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突然の胸痛 心筋梗塞と大動脈解離の観察ポイント

フィジカルアセスメント
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こんにちは、ユウ塾長です。突然の胸痛に出会ったとき、「心筋梗塞かもしれない。でも、大動脈解離だったらどうしよう」と迷ったことはありませんか?痛みの特徴や心電図だけで見分けられるのか、悩みますよね。今回は、まず確認したい重症度と、心筋梗塞・大動脈解離を考える観察ポイントを整理します。

結論:重症度を見ながら、心筋梗塞と大動脈解離を並行して考える

突然の胸痛では、まずABCDEで患者さんの状態を確認し、発症のしかた、痛みの移動、左右の脈拍・血圧差、神経症状を観察します。同時に、急性冠症候群の評価に必要な12誘導心電図も迅速に進めます。

圧迫感や締めつけ感、冷汗、左肩・腕への放散痛は心筋梗塞を考える手がかりです。一方、突然始まり発症時に最も強い胸背部痛や、胸から背中へ移る痛みは大動脈解離を疑う所見です。

ただし、症状は重なることがあります。心電図にST上昇がないことや、左右の血圧差がないことだけで、どちらかを否定しないでください。大動脈解離が冠動脈に及ぶと、心筋梗塞に似た心電図変化やトロポニン上昇が起こることもあります。MSDマニュアル「大動脈解離」

判断のポイントは、どちらかに早く決めることではなく、重症度を確認しながら心筋梗塞の評価と大動脈解離の危険徴候の検索を同時に進めることです。

読了時間の目安:約9分

この記事でわかること

この記事では、次のポイントを解説します。

  • 心筋梗塞と大動脈解離を考える痛みの違い
  • 胸痛患者さんで最初に確認したい観察項目
  • 心電図や血圧差の結果をどう受け止めるか
  • 異常を見つけたときの報告の組み立て方

結論の根拠:痛みや心電図だけでは見分けきれない

和歌山県立医科大学の救急診療資料「ERでの胸痛」では、胸痛の初期評価としてABCDEによる重症度確認や、痛みの経過を含む問診が扱われています。また、急性胸痛では12誘導心電図を来院後10分以内に実施することが推奨される資料もあります。

一方、大動脈解離では、突然発症する強い胸背部痛のほか、失神、神経症状、脈拍の左右差などが現れることがあります。解離が冠動脈に及ぶと、心筋梗塞に似た所見が出る場合もあります。MSDマニュアル「大動脈解離」

そのため、心電図は心筋梗塞の評価に欠かせませんが、大動脈解離を除外する検査ではありません。心筋梗塞を調べながら、大動脈解離を疑う危険徴候も同時に探すことが大切です。

痛みの特徴を手がかりにする

痛みの性状は判断の手がかりになりますが、あくまで手がかりです。どれか一つの特徴だけで病名を決めず、発症状況や全身状態と合わせて見ていきましょう。

観察項目心筋梗塞を考える手がかり大動脈解離を考える手がかり
発症数分かけて強くなることがある突然始まり、発症時に最も強いことがある
痛み圧迫感、締めつけ感、重苦しさ引き裂かれるような強い痛み
部位・広がり前胸部から肩、腕、顎などへ広がる胸部から背部へ移る。背部や腹部に痛みが出ることもある
伴う症状冷汗、悪心・嘔吐、呼吸困難失神、神経症状、四肢の冷感や痛み、ショック
脈拍・血圧左右差は典型的な手がかりではない左右の血圧差や脈拍の弱さ・欠損がみられることがある

心筋梗塞では、典型的な胸痛が目立たない場合もあります。高齢者、糖尿病患者、女性では、呼吸困難や倦怠感、悪心、失神などが前面に出ることもあるため、胸痛が典型的でないからといって急性冠症候群を除外しないようにしましょう。和歌山県立医科大学「ERでの胸痛」/全国健康保険協会「胸痛」

大動脈解離では、解離が血管の枝に及ぶことで、脳や四肢などへの血流が妨げられることがあります。そのため、胸痛だけでなく、意識、麻痺、構音障害、四肢の冷感・しびれなども確認します。MSDマニュアル「胸痛」/MSDマニュアル「大動脈解離」

最初に確認したい観察ポイント

1.ABCDEで、今すぐの危険がないか見る

病名を考える前に、まず患者さんの状態を確認します。気道、呼吸、循環、意識、全身を順に見て、ショックや呼吸不全などの緊急性がないか評価しましょう。

胸痛が強い、呼吸が苦しそう、意識が低下している、血圧が低下しているなどの変化があれば、施設の手順に沿って応援を要請し、医師や救急チームへ速やかに報告してください。

2.痛みの始まり方と移動を聞く

「いつ始まりましたか?」だけでなく、痛みの経過も確認します。突然始まったのか、発症した瞬間が最も強かったのか、胸から背中や腹部へ移っているのかを聞いてみましょう。

OPQRSTを使うと、情報を整理しやすくなります。

  • O(発症):いつ、どのように始まったか
  • P(増悪・軽減):何をすると強くなる、または軽くなるか
  • Q(性状):圧迫感、締めつけ、刺すような痛みなど
  • R(部位・放散):どこが痛み、どこへ広がるか
  • S(強さ):どの程度痛むか、発症時から変化したか
  • T(時間):どれくらい続き、再発しているか

来院時に痛みが軽くなっていても、発症時に激しい痛みがあったことは大切な情報です。現在の痛みだけで判断せず、発症時の様子も記録してください。JBPO「非典型が典型! killer chest painの騙し方」

3.心電図を迅速にとり、結果を単独で判断しない

急性胸痛では、可能な限り早く12誘導心電図を実施します。和歌山県立医科大学の資料では、来院後10分以内の実施が推奨されています。「ERでの胸痛」

ただし、初回心電図に明らかな変化がない場合も、心筋梗塞を否定できません。症状が続く、または変化する場合は、医師の判断や施設の手順に沿って再評価・反復心電図を検討します。心電図の変化がある場合も、大動脈解離による冠動脈への影響を含め、全身所見と合わせて報告しましょう。MSDマニュアル「大動脈解離」

4.左右の血圧と脈拍を比べる

両上肢の血圧、脈拍の強さ、四肢の色や温度、しびれを左右で比べます。大動脈解離を疑う目安として、左右の収縮期血圧差20 mmHg以上が示されている資料があります。厚生労働科学研究費関連資料

ただし、左右差がないからといって解離を否定することはできません。測定値だけでなく、脈拍の弱さや欠損、測定条件も含めて記録し、気になる所見があれば報告してください。

5.神経症状や心不全の徴候も見る

胸痛に加えて、失神、意識障害、麻痺、構音障害、失語などがないかを確認します。四肢の冷感、蒼白、しびれ、脱力も見逃したくない所見です。

呼吸困難や血圧低下、冷汗など、急性心不全やショックを疑う変化があれば、患者さんを歩かせず、安静を保ちながら速やかに応援を要請してください。

看護師・看護学生が報告するときのポイント

報告では、「胸が痛い」だけでなく、発症時刻、痛みの移動、左右の血圧・脈拍、心電図、神経症状を簡潔にまとめます。たとえば、次のように伝えられます。

「突然発症した胸背部痛が続いています。発症は30分前で、胸から背中へ痛みが移っています。左右の上肢で収縮期血圧に差があり、右の脈拍が弱く感じられます。大動脈解離を疑う所見があるため、緊急の評価をお願いします。」

大動脈解離が疑われるときは、心筋梗塞を想定した抗血小板薬・抗凝固薬・血栓溶解療法などが危険となる可能性があります。薬剤の開始や保留を看護師が独断で決めるのではなく、危険徴候を明確に共有し、医師の判断と施設の手順につなげてください。MSDマニュアル「大動脈解離」

まとめ

突然の胸痛では、まずABCDEで重症度を確認し、心筋梗塞の評価と大動脈解離の危険徴候の検索を並行して進めます。

  • 突然発症し、発症時に最も強い胸背部痛は大動脈解離を考える手がかり
  • 圧迫感や締めつけ感、冷汗、放散痛は心筋梗塞を考える手がかり
  • 痛みや心電図だけでは、両者を完全に見分けられない
  • 左右差がない、心電図にST上昇がないという理由だけで否定しない
  • 発症の経過、左右の脈拍・血圧、神経症状を含めて速やかに報告する

まずは「どちらかに決める」より、重症度を確認しながら両方の可能性を意識することから始めてみましょう。

筆者の体験談

胸痛の訴えを受けた場面をイメージしてみてください。患者さんは「胸が急に痛くなって、今は背中にも響く」と話しています。心電図では、すぐに決め手となる変化が見えないように感じます。

ここで「心電図に大きな変化がないから、ひとまず大丈夫」と考えてよいのか、迷うかもしれません。痛みが突然始まったことや、胸から背中へ移っていることをもう一度確認し、左右の血圧や脈拍、意識・神経症状も見て、医師へ報告します。

こうした場面では、心電図の画面だけを見続けたくなることがあります。けれど、患者さんの話や身体所見を並べてみると、伝えるべき情報が見えてきます。「心電図の結果」と「患者さんに起きていること」を一緒に考える姿勢を、学習の中でも大切にしたいですね。

ここでの場面は、観察や報告のポイントをイメージするためのもので、医学的根拠を示すものではありません。根拠となる情報は、本文中の資料と参考文献を確認してください。

FAQ

心電図にST上昇がなければ、心筋梗塞ではありませんか?

いいえ、ST上昇がないだけでは心筋梗塞を否定できません。症状や経過、心電図の変化、心筋トロポニンなどを合わせて評価します。和歌山県立医科大学「ERでの胸痛」

左右の血圧に差がなければ、大動脈解離の心配はありませんか?

いいえ。左右差は解離を疑う手がかりの一つですが、解離のすべてで認められるわけではありません。痛みの発症様式や背部への移動、脈拍、神経症状なども合わせて確認してください。厚生労働科学研究費関連資料/MSDマニュアル「大動脈解離」

参考文献

  • 和歌山県立医科大学「ERでの胸痛」資料
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「大動脈解離」解説
  • MSDマニュアル「胸痛」解説
  • 全国健康保険協会「胸痛」資料
  • 厚生労働科学研究費関連資料資料
  • JBPO「非典型が典型! killer chest painの騙し方」解説

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