発熱時の悪寒はなぜ起こる?看護師・看護学生が知っておきたい体温調節のしくみ
こんにちは、ユウです。
みなさんは、発熱している患者さんが「寒い」「震えが止まらない」と訴えたとき、疑問に思ったことはありませんか?
体温が高いのに寒がっていると、「体が冷えているのかな」「布団をもっとかけたほうがよいのかな」と考えることもありますよね。
今回は、発熱時に悪寒や震えが起こる理由と、看護師・看護学生が観察したいポイントについて、できるだけ分かりやすく解説します。
結論:発熱時の悪寒は、体が新しい目標体温まで上げようとする反応
発熱時の悪寒は、単純に「体が冷えているから」起こるわけではありません。
体温調節中枢が設定する目標体温、つまりセットポイントが上がることで、体は現在の体温を「まだ低い」と判断します。
その結果、次のような反応が起こります。
- 皮膚の血管を縮めて熱を逃がさない
- 骨格筋をふるわせて熱をつくる
- 寒さを感じて、さらに体を温めようとする
これが、看護でいう悪寒・戦慄です。
ざっくり言うと、悪寒は「体が冷えているサイン」というより、発熱の上昇期に、体が設定された体温へ近づこうとしているサインと考えると分かりやすいです。
ただし、悪寒そのものに「何度以上なら起こる」といった定量的な基準は、今回確認できた資料では示されていません。体温だけで判断せず、悪寒が出たタイミングや震えの程度、感染や炎症を疑う症状を合わせて観察します。
この記事の読了時間の目安
読了時間の目安:約8分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 発熱時に悪寒が起こる理由
- セットポイントが上がるとはどういうことか
- 悪寒・戦慄と体温上昇の関係
- 看護師・看護学生が観察したいポイント
- 患者さんへ説明するときの考え方
- 悪寒の判断に関する注意点
根拠:体温の「目標値」が上がると、体は現在の体温を低いと判断する
通常、体温は体温調節中枢によって一定の範囲に保たれています。
ところが、感染や炎症などをきっかけに、体温調節中枢が設定する目標体温が上がることがあります。
たとえば、体温調節中枢が目標体温を高く設定したとします。
このとき、実際の体温がまだその目標に届いていなければ、体は次のように反応します。
「今の体温では低い。もっと体温を上げなければならない」
そこで、皮膚の血管を縮めて熱が外へ逃げるのを抑えます。
さらに、骨格筋を小刻みに収縮させます。これが、患者さんから見た「震え」です。筋肉が動くことで熱がつくられ、体温を上げようとします。
看護roo!の「熱が急激に上がるとき、悪寒・戦慄が起こるのはなぜ?」でも、発熱時の悪寒は、設定された体温に到達するまでの皮膚血管収縮やふるえとして説明されています。
また、看護roo!の発熱に関するQ&Aでは、悪寒は全身がぞくぞくするような寒気で、しばしば震えを伴うものと説明されています。
つまり、発熱の初期には、体温がまだ高くなりきっていない段階で悪寒が出ることがあります。
詳しい解説
悪寒が起こる流れを図にすると
発熱時の悪寒は、次のような流れで起こります。
感染・炎症など ↓ 体温調節中枢のセットポイントが上がる ↓ 現在の体温が「目標より低い」と判断される ↓ 皮膚血管収縮・骨格筋のふるえ ↓ 寒さを感じる、震える ↓ 体温が上昇する
ここで大切なのは、体温が上がっている途中だから寒く感じるという点です。
体温計で測るとすでに発熱しているのに、患者さんは「寒い」と訴えることがあります。一見すると矛盾しているように感じますが、体温そのものではなく、設定された目標体温との差によって寒さを感じていると考えると理解しやすくなります。
PGE2も発熱と悪寒に関係する
感染や炎症が起こると、体内ではさまざまな物質が働きます。その一つが、プロスタグランジンE2(PGE2)です。
PGE2は発熱反応に関係し、脳内の体温調節や寒冷感覚の伝達に影響します。
2026年に科学技術振興機構(JST)が発表した研究成果では、PGE2が脳内の神経回路を介して、寒さや冷たさに関する情報の伝達を強め、悪寒につながるしくみが示されています。
具体的には、PGE2が外側腕傍核にあるEP3受容体発現神経細胞を介して、扁桃体中心核へ寒さ・冷たさの情報を伝えることが説明されています。
ただし、このJSTの発表は、悪寒が起こる神経メカニズムを示したものです。
「体温が何度になったら悪寒が起こるのか」「どの程度の震えなら異常なのか」といった、臨床で使う診断基準や処置基準を示したものではありません。
悪寒・戦慄と発熱の上昇期
悪寒は、発熱の上昇期に出現しやすい反応です。
観察するときは、単に「寒いと言っているか」だけでなく、次のような経過を確認します。
- 悪寒はいつから始まったのか
- 悪寒が出る前の体温はどうだったか
- 震えを伴っているか
- 震えは全身性か、部分的か
- その後、体温が上がっているか
- 発熱以外に感染や炎症を疑う変化があるか
悪寒が出たあとに体温が上がっていく場合は、体温調節中枢のセットポイント上昇による反応として考えやすくなります。
一方で、悪寒の有無だけで感染症などを確定することはできません。
悪寒を伴う発熱では、感染症や炎症性疾患などの背景をまず確認することが実務上の基本とされています。また、薬剤反応などが関係する場合もあるため、患者さんの経過や治療内容を含めて考える必要があります。
「寒い」と訴える患者さんにどう対応するか
患者さんが「寒い」と訴えたとき、外気温や室温だけが原因とは限りません。
発熱の上昇期では、体温調節中枢のセットポイントが上がっている可能性があります。そのため、室温が適切でも、患者さんは強い寒さを感じることがあります。
看護では、まず患者さんの訴えを聞きながら、発熱の経過と全身状態を確認します。
特に震えが強い場合は、体温上昇が進んでいる可能性もあるため、バイタルサインを再確認し、患者さんの全身状態を観察します。
患者さんへの説明では、次のように伝えると理解してもらいやすいかもしれません。
「体が冷えているというより、体温を上げようとしているときに寒く感じたり、震えたりすることがあります。体温と体の状態を確認しますね」
ただし、具体的な保温方法や処置は、患者さんの状態、医師の指示、施設の手順を優先してください。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
1.悪寒が出た時間を記録する
悪寒の有無だけでなく、発熱のどの段階で出現したのかが重要です。
「体温が上がる前に悪寒があったのか」「発熱後に悪寒が出たのか」など、時間の経過を整理します。
2.震えの程度を観察する
患者さんが「寒い」と訴えていても、震えがない場合があります。
反対に、全身が大きく震えるような戦慄がみられることもあります。震えの強さや持続、患者さんの苦痛の程度を確認します。
3.体温だけで判断しない
悪寒があるからといって、体温の数値だけで重症度を決めることはできません。
悪寒のタイミング、発熱の経過、患者さんの意識や全身状態、感染や炎症を疑う変化などを合わせて観察します。
4.悪寒を「寒さ」とだけ捉えない
「寒い」と聞くと、掛け物を増やすことを最初に考えるかもしれません。
しかし、発熱時の悪寒では、患者さんの体内で体温を上げる反応が進んでいる可能性があります。
外気温による寒さなのか、発熱上昇期の悪寒なのかを考える視点が大切です。
5.異常を感じたら報告につなげる
悪寒を伴う発熱では、感染症や炎症性疾患、薬剤反応などの背景がないか確認します。
患者さんの状態に変化がある場合や、震えが強い場合は、バイタルサインと全身状態を再確認し、必要に応じて医師や先輩看護師へ報告します。
なお、悪寒そのものに一律の数値基準はありません。施設の基準や患者さんの状態に合わせて判断してください。
筆者の体験談:患者さんの「寒い」を室温のせいだと思っていた
私が看護師をしていた頃、発熱している患者さんから「寒い、布団をかけてほしい」と言われたことがありました。
そのときの私は、まず室温が低いのだと思いました。掛け物を調整すれば、少し楽になるだろうと考えたのです。
ところが、患者さんの手を確認すると、全身に力が入っていて、肩や腕が小刻みに震えていました。
私はその様子を見て、「本当に部屋が寒いだけなのだろうか」と少し迷いました。体温を測ると発熱していましたが、患者さんは「熱い」ではなく、ずっと「寒い」と話していました。
先輩看護師に相談すると、発熱の経過と悪寒が出た時間を確認し、全身状態をもう一度見てみようということになりました。
体温の変化を確認しながら、患者さんに寒さの感じ方や震えの程度を聞き、ほかに気になる症状がないかを確認しました。その後、必要な報告につなげました。
当時は、発熱しているのに寒がることを、どこか不思議に感じていました。
この経験があってから、患者さんの「寒い」という訴えを、室温や掛け物だけの問題として考えないようになりました。体温の数字だけでなく、その人の体が今どの段階にあるのかを見るきっかけになった出来事です。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、発熱時の悪寒を実際の看護場面と結び付けて考えるためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 発熱時の悪寒は、単に体が冷えているから起こるわけではない
- 体温調節中枢のセットポイントが上がり、現在の体温を低いと判断することで起こる
- 皮膚血管収縮は熱を逃がさない反応、骨格筋のふるえは熱をつくる反応
- 悪寒は、発熱の上昇期に出現することがある
- 悪寒の有無だけでなく、出現した時間、震えの程度、体温の経過、全身状態を観察する
- 悪寒そのものに一律の体温基準や診断閾値はない
- 悪寒を伴う発熱では、感染症や炎症性疾患、薬剤反応などの背景を確認する
ざっくり言うと、発熱時の悪寒は、体が新しく設定された目標体温へ近づこうとしている反応です。
患者さんが「寒い」と訴えたときは、外気温だけでなく、発熱の上昇期に起こる体温調節反応かもしれないという視点を持ってみましょう。
FAQ
Q1.発熱しているのに寒いのはなぜですか?
発熱時には、体温調節中枢が設定する目標体温が上がることがあります。
実際の体温がその目標に届くまでは、体が「まだ体温が低い」と判断するため、寒さを感じたり、震えたりします。
Q2.悪寒があれば感染症と考えてよいですか?
悪寒を伴う発熱では、感染症や炎症性疾患などの背景を確認することが実務上重要です。
ただし、悪寒だけで感染症と確定することはできません。発熱の経過や全身状態、ほかの症状などを合わせて判断します。
Q3.悪寒は何度以上の発熱で起こりますか?
今回確認できた資料では、悪寒が起こる体温の一律の基準は示されていません。
体温の数値だけでなく、発熱の上昇期に出ているか、震えを伴っているか、患者さんの全身状態に変化があるかを確認します。
Q4.悪寒がある患者さんには、すぐに厚く保温すればよいですか?
患者さんは寒さを感じているため、苦痛を軽減する配慮は必要です。
一方で、悪寒は発熱の上昇期に起こる反応でもあります。外気温だけで判断せず、体温の経過や全身状態を確認し、医師の指示や施設の手順に沿って対応します。
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
発熱・悪寒はバイタルサインの変動として捉える必要があり、体温の解釈や経時的観察の視点を深める点で本書は最も直接的に役立ちます。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
悪寒や震えの観察・身体診察の方法とその根拠を実習レベルで学べるため、患者の観察項目や判断力を高められます。
看護の現場ですぐに役立つ 症状別看護過程
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
症状別に看護過程を組み立てる実践的視点が得られ、悪寒・戦慄が出た際のアセスメントと看護計画作成に直結します。
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