嘔吐した患者の口腔内を観察する理由は?看護で確認したいポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、患者さんが嘔吐したあと、口腔内をどこまで観察すればよいのか迷ったことはありませんか?
吐物を拭き取って口の中をきれいにするだけでよいのか、それとも呼吸や意識状態まで確認する必要があるのか、悩みますよね。今回は、嘔吐後に口腔内を観察する目的と、看護で確認したいポイントを解説します。
結論
嘔吐後の口腔内観察は、口の中をきれいにするためだけではありません。口腔内に残った吐物が呼吸を妨げていないか、気道へ入る危険がないかを確認し、必要な対応につなげることが大切です。
観察を始める前に、まず患者さんの意識と呼吸状態を確認し、安全な姿勢を整えます。呼吸が苦しそう、意識が急に低下している、吐物で気道が塞がれている疑いがあるなどの場合は、口の中を詳しく見ることよりも応援要請や緊急対応を優先します。
口腔内では、吐物の残留だけでなく、血液や異物、粘膜の傷、乾燥なども確認します。ただし、口腔内の所見だけで嘔吐の原因を決めることはできません。吐物の性状や腹部症状、バイタルサイン、嘔吐後の呼吸状態などと合わせて評価します。
この記事でわかること
- 嘔吐後に口腔内を観察する理由
- 口腔内で確認したい所見
- 観察の前に優先すること
- 看護師・看護学生が報告や記録で整理したい情報
読了時間の目安:約6分
根拠:口腔内に吐物が残ると、気道を妨げることがある
嘔吐後、吐物が口腔内や咽頭に残ることがあります。意識や嚥下機能、咳をする力が低下している患者さんは、残った吐物を自力で排出しにくく、気道へ流入する危険があります。
嘔吐後の体位や口腔内の確認については、日本バイオフィードバック学会誌掲載資料(PDF)や、嘔吐時の対応に関する解説でも取り上げられています。これらは公的ガイドラインとして示されたものではないため、実際の対応では施設の急変時対応や吸引などの手順を優先してください。
また、口腔内に吐物が見えなくても、嘔吐後に咳が続く、声が湿ったように聞こえる、呼吸状態が悪化するなどの変化があれば、誤嚥を含めて評価する必要があります。咳がないことだけで、誤嚥していないとは判断できません。
詳しい解説:嘔吐後、口腔内では何を観察する?
吐物が残っていないか
口腔内や見える範囲に吐物が残っていないかを確認します。患者さんが自分で吐物を吐き出せる状態かどうかも、意識や咳の様子と合わせて考えます。
吐物が残っている場合は、患者さんの状態と施設の手順に従って除去します。意識障害や呼吸状態の悪化がある場合、ひとりで対応を続けず応援を要請します。
血液や異物、粘膜の傷がないか
舌や歯肉、頬の内側などに出血や傷がないか、義歯のずれや破損がないかを確認します。吐物に血液が混じっている場合は、口腔内の傷からの出血なのか、吐物に含まれる血液なのかを見極める必要があります。
鮮血や黒褐色の内容物がある場合は、色だけで原因を決めず、量や回数、顔色、意識状態、血圧や脈拍なども合わせて確認し、速やかに報告します。
吐物の性状
安全に確認できる範囲で、次のような情報を記録します。
- 嘔吐した時刻、回数、量
- 色や臭い
- 食物残渣や血液などの混入
- 嘔吐と食事との関係
吐物は感染性病原体を含む可能性があるため、処理時は施設の感染対策手順に従い、適切な個人防護具を使用します。吐物処理時の感染対策については、嘔吐物の取り扱いに関する解説も参考になります。
吐物の色や臭いは原因を考える手がかりにはなりますが、それだけで病気を確定することはできません。腹痛や腹部膨満、排便・排ガスの状況、既往歴などと合わせて判断します。
口腔内の乾燥や不快感
嘔吐後は、口の中の乾燥や酸味、粘つき、痛みなどがないかも確認します。口腔ケアや飲水は患者さんの苦痛をやわらげることがありますが、意識状態や嚥下状態によっては誤嚥の危険があります。
そのため、嘔吐直後に飲水やうがいを勧めるのではなく、患者さんが安全に飲み込める状態かを確認してから方法を選びます。嘔吐後の口腔ケアについては、口腔ケアに関する解説も参考になります。
実践ポイント:観察より先に、呼吸と意識を確認する
嘔吐後の観察では、口の中だけに目を向けないことが大切です。まず患者さんの安全を確保し、意識や呼吸に問題がないかを確認します。
呼吸がない、明らかに苦しそう、チアノーゼがある、意識が急に低下した、吐物で気道が塞がれている疑いがあるなどの場合は、口腔内を詳しく観察するよりも、施設の手順に沿った応援要請・緊急対応を優先します。
観察では、次のような変化も確認します。
- 呼びかけへの反応
- 咳の有無や強さ
- 呼吸音や声の変化
- 呼吸数、SpO₂などの変化
- 顔色やチアノーゼ
- 嘔吐後の意識状態の変化
口腔内に吐物が残っていない場合も、嘔吐後に呼吸状態が悪化しているなら、口の中だけで判断せず、速やかに報告・相談します。
看護で報告・記録したいこと
報告するときは、「嘔吐しました」だけでなく、嘔吐前後の状態が伝わるように整理します。
- 嘔吐した時刻、回数、量
- 吐物の色や性状、混入物
- 嘔吐時と嘔吐後の意識状態
- 咳や呼吸状態の変化、SpO₂などの変化
- 腹痛、腹部膨満、発熱などの症状
- 口腔内の吐物残留、出血、粘膜損傷
- 実施した対応と、その後の患者さんの変化
血圧や脈拍、呼吸数、SpO₂などは、ひとつの値だけで判断せず、患者さんの普段の状態や嘔吐前後の変化と合わせて伝えます。
看護学生は「なぜ観察するのか」を考える
実習では、口腔内の観察を「吐物が残っているか確認するため」とだけ捉えず、患者さんの状態から理由を考えてみましょう。
たとえば、次のような問いが役立ちます。
- 意識や嚥下、咳をする力は保たれているか
- 吐物を自力で排出できる状態か
- 嘔吐後に呼吸や声、咳に変化がないか
- 口腔内に血液や異物、傷がないか
- 口腔ケアや飲水を安全に行える状態か
- ひとりで対応せず、報告や応援要請が必要な状況ではないか
観察の目的を意識すると、見つけた所見を次の対応や報告につなげやすくなります。
筆者の体験談:嘔吐後の声の変化に気づいた場面
患者さんが嘔吐したあと、口の周りを拭いていると、呼びかけには反応するものの、声が少しかすれて聞こえる。そんな場面を考えてみます。
最初は、口の中に吐物が残っていないかを確かめればよいと思うかもしれません。でも、声の変化や咳が気になったら、「口腔内をきれいにすることだけでよいのだろうか」と考え直す必要があります。
この場面では、まず呼吸と意識を確認し、安全な姿勢を整えます。患者さんの状態に変化があれば、ひとりで観察や処置を続けず、応援を要請して施設の手順に沿って対応します。
これは特定の実体験ではなく、観察の優先順位を考えるための場面例です。口腔内の所見だけで判断せず、患者さんの呼吸や意識の変化にも目を向けることをイメージしてみてください。
まとめ
嘔吐後の口腔内観察は、口の中を清潔にするだけでなく、吐物による気道閉塞や誤嚥の危険、出血や粘膜損傷などを確認するために行います。
ポイントは、口腔内を観察する前に意識と呼吸を確認し、安全な姿勢を整えることです。呼吸や意識に異常があれば、観察を続けるより応援要請や緊急対応を優先します。
口腔内の所見だけで嘔吐の原因や誤嚥の有無を決めず、吐物の性状、嘔吐後の呼吸状態、腹部症状、バイタルサインなどと合わせて評価しましょう。
FAQ
嘔吐後、口腔内に吐物が見えなければ誤嚥していないと考えてよいですか?
いいえ。口腔内に吐物が見えなくても、嘔吐後に咳が続く、声が湿ったように聞こえる、呼吸状態が悪化するなどの変化があれば、誤嚥を含めて評価し、報告・相談します。
嘔吐直後にうがいや飲水を勧めてもよいですか?
意識や嚥下の状態によっては、誤嚥の危険があります。すぐに勧めるのではなく、患者さんが安全に飲み込める状態かを確認し、施設の手順に沿って対応します。
吐物の色だけで原因を判断できますか?
色は原因を考える手がかりになりますが、それだけでは確定できません。量や回数、腹部症状、意識状態、バイタルサインなどと合わせて確認し、必要時は報告します。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
嘔吐後の観察で必要なフィジカルアセスメント(呼吸・意識・口腔所見の観察方法と根拠)を実習で使える形で学べるため、この記事の読者が観察力を高めるのに最適です。
気づいて動ける急変対応
著者:木澤晃代
出版社:照林社
嘔吐による気道閉塞や急変が疑われる場面での『気づき』と対応優先順位を学べるため、緊急時の判断力向上に役立ちます。
教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
呼吸評価やSpO2、酸素療法など呼吸管理の基礎をわかりやすく解説しており、誤嚥や呼吸悪化の評価につなげやすいです。
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