離床センサーだけでは転倒を防げない?看護師・看護学生が知っておきたい使い方と観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、離床センサーを付けた患者さんを見て、「これで転倒予防は大丈夫」と考えたことはありませんか?
センサーが鳴ればすぐに訪室できそうですが、実際には誤報や見逃しが起こることもあります。また、患者さんがなぜ立ち上がろうとしているのかを考えなければ、転倒の原因そのものには対応できません。
今回は、離床センサーを使うときの考え方と、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて解説します。
結論:離床センサーは「転倒を防ぐ装置」ではなく、早期対応のための補助ツール
離床センサーだけでは、転倒・転落を十分に防ぐことはできません。
センサーは、患者さんの離床を早く検知し、看護師が対応するためのきっかけとして使います。そのうえで、次のような個別の対策を組み合わせることが重要です。
- 排泄のタイミングや方法を確認する
- ベッド周囲やトイレまでの環境を整える
- 移乗や歩行時の介助方法を検討する
- ナースコールの使用方法を説明する
- 夜間の見守りやラウンドを調整する
- 薬剤、認知機能、筋力、せん妄などを確認する
- 必要に応じて多職種で対策を検討する
ざっくり言うと、離床センサーは「転倒を止めるもの」ではなく、患者さんが動き始めたことを知らせ、対応までの時間を短くするものです。
ただし、センサーの電源が入っていない、接続されていない、設置位置がずれているといった運用上の問題があると、検知そのものができません。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 離床センサーだけでは転倒予防が不十分な理由
- センサーの役割と限界
- 誤報や見逃しが起こる原因
- センサーを使用する患者さんのアセスメント
- 看護師・看護学生が確認したい実践ポイント
- 離床センサーを使った現場での体験
根拠:離床センサー単独では転倒を減らしにくい
離床センサーだけでは転倒を防ぎにくい理由は、大きく3つあります。
1.センサーには偽陽性と偽陰性がある
センサーが反応したけれど、患者さんは危険な離床をしていなかった。
これは「偽陽性」と呼ばれる状態です。
一方で、患者さんが動いたのにセンサーが反応しなかったり、反応する前にベッドから降りてしまったりすることもあります。これは「偽陰性」にあたります。
医療事故情報収集等事業では、離床センサーの電源入れ忘れや使用方法の誤りによって、患者さんの転倒・転落につながった事例が報告されています。
つまり、センサーは設置すれば必ず働くわけではありません。
2.転倒は複数の原因が重なって起こる
転倒・転落には、さまざまな要因が関係します。
- 排泄のための離床
- 睡眠薬や向精神薬などの薬剤
- 認知機能の低下
- 夜間せん妄
- 筋力やバランス能力の低下
- 点滴やドレーンなどのルート類
- ベッド周囲の物品や床の状態
- ナースコールを押せない、または押さない状況
センサーは患者さんの動きを検知できます。しかし、「なぜ動こうとしたのか」までは解決できません。
転倒の理由が排泄であれば、排泄介助やトイレまでの動線調整が必要です。眠れずに何度も起き上がる患者さんであれば、環境や夜間の関わり方を考える必要があります。
3.研究レビューでも、センサー単独の効果は限定的
転倒予防に関するレビューでは、ベッドや椅子に設置するセンサーによって、院内転倒を減らすことは難しいとされています。
センサーを含む複数の対策を組み合わせた場合でも、効果は限定的とされています。
これは、「センサーが役に立たない」という意味ではありません。
センサー単独で転倒を防ぐのではなく、患者さんの状態に合わせた看護介入へつなげることが大切だという意味です。
離床センサーの役割をざっくり理解する
離床センサーを設置すると、患者さんが起き上がったときやベッドから離れようとしたときに、ナースステーションなどへ通知されます。
この通知を受けて、看護師が訪室し、必要な介助や声かけを行います。
そのため、離床センサーの役割は次のように整理できます。
患者さんの離床を早く検知し、看護師の対応につなげること
ここで注意したいのは、アラームが鳴った時点で、すでに患者さんが危険な位置まで移動している可能性もあることです。
センサーの種類や設置位置によっては、起き上がりは検知できても、立ち上がりや歩き出しを検知できない場合があります。また、患者さんの動き方によっては、センサーが反応しにくいこともあります。
そのため、「アラームが鳴ってから行けば必ず間に合う」とは考えないようにします。
夜間の離床では、排泄の確認が重要
夜間に患者さんが離床する理由として、排泄は重要な要因です。
調査結果に含まれた研究報告では、夜間の離床理由の7割が排泄であったとされています。
この結果からも、センサーを設置するだけではなく、患者さんの排泄パターンを把握することが大切だと分かります。
たとえば、次のような点を確認します。
- 夜間に排泄のため起きることが多いか
- 尿意や便意を適切に伝えられるか
- トイレまで安全に移動できるか
- ポータブルトイレの使用が適しているか
- 尿器やおむつなど、別の方法を検討できるか
- 排泄介助が必要な時間帯はいつか
「夜間に何度もセンサーが鳴る患者さん」と考えるだけではなく、「なぜ、その時間に起き上がるのか」と考えることがポイントです。
センサーを使用するときに確認したいこと
1.誰に使用するのか
転倒リスクが高いという理由だけで、すべての患者さんに同じようにセンサーを使用するわけではありません。
次のような情報を含めて、患者さんごとに考えます。
- 認知機能や理解力
- 筋力や歩行状態
- 立ち上がりの安定性
- 夜間の行動
- 排泄パターン
- ナースコールを使用できるか
- これまでの転倒・転落歴
- 病棟の見守り体制
センサーを付ける目的が、「転倒リスクが高いから」だけでは不十分です。
「夜間のトイレ歩行を早く把握したい」「一人で立ち上がる可能性があるため、介助につなげたい」など、目的を具体的にします。
2.どのセンサーを使うのか
離床センサーには、ベッド上の体重移動を検知するタイプや、足元のマットを踏むことで検知するタイプなどがあります。
患者さんの動き方によって、適したセンサーは異なります。
たとえば、ゆっくり起き上がる患者さんと、急に立ち上がって歩き出す患者さんでは、必要な検知方法が異なる可能性があります。
施設の手順を確認し、患者さんの動きに合っているかを考えます。
3.正しく作動するか
設置後は、次の点を確認します。
- 電源が入っているか
- 本体と受信機が接続されているか
- センサーが正しい位置にあるか
- ルートやコードが患者さんの動きを妨げていないか
- 実際に動いたときにアラームが鳴るか
- ナースステーションで通知を確認できるか
設置しただけで確認を終わらせず、実際の動きを想定して作動確認を行います。
電源の入れ忘れや接続不良は、患者さんの安全に直接関わる問題です。
誤報が多いときは「患者さんが悪い」と考えない
離床センサーを使用していると、患者さんが寝返りをしただけで鳴ったり、ベッド上で体を動かしただけで鳴ったりすることがあります。
このような誤報が続くと、看護師がアラームに慣れてしまい、対応が遅れる可能性があります。これは「アラーム疲労」と呼ばれる問題です。
誤報が多いときは、次の点を見直します。
- センサーの種類が患者さんの動きに合っているか
- 設置位置がずれていないか
- 感度や設定が適切か
- 患者さんに必要な通知なのか
- アラーム後の対応方法が統一されているか
- 不要なセンサー使用になっていないか
ただし、誤報を減らすことだけを優先して、必要な検知まで弱めてはいけません。
「なぜ鳴ったのか」を確認しながら、患者さんの安全とスタッフの対応可能性の両方を考えます。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
センサーを付けた理由を記録・共有する
「転倒リスクあり」とだけ記録するのではなく、どのような場面を予防したいのかを共有します。
- 夜間に一人でトイレへ行こうとする
- ナースコールを押さずに立ち上がる
- ふらつきがある
- 点滴ルートを気にせず動く
- 認知機能の低下で危険を理解しにくい
目的が共有されていれば、アラームが鳴ったときの対応も考えやすくなります。
アラームが鳴ったら、まず患者さんの状態を確認する
アラーム音だけを止めるのではなく、患者さんがどこにいて、何をしようとしているのかを確認します。
- ベッド上か、ベッドサイドまで移動しているか
- 排泄希望があるか
- ふらつきや気分不良がないか
- ルート類が引っ張られていないか
- 転倒・転落していないか
「センサーが鳴った=すぐ寝かせる」と決めつけず、患者さんの目的や訴えを聞くことも大切です。
センサー以外の対策を組み合わせる
センサーの使用と同時に、次のような対策を検討します。
- 定時のラウンド
- 排泄介助
- ベッド周囲の整理
- 必要な物品を手の届く位置に置く
- 移乗時の介助
- 低床ベッドなど環境面の調整
- ナースコールの説明
- リハビリテーションや薬剤師などとの情報共有
ただし、具体的な方法は患者さんの状態や施設の基準によって異なります。独断で変更せず、施設の手順やチーム内の方針に沿って検討します。
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、夜になると何度も離床センサーが鳴る患者さんを受け持ったことがあります。
訪室すると、その患者さんはいつもベッドの端に座っていました。
「どうしましたか?」と声をかけると、「トイレに行きたい」と話されます。
最初の私は、「センサーが鳴ったら訪室して、トイレ介助をすればよい」と考えていました。ところが、少し時間が経つと、またセンサーが鳴ります。
そのたびに訪室しているうちに、私は「センサーが鳴る回数を減らせないかな」と思うようになりました。
でも、そこで少し迷いました。
アラームが鳴らないように設定を変えるのか。それとも、患者さんが動く前にこちらから訪室するのか。センサーを付けていることで、かえって患者さんが動きにくくなっていないか。いろいろな考えが浮かびました。
先輩看護師に相談すると、「何時ごろに起きているのか、毎回何をしたいのかを見てみよう」と言われました。
記録と実際の様子を確認すると、患者さんは夜間に排泄のため起き上がることが多く、その時間帯にはある程度の傾向がありました。そこで、センサーだけに任せるのではなく、起き上がりが多い時間帯の訪室や排泄介助について、チームで相談しました。
その後もセンサーが鳴ることはありましたが、私はアラームの回数だけを見るのではなく、「このアラームは何を知らせているのか」と考えるようになりました。
当時は、センサーを付けること自体が転倒予防だと思い込んでいたのだと思います。
この経験があってから、私はセンサーを設置するとき、その患者さんの行動の理由と、鳴った後にどのような対応へつなげるのかを意識するようになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 離床センサーだけでは、転倒・転落予防は成立しない
- センサーは、離床を早く検知して看護介入につなげる補助ツール
- 偽陽性、偽陰性、電源や接続の不備、設置ミスが起こり得る
- 転倒の背景にある排泄、薬剤、認知機能、筋力、環境などを確認する
- 夜間離床では、排泄パターンの把握と介助方法の検討が重要
- 誤報が多い場合は、設定・設置・使用目的・対応体制を見直す
- センサーと見守り、環境調整、排泄介助、多職種連携を組み合わせる
「センサーを付けたから安心」ではなく、センサーが鳴ったときに、患者さんの安全につながる対応ができる状態をつくることが大切です。
FAQ
Q1.離床センサーを付けていれば、夜間の見守りは減らしてもよいですか?
基本的には、センサーを付けたことだけを理由に、必要な見守りを減らすとは考えません。
センサーには、検知できない動きや作動不良があるためです。患者さんの状態、離床の目的、病棟の体制を含めて、見守り方法を検討します。
Q2.センサーが何度も鳴る場合は、使用を中止したほうがよいですか?
すぐに中止するのではなく、まず誤報なのか、実際に危険な離床なのかを確認します。
患者さんの動き方に合わない、誤報が多い、必要な場面で検知できないなどの場合は、センサーの種類や設置位置、使用目的をチームで見直します。
Q3.患者さんや家族には、どのように説明すればよいですか?
「転倒を完全に防ぐ装置」ではなく、「起き上がりを早く知り、安全に対応するための補助」と説明します。
センサーがあっても、患者さんの状態によっては転倒を防ぎきれないことがあるため、過大な期待を与えない説明が必要です。
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
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