抗凝固薬を飲んでいる患者さんが転倒したときの観察ポイント|看護師・看護学生が最初に確認すること
こんにちは、ユウです。
みなさんは、抗凝固薬を内服している患者さんが転倒したとき、最初に何を確認しますか?
「頭は打っていないと言っているから大丈夫かな」と考える一方で、「抗凝固薬を飲んでいるけれど、頭部CTは必要なのだろうか」と迷うこともありますよね。
今回は、抗凝固薬を内服している患者さんが転倒したときに、看護師・看護学生が最初に確認したい項目と、医師へ報告・相談するときのポイントについて解説します。
結論:まず頭部外傷と神経学的異常を確認し、服薬情報をすぐに共有する
抗凝固薬を内服している患者さんが転倒した場合は、まず次の項目を確認します。
- 頭部を打った可能性があるか
- 意識消失や、いつもと違う意識状態がないか
- 頭痛、嘔吐、麻痺、しびれ、失語、歩行の変化がないか
- いつ、どのように転倒したのか
- 抗凝固薬・抗血小板薬の薬剤名と最終服用時刻
- バイタルサインや瞳孔などに変化がないか
大切なのは、患者さんが「頭は打っていない」と話していても、抗凝固薬・抗血小板薬を内服しているという事実だけで、頭蓋内出血の可能性を考えることです。
異常がある場合や、頭部打撲の可能性がある場合は、速やかに医師へ報告し、頭部CTを含む評価につなげます。
ざっくり言うと、
抗凝固薬内服中の転倒では、「症状が軽そうか」ではなく、頭部外傷と神経症状、服薬状況をセットで確認する
ということです。
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この記事でわかること
- 抗凝固薬内服中の転倒で頭蓋内出血を考える理由
- 転倒直後に確認したい観察項目
- 頭部CTを急ぐ判断につながる所見
- 医師へ報告するときに伝える内容
- 看護記録に残しておきたい情報
根拠:抗凝固薬内服中は頭蓋内出血の可能性を考える
転倒後の患者さんを見たとき、まず気になるのは「頭を打ったかどうか」です。
もちろん、頭部を打ったかどうかは重要です。しかし、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している場合は、患者さんが明確に頭部打撲を訴えていなくても、頭蓋内出血の可能性を考えます。
医療安全資料「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」では、頭部外傷の重症化に関係する要因として、凝固機能や線溶機能に影響する薬剤の服用などが挙げられています。また、該当する場合には、頭部CTを推奨する考え方が示されています。
さらに、医療安全調査機構の「提言の概要」では、抗凝固薬・抗血小板薬を内服している患者さんについて、頭蓋内出血の可能性を認識することが示されています。
つまり、
- 転倒した
- 抗凝固薬・抗血小板薬を内服している
- 頭部を打ったかどうかがはっきりしない
- 現時点では症状が目立たない
このような場合でも、「何もない」と決めつけず、医師による評価につなげる必要があります。
詳しい解説:転倒直後に確認したいこと
1.まず患者さんの全身状態を確認する
転倒後は、頭部だけでなく全身の状態を確認します。
- 意識状態
- 呼吸状態
- 脈拍、血圧などのバイタルサイン
- 出血の有無
- 疼痛の部位
- 四肢の動かしにくさ
- 骨折や打撲が疑われる部位
患者さんをすぐに起こすのではなく、状態を確認しながら安全を確保します。明らかな異常がある場合は、院内の手順に従って応援を要請し、医師へ報告します。
2.転倒の状況を確認する
転倒の状況は、患者さん本人の話だけでは不十分なことがあります。可能であれば、目撃者や周囲の状況も確認します。
確認する内容は次のとおりです。
- いつ転倒したのか
- どこで転倒したのか
- 立位、歩行中、ベッド上など、どのような状況だったか
- 転倒前にふらつきや意識消失があったか
- 頭部を打った可能性があるか
- どの部位を打ったのか
- 転倒後に意識を失っていないか
「頭は打っていません」と言われても、転倒の方向や床・家具との接触状況から、頭部を打った可能性が残る場合があります。
3.意識と神経症状を確認する
頭蓋内出血を疑ううえで、意識状態や神経症状の変化は重要です。
観察する項目は、次のようなものです。
- いつもと比べた意識レベル
- 反応の遅れや傾眠
- 意識消失の有無
- 頭痛
- 嘔吐
- めまい
- 片側の手足のしびれや麻痺
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 歩き方やふらつきの変化
- 瞳孔の左右差など
患者さんが会話できていても、「いつもと同じ」とは限りません。
普段から認知機能が低下している患者さんでは、家族や担当看護師などから、普段の状態を確認できると評価に役立ちます。
4.薬剤名と最終服用時刻を確認する
「血液をサラサラにする薬を飲んでいます」という情報だけでは不十分です。
可能な範囲で、次の内容を確認します。
- 薬剤名
- 抗凝固薬か抗血小板薬か
- ワルファリンかDOACか
- 最後に服用した時刻
- ほかの抗血栓薬や併用薬の有無
薬剤情報がすぐに分からない場合は、電子カルテ、薬剤情報、お薬手帳などを確認します。
医療安全調査機構の提言でも、抗凝固薬・抗血小板薬内服中の患者さんでは、頭蓋内出血の可能性を念頭に置くことが示されています。
薬剤名が分からないまま報告するのではなく、確認できた情報を整理して医師に伝えることが大切です。ただし、薬剤確認に時間をかけすぎて、意識状態や神経症状の確認が遅れないようにします。
頭部CTを急ぐ判断につながる所見
調査結果に含まれる医療安全資料では、次のような状態が頭部外傷の重症化に関係する要因として挙げられています。
- 意識消失があった
- いつもと違う意識変化がある
- 麻痺、しびれ、失語、歩行異常などの神経症状がある
- 嘔吐や強い頭痛がある
- 抗凝固薬・抗血小板薬を内服している
- 高齢である
- 脳神経外科手術の既往がある
これらに該当する場合は、速やかに医師へ報告し、頭部CTを含む評価につなげます。
ここで注意したいのは、「CTを撮るかどうかを看護師だけで決める」という意味ではないことです。
看護師は、転倒の状況、患者さんの症状、意識・神経所見、服薬情報を整理して報告します。その情報をもとに、医師が検査や経過観察などを判断します。
初回評価で問題がなくても観察を続ける
転倒直後に会話ができ、強い症状がなかったとしても、その時点で完全に安心できるとは限りません。
医療安全調査機構の提言では、初回CTで頭蓋内出血が確認された場合、時間を決めて再度の頭部CTを考慮することが示されています。
また、初回の評価で異常がはっきりしない場合でも、患者さんの意識や神経症状に変化がないかを継続して観察します。
特に、
- 眠気が強くなってきた
- 頭痛を訴え始めた
- 嘔吐した
- 会話の内容が変わった
- 手足が動かしにくくなった
- 歩行状態が変化した
という場合は、再評価と報告が必要です。
「最初は大丈夫だった」という情報だけで、その後の変化を見逃さないようにします。
医師へ報告するときのポイント
報告では、まず結論を伝えます。
例えば、次のように整理できます。
「〇時ごろ、病室内で転倒しました。抗凝固薬を内服中で、最終服用は今朝です。頭部を打った可能性があります。現在、普段より反応が遅く、頭痛も訴えています。バイタルサインは〇〇です。頭部CTを含めて評価をお願いします。」
報告に含めたい内容は、次のとおりです。
- 転倒時刻
- 転倒場所と受傷機転
- 頭部打撲の可能性
- 意識消失の有無
- 現在の意識状態
- 頭痛、嘔吐、麻痺などの症状
- バイタルサイン
- 抗凝固薬・抗血小板薬の薬剤名
- 最終服用時刻
- これまでの意識・神経症状の変化
医師への報告だけでなく、看護記録にも時系列で残します。
看護記録に残しておきたい内容
看護記録では、単に「転倒あり」と書くのではなく、あとから経過が分かるように記録します。
- 転倒した時刻と発見時刻
- 発見時の体位や場所
- 患者さんの発言
- 頭部打撲の有無、または不明であること
- 意識レベルの変化
- 神経症状の有無
- バイタルサイン
- 頭部の腫脹や出血
- 服薬情報と最終服用時刻
- 医師へ報告した時刻
- 医師からの指示
- その後の観察結果
「頭部打撲なし」と断定できない場合は、「本人は頭部打撲を否定」「目撃者なし」「頭部打撲の有無は確認できず」など、確認できた事実に分けて記録します。
実践ポイント
- 転倒直後の確認は、頭部外傷の有無だけで終わらせないことが重要です。患者さんが「頭を打っていない」と言っても、抗凝固薬内服中なら頭蓋内出血を疑う視点を持ちます。
- いつ、どこで、どう転倒したかを確認する
- 頭部を打ったか、どこを打ったかを確認する
- 意識消失の有無を確認する
- いつもと比べた意識レベルを確認する
- 頭痛、嘔吐、めまい、しびれ、麻痺、失語、歩行異常を確認する
- 抗凝固薬・抗血小板薬の薬剤名を確認する
- 最終服用時刻を確認する
- 受傷前後の様子を見た目撃者の有無を確認する
- 意識レベル、瞳孔や左右差、頭痛・嘔吐、新規の神経症状、バイタルサイン、頭部外傷部位の腫脹や出血を観察する
- 抗凝固薬・抗血小板薬を内服している場合、転倒後に頭部打撲の可能性がある場合、意識消失があった場合、いつもと違う反応がある場合、頭痛・嘔吐・神経症状がある場合、高齢である場合は、医師へ速やかに伝える
- 転倒時刻と状況、頭部打撲の有無、意識レベルの推移、神経症状の有無、服薬情報と最終服用時刻、医師報告の時刻と指示内容を記録する
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 抗凝固薬・抗血小板薬を内服している患者さんの転倒では、頭蓋内出血の可能性を考える
- 「頭を打っていない」という訴えだけで、安全とは判断しない
- 意識状態、頭痛、嘔吐、麻痺、しびれ、失語、歩行変化を確認する
- 転倒時刻、受傷機転、意識消失の有無を確認する
- 薬剤名と最終服用時刻を調べ、医師へ共有する
- 異常がある場合や頭部打撲の可能性がある場合は、速やかに医師評価と頭部CTにつなげる
- 初回評価で問題がなくても、意識や神経症状の変化を継続して観察する
- 転倒の状況、観察結果、報告内容を時系列で記録する
抗凝固薬内服中の転倒では、頭部外傷の有無だけでなく、意識・神経症状・服薬情報をまとめて評価することが重要です。
筆者の体験談:転倒後に「大丈夫」と言われて迷った場面
私が看護師をしていた頃、患者さんがベッドサイドで転倒したことがありました。
患者さんはすぐに「大丈夫。頭は打っていないよ」と話し、会話もできていました。外見上、大きな出血や腫れもありませんでした。
最初、私は「大きな外傷はなさそうだ」と思いました。
ただ、その患者さんが抗凝固薬を内服していたことが気になりました。頭を打っていないと言っているなら問題ないのか、それとも医師へすぐに報告すべきなのか、少し迷ったのを覚えています。
そこで、転倒したときの状況をもう一度確認しました。患者さん本人の話だけでなく、近くにいたスタッフにも聞きました。すると、転倒時に身体が回転し、頭部が床に近づいていたことが分かりました。
患者さんの意識状態や会話の様子を確認し、薬剤名と最終服用時刻を調べて、医師へ報告しました。その後は指示に従い、状態の変化がないか観察しました。
そのときの私は、「症状がないから大丈夫」と考えかけていました。でも、服薬情報と転倒の状況を合わせると、最初の印象だけでは判断できないと感じました。
この経験があってから、私は転倒後の患者さんを見るとき、本人の「大丈夫」という言葉を尊重しながらも、転倒の状況と普段との違いを一度立ち止まって確認するようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、転倒後の観察を臨床場面と結び付けて考えるためのものです。
FAQ
Q1.患者さんが「頭を打っていない」と言えば、頭部外傷は否定できますか?
否定できるとは限りません。
転倒を目撃していない場合や、意識消失があった可能性がある場合は、本人の記憶が正確でないことも考えられます。転倒の状況、目撃者の情報、意識状態、服薬状況を合わせて評価します。
Q2.抗凝固薬を飲んでいる患者さんが転倒したら、必ず頭部CTを撮りますか?
頭部CTを含む評価が必要かどうかは、転倒状況、症状、意識状態、服薬内容などをもとに医師が判断します。
ただし、抗凝固薬・抗血小板薬の内服は頭部外傷の重症化に関係する要因とされているため、薬剤を内服している事実を速やかに医師へ共有することが重要です。
Q3.ワルファリンとDOACで観察内容は変わりますか?
この記事で扱っている転倒直後の観察では、まず意識状態や神経症状、受傷機転、頭部打撲の可能性を確認します。
そのうえで、薬剤名、最終服用時刻、併用薬などを確認します。抗凝固薬の種類によって対応が異なる可能性があるため、自己判断で対応せず、医師や施設の手順に従います。
Q4.転倒後に症状がなければ、経過観察だけでよいですか?
症状がない場合でも、抗凝固薬・抗血小板薬を内服している患者さんでは、頭蓋内出血の可能性を考えます。
経過観察の方法や検査の必要性は、医師の評価と指示に従います。観察中は、意識、頭痛、嘔吐、麻痺などの変化を確認します。
参考文献
- 医療事故調査・支援センター系資料「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」医療安全資料(PDF)
- 医療安全調査機構「提言の概要」医療安全調査機構資料(PDF)
- 医療安全調査機構「提言」医療安全調査機構資料(PDF)
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