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NRSと表情・行動が一致しないときの評価と記録

フィジカルアセスメント
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こんにちは、ユウ塾長です。患者さんのNRSは高いのに表情は穏やか、反対にNRSは低いのに苦しそうに見える。そんなとき、どちらを信じればよいのか迷ったことはありませんか?ここ、判断に悩みますよね。今回は、NRSと表情・行動が一致しないときの考え方と、看護で確認したいポイントを整理します。

結論:どちらかを正解・誤りと決めつけない

NRSと表情・行動が一致しないときは、患者さんの訴えを否定せず、数値と観察所見の両方から痛みや苦痛を評価します。

意思表示ができる患者さんでは、痛みの強さは本人の自己申告を中心に捉えます。そのうえで、安静時と体動時の違い、痛みの性質、生活や治療への影響、表情・行動の変化などを確認しましょう。

一方、苦しそうな様子があるのにNRSが低い場合は、質問の理解や遠慮、認知機能の変化などに加え、痛み以外の苦痛も考えます。NRSの数字だけで鎮痛薬の要否を決めず、急な痛みや状態の変化があれば、施設の手順に沿って報告してくださいね。

判断のポイントは、NRSと観察所見のどちらか一方を正解と決めることではなく、患者さんの言葉や状態、生活への影響を合わせて確認することです。

読了目安

読了目安:約8分

この記事でわかること

この記事では、次のポイントを解説します。

  • NRSと表情・行動が一致しない理由
  • 安静時・体動時の痛みや生活への影響を確かめる方法
  • 痛み以外の苦痛を考えるときの視点
  • 看護記録や介入後の再評価で残したい情報

結論の根拠:NRSと表情・行動は見ているものが違う

NRSは、患者さん自身が感じている痛みの強さを、0〜10の数字で表す方法です。0は痛みがない状態、10は想像できる最大の痛みを表します。痛みは主観的な体験なので、同じ疾患や処置でも、感じ方や表現は人によって異なります。マルホ「疼痛の検査・診断」でも、痛みの評価では患者さんの訴えや生活への影響を確認することが解説されています。

一方、表情や体の動きは、看護師が外側から観察する情報です。顔をしかめる、患部をかばう、動かなくなるといった変化は痛みの手がかりになりますが、不安や呼吸困難、せん妄、疲労などでも起こることがあります。OpenStax「Pain Assessment」も、痛みの評価では患者さんの訴えと観察情報を合わせて捉える考え方を説明しています。

つまり、NRSと表情・行動は同じ情報を測っているわけではありません。ずれがあるからといって、どちらかが間違いとは限らないのです。

NRSの1〜3を軽度、4〜6を中等度、7〜10を強い痛みとして扱うことはあります。ただし、その区分は施設や研究によって異なり、全国一律の鎮痛薬投与基準ではありません。ICU看護師が鎮痛薬使用を判断するNRSの基準値にも幅が報告されているため、数値だけで一律に判断せず、施設の基準や患者さんの状態と合わせて考えましょう。詳しくは、「ICU看護師の痛みに対する鎮痛薬使用の判断基準」を確認できます。

NRSと表情・行動がずれる場面

ずれがあるときは、「痛みの評価に失敗した」と考えるより、追加で確かめる手がかりが見つかったと捉えてみましょう。

観察された状況確認したいこと
NRSは高いが表情は穏やか痛みの部位・性質・経過、睡眠や活動への影響
NRSは低いが苦しそうに見える痛みの質問を理解できているか、呼吸状態や意識、痛み以外の苦痛
安静時は低いが体動時に高い起き上がり、咳、深呼吸、歩行など、どの動作で増えるか
NRSは変わらないが活動性が変わった離床、睡眠、食事、セルフケアなどへの影響
NRSが下がったが眠気などがある鎮痛薬の副作用の可能性や、意識・呼吸状態

痛みの強さと、生活への支障は必ずしも一致しません。強い痛みがあっても活動を続ける人がいる一方、比較的低いNRSでも睡眠や移動に困る人がいます。ですから、数字だけでなく「何ができなくなっているか」も聞いてみてください。

まず患者さんの言葉を受け止める

患者さんが痛みを訴えているときは、表情が穏やかでも、その訴えを否定しないことが出発点です。「そんなに痛そうには見えません」と伝えると、患者さんが次の訴えを控えてしまうことも考えられます。

たとえば、次のように尋ねると、痛みの様子を具体的に確認しやすくなります。

  • 「今の痛みは、0から10でいうと何点ですか?」
  • 「安静にしているときと、動いたときで変わりますか?」
  • 「どんな痛みですか?いつから続いていますか?」
  • 「痛みで困っていることはありますか?」

NRSを聞いて終わりにせず、部位、性質、始まった時期、続き方、増悪・軽減する動作なども確認しましょう。突然始まった痛みや、これまでと違う痛み、急速に悪化する痛みがある場合は、数値にかかわらず状態を確認し、施設の手順に沿って報告してください。

表情や行動は「普段との違い」を見る

表情や行動は、一時点だけでなく、患者さんの普段の様子と比べてみましょう。いつもより動かない、体位を変えなくなった、会話が減った、ケアやリハビリを避けるようになったといった変化は、苦痛を言葉にしにくい患者さんの状態を知る手がかりになります。

ただし、苦悶様の表情や落ち着かなさがあっても、それだけで痛みと決めつけることはできません。呼吸困難、発熱、せん妄、尿閉や便秘、嘔気、不安など、ほかの原因も考えながら確認します。

NRSが低いのに苦しそうなときは、「痛みではない」と結論づけず、患者さんの苦痛全体を見直す機会にしましょう。

安静時と体動時を分けて評価する

安静時には痛みが軽くても、寝返りや歩行、咳、深呼吸で強くなることがあります。痛みが出る場面を分けて聞くと、生活や治療への影響を捉えやすくなります。

たとえば、安静時NRSが2でも、歩行時には8になる場合があります。その場合は、数値だけでなく、離床やリハビリへの影響も含めてチームで共有しましょう。反対に、NRSが高くても睡眠や食事、移動が保たれている場合は、患者さんがどの程度の痛みを許容できると考えているかを尋ねる視点も大切です。

NRSで評価しにくい場合は、方法を見直す

認知機能の低下、せん妄、意識レベルの低下、発語の難しさなどがあると、NRSを理解したり、数字で答えたりすることが難しい場合があります。そのときは、無理にNRSを使わず、患者さんの状態に合った行動観察尺度を検討します。

表情、発声、体動、筋緊張などを観察し、普段との違いやケア・体位変換との関係、介入後の変化を合わせて見ていきましょう。行動からの評価は、患者さんが痛みを感じている可能性を捉える方法です。自己申告と同じ情報ではないため、患者さんが答えられる状態になったら、あらためて本人の訴えを確認してください。

記録では「数値と根拠」を一緒に残す

「痛みは強くなさそう。NRS3」とだけ記録すると、患者さんの訴えと看護師の観察が混ざり、判断の根拠が伝わりにくくなります。

患者さんの言葉、安静時・体動時のNRS、表情や動作、生活への影響、介入後の変化を分けて記録してみましょう。

記録例

安静時NRS3、体動時NRS7。患者は「寝返りのときに右側がズキッとする」と話す。体位変換時に顔をしかめ、患部をかばう。鎮痛薬使用後、安静時NRS2、体動時NRS4。自力で寝返りが可能となった。

このように書くと、数値の変化だけでなく、介入によって何ができるようになったのかも伝わります。投与後は、痛みの数値や動作の変化に加え、眠気や呼吸抑制、悪心など副作用がないかも確認してください。薬剤の使用や報告は、施設の基準・指示に従いましょう。

実践ポイント

看護学生が実習で評価・記録するときは、次の点を意識してみましょう。

  • NRSの数値を記録するだけで終わらない
  • 「いつ」「どの動作で」「どのような痛みか」を確認する
  • 患者さんの言葉をできるだけそのまま記録する
  • 表情・姿勢・体動・睡眠・食事・離床を観察する
  • NRSと観察所見が一致しない場合、その不一致自体を記録する
  • 「痛みが強い/弱い」と断定せず、根拠となる所見を書く
  • 疼痛以外の原因や急変の可能性を考える
  • 介入後は再評価し、結果を報告する

場面をイメージしてみましょう

体験談としての実際の経験を確認できる情報がないため、ここでは臨床場面の例として考えてみます。

体位変換の前に、患者さんが「痛みは2くらい」と答えました。表情も穏やかだったので、学生は「痛みは軽そう」と考えます。ところが、寝返りを始めると患者さんは顔をしかめ、患部をかばいました。

このとき、学生が「さっき2と言っていましたよね」と伝えると、患者さんは動作のときに痛みが強くなると話しました。安静時と体動時を分けて聞き、表情や動作の変化も記録したところ、痛みがどの場面で生活に影響しているかを共有しやすくなりました。

この場面から考えたいのは、最初のNRSが間違いだったわけではない、ということです。安静時と体動時では状況が違います。数値と観察所見のずれに気づいたら、患者さんの言葉を確かめる入口にしてみましょう。

まとめ

NRSと表情・行動が一致しないときは、どちらかを誤りと決めつけず、患者さんの訴えと観察所見を合わせて評価します。

  • 意思表示ができる患者さんでは、自己申告を中心に捉える
  • 安静時と体動時、痛みの性質、生活への影響を確認する
  • 表情や行動の変化は、普段の状態と比べて見る
  • 痛み以外の苦痛や急な状態変化も考える
  • 介入後は数値だけでなく、動作や副作用も再評価する

NRSの数字だけでは、患者さんの痛みや生活への影響をすべて捉えられません。数値と患者さんの言葉、目の前の変化を一緒に見ていきましょう。

FAQ

NRSが高いのに表情が穏やかな場合、痛みは軽いと考えてよいですか?

表情だけで痛みを軽いと判断しないでください。患者さんの訴えを受け止め、痛みの部位や性質、体動時の変化、生活への影響を確認しましょう。

NRSが低く、苦しそうな表情がある場合はどうすればよいですか?

痛みの質問が理解できているかを確かめたうえで、呼吸状態や意識、痛み以外の苦痛も確認します。急な変化があれば、施設の手順に沿って報告してください。

NRSが4以上なら、必ず鎮痛薬を使うのですか?

一律には決められません。NRSの区分や鎮痛薬使用の判断基準には施設・研究による違いがあります。患者さんの状態や施設の基準、指示を確認してください。

NRSの記録で、数値以外に何を書けばよいですか?

患者さんの言葉、安静時・体動時の違い、表情や動作、生活への影響、実施した介入とその後の変化を記録すると、状態が伝わりやすくなります。

参考文献

  • マルホ株式会社「疼痛の検査・診断」マルホ 医療関係者向けサイト
  • OpenStax, “7.2 Pain Assessment,” Medical-Surgical Nursing, 2024年更新. OpenStax
  • 「ICU看護師の痛みに対する鎮痛薬使用の判断基準」, 2025年掲載情報. J-STAGE

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