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ナースコール増加はせん妄か?看護の観察ポイント

症状別看護
この記事は約10分で読めます。

ナースコールが増えたらせん妄?単独で判断してはいけない理由と看護の観察ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、患者さんのナースコールが急に増えたとき、「せん妄かもしれない」と考えたことはありませんか?

夜間に何度も呼ばれる、同じ内容を繰り返し訴える、落ち着かずにベッドから起きようとする。こうした変化があると、せん妄を疑うことがあります。

一方で、ナースコールが増えていないからといって、せん妄を否定できるわけではありません。静かにぼんやりしている患者さんにも、せん妄が起こっている可能性があります。

今回は、ナースコールの増加とせん妄の関係、見逃しやすいせん妄の特徴、看護師・看護学生が観察したいポイントを解説します。

  1. 結論:ナースコールの増加は「気づくきっかけ」であり、せん妄の診断には使えない
  2. 目安の読了時間
  3. この記事でわかること
  4. 根拠:せん妄は症状の出方が一つではない
    1. せん妄は入院患者の20~30%に関連する
    2. せん妄には活動亢進型だけでなく、活動低下型もある
    3. 看護師の観察だけでは、せん妄を見逃すことがある
  5. 詳しい解説:ナースコールが増える理由は、せん妄だけではない
  6. せん妄を疑うときに確認したい観察項目
    1. 1.いつもと比べて、意識や反応に変化があるか
    2. 2.注意を向け続けられるか
    3. 3.見当識に変化があるか
    4. 4.睡眠と覚醒のリズムが乱れていないか
    5. 5.行動が変化していないか
  7. せん妄の背景にある要因も確認する
  8. 定期的なスクリーニングで見逃しを減らす
  9. 実践ポイント:看護師・看護学生が実践するときのポイント
    1. ナースコールの増加は「警報」として受け止める
    2. 「増えた」だけでなく「減った」変化にも気づく
    3. 変化を具体的に記録する
    4. 身体状態と治療内容をセットで確認する
    5. 認知症とせん妄を同じものとして扱わない
  10. あるある体験談:ナースコールが減った患者さんにも変化があったケース
  11. まとめ
  12. FAQ
    1. Q1.ナースコールが増えたら、せん妄と考えてよいですか?
    2. Q2.ナースコールを押さない患者さんは、せん妄ではないですか?
    3. Q3.せん妄は夜間にだけ起こりますか?
    4. Q4.せん妄の評価は、看護師の観察だけで十分ですか?

結論:ナースコールの増加は「気づくきっかけ」であり、せん妄の診断には使えない

結論からいうと、ナースコールの増加は、せん妄を疑うきっかけの一つにはなります。しかし、それだけでせん妄と判断してはいけません。

せん妄を考えるときは、ナースコールの回数だけでなく、次の変化をまとめて確認します。

  • 急に起こった認知機能の変化
  • 注意が続かない、話を理解しにくいなどの注意障害
  • 時間や場所、人が分からないなどの見当識障害
  • 会話がかみ合わない、話の一貫性がない
  • 昼夜逆転などの睡眠覚醒リズムの乱れ
  • 落ち着きのなさ、興奮、幻覚などの行動変化
  • 反応が遅い、眠気が強い、ぼんやりしているなどの反応低下
  • 症状が時間帯によって変化すること

つまり、ナースコールが増えたら、

「せん妄かもしれない」と気づく
→ いつもと違う認知・注意・行動の変化を確認する
→ 身体状態や薬剤などの背景を評価する
→ 必要に応じて評価スケールを使い、多職種へ共有する

という流れで考えることが大切です。

目安の読了時間

この記事の読了時間の目安は、約10分です。

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • ナースコールの増加だけで、せん妄と判断できない理由
  • 活動亢進型・活動低下型・混合型の違い
  • せん妄で観察したい認知・注意・睡眠・行動の変化
  • せん妄の背景にある身体的・環境的な要因
  • 看護師・看護学生が実践したい観察と報告のポイント

根拠:せん妄は症状の出方が一つではない

せん妄は入院患者の20~30%に関連する

せん妄は、入院患者の20~30%に関連するとされる重要な入院合併症です。特に高齢患者では、入院中に注意して観察したい状態の一つです。

せん妄の特徴は、単に「落ち着きがない」「大声を出す」といった行動だけではありません。

急に認知機能が変化し、注意がうまく向けられなくなったり、症状が時間帯によって変動したりします。

日本精神科病院協会の『せん妄ガイドライン2023』では、せん妄の頻度や診断・評価の考え方が整理されています。

せん妄には活動亢進型だけでなく、活動低下型もある

せん妄というと、次のような状態を思い浮かべる人が多いかもしれません。

  • 落ち着きがない
  • 大声で呼ぶ
  • ベッドから起き上がろうとする
  • 点滴やチューブを抜こうとする
  • 幻覚や妄想がある

これは、主に活動亢進型せん妄でみられるイメージです。

しかし、せん妄には、活動が低下するタイプもあります。これを活動低下型せん妄といいます。

活動低下型では、次のような様子がみられることがあります。

  • 眠っている時間が長い
  • 返答が遅い
  • 会話が少ない
  • ぼんやりしている
  • 周囲への反応が乏しい
  • ナースコールをほとんど押さない

この場合、患者さんが静かに過ごしているため、「問題なく眠れている」と受け取られることがあります。

しかし実際には、注意力や認知機能が低下している可能性があります。

活動亢進型と活動低下型が混ざる混合型せん妄もあります。時間帯によって、落ち着かない状態と反応が乏しい状態が入れ替わることもあります。

看護師の観察だけでは、せん妄を見逃すことがある

研究報告では、精神科医がせん妄と診断した症例の約半数が、看護師の評価では見落とされていました。

特に、活動低下型や混合型は見逃されやすいとされています。

これは、看護師の観察が不十分という単純な話ではありません。せん妄の症状は変動しやすく、観察した時間帯によって状態が違うことがあるからです。

また、患者さんが騒がしくない場合は、せん妄を疑うきっかけを持ちにくいこともあります。

そのため、ナースコールや大声などの目立つ行動だけに注目するのではなく、普段との違いを継続的に観察することが重要です。

参考:「入院がん患者に対するせん妄ケアプログラム施行による効果と課題」

詳しい解説:ナースコールが増える理由は、せん妄だけではない

ナースコールの増加は、せん妄のサインになることがあります。

しかし、ナースコールを押す理由は患者さんによってさまざまです。

例えば、次のような可能性があります。

  • 疼痛が強くなった
  • 排泄の援助が必要になった
  • 不安や孤独感がある
  • 説明を理解できず、何度も確認したい
  • 呼吸苦や体調不良がある
  • 環境の変化に戸惑っている
  • いつもより注意や理解力が低下している

つまり、ナースコールが増えたときに必要なのは、

「コールが多いから、せん妄だ」

と決めつけることではありません。

ナースコールが増えた背景に、どのような変化や苦痛があるのかを確認することです。

せん妄を疑うときに確認したい観察項目

1.いつもと比べて、意識や反応に変化があるか

まずは、患者さんの普段の状態と比べます。

  • 呼びかけへの反応が遅くなっていないか
  • 眠気が強くなっていないか
  • 会話が成立しにくくなっていないか
  • 反応が乏しくなっていないか
  • 反対に、落ち着きがなくなっていないか

ここで大切なのは、患者さんを一時点だけで判断しないことです。

せん妄は症状が変動するため、日中は会話ができていても、夜間に急に混乱することがあります。

2.注意を向け続けられるか

せん妄では、注意障害がみられます。

注意障害とは、簡単にいうと、話を聞いたり、課題に集中したりすることが難しくなる状態です。

例えば、

  • 話しかけてもすぐに別のことへ注意が移る
  • 質問に答え続けることが難しい
  • 説明を最後まで聞けない
  • 会話の途中で内容が変わる

といった変化がみられることがあります。

「返事があるから大丈夫」と考えるのではなく、会話の内容や注意の続き方も確認します。

3.見当識に変化があるか

見当識とは、時間・場所・人などを把握する力です。

次のような変化がないか観察します。

  • 今日の日付や時間帯が分からない
  • 今いる場所を取り違える
  • 入院していることを理解できない
  • 関わっている人を認識しにくい

ただし、高齢者では認知症などによって、もともと見当識が低下している場合もあります。

重要なのは、もともとの状態と比べて、急に変化していないかです。

4.睡眠と覚醒のリズムが乱れていないか

せん妄では、睡眠覚醒リズムが乱れることがあります。

  • 昼間に眠り続ける
  • 夜間に目が覚めている
  • 夜になると不安や混乱が強くなる
  • 日中と夜間で状態が大きく変わる

このような変化がある場合は、ナースコールの回数だけでなく、時間帯ごとの様子も記録します。

5.行動が変化していないか

活動亢進型では、行動の変化が目立つことがあります。

  • 何度もナースコールを押す
  • ベッドから離れようとする
  • 点滴やカテーテルを触る
  • 落ち着かず、体を動かし続ける
  • 幻覚や妄想を訴える

一方で、活動低下型では、行動が減ること自体が変化になります。

  • いつもより会話が少ない
  • 食事や水分摂取が進まない
  • 反応が鈍い
  • 自分から援助を求めなくなった

「何かをするようになった」だけでなく、「何もしなくなった」ことにも注意が必要です。

せん妄の背景にある要因も確認する

せん妄を疑った場合は、認知や行動だけでなく、身体状態や治療内容も確認します。

背景には、次のような要因が関係することがあります。

  • 感染
  • 脱水
  • 疼痛
  • 低酸素
  • 薬剤の影響
  • 睡眠障害
  • 環境の変化
  • 便秘
  • 尿閉

例えば、ナースコールが増えた患者さんが、「不安で何度も呼んでいる」ように見えても、実際には疼痛や尿閉、低酸素などの身体的な問題を抱えている可能性があります。

そのため、行動を問題行動として捉えるだけでは不十分です。

その行動の背景に、身体的な苦痛や認知機能の変化がないか

という視点で観察します。

定期的なスクリーニングで見逃しを減らす

せん妄は、症状が変化しやすく、短時間の観察だけでは判断しにくいことがあります。

国立長寿医療研究センターの『認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版』では、せん妄評価スケールによる定期的なモニタリングが示されています。

ナースコールが増えたときだけ評価するのではなく、施設の方針に沿って定期的に評価することが大切です。

スクリーニングツールは、せん妄を疑うための補助的な方法です。スコアだけで患者さんの状態をすべて判断するものではありません。

評価結果は、普段の状態や経過と合わせて確認します。

実践ポイント:看護師・看護学生が実践するときのポイント

ナースコールの増加は「警報」として受け止める

ナースコールが急に増えたときは、せん妄の可能性を考えるきっかけになります。

ただし、ナースコールの回数だけで判断するのではなく、

  • いつから増えたのか
  • どの時間帯に多いのか
  • どのような内容で呼んでいるのか
  • これまでと何が違うのか

を確認します。

「増えた」だけでなく「減った」変化にも気づく

活動低下型せん妄では、ナースコールが増えないことがあります。

そのため、次のような患者さんにも注意します。

  • いつもより静か
  • 返答が遅い
  • 眠っている時間が長い
  • 食事や会話への反応が少ない
  • 援助を求めなくなった

静かな患者さんほど、状態が安定しているとは限りません。

変化を具体的に記録する

「何となく変です」だけでは、チームで共有しにくくなります。

例えば、

  • 午前中は会話が成立していたが、夕方から質問への返答がかみ合わなくなった
  • 22時以降、同じ内容のナースコールが5回あった
  • 昼間は傾眠が強く、呼びかけへの反応が遅かった
  • 昨日まで自分でできていた食事が進まなくなった

というように、時間・発言・行動の変化を具体的に記録します。

身体状態と治療内容をセットで確認する

認知や行動の変化がみられた場合は、次の点も確認します。

  • 疼痛の有無
  • 水分摂取状況
  • 呼吸状態や低酸素の可能性
  • 発熱など感染を疑う変化
  • 排便や排尿の状況
  • 使用中の薬剤や変更の有無
  • 睡眠状況
  • 入院や病室変更などの環境変化

そのうえで、必要に応じてせん妄評価スケールを使用し、医師・薬剤師・他の看護師などへ共有します。

認知症とせん妄を同じものとして扱わない

認知症とせん妄は、どちらも認知機能の低下として現れることがあります。

しかし、せん妄では、急に発症したり、症状が時間帯によって変動したりする点が重要です。

認知症がある患者さんでも、急に注意力や意識状態が変化した場合は、せん妄が重なっている可能性があります。

「もともと認知症があるから」と変化を見過ごさないようにします。

あるある体験談:ナースコールが減った患者さんにも変化があったケース

ここでは、看護の現場で起こりやすい場面を架空の事例として紹介します。

ある高齢患者さんは、入院初日は不安が強く、夜間に何度もナースコールを押していました。その後、夜間のナースコールが減ったため、落ち着いて眠れているように見えました。

しかし、日中に訪室すると、呼びかけへの返答が遅く、食事もほとんど進んでいませんでした。前日まで会話が成立していた患者さんでしたが、その日はぼんやりして周囲への反応も乏しい状態でした。

ナースコールが減ったことだけを見れば、状態が改善したように受け取れます。けれども、実際には活動低下型せん妄の可能性を考え、睡眠状況、疼痛、水分摂取、排泄、呼吸状態、薬剤変更などを確認する必要がある場面でした。

このように、ナースコールが増えたときだけでなく、急に減ったときや、患者さんが静かになったときにも「いつもと違う変化」がないかを見ることが大切です。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • ナースコールの増加だけでは、せん妄と判断できない
  • ナースコールの増加は、せん妄に気づくための警報の一つ
  • せん妄には、活動亢進型・活動低下型・混合型がある
  • 活動低下型では、静かでぼんやりしているため見逃されやすい
  • 急な認知変化、注意障害、見当識障害、睡眠覚醒リズム、行動の変動を確認する
  • 疼痛、脱水、低酸素、感染、薬剤、便秘、尿閉、環境変化なども確認する
  • 必要に応じてせん妄評価スケールを使い、多職種で共有する

せん妄を見逃さないためには、「何回ナースコールがあったか」だけを見るのではなく、患者さんのいつもと違う変化を、時間の経過とともに捉えることが大切です。

ナースコールが増えた患者さんだけでなく、静かになった患者さんにも目を向けてみましょう。

FAQ

Q1.ナースコールが増えたら、せん妄と考えてよいですか?

いいえ。ナースコールの増加は、せん妄のサインの一つになり得ますが、単独では判断できません。

疼痛、不安、排泄の問題、呼吸苦など、ほかの原因も確認しながら、急な認知変化や注意障害、行動の変化を評価します。

Q2.ナースコールを押さない患者さんは、せん妄ではないですか?

いいえ。活動低下型せん妄では、患者さんが静かで、ナースコールをあまり押さないことがあります。

返答が遅い、眠気が強い、ぼんやりしている、会話が少ないなどの変化にも注意が必要です。

Q3.せん妄は夜間にだけ起こりますか?

せん妄は夜間に目立つことがありますが、夜間だけに起こるとは限りません。

せん妄は症状が変動するため、日中と夜間で状態が変わることがあります。時間帯ごとの様子を確認することが重要です。

Q4.せん妄の評価は、看護師の観察だけで十分ですか?

看護師の観察は重要ですが、せん妄は見逃されることがあります。

普段の状態との比較に加えて、施設で使用しているせん妄評価スケールを活用し、必要に応じて医師・薬剤師・多職種へ共有します。

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