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看護師・看護学生向け 看護記録で事実と解釈を分ける書き方

看護記録の書き方
この記事は約9分で読めます。

看護記録で「観察した事実」と「解釈」を分けて書く理由|看護師・看護学生が迷いやすい記録のポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、看護記録を書くときに「これは観察した事実?それとも自分の解釈?」と迷ったことはありませんか?

「落ち着きがない」「状態が悪そう」「腸蠕動音が亢進している」など、つい自分の判断を先に書いてしまうことがありますよね。

今回は、看護記録で観察した事実と解釈を分けて書く理由と、看護師・看護学生が実際に記録するときの考え方を解説します。

結論:まず事実を書き、その後に解釈を書く

看護記録では、まず見たこと・聞いたこと・測定したことを具体的に記載します。

そのうえで、必要に応じて「その事実から何を考えたのか」をアセスメントとして分けて書くのが基本です。

たとえば、

  • 事実:患者さんが「お腹が張る」と話した
  • 事実:腹部の張りを訴え、食事摂取量は昼食3割だった
  • 解釈:腹部不快感により、食事摂取量が低下している可能性がある

という整理です。

ざっくり言うと、

事実はカメラに記録される情報、解釈はその情報をもとに看護師が考えたこと

です。

この2つを混ぜないことで、記録を読んだ他の看護師や医療者が、同じ情報をもとに状態を判断しやすくなります。

判断基準は、第三者が同じ情報として確認できるかどうかです。原因を断定できない場合は、「〜と考える」「〜の可能性がある」「〜が疑われる」など、解釈であることが分かる表現を使います。

想定読了時間

約15分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 看護記録で事実と解釈を分ける理由
  • 観察した事実と解釈の違い
  • SOAPでの整理方法
  • 曖昧な記録を具体的にする方法
  • 看護師・看護学生が記録で注意したいポイント

根拠:看護記録には継続性と説明責任がある

日本看護協会「看護記録の開示に関するガイドライン」では、看護記録には、看護実践を証明し、看護の継続性や一貫性を担保する役割があると示されています。

記録は、書いた本人だけが読むものではありません。

勤務交代後の看護師、医師、リハビリテーション職、薬剤師など、さまざまな職種が患者さんの経過を確認するために使用します。

そのときに、

何が実際に起きていたのか
その情報をもとに、看護師は何を考えたのか

が分からないと、読み手は記録を最初から解釈し直さなければなりません。

また、看護教育資料で説明されているSOAPの考え方では、Sは患者さんの主観的情報、Oは観察や測定による客観的情報、Aはそれらをもとにした分析・判断として整理されます。

つまり、SOAPも「情報」と「判断」を分けて記録する構造になっています。

観察した事実と解釈の違い

観察した事実とは?

観察した事実は、第三者が記録を読んだときに、同じ情報として確認しやすい内容です。

たとえば、次のようなものがあります。

  • 患者さんが話した言葉
  • 体温、脈拍、血圧、SpO₂
  • 食事摂取量
  • 嘔吐した回数や量
  • 排泄の回数や性状
  • 表情や体の動き
  • 皮膚の発赤や腫脹
  • スケールの得点
  • 実施したケアと、その後の患者さんの反応

「朝食は主食2割、副食5割摂取した」のように、数値や割合で表せるものは、できるだけ具体的に残します。

「食欲がない」と書くよりも、「朝食の摂取量は主食2割、副食5割。本人は『あまり食べたくない』と話した」と書いたほうが、何が起きていたのかが分かりやすくなります。

解釈とは?

解釈は、観察した情報から看護師が考えた意味づけです。

たとえば、

  • 疼痛により体動が少なくなっている可能性がある
  • 食事摂取量の低下は、悪心の影響が考えられる
  • 不安が強く、睡眠に影響している可能性がある
  • 転倒リスクが高まっていると考える

などです。

解釈は、看護師の重要な役割です。

ただし、解釈は事実そのものではありません。

そのため、「〜と考える」「〜の可能性がある」「〜が疑われる」など、看護師の判断であることが分かる表現に分けて書くことが大切です。

「腸蠕動音が亢進している」は事実?

看護記録で迷いやすいのが、「腸蠕動音が亢進している」という表現です。

これは一見、観察した事実のように見えます。

しかし、何を基準に「亢進」と判断したのかが、記録を読んだ人には分からないことがあります。

そのため、まずは聴診した状況や患者さんの訴えなど、確認できた情報を具体的に書きます。

たとえば、

  • 患者さんは「お腹がゴロゴロする」と話した
  • 腹部膨満感を訴えた
  • 腹部を気にする様子がみられた
  • 腹部聴診を実施した

そのうえで必要に応じて、

腹部症状について追加の観察が必要と考える

のように、判断を別に記載します。

看護記録における観察と解釈の解説でも、観察した内容と、それをもとにした判断を分けて整理することが説明されています。

もちろん、施設で定められた記録方法や評価基準がある場合は、それに従います。

大切なのは、専門用語を使うことではなく、その言葉が何を意味しているのか、読み手に伝わることです。

曖昧な記録を具体的にする方法

「落ち着きがない」と書く場合

「落ち着きがない」は、解釈が含まれやすい表現です。

次のように、実際の行動を分けて書くと伝わりやすくなります。

  • ベッド上で体を左右に動かしている
  • ナースコールを短時間に複数回押している
  • 「帰りたい」と繰り返し話している
  • 声かけに対して視線を合わせるが、すぐに周囲を見回す

その後に、

不安が強い可能性がある

環境変化の影響が考えられる

など、アセスメントを記載します。

「状態が悪そう」と書く場合

「状態が悪そう」だけでは、何を見てそう考えたのかが分かりません。

次のように、具体的な情報に置き換えます。

  • 顔色が普段より pale に見える
  • 会話中に返答まで時間がかかる
  • 朝のバイタルサインと比較して変化がある
  • 食事摂取量が前日より減っている
  • 立位時にふらつきがみられた

そして、

普段と比較して全身状態の変化があると考え、担当看護師へ報告した

のように、判断や対応を分けて書きます。

「痛みが強い」と書く場合

「痛みが強い」と感じた場合も、まず患者さんの言葉や行動を記録します。

  • 患者さんは「痛みは7です」と話した
  • 体動時に顔をしかめた
  • 腹部を手で押さえていた
  • 体位変換後に「痛みが増えた」と話した

このような情報があれば、読み手は痛みの程度や変化を考えやすくなります。

SOAPで考えると整理しやすい

記録を書くときに迷ったら、SOAPに当てはめて考えると整理しやすくなります。

S:主観的情報

患者さんが話した内容です。

例:

「朝から気持ち悪い」
「動くと傷が痛い」
「夜はあまり眠れなかった」

患者さんの言葉は、できるだけ本人の表現を残します。

O:客観的情報

看護師が観察・測定した情報です。

例:

嘔吐1回。嘔吐物の量は少量。
食事摂取量は主食2割、副食3割。
体動時に顔をしかめ、腹部を押さえる様子がみられた。

A:アセスメント

SとOをもとに、看護師が考えたことです。

例:

悪心により食事摂取量が低下している可能性がある。
疼痛は安静時より体動時に増強していると考える。

P:計画

今後の観察やケア、報告などです。

例:

悪心の程度と嘔吐の有無を継続して観察する。
食事摂取状況を確認し、変化があれば報告する。

SOAPの項目をすべて厳密に分けるかどうかは、施設の記録方法によって異なります。

ただ、情報と判断を分けて考える練習としては役立ちます。

実践ポイント:看護師・看護学生が記録するときのポイント

1.まず「見た・聞いた・測った」を書く

記録を書く前に、自分へ次のように問いかけます。

  • 実際に見たことは何か
  • 患者さんから聞いたことは何か
  • 測定した数値は何か
  • 実施したケアは何か
  • ケア後にどのような変化があったか

この順番で整理すると、解釈が先行しにくくなります。

2.できるものは数値化する

時間、回数、量、測定値、スケールの得点などは、できるだけ具体的に書きます。

「何度も吐いた」よりも、「嘔吐2回」と書いたほうが、経過を追いやすくなります。

ただし、正確に測定できていないものまで推測して数値を書くことは避けます。

3.原因を断定しすぎない

観察した事実だけでは原因が分からないこともあります。

その場合は、

  • 原因は不明
  • 確認中
  • 〜の可能性がある
  • 〜と考えるが、継続して観察する

など、判断の確かさが分かる表現を使います。

「不安が原因で眠れなかった」と断定する前に、患者さんが話した内容や睡眠状況など、根拠となる情報を確認します。

4.申し送りでも分けて伝える

申し送りでは、次のように話すと伝わりやすくなります。

「16時、患者さんは『息苦しい』と話していました。呼吸数は24回、会話は可能でした。私は不安の影響も考えていますが、普段より呼吸数が多いため、引き続き観察が必要と考えています」

このように、患者さんの言葉、観察した内容、自分の判断を分けることで、受け手が状況を整理しやすくなります。

筆者の体験談:私が看護師をしていた頃の記録の迷い

私が看護師をしていた頃、患者さんの食事摂取量が急に減った場面がありました。

その日の昼食後、記録を書こうとして、私は最初に「食欲不振あり」と書きかけました。

患者さんは食事をほとんど残していて、食事中もあまり箸が進んでいませんでした。私は、「体調が悪いのかな」「食欲が落ちているのかな」と考えていました。

でも、記録を見返したときに、「食欲不振」と書くだけでは、何があったのか分かりにくい気がしました。

そこで、患者さんにもう一度話を聞くと、「食べたくないというより、口の中が痛くて食べにくい」と話されました。

私は最初、食欲の問題だと思い込んでいました。しかし、実際には食べたい気持ちがないのか、食べにくい理由があるのかで、考えることが変わります。

その後は、患者さんの言葉、食事摂取量、食事中の様子を分けて記録し、担当者へ相談しました。

この経験があってから、私は「食欲がない」「元気がない」と書きそうになったときほど、その言葉の根拠になった具体的な様子を思い出すようになりました。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 看護記録では、観察した事実と解釈を分けて書く
  • 事実は、見たこと・聞いたこと・測定したこと
  • 解釈は、事実をもとに看護師が考えた意味づけ
  • 「落ち着きがない」「状態が悪い」などは、具体的な行動や数値に置き換える
  • 原因を断定できないときは、「可能性」「考える」などの表現を使う
  • SOAPでは、S・OとAを分けることで情報を整理しやすい
  • 事実と判断を分けることで、申し送りや多職種連携が行いやすくなる

記録を書くときは、まず「何が起きたのか」を具体的に残します。

その後で、「そこから何を考えたのか」をアセスメントとして示します。

この順番を意識するだけでも、読み手に伝わりやすい看護記録に近づきます。

FAQ

Q1.看護記録に解釈を書いてはいけないのですか?

いいえ。解釈やアセスメントは、看護師の重要な判断として記録します。

ただし、観察した事実と混ぜずに、「何を根拠にそう考えたのか」が分かるように書くことが大切です。

Q2.患者さんの発言は事実ですか、解釈ですか?

患者さんが実際に話した言葉は、主観的情報として扱います。

「痛い」「苦しい」「眠れない」などの発言は、本人の訴えとして記録します。

その発言から「疼痛が増強している」「不安が強い」と考えた場合は、看護師の解釈として分けて記載します。

Q3.「問題なし」と書けば短く記録できますか?

「問題なし」だけでは、何を確認したのかが分かりにくいことがあります。

必要に応じて、確認した項目や観察した内容を具体的に残します。

Q4.実習記録では、どこまで細かく書けばよいですか?

実習記録では、まず「何を見たか」「何を聞いたか」「何を測定したか」を整理します。

その後に、根拠をもとに自分がどう考えたのかを書きます。

記録様式や学校の指導内容がある場合は、それに沿って記載してください。

参考文献

  • 日本看護協会「看護記録の開示に関するガイドライン」PDF
  • 看護過程・SOAPの客観的情報と主観的情報の説明資料(小学館・照林社「プチナース」看護Q&A)看護Q&A
  • 看護記録における観察と解釈の解説(メディックメディア)記事
  • 看護記録と法的・安全面の記載に関する資料(Medsafe)資料

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この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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