【限定公開】全教科で「優」が取れた実習教材

術後の深呼吸と咳嗽の目的と観察ポイント

周手術期看護
この記事は約10分で読めます。

術後に深呼吸や咳嗽を促すのはなぜ?看護師・看護学生が押さえたい目的と観察ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、術後の患者さんに「深呼吸してください」「痰を出すために咳をしましょう」と声をかける理由を、説明できるでしょうか?

術後の呼吸ケアといえば、深呼吸や咳嗽を思い浮かべますよね。でも、「なぜ必要なのか」「痛がっている患者さんにも行うのか」「深呼吸だけではいけないのか」と迷うこともあるのではないでしょうか。

今回は、術後に深呼吸や咳嗽を促す目的と、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて解説します。

結論:術後の深呼吸・咳嗽は「肺を広げ、痰を出す」ために行う

結論からいうと、術後に深呼吸や咳嗽を促す主な目的は、次の2つです。

  • 深呼吸で肺を十分に広げる
  • 咳嗽で気道内の痰を出す

これにより、肺の一部がつぶれる無気肺や、痰の貯留をきっかけとする肺炎などの術後呼吸器合併症を防ぐことにつなげます。

全身麻酔、手術後の痛み、安静臥床などがあると、呼吸が浅くなったり、咳が弱くなったりします。その結果、肺が十分に膨らみにくくなり、痰も出しにくくなります。

ただし、患者さんが痛みを強く訴えているのに、回数だけを目標にして無理に咳嗽を促すわけではありません。

まずは、

  1. 呼吸状態を確認する
  2. 疼痛の程度を確認する
  3. 創部を支えられる姿勢を整える
  4. 深呼吸と咳嗽を組み合わせる
  5. 痰や呼吸状態の変化を観察する

という流れで考えます。

なお、今回確認できた資料の範囲では、術後の深呼吸や咳嗽について、すべての患者さんに共通する具体的な回数・頻度の統一基準は確認できませんでした。実施方法は、手術部位や患者さんの状態、施設の方針を踏まえて判断します。

判断のポイントは、回数だけではありません。患者さんが安全に呼吸できているか、肺を広げられているか、痰を出せているか、痛みが強すぎないかを確認しながら援助します。

この記事は一般的な学習用の解説です。実際のケアでは、手術内容、患者さんの全身状態、医師・施設の指示を優先してください。

読了目安

約10分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 術後に深呼吸や咳嗽が必要な理由
  • 深呼吸と咳嗽がそれぞれ果たす役割
  • 疼痛や創部保護を確認する意味
  • 看護師・看護学生が観察したいポイント
  • 術後呼吸ケアの根拠と限界

根拠:術後は肺が広がりにくく、痰がたまりやすい

手術後、とくに全身麻酔後は、呼吸が浅くなったり、気道が閉塞しやすくなったりします。

さらに、創部の痛みがあると、患者さんは無意識に深呼吸や咳を避けることがあります。お腹や胸に力が入る動作は、創部の痛みを強めやすいためです。

その結果、

呼吸が浅くなる

肺が十分に広がりにくくなる

痰を外に出しにくくなる

痰が気道にたまりやすくなる

という流れが起こります。

防衛医科大学校病院の資料では、全身麻酔や手術後の安静などにより、肺が十分に膨らみにくくなり、分泌物がたまりやすくなることが説明されています。

また、日本麻酔科学会の「抜管から術後早期までの安全な気道管理」では、術後早期の深呼吸や咳などの肺理学療法により、肺容量の増加や酸素化の改善が認められる一方、呼吸器合併症の発生率低下については研究結果が一様ではないと整理されています。

つまり、深呼吸や咳嗽は術後呼吸ケアの基本ですが、「これだけで必ず合併症を防げる」と単純に考えるものではありません。体位変換、早期離床、疼痛への対応などと組み合わせて考えます。

詳しい解説

深呼吸の目的は「肺胞を広げる」こと

深呼吸をすると、普段の浅い呼吸よりも多くの空気を肺に取り込めます。

ざっくり言うと、深呼吸には「肺を開く」働きがあります。

肺の中には、酸素と二酸化炭素の交換を行う小さな袋状の構造である肺胞があります。術後に呼吸が浅くなると、肺胞まで十分に空気が届きにくくなります。

深呼吸によって肺胞の拡張を促すことは、術後に起こりやすい無気肺の予防につながります。

日本クリティカルケア看護学会誌の論文や、Alberta Health Servicesの術後呼吸ケア資料でも、深呼吸によって肺の再膨張を促す考え方が示されています。

咳嗽の目的は「痰を気道の外へ出す」こと

深呼吸だけでは、すでに気道にたまっている痰を十分に外へ出せないことがあります。

そこで必要になるのが咳嗽です。

咳嗽によって気道内の分泌物を移動させ、口の外へ排出しやすくします。国立がん研究センター東病院のリハビリ指導に関する資料でも、術後の呼吸ケアとして、深呼吸や咳によって痰を出すことの重要性が説明されています。

つまり、

  • 深呼吸は肺を広げる
  • 咳嗽は痰を出す

という違いがあります。

そのため、深呼吸と咳嗽は別々に考えるよりも、「肺を広げて、痰を出す」という一連のケアとして考えると理解しやすくなります。

痛みが強い患者さんに、なぜ咳嗽を促すのか

術後の患者さんにとって、咳嗽は痛みを伴いやすい動作です。

腹部や胸部の手術後であれば、咳をしたときに創部へ響くことがあります。痛みが強いと、患者さんは深呼吸や咳を我慢してしまいます。

しかし、痛みを理由に呼吸が浅い状態が続くと、肺が十分に広がらず、痰もたまりやすくなります。国立がん研究センター中央病院の術後合併症に関する資料や、国立がん研究センターの肺手術後の説明でも、術後の疼痛が深呼吸や咳嗽を妨げることが示されています。

ここで大切なのは、「痛くても我慢して咳をしてください」と伝えることではありません。

痛みの程度を確認し、必要な疼痛対策がとられているかを確認したうえで、患者さんが実施しやすい方法を考えます。

また、腹部や胸部の創部を手や枕などで支えることで、咳嗽時の痛みを和らげやすくなる場合があります。具体的な方法は、手術部位や医師・施設の指示に従います。

実践ポイント:看護師・看護学生が確認したい観察ポイント

1.呼吸状態

まずは、患者さんが深呼吸や咳嗽を安全に行える状態かを確認します。

観察する項目には、次のようなものがあります。

  • 呼吸数
  • 呼吸の深さやリズム
  • 呼吸困難の有無
  • SpO₂の変化
  • チアノーゼの有無
  • 意識状態
  • 呼吸音の変化

呼吸苦が強い場合や、呼吸状態が悪化している場合は、単に深呼吸を促し続けるのではなく、状態を再評価して報告・相談につなげます。

2.疼痛の程度と部位

患者さんに「痛みはありますか」と聞くだけでなく、どの動作で痛みが強くなるのかを確認します。

たとえば、

  • 深呼吸で痛みが増える
  • 咳をすると創部に響く
  • 体位変換で痛みが強くなる
  • 安静時にも痛みが続いている

などです。

痛みが強ければ、深呼吸や咳嗽の方法を工夫する前に、疼痛コントロールについて確認する必要があります。

3.創部の保護

腹部や胸部の手術後では、患者さんが創部を支えながら咳嗽できるように援助します。

ただし、創部の状態や術式によって注意点は異なります。創部の観察を行い、出血や離開などの異常がないかを確認します。

看護学生の場合は、自己判断で方法を変えるのではなく、指導者や担当看護師に確認しながら行うと安全です。

4.痰の量・色・性状

咳嗽ができているかだけでなく、どのような痰が出ているかも観察します。

  • 痰の量
  • 粘り気
  • におい
  • 出しやすさ
  • 痰を出した後の呼吸状態

術後には咳や痰がみられることがありますが、発熱や痰を伴う咳、痰の増加などがある場合は注意が必要です。国立がん研究センターの術後説明や、日本肺癌学会のガイドブックでも、発熱や痰を伴う咳について注意が示されています。

5.体位と離床の状況

深呼吸や咳嗽だけでなく、体位変換や早期離床も痰の排出を助けます。

国立病院機構埼玉病院の呼吸器外科Q&Aでは、術後の呼吸ケアとして、早期離床や体位変換などを組み合わせる考え方が説明されています。

ただし、離床の可否は手術内容、全身状態、循環動態、転倒リスクなどによって異なります。深呼吸と同じように、患者さんの状態に合わせて実施します。

「回数をこなす」ことが目的ではない

術後の深呼吸や咳嗽では、「何回行ったか」に意識が向きやすくなります。

もちろん、実施状況を記録することは大切です。しかし、回数だけを達成しても、患者さんが浅い呼吸しかできていなかったり、痰を出せていなかったりすれば、目的からずれてしまいます。

今回確認できた資料の範囲では、術後の深呼吸・咳嗽に関する具体的な回数や頻度の統一基準は確認できませんでした。

そのため、看護では次のように考えると整理しやすくなります。

  • 肺を広げられているか
  • 痰を出せているか
  • 痛みが強すぎないか
  • 呼吸状態に変化がないか
  • 患者さんが方法を理解できているか

「何回できたか」だけでなく、「目的に近づけているか」を観察します。

筆者の体験談

私が看護師をしていた頃、腹部の手術を終えた患者さんを受け持ったことがありました。

術後の観察で訪室すると、患者さんはベッド上で浅い呼吸をしていました。声をかけると、「息を吸うと傷が痛いし、咳をするともっと痛い」と話されました。

最初、私は「痰を出してもらわなければ」と考えました。けれど、患者さんの表情を見ると、咳嗽を促すだけでは難しそうでした。

そこで、痛みの程度をもう一度確認し、創部を支える方法を説明しました。患者さんにも、どの姿勢なら少し楽に呼吸できるかを聞きながら、無理のない範囲で深呼吸をしてもらいました。

その後、患者さんは小さく咳をしました。痰が少し出ると、「思ったより出せた」と話されました。

私はそのときまで、術後の呼吸ケアを「深呼吸と咳をしてもらうこと」と単純に考えていた部分がありました。でも実際には、痛みがある患者さんにとって、それは簡単な動作ではありません。

最初から「やってください」と伝えるのではなく、患者さんが何に困っているのかを確認する。その経験があってから、私は深呼吸や咳嗽を促す前に、痛みと患者さんの表情を見るようになりました。

この体験談は医学的根拠を示すものではなく、術後の呼吸ケアを実際の看護場面と結び付けて考えるためのものです。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 術後の深呼吸は、肺を広げて無気肺を予防するために行う
  • 咳嗽は、気道内の痰を外へ出すために行う
  • 全身麻酔、疼痛、安静によって呼吸は浅くなり、痰がたまりやすくなる
  • 深呼吸と咳嗽は、「肺を開く」「痰を出す」というセットで考える
  • 実施前には、呼吸状態、疼痛、創部の状態を確認する
  • 痰の量や性状、発熱、呼吸困難の悪化などを観察する
  • 早期離床や体位変換などと組み合わせて考える
  • 術後の実施回数・頻度には、今回確認できた資料の範囲で統一基準は確認できない
  • 回数だけでなく、患者さんが安全に呼吸でき、痰を出せているかを評価する

ざっくり言うと、術後の深呼吸と咳嗽は、「肺を広げて、痰を出し、呼吸器合併症を防ぐためのケア」です。

ただし、痛みが強い患者さんに無理をさせるのではなく、疼痛や呼吸状態を確認しながら、その人に合った方法で援助することが大切です。

FAQ

Q1.術後は深呼吸だけ行えばよいですか?

深呼吸だけでなく、必要に応じて咳嗽も組み合わせます。

深呼吸は肺を広げること、咳嗽は痰を出すことが主な目的です。痰がある場合は、深呼吸だけでなく、痰を排出できているかも確認します。

Q2.患者さんが痛がっている場合も、咳嗽を促してよいですか?

痛みが強い場合は、まず疼痛の程度や呼吸状態を確認します。

創部を支える方法を説明したり、必要な疼痛対策がとられているかを確認したりしながら、患者さんが実施しやすい方法を考えます。無理に回数だけをこなすことが目的ではありません。

Q3.術後の深呼吸や咳嗽は、何回行えばよいですか?

今回確認できた公的・学術資料の範囲では、すべての術後患者さんに共通する具体的な回数・頻度の統一基準は確認できませんでした。

手術内容や患者さんの状態、施設の方針を確認して実施します。

Q4.術後に痰が出れば、問題ありませんか?

痰が出ること自体は、気道内の分泌物を排出できているという面があります。

一方で、発熱、呼吸困難の悪化、痰の増加、膿性の痰などがみられる場合は、術後の経過や呼吸状態を再評価し、必要に応じて報告・相談します。

参考文献

  • 日本麻酔科学会「抜管から術後早期までの安全な気道管理」PDF
  • 日本クリティカルケア看護学会誌「術後呼吸ケアに関する論文」J-STAGE PDF
  • 防衛医科大学校病院「RST資料」PDF
  • 国立がん研究センター東病院「手術の合併症を減らし回復を早める『リハビリ指導』」公式ページ
  • 国立がん研究センター中央病院「術後合併症について」公式ページ
  • 国立がん研究センター「肺手術後の咳や痰に関する説明」公式ページ
  • 国立病院機構埼玉病院「呼吸器外科診療 Q&A」公式ページ
  • Alberta Health Services “Deep Breathing, Coughing, and Moving After Abdominal Surgery” 公式ページ
  • MedlinePlus “Deep breathing after surgery” 公式ページ
  • 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン・患者向けガイドブック」公式ページ

実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!

実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢

そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。

\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /

LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊


LINEで友だち追加

この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

ユウ塾長をフォローする
周手術期看護
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました