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夜間にせん妄が起こりやすい理由と看護師・学生の観察ポイントと具体的対応

症状別看護
この記事は約10分で読めます。

夜間にせん妄が起こりやすいのはなぜ?看護師・看護学生が知っておきたい原因と観察ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、日中は落ち着いていた患者さんが、夜になると急に「ここはどこ?」「帰らないと」と話し始めたり、点滴を抜こうとしたりする場面に出会ったことはありませんか?

夜間になると、なぜせん妄が起こりやすいのでしょうか。
「認知症が進んだのかな」「夜だから仕方がないのかな」と考えてしまうこともありますよね。

今回は、夜間にせん妄が目立ちやすい理由と、看護師・看護学生が確認したい原因や観察ポイントについて解説します。

  1. 結論:夜間せん妄は「夜だから起こる」のではなく、日中からの脆弱性に複数の要因が重なって目立ちやすくなる
  2. 想定読了時間
  3. この記事でわかること
  4. 根拠:せん妄は急性の脳機能障害で、原因検索が必要な状態
  5. 夜間にせん妄が目立ちやすい3つの理由
    1. 1.睡眠覚醒リズムが乱れやすい
    2. 2.暗さや静けさで、周囲の情報が少なくなる
    3. 3.夜間は不安が強まり、支援も少なくなりやすい
  6. 夜間に急に変化したら、まず何を確認する?
    1. 1.いつから、何が変わったのか
    2. 2.感染や発熱などの身体変化
    3. 3.脱水、低血糖、電解質異常など
    4. 4.疼痛、便秘、尿閉
    5. 5.薬剤の変更
  7. 看護師・看護学生が実践するときのポイント
    1. 「認知症」と「せん妄」を最初から同じものにしない
    2. 安全確保と原因検索を同時に進める
    3. 再定向づけを行う
    4. 夜間の環境を整える
  8. 観察した内容は「何がいつから変わったか」で記録する
  9. 筆者の体験談
  10. まとめ
    1. 参考資料
  11. FAQ
    1. Q1.夜間に騒がなければ、せん妄ではありませんか?
    2. Q2.夜間せん妄があれば、睡眠薬を使えばよいですか?
    3. Q3.認知症の患者さんに夜間せん妄が起こることはありますか?
    4. Q4.夜間せん妄の発症率や診断の数値基準はありますか?
  12. この記事の学習を深めるおすすめ書籍
  13. 実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
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結論:夜間せん妄は「夜だから起こる」のではなく、日中からの脆弱性に複数の要因が重なって目立ちやすくなる

夜間のせん妄は、単に「夜だから起こる」わけではありません。

もともとある身体的な弱さや病気に、次のような要因が重なることで、夜間に症状が表れたり、悪化したりしやすくなります。

  • 睡眠覚醒リズムの乱れ
  • 暗さや静けさによる感覚刺激の低下
  • 入院などによる環境変化
  • 感染、発熱、脱水、低酸素
  • 疼痛、便秘、尿閉
  • 低血糖や電解質異常
  • 薬剤の開始・増量
  • 日中の活動低下や睡眠不足
  • 夜間に不安が強くなること

そのため、夜間に急に様子が変わった患者さんを見たときは、「認知症の悪化」と決めつけず、急性の変化として原因を探すことが重要です。

まずは身体状態や薬剤、排泄などの原因を確認します。
同時に、転倒や点滴の抜去を防ぐための安全確保、安心できる声かけ、睡眠や環境の調整を行います。

夜間の言動だけを見て「夜だから仕方がない」と終わらせず、日中と比べて何が変わったのかを確認し、身体状態や薬剤などの原因を探ることが大切です。

想定読了時間

約10分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • せん妄の基本的な特徴
  • 夜間にせん妄が目立ちやすい理由
  • せん妄を起こす主な原因
  • 看護師・看護学生が確認したい観察ポイント
  • 夜間せん妄が起きたときの対応
  • 認知症の進行とせん妄を考えるときの視点

根拠:せん妄は急性の脳機能障害で、原因検索が必要な状態

せん妄は、一般に注意する力を中心とした意識や認知機能が、急に変化する状態です。

会話がかみ合わない、時間や場所が分からない、落ち着きがなくなるといった症状だけでなく、ぼんやりして反応が乏しくなることもあります。

大切なのは、せん妄が単独の病名というより、身体の異常や薬剤、環境変化などを背景に起こる症候群だということです。

MSDマニュアル プロフェッショナル版「せん妄」では、せん妄の誘因として、薬剤、感染症、脱水、低酸素、貧血、不動、低栄養、膀胱カテーテル、疼痛、睡眠不足、夜間の感覚刺激の減少、精神的ストレスなどが整理されています。

また、日本老年医学関連の学術誌掲載資料では、中枢神経疾患などの危険因子に、薬物や発熱などの発症促進因子が加わることで、せん妄が起こりやすくなると説明されています。

つまり、患者さんの脳がもともと変化に弱い状態にあり、そこへ感染や脱水、薬剤、睡眠不足などが加わると、せん妄として表れやすくなるということです。

夜間にせん妄が目立ちやすい3つの理由

1.睡眠覚醒リズムが乱れやすい

入院中は、日中にベッド上で過ごす時間が長くなったり、昼寝が増えたりすることがあります。

反対に、検査や処置、痛み、不安などで夜に十分眠れないこともあります。

このように昼夜のリズムが乱れると、夜間に覚醒して活動する、昼間に眠り続けるといった変化が起こりやすくなります。

睡眠不足は、せん妄の誘因の一つとして挙げられています。

ざっくり言うと、体内時計が乱れた状態に入院生活の刺激が加わり、夜間に意識や認知の変化が目立ちやすくなるということです。

2.暗さや静けさで、周囲の情報が少なくなる

夜になると、病室は暗くなり、スタッフや家族の出入りも少なくなります。

普段なら、時計や窓の外の明るさ、家族との会話などから「今は昼」「ここは自宅ではない」と判断できます。

しかし、夜間は周囲の情報が少なくなります。視力や聴力が低下している患者さんでは、さらに状況を把握しにくくなることがあります。

その結果、不安が強くなったり、場所や時間を誤って認識したりする場合があります。

ただし、夜間のせん妄を「暗いから起きる」と単純に考えるのは適切ではありません。暗さや感覚刺激の低下は、複数ある要因の一つです。

3.夜間は不安が強まり、支援も少なくなりやすい

夜間は、日中よりも周囲の人が少なくなります。

患者さんから見ると、「誰もいない」「何をしてよいか分からない」という不安を感じやすい時間帯です。

夜間のサポート低下による不安の増大が、症状の悪化に関係する可能性も指摘されています。

夕方から夜にかけて症状が目立ちやすい時間帯の偏りは、せん妄の日内変動とも関係します。高齢者の資料では、夕方から夜に症状が表れやすい状態について、「夕暮れ症候群」のような表現で説明されることもあります。

夜間に急に変化したら、まず何を確認する?

夜間に患者さんの様子が変わったときは、次のような順番で確認すると整理しやすくなります。

1.いつから、何が変わったのか

最初に確認したいのは、普段との違いです。

  • いつから落ち着かなくなったのか
  • 昼間はどのような様子だったのか
  • 会話の内容や反応は変化したか
  • 眠れていたか
  • 時間や場所の認識に変化があるか
  • 症状に波があるか

せん妄では、急な発症や日内変動、注意障害、意識や見当識の変化が重要な手がかりになります。

「夜になるといつも騒ぐ」という情報だけではなく、昨日と比べてどうか、日中と比べてどうかを見ていきます。

2.感染や発熱などの身体変化

感染症や発熱は、せん妄の発症を促す要因になります。

  • 発熱の有無
  • 呼吸状態や酸素化の変化
  • 咳や痰などの感染徴候
  • バイタルサインの変化
  • 食事や水分摂取量の変化

高齢者では、はっきりした症状がなくても、急な認知や意識の変化として身体の異常が表れることがあります。

「熱がないから大丈夫」と早く判断せず、普段との違いを確認します。

3.脱水、低血糖、電解質異常など

脱水や低血糖、電解質異常も、せん妄の原因として考えられます。

  • 飲水量や食事量
  • 嘔吐や下痢の有無
  • 尿量や尿の性状
  • 発汗の有無
  • 点滴の実施状況
  • 低血糖を起こす可能性のある治療や症状

これらは患者さんの状態や治療内容によって確認方法が異なります。必要な測定や検査については、施設の手順に沿って対応します。

4.疼痛、便秘、尿閉

患者さんが落ち着かないとき、「不安」や「認知機能の低下」だけでなく、苦痛が隠れていることがあります。

  • 痛みの部位や程度
  • 体位による苦痛
  • 最終排便日
  • 腹部膨満感
  • 排尿の有無
  • 尿意や下腹部の不快感
  • カテーテルの状態

言葉で痛みを訴えられない患者さんでは、表情や体動、発汗、声の変化なども含めて観察します。

5.薬剤の変更

薬剤は、せん妄の誘因になることがあります。

特に、次のような薬剤については、開始や増量、服用状況の変化がないか確認します。

  • 睡眠薬
  • 抗不安薬
  • 抗コリン作用をもつ薬剤
  • オピオイドなどの鎮痛薬

薬剤が原因だと考えても、看護師の判断だけで中止や変更をしてはいけません。処方内容や変更時期を確認し、必要に応じて医師や薬剤師へ相談します。

看護師・看護学生が実践するときのポイント

「認知症」と「せん妄」を最初から同じものにしない

認知症は、一般にゆっくり進行する認知機能の変化です。

一方、せん妄では、短時間で意識や注意、認知の状態が変化し、症状に波がみられることがあります。

もちろん、認知症のある患者さんにせん妄が起こることもあります。

そのため、「認知症があるから仕方がない」と考えるのではなく、急に変わった部分がないかを確認します。

安全確保と原因検索を同時に進める

夜間せん妄では、転倒、転落、点滴やチューブの抜去などにつながることがあります。

まずは患者さんのそばで危険を減らし、落ち着いた声で状況を伝えます。

そのうえで、次のような確認を進めます。

  • ベッド周囲の危険物や障害物
  • 立ち上がろうとしている理由
  • トイレや排泄の希望
  • 疼痛や不快感
  • 酸素チューブや点滴ルートの状態
  • バイタルサインや身体症状
  • 薬剤変更の有無

安全確保を急ぐ必要はありますが、原因を確認せずに過鎮静へ偏ることにも注意が必要です。

再定向づけを行う

再定向づけとは、患者さんが今いる場所や時間、状況を理解しやすくする関わりです。

例えば、次のような声かけがあります。

「ここは病院です」
「今は夜の10時です」
「治療のために入院しています」
「私は担当の看護師です」

強く否定したり、無理に納得させようとしたりすると、不安や興奮が強まることがあります。

患者さんの話をいったん受け止めながら、短く分かりやすく伝えることを意識します。

夜間の環境を整える

夜間は、暗すぎても周囲を認識しにくくなります。

患者さんの状態に合わせて、安心できる照明や見守りの方法を検討します。時計やカレンダー、眼鏡、補聴器など、状況の理解を助けるものが使える場合もあります。

また、不要な中断を減らし、睡眠を守ることも大切です。

一方で、昼夜逆転を防ぐためには、日中の活動や覚醒を保つ支援も必要になります。患者さんの病状や治療上の制限を踏まえて、チームで調整します。

観察した内容は「何がいつから変わったか」で記録する

せん妄の記録では、「夜間せん妄あり」とだけ書くよりも、具体的な変化を残すことが重要です。

例えば、

  • 21時頃から「家に帰る」と繰り返し発言
  • 日中は会話が成立していたが、夜間は質問への反応がずれる
  • 点滴ルートを触る行動がみられた
  • 排尿を確認した後、声かけで一時的に落ち着いた
  • 発熱や酸素化の変化はない
  • 昼寝が長く、夜間の入眠がみられていない

このように、時間、言動、身体症状、対応後の変化を記録すると、次の勤務者や医師・薬剤師と情報を共有しやすくなります。

筆者の体験談

私が看護師をしていた頃、日中は穏やかに過ごしていた患者さんが、夜勤帯になって急にベッドから降りようとしたことがありました。

その患者さんは「家に帰る」と話しながら、何度もナースステーションの方向へ歩こうとしていました。

最初、私は「夜になって不安が強くなったのかな」と考えました。転倒が心配だったので、まずそばにつき、ベッドへ戻るよう声をかけました。

しかし、何度声をかけても落ち着きません。よく見ると、表情がいつもより険しく、体を動かすたびに顔をしかめていました。

私は、単に帰宅したいのではなく、何か苦痛があるのかもしれないと思いました。そこで、痛みの場所を尋ね、排泄の状況やその日の食事・水分摂取、日中の睡眠について記録を確認しました。

先輩看護師にも相談すると、「夜だからという理由だけで終わらせず、今日の変化を見てみよう」と言われました。

その後、患者さんの訴えを聞きながら身体状態を再確認し、必要な報告と対応につなげました。すぐにすべてが解決したわけではありませんが、患者さんはしばらくするとベッド上で休めるようになりました。

当時の私は、夜間の落ち着かなさを「環境のせい」と考えかけていました。でも、少し気になった表情の変化をきっかけに見直すことができました。

この経験があってから、私は夜間の言動だけを見るのではなく、「日中と比べて何が変わったのか」を意識するようになりました。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 夜間せん妄は、夜そのものが原因ではない
  • 身体の脆弱性に、感染、脱水、疼痛、排泄異常、薬剤、睡眠不足などが重なって起こる
  • 暗さや静けさ、夜間の不安、支援の減少によって症状が目立ちやすい
  • 急な変化や日内変動があるときは、認知症の進行と決めつけない
  • まず原因検索を行いながら、安全確保と安心できる声かけを進める
  • 観察では「何が、いつから、どのように変わったか」を確認する

ざっくり言うと、夜間のせん妄を見たときに大切なのは、「夜だから仕方がない」と終わらせず、急な変化として原因を探すことです。

参考資料

FAQ

Q1.夜間に騒がなければ、せん妄ではありませんか?

いいえ。せん妄には、興奮して落ち着かなくなるタイプだけでなく、ぼんやりして反応が乏しくなるタイプもあります。

声かけへの反応が変わった、会話が成立しにくい、眠気が強いなどの変化にも注意します。

Q2.夜間せん妄があれば、睡眠薬を使えばよいですか?

睡眠薬を含め、薬剤はせん妄の誘因になる場合があります。

使用の必要性や薬剤の変更については、患者さんの状態を確認したうえで、医師や薬剤師と相談します。自己判断で中止・追加するものではありません。

Q3.認知症の患者さんに夜間せん妄が起こることはありますか?

あります。

認知症がある患者さんは、環境変化や身体不調などの影響を受けて、せん妄を起こすことがあります。

「認知症だからいつものこと」と考えず、普段との違いや急な変化を確認することが大切です。

Q4.夜間せん妄の発症率や診断の数値基準はありますか?

今回確認した資料では、夜間せん妄そのものの発症率や、夜間だけに限定した明確な診断数値基準は示されていませんでした。

実務では、急な発症、日内変動、注意障害、意識や見当識の変化、原因になりうる身体異常や薬剤変更の有無などを総合的に確認します。

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この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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