
- 循環が保たれているか
- 意識が保たれているか
病名の推測より先に、今すぐ生命に関わる異常がないかを見ることが基本です。
2.一つの数値で判断しない
血圧、脈拍、呼吸数、SpO2は重要です。
しかし、どれか一つの値だけで重症度を決めるのではなく、症状や外見、意識状態と合わせて確認します。
特に、次のような組み合わせには注意します。
- SpO2低下と呼吸困難
- 脈拍の異常と冷汗
- 血圧の異常と意識変化
- 強い痛みと顔色不良
- バイタルサインの変化と全身状態の悪化
厚生労働省関連資料では、生理学的評価で1項目でも基準に該当すれば、重症以上と判断する考え方が示されています。
3.「歩ける=問題ない」と決めつけない
歩行可能な患者さんは緑の候補になります。
ただし、歩けることは「重症ではない」と確定する所見ではありません。
歩いたあとに息切れが強くなる、会話が途切れる、ふらつくなどの変化があれば、そこで評価を見直します。
歩行を確認する場合も、患者さんの安全を優先します。
4.再評価を忘れない
トリアージは、一度分類したら終わりではありません。
患者さんの状態が変化すれば、区分も変わる可能性があります。
- 呼吸が苦しくなった
- 意識がぼんやりしてきた
- 出血が増えた
- 痛みが強くなった
- 顔色や皮膚の状態が変わった
このような変化がないか、継続して観察します。
5.報告では「数値・症状・経過」を伝える
報告するときは、「赤だと思います」だけで終わらせないようにします。
次のように整理すると、状況が伝わりやすくなります。
- いつから変化したか
- 歩行の可否
- 呼吸数、SpO2、呼吸困難の有無
- 脈拍や血圧
- 意識状態
- 出血や損傷部位
- 痛みの程度
- 時間経過による変化
- 自分が判断に迷っている点
トリアージでは、診断を確定させてから報告する必要はありません。
「呼吸数が30回/分で、SpO2が低下しています。会話が途切れ、呼吸苦を訴えています」のように、観察した事実を伝えます。
筆者の体験談:私が看護師をしていた頃の体験
私が看護師をしていた頃、患者さんの状態を確認するために病室へ入ったときのことです。
患者さんはベッド上で会話をしていて、呼びかけにも返事をしていました。最初に見たとき、私は「意識は保たれている」と考えました。
ところが、いつもより返事が短く、会話の途中で何度も息をついていました。
「苦しくないですか?」と聞くと、患者さんは「大丈夫」と答えました。
その言葉を聞いて、私は一度その場を離れかけました。でも、表情と呼吸の様子が気になりました。「大丈夫」と話していても、本当に呼吸状態が安定しているのか、少し迷ったのです。
そこで、もう一度患者さんの呼吸を観察し、呼吸数とSpO2を確認しました。先輩看護師にも、「会話はできますが、呼吸の様子がいつもと違います」と伝えました。
先輩からは、「返事ができるかだけでなく、会話の続き方や呼吸の変化も見てみよう」と言われました。
その後、時間を置いて状態を確認すると、患者さんの息苦しさは強くなっていました。私は、最初に「会話ができるから大丈夫」と考えかけた自分に気づきました。
この経験があってから、私は意識や呼吸を確認するとき、単に「ある・ない」だけでなく、患者さんの普段との違いや、時間経過による変化を見るようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、トリアージの観察を臨床場面と結び付けて考えるためのものです。
まとめ
- トリアージは、診断名を決める作業ではなく、治療の優先順位を決める作業
- 重症度は、生命予後や機能予後への影響を考えて判断する
- 災害トリアージでは、歩行・呼吸・循環・意識の順に確認する
- 赤は直ちに治療が必要、黄は多少待機可能、緑は軽症、黒は生命徴候がないまたは救命困難な状態を示す
- 呼吸数やSpO2などの数値は、症状や意識、循環、経過と組み合わせて見る
- 「歩ける」「会話できる」だけで安全と決めつけない
- 患者さんの状態が変化したら、繰り返し再評価する
- 報告では、判断だけでなく、数値・症状・経過を具体的に伝える
ざっくり言うと、トリアージの重症度判断では、今すぐ命に関わる異常がないかを、歩行・呼吸・循環・意識から素早く確認することが基本です。
FAQ
Q1.トリアージで最初に見るのは何ですか?
災害トリアージでは、まず歩行できるかを確認し、その後に呼吸、循環、意識を確認するSTART法の流れが基本です。
ただし、現場の状況や施設の手順によって異なる場合があるため、実際には所属施設や訓練で定められた方法に従います。
Q2.歩ける患者さんは必ず緑ですか?
いいえ。歩行可能な人は緑の候補になりますが、必ず緑と決まるわけではありません。
歩行できても、呼吸困難、意識の変化、出血、強い痛みなどがあれば、再評価が必要です。
Q3.呼吸数が30回/分なら赤ですか?
START法の紹介資料では、呼吸数30回/分以上は赤の判断材料として示されています。
ただし、これはSTART法での基準です。救急外来など別の緊急度判定では、施設の基準やほかの症状と合わせて判断します。
Q4.SpO2が低ければ、必ず赤ですか?
SpO2の低下は重症度を判断する重要な材料ですが、数値だけで区分を決めるとは限りません。
厚生労働省の資料では、SpO2 90~91%や89%以下が緊急度判定の目安として示されています。一方、消防庁関連資料ではSpO2 92%未満を重度呼吸障害の目安として扱う資料もあります。
使用している判定基準と、呼吸困難などの症状を合わせて判断します。
Q5.トリアージで診断名まで考える必要はありますか?
トリアージの最初の目的は、診断名の確定ではありません。
まずは、呼吸・循環・意識などに生命を脅かす異常がないかを確認し、治療や搬送の優先順位を判断します。
参考文献
- 厚生労働省「トリアージフロー」
- 「緊急度・重症度とは何か」
- 消防庁「緊急度判定プロトコル」に関する資料
- 消防庁「緊急度判定プロトコル」に関する報告書
- 東京都保健医療局「トリアージ」
- 愛知医科大学病院「トリアージ」に関する資料
- 徳島赤十字病院「トリアージ」に関する資料
- GHDNet「START法」に関する解説
- TBS NEWS DIG「START法」に関する解説
- 和歌山県「救急・災害医療」に関する資料
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
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看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
バイタルサイン(呼吸数・血圧・脈拍・SpO2)を単なる測定値でなく重症度判断の情報として学べ、記事で強調する数値の見方と直結するため。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
歩行・呼吸・循環・意識を含むフィジカルアセスメントの方法と根拠を実践的に身につけられ、START法での観察力向上に役立つため。
教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
呼吸・SpO2・酸素療法など呼吸評価に特化した解説があり、呼吸状態の観察と解釈を深めるのに適しているため。
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