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経腸栄養中の下痢の見分け方と看護師・学生の対応ポイント

症状別看護
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経腸栄養中の下痢はどうする?原因の見分け方と看護師・看護学生の対応ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、経腸栄養を行っている患者さんに下痢が続いたとき、「栄養剤を中止したほうがよいのか」「このまま続けても大丈夫なのか」と迷ったことはありませんか?

経腸栄養中の下痢は、栄養剤そのものが原因とは限りません。投与速度、栄養剤の組成、薬剤、感染、細菌汚染など、いくつもの原因が考えられます。

今回は、経腸栄養中に下痢が起こったときの原因の考え方と、看護師・看護学生が確認したいポイントについて解説します。


結論:下痢だけで経腸栄養を直ちに中止せず、まず原因と重症度を確認する

経腸栄養中に下痢が起こった場合は、「経腸栄養だから中止」とすぐに判断するのではなく、まず原因と患者さんの全身状態を確認するのが基本です。

確認したいのは、次のような点です。

  • 下痢の回数、量、性状
  • 発熱、腹痛、血便の有無
  • 脱水や循環不安定の有無
  • 経腸栄養の投与速度や投与方法
  • 栄養剤の種類、濃度、組成
  • 抗菌薬や下剤などの使用状況
  • 栄養剤や投与器具の衛生管理
  • 経腸栄養を開始・増量した時期との関係

下痢が軽度で全身状態が安定している場合は、投与速度を落とす、製剤を見直す、原因になりそうな薬剤を確認するなど、原因に応じた調整を行いながら継続を検討します。

一方で、脱水、循環不安定、強い腹痛、血便、発熱、急速な悪化、腹部膨満や嘔吐の進行がある場合は、感染性腸炎や虚血性腸炎なども含めた評価が必要です。施設の手順に沿って、医師や担当者へ速やかに報告します。

経腸栄養中の下痢では、栄養を続けるか止めるかだけに目を向けず、まず患者さんの状態と原因を整理することが大切です。

読了目安

約15分

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 経腸栄養中の下痢で考える主な原因
  • 栄養剤そのもの以外に確認したいこと
  • 経腸栄養を継続・調整・一時停止するときの考え方
  • 看護師・看護学生が観察するポイント
  • 抗菌薬関連下痢や細菌汚染を見逃さないための視点

根拠:経腸栄養中の下痢は原因を広く評価する

経腸栄養関連の下痢は、大きく次の3つの視点で整理できます。

  1. 吸収不良
  2. 高浸透圧
  3. 細菌汚染

日本静脈経腸栄養学会関連の学習資料では、経腸栄養中の下痢について、投与方法や栄養剤の性質だけでなく、薬剤、感染、腸管障害などを含めて考える必要があると説明されています。

参考:PEG栄養ケアに関する学習資料

また、薬剤師向けの解説でも、経腸栄養中の下痢は栄養剤だけでなく、投与速度、製剤の組成、薬剤、細菌汚染などを確認し、原因を切り分けることが重要とされています。

参考:日本薬剤師会「薬事情報センター」

つまり、下痢が起こったときに大切なのは、「栄養剤が悪い」と決めつけることではありません。

ざっくり言うと、栄養剤・投与方法・薬剤・感染・衛生管理を一つずつ確認するということです。

経腸栄養中の下痢で考える主な原因

1.投与速度が速すぎる

経腸栄養中の下痢では、投与速度が速すぎることが繰り返し指摘されています。

腸管が栄養剤を消化・吸収する速さを上回ってしまうと、腸管内に水分が残りやすくなり、下痢につながることがあります。

特に確認したいのは、次のような場面です。

  • 経腸栄養を開始した直後
  • 投与量を増やした直後
  • 持続投与から間歇投与やボーラス投与に変更した後
  • ポンプの設定や流量を変更した後

資料によっては、開始時に20~40mL/時から開始し、12時間ごとに20mL/時ずつ増量する例が示されています。ただし、これはあくまで運用例です。患者さんの病態や施設のプロトコルによって異なるため、数値を一律に適用してはいけません。

2.栄養剤の浸透圧や組成

栄養剤の浸透圧が高いと、腸管内へ水分が移動し、下痢につながることがあります。

また、次のような栄養剤の組成も関係する可能性があります。

  • 乳糖
  • 脂肪
  • 食物繊維
  • 難消化性糖質
  • タンパク質成分

栄養剤には、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤など、さまざまな種類があります。

「同じ経腸栄養」といっても中身は同じではありません。下痢が続くときは、栄養剤の種類や組成が患者さんの状態に合っているかを確認します。

3.薬剤の影響

経腸栄養中の下痢では、薬剤の確認も欠かせません。

原因になり得る薬剤として、次のようなものが挙げられています。

  • 抗菌薬
  • 下剤
  • マグネシウム製剤
  • プロキネティクス

特に抗菌薬を使用している場合は、抗菌薬関連下痢を考えます。なかでも、Clostridioides difficile(クロストリジオイデス・ディフィシル)関連腸炎は重要な鑑別です。

抗菌薬の開始後に下痢が出現した、発熱や腹痛を伴っている、便の性状が変化したという場合は、経腸栄養だけが原因とは考えず、感染の可能性も含めて報告・評価します。

4.栄養剤や器具の細菌汚染

栄養剤や投与器具の取り扱いに問題があると、細菌汚染が起こり、下痢の原因になる可能性があります。

確認するのは、次のような点です。

  • 栄養剤の開封後の管理
  • 投与容器やチューブの清潔状態
  • 調製時の衛生管理
  • 栄養剤の保管方法
  • ルートや器具の交換方法

下痢が複数回続いている場合や、同じ栄養剤を使用している患者さんに似た症状がある場合は、衛生管理の流れも見直します。

5.感染性腸炎や基礎疾患

経腸栄養中の下痢であっても、原因が腸管の病気や感染症である可能性があります。

発熱、強い腹痛、血便、腹部膨満、嘔吐、全身状態の悪化などがある場合は、単純な投与速度の問題とは考えにくいことがあります。

基礎疾患による腸管障害や消化吸収障害、虚血性腸炎なども含め、患者さん全体をみて評価することが必要です。

下痢が起こったときの観察ポイント

下痢の性状を確認する

「下痢あり」とだけ記録するのではなく、次の内容を具体的に確認します。

  • 何回起こったか
  • 1回あたりの量
  • 水様便か、泥状便か
  • 血液や粘液の有無
  • 色や臭いの変化
  • 発症した時間
  • 経腸栄養の開始・増量との時間的関係

とくに血便、急激な回数の増加、強い腹痛などは、重要な情報になります。

脱水や全身状態を確認する

下痢が続くと、体液や電解質が失われる可能性があります。

観察では、次のような変化を確認します。

  • 口腔内の乾燥
  • 尿量の変化
  • 倦怠感
  • 血圧や脈拍の変化
  • 意識状態の変化
  • 体重の変化

ただし、これらの所見だけで脱水の有無を断定するのではなく、患者さんの状態を総合して判断します。

投与条件を確認する

投与条件では、次の項目を確認します。

  • 投与速度
  • 1日の総投与量
  • 希釈の有無
  • 栄養剤の温度
  • 持続投与か間歇投与か
  • 開始直後か、増量後か
  • ポンプの設定が指示どおりか

「いつから下痢が始まったのか」と「投与条件がいつ変わったのか」を並べてみると、原因を考えやすくなります。

経腸栄養は継続する?中止する?

今回確認できた公開資料の範囲では、経腸栄養中の下痢について、「何回以上なら必ず中止する」といった日本の統一的な数値基準は確認できませんでした

そのため、下痢の回数だけで判断するのではなく、次の情報を組み合わせます。

  • 下痢の程度
  • 脱水の有無
  • 感染を疑う所見
  • 腹部所見
  • 薬剤歴
  • 投与速度や栄養剤の種類
  • 患者さんの基礎疾患
  • 全身状態の変化

下痢が軽度で、患者さんの全身状態が安定している場合は、投与速度を落とす、栄養剤を変更する、薬剤を確認する、衛生管理を見直すなどの対応を行いながら、継続を検討することがあります。

一方で、脱水や循環不安定、強い腹痛、血便、感染性腸炎や虚血性腸炎が疑われる場合は、投与の一時停止を含めた判断が必要です。

看護師が自己判断で長時間中止するのではなく、患者さんの状態を整理して、医師や栄養サポートチーム、施設の手順に沿って相談します。

看護師・看護学生が実践するときのポイント

下痢を発見したら、次の順番で整理すると考えやすくなります。

1.まず患者さんの危険サインを確認する

最初に、下痢の原因探しを始めるのではなく、患者さんが危険な状態ではないかを確認します。

  • 発熱はあるか
  • 強い腹痛はあるか
  • 血便はあるか
  • 腹部膨満や嘔吐は進行していないか
  • 脱水や循環不安定はないか
  • 全身状態が急に悪化していないか

2.経腸栄養との関係を確認する

次に、下痢の開始時期と経腸栄養の状況を照らし合わせます。

「栄養剤を始めてから下痢が出た」という事実だけでは、栄養剤が原因とは限りません。

開始直後なのか、増量直後なのか、投与速度を変更した後なのかを確認します。

3.薬剤を確認する

抗菌薬、下剤、マグネシウム製剤、プロキネティクスなどが処方されていないかを確認します。

薬剤が原因かもしれないと思っても、看護師の判断だけで中止するのではなく、処方内容と患者さんの状態を整理して報告します。

4.製剤と衛生管理を確認する

栄養剤の名前だけでなく、組成や投与方法を確認します。

また、調製、保管、開封後の管理、器具の取り扱いが手順どおりかも確認します。

5.報告では「下痢あり」で終わらせない

報告するときは、次のように具体的に伝えると状況が共有しやすくなります。

  • 下痢の回数と性状
  • 発症時刻
  • 発熱や腹痛の有無
  • 血便の有無
  • バイタルサインの変化
  • 尿量や脱水の所見
  • 経腸栄養の投与速度と総量
  • 栄養剤の種類
  • 抗菌薬や下剤の使用状況

「下痢があります」だけではなく、「いつから、どの程度で、ほかに何が起こっているのか」をまとめることがポイントです。

筆者の体験談

私が看護師をしていた頃、経腸栄養を行っている患者さんのもとへ訪室すると、ベッドサイドに排泄物の処理を終えたあとがありました。

患者さんから、「今日は何度もお腹がゆるい」と言われました。

最初、私は経腸栄養の量が多かったのではないかと考えました。ちょうど数日前に投与量が変更されていたためです。

「栄養剤が増えたから、腸がついていかないのかもしれない」

そう思いながら記録を確認しました。

ところが、下痢が始まった時間を見てみると、投与量を増やした直後ではありませんでした。さらに、その前日から抗菌薬が開始されていることにも気づきました。

私は少し迷いました。栄養剤の量を戻すべきなのか、それとも薬剤の影響を考えるべきなのか。下痢だけを見ていると、判断が一方向に偏りそうでした。

そこで、便の回数と性状、体温、腹部の訴え、尿量をもう一度確認し、先輩看護師に相談しました。先輩からは、「栄養剤の変更だけで決めずに、薬剤と感染の可能性も含めて報告しよう」と言われました。

その後、患者さんの状態と経過を医師へ報告し、栄養剤の投与条件と薬剤の見直しが行われました。

この経験があってから、私は経腸栄養中の下痢を見たときに、最初から「栄養剤が原因」と決めつけないようになりました。下痢という一つの症状の後ろに、いくつもの原因が隠れていることを、実感した場面でした。

この体験談は医学的根拠を示すものではなく、経腸栄養中の下痢を観察・報告するときの考え方を、看護場面と結び付けて理解するためのものです。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 経腸栄養中の下痢は、栄養剤そのものだけが原因とは限らない
  • 投与速度、栄養剤の組成、薬剤、感染、細菌汚染を確認する
  • 下痢だけで、経腸栄養を直ちに中止しない
  • 軽度で全身状態が安定していれば、原因に応じた調整と継続を検討する
  • 脱水、循環不安定、強い腹痛、血便、発熱、急速な悪化があれば、速やかな評価と報告が必要
  • 「下痢あり」だけでなく、回数・性状・発症時期・投与条件・薬剤歴を具体的に伝える

経腸栄養中の下痢では、栄養を続けるか止めるかだけに目を向けるのではなく、まず患者さんの状態と原因を整理することが大切です。

FAQ

Q1.経腸栄養を始めた後に下痢が出たら、すぐ中止しますか?

すぐに中止するとは限りません。

下痢の程度、脱水や感染徴候、腹部症状、投与速度、薬剤歴などを確認し、原因を評価します。全身状態が安定している場合は、投与方法や製剤を調整しながら継続を検討することがあります。

Q2.下痢が何回起きたら中止ですか?

今回確認できた公開資料の範囲では、経腸栄養中の下痢について、統一された回数の基準は確認できませんでした。

回数だけではなく、便の性状、脱水、発熱、腹痛、血便、循環状態などを総合して判断します。

Q3.抗菌薬を使っている患者さんの下痢で注意することは何ですか?

抗菌薬関連下痢を考えます。特に、発熱や腹痛を伴う場合や、抗菌薬開始後に下痢が出現した場合は、Clostridioides difficile関連腸炎を含めた感染の評価が必要です。

Q4.下痢があるとき、まず投与速度を下げればよいですか?

投与速度の見直しは原因への対応の一つですが、すべての患者さんに同じ対応をするわけではありません。

感染、薬剤、細菌汚染、腹部疾患などの可能性もあるため、患者さんの状態を確認し、施設の手順や医師の指示に沿って対応します。

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この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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