浮腫の左右差を見る理由|看護師・看護学生が確認したいポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんの足に浮腫を見つけたとき、「左右差まで見たほうがよいのだろうか」と迷ったことはありませんか?
浮腫というと、「むくんでいるか」「押してへこむか」に注目しがちです。しかし、右足と左足で腫れ方が違うかどうかは、浮腫の原因を考えるうえで大切な手がかりになります。
今回は、浮腫の左右差を見る理由と、左右差があったときに看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて解説します。
結論:浮腫はまず左右差を見て、局所性か全身性かを考える
浮腫を観察するときは、最初に左右を比べます。
- 片側だけ、または左右差が大きい
→ 静脈の流れの障害、リンパ浮腫、炎症、外傷などの局所的な原因を考える - 両側が同じようにむくんでいる
→ 心不全、腎疾患、肝疾患、薬剤性などの全身的な原因を考える
つまり、浮腫の左右差は、単に見た目の違いを確認するものではありません。
「そのむくみは、足の一部で起きているのか、それとも全身の病気と関係しているのか」
を考えるために確認します。
特に、急に片側だけ腫れた、痛み・熱感・発赤があるという場合は、深部静脈血栓症などの可能性も考え、速やかに報告・評価につなげます。
一方で、左右差がない浮腫でも安心とは限りません。息切れ、体重増加、尿量の変化などがあれば、全身性の病態を考えて観察します。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 浮腫の左右差を見る理由
- 片側性浮腫と両側性浮腫から考えること
- 浮腫と一緒に確認したい症状や所見
- 圧痕や周径を観察・記録するときのポイント
- 看護師・看護学生が報告するときの整理方法
根拠:浮腫の分布は原因を考える手がかりになる
日本透析医学会の「浮腫 Edema」では、局所性浮腫は左右非対称に、全身性浮腫は左右対称に現れやすいという整理が示されています。
また、医学書院系の研修資料「浮腫の診察の3原則」でも、浮腫の分布を片側性か両側性かで確認し、局所性か全身性かを考える視点が示されています。
ざっくり言うと、浮腫の出方には次のような違いがあります。
- 局所性浮腫:限られた部位に出現し、左右非対称になりやすい
- 全身性浮腫:左右対称に出現しやすく、歩行可能な人では重力の影響で下肢に目立ちやすい
ただし、左右差だけで原因を決めることはできません。
浮腫の発症時期、痛みや熱感、発赤、体重変化、呼吸状態、既往歴などを組み合わせて評価する必要があります。
詳しい解説
浮腫の左右差から考えること
1.片側だけむくんでいる場合
片側だけに浮腫がある場合は、足の一部で起きている局所的な問題を考えます。
原因としては、次のようなものがあります。
- 静脈の流れが悪くなっている
- リンパ液の流れが障害されている
- 蜂窩織炎などの炎症
- 外傷や手術後の変化
- その他の局所的な病変
なかでも、急に片側の下肢が腫れた場合は注意が必要です。
腫れている側に、
- 痛み
- 熱感
- 発赤
- 張った感じ
- 歩行時の違和感
などがないか確認します。
片側の急な腫脹に、痛みや熱感、発赤などが伴う場合は、深部静脈血栓症などを疑うきっかけになります。さらに息切れや胸部症状などがある場合は、より緊急性の高い状態の可能性もあるため、自己判断で様子を見ず、速やかに報告・評価につなげます。
ここで大切なのは、「片側だから必ず血栓症」と決めつけないことです。
左右差はあくまで、原因を考えるための入口です。いつから、どのように腫れたのかを確認し、ほかの症状と合わせて判断します。
2.両側が同じようにむくんでいる場合
両側の下肢が同じようにむくんでいる場合は、全身性の原因を考えます。
代表的には、次のような背景があります。
- 心不全
- 腎疾患
- 肝疾患
- 薬剤の影響
- 体液バランスの変化
全身性の浮腫では、下肢の観察だけで終わらせないことが重要です。
次のような変化がないか確認します。
- 息切れや呼吸困難
- 体重の増加
- 尿量や排尿回数の変化
- 倦怠感
- 腹部の張り
- 浮腫が下肢以外にもあるか
たとえば、両下肢の浮腫に加えて息切れや体重増加がある場合は、心不全などの全身性疾患を考える材料になります。
左右差がないから軽いとは限りません。左右差がない場合は、全身状態に目を向けることが大切です。
浮腫では「左右差」以外に何を見るのか
発症した時期と経過
まず、「いつからむくんだのか」を確認します。
- 今日になって急に出てきたのか
- 数日かけて徐々に増えたのか
- 以前からあり、変化していないのか
- 治療や手術、安静のあとに出てきたのか
急に出現した浮腫と、長期間続いている浮腫では、考えるべき背景が異なります。
記録するときは、「浮腫あり」だけではなく、
右下肢に本日朝から腫脹を自覚。昨日の観察時より左右差が増加。
のように、部位と時間経過が分かるようにします。
痛み・熱感・発赤
左右差があるときは、腫れている側の皮膚をよく観察します。
- 触れたときに熱くないか
- 赤くなっていないか
- 痛みがないか
- 皮膚がつっぱっていないか
- 傷や水疱がないか
局所の炎症や静脈の流れの障害などを考える手がかりになります。
圧痕性かどうか
浮腫の観察では、指で押したあとにへこみが残るかどうかも確認します。
圧痕性浮腫では、看護師向けの浮腫観察解説などで、指で約5秒押して、へこみが戻るかを観察する方法が紹介されています。
観察するときは、左右で同じ場所を比較します。
- どの部位を押したのか
- へこみが残ったか
- どの程度のへこみだったか
- 戻るまでに時間がかかったか
ただし、押し方や部位が毎回違うと、経過を比較しにくくなります。継続して観察する場合は、できるだけ同じ条件で確認します。
周径の左右差
見た目だけでは分かりにくい場合は、下肢の周径を測定することがあります。
その場合は、
- 同じ部位
- 同じ時間帯
- 同じ姿勢
- 同じ測定方法
で左右を比較します。
リンパ浮腫に関する資料や、リンパ浮腫の経過観察に関する解説でも、左右の周径差を同じ条件で測定し、変化を見る考え方が示されています。
なお、二次情報では「2cm以上の左右差」を目安として紹介しているものもあります。しかし、今回確認できた資料では、その数値を一律の判断基準として扱える根拠までは確認できませんでした。
そのため、数値だけで判断せず、発症時期、症状、皮膚所見、患者さんの背景と合わせて評価します。
実践ポイント:看護師・看護学生が確認・報告するときの整理方法
浮腫を見つけたときは、次の順番で整理すると観察しやすくなります。
まず左右差を確認する
最初に、
- 右だけか
- 左だけか
- 両側か
- 左右で程度が違うか
を確認します。
左右差があれば局所性、左右対称であれば全身性をまず考えます。
次に急性の変化かを確認する
「いつから始まったのか」「前回と比べてどうか」を確認します。
特に、片側の急な腫れは見逃さないようにします。
症状を組み合わせる
浮腫だけでなく、次の症状も合わせて確認します。
- 痛み
- 熱感
- 発赤
- 息切れ
- 胸部症状
- 体重増加
- 尿量の変化
片側の腫れに痛み・熱感・発赤がある場合や、浮腫に呼吸症状が伴う場合は、速やかに報告・相談します。
記録は「どこに、どちら側に、いつから、どの程度」を残す
浮腫の記録では、次の情報が役立ちます。
- 部位
- 左右差
- 発症時期
- 圧痕の有無
- 痛み・熱感・発赤の有無
- 周径を測った場合の測定部位と数値
- 体重や尿量の変化
- 息切れなどの症状
「下肢浮腫あり」だけでは、次の勤務者が変化を判断しにくくなります。
「左下腿に浮腫あり。右側より腫脹が強い。圧痕あり。発赤・熱感・疼痛なし」のように、左右差と具体的な所見を残すことが重要です。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、午後のラウンドで、患者さんから「今日は足が重い気がする」と言われたことがありました。
ベッドの上から見ると、両足が少しむくんでいるように見えました。最初は、安静にしている時間が長かった影響かなと思いました。
ただ、右足のほうが少し太く見えます。
「昨日も同じくらいでしたか?」と尋ねると、患者さんは「昨日は気にならなかった」と話しました。
私はそこで少し迷いました。見た目の違いはわずかでしたし、患者さんの訴えも「重い」という程度でした。でも、左右差があるなら、いつから変化したのかをもう少し確認したほうがよいと思い、前日の記録を見返しました。
すると、前日の記録では左右差について触れられていませんでした。
もう一度、左右の下肢を同じ位置で見比べ、皮膚の色や熱感、痛みの有無を確認しました。その内容を先輩看護師に伝えると、「昨日との差がはっきりしないからこそ、今の状態を記録しておこう」と言われました。
その後、患者さんの訴えと左右差、皮膚所見を記録し、担当者へ報告しました。結果として大きな変化はありませんでしたが、翌日の観察で比較できる記録を残せました。
当時の私は、浮腫があるかないかだけを見ていたのだと思います。この経験があってから、私は足のむくみを見るときに、最初に左右を見比べるようになりました。わずかな違いでも、「前回と比べてどうか」を考えるきっかけになるからです。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、浮腫の観察を実際の看護場面と結び付けて考えるためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 浮腫は、まず左右差を確認する
- 片側性・左右差のある浮腫では、静脈、リンパ、炎症、外傷などの局所性原因を考える
- 両側性・左右対称の浮腫では、心不全、腎疾患、肝疾患、薬剤性などの全身性原因を考える
- 片側の急な腫れに、痛み・熱感・発赤がある場合は、速やかな報告・評価につなげる
- 両側性の浮腫でも、息切れ、体重増加、尿量変化などを確認する
- 「どこに、どちら側に、いつから、どの程度」を記録する
- 周径や圧痕を観察するときは、左右で同じ条件にそろえる
ざっくり言うと、浮腫は「むくんでいるか」だけでなく、左右差と全身状態をセットで見ることが大切です。
FAQ
Q1.片側だけ浮腫があれば、必ず深部静脈血栓症ですか?
いいえ。片側性浮腫は、深部静脈血栓症だけでなく、リンパ浮腫、炎症、外傷などでも起こります。
ただし、急に片側が腫れ、痛み・熱感・発赤などを伴う場合は、深部静脈血栓症などを考えるきっかけになります。自己判断で決めつけず、速やかに報告・評価につなげます。
Q2.両足がむくんでいれば、緊急性は低いですか?
両側性だから緊急性が低いとは限りません。
両下肢の浮腫に息切れ、体重増加、尿量の変化などが伴う場合は、全身性疾患の可能性があります。浮腫の程度だけでなく、全身状態と経過を確認します。
Q3.浮腫の左右差は、見た目だけで判断してもよいですか?
見た目だけで判断せず、必要に応じて周径や圧痕、皮膚所見を確認します。
周径を測る場合は、左右で同じ部位・同じ時間帯・同じ条件にそろえることが重要です。
参考文献
- 日本透析医学会「浮腫 Edema」:学会系資料
- 医学書院系研修資料「浮腫の診察の3原則」:研修資料
- 「浮腫の臨床」:医療機関による解説
- 「浮腫の評価」:看護師向け解説
- 「リンパ浮腫」:日本理学療法士協会関連資料
- 「リンパ浮腫の評価」:サバイバーシップ関連資料
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