こんにちは、ユウ塾長です。けいれんが止まったあと、患者さんの意識が戻らないとき、「発作後だから眠っているのかな。それとも、すぐ報告したほうがいいのかな」と迷ったことはありませんか?回復にかかる時間には幅がありますが、眠っているように見えるからといって、発作後の状態と決めつけるのは心配ですよね。今回は、けいれん後の回復過程と、まず確認したい観察ポイントを一緒に整理します。
結論:まず気道・呼吸・循環を確認し、意識が改善しているかを見る
けいれんが止まった後は、気道・呼吸・循環を確認し、意識が時間とともに改善しているかを観察しましょう。あわせて、血糖、左右差のある神経症状、外傷、再発する発作徴候も確認します。
発作後に眠気や混乱がみられることはあります。ただし、意識が改善しない、いったん戻った意識が再び悪化する、呼吸が不安定、片麻痺や失語などがある場合は、「発作後だから」と判断せず、速やかに医師へ報告してください。けいれんが止まって見えても、脳内で発作が続く非けいれん性てんかん重積状態の可能性があります。
この記事でわかること
この記事では、次のポイントを確認します。
- けいれん後の回復過程と、経過を見るときの考え方
- 発作直後に優先したい観察項目
- 意識が戻らないときに考える原因と、急いで報告したいサイン
- 発作の経過を記録・共有するときのポイント
結論の根拠:発作後の眠気だけでは説明できないことがある
全身けいれんの後には、眠気、もうろう状態、混乱、興奮などがみられることがあります。発作中の記憶がない場合もあります。けいれん後に眠ること自体はあり得ますが、意識障害が長引く場合には、ほかの原因も考えて評価する必要があります。
まず、意識が悪い患者さんでは、誤嚥や窒息を防ぐために気道・呼吸を確認することが大切です。日本神経学会「急性意識障害」では、急性意識障害における誤嚥・窒息への注意や、可能な場合の回復体位について説明されています。
また、全身けいれんが5分以上続く場合や、いったん止まっても発作を繰り返す場合は、けいれん重積状態を疑う必要があります。静岡てんかん・神経医療センター「発作の観察と記録」では、全身けいれんが5分以上続く場合などを救急対応の対象として案内しています。施設の緊急対応手順に従い、速やかに応援を要請してください。
さらに、けいれんが見えなくなった後も意識が戻らない場合、脳内で発作が続いている非けいれん性てんかん重積状態の可能性があります。和歌山県立医科大学「救急外来における痙攣重積初期対応」では、こうした状態の鑑別に脳波による評価が重要とされています。低血糖、低酸素、脳卒中、頭部外傷、中毒、感染症なども、意識障害の原因として考える必要があります。
けいれん後の回復過程
けいれんが止まった後は、呼吸や顔色が落ち着いてきたあとに、眠気やもうろう状態が続くことがあります。呼びかけへの反応や会話が少しずつ戻り、混乱や見当識障害が残った後、徐々に回復していくこともあります。発作後の経過や回復時間には個人差があります。
そのため、「何分たったか」だけで判断せず、反応や会話が戻ってきているか、呼吸・循環が安定しているか、神経症状が新たに出ていないかを続けて確認しましょう。静岡てんかん・神経医療センター「発作の観察と処置」では、発作後に2時間以上覚醒しない場合などに医療機関へ連絡するよう案内されています。ただし、これは「2時間までは待ってよい」という意味ではありません。呼吸状態の悪化や新たな神経症状などがあれば、時間を待たずに報告します。
発作直後は気道・呼吸・循環から確認する
意識の評価に気持ちが向きやすい場面ですが、まずは生命維持に直結する状態を確認します。嘔吐や分泌物、舌根沈下などで気道がふさがれていないか、呼吸が保たれているか、循環が不安定になっていないかを見てください。
- 気道:嘔吐物や分泌物、いびき様呼吸がないか
- 呼吸:呼吸数・呼吸の様子、SpO₂、チアノーゼ、努力呼吸
- 循環:脈拍、血圧、皮膚色や冷感
- 意識:施設で定められた方法で、呼びかけへの反応や指示動作を確認
- その他:血糖、体温、外傷の有無
嘔吐物や分泌物があり、気道が心配な場合は、患者さんの状態や施設の手順に応じて気道を確保し、必要な応援を要請します。心停止や重篤な呼吸障害が疑われる場合は、施設の緊急対応手順に従ってください。
意識が戻る前に、水や薬を口から飲ませるのは避けます。また、発作中に体を無理に押さえつけたり、口の中に物を入れたりするのも危険です。日本神経学会「急性意識障害」は、けいれん中に無理に押さえつけることや、口に物を入れることを避けるよう説明しています。
意識は「一度の評価」ではなく、変化を追う
「眠っている」とまとめるだけでは、回復の様子が伝わりにくくなります。発作が終わった時刻を記録し、その後の反応を時間の経過に沿って確認してみましょう。
たとえば、次のような変化を記録します。
- 呼びかけで開眼するか、反応があるか
- 指示に従えるか、会話が成り立つか
- 見当識や記憶が戻ってきているか
- 興奮や錯乱が続いていないか
- いったん改善した後に、再び反応が低下していないか
呼びかけへの反応が増える、会話が少しずつ成立するなど、回復の変化があるかを見ていきます。一方、意識が改善しない、悪化する、いったん改善した後に再び低下する場合は、発作後状態だけでは説明できない可能性も考えて報告してください。
けいれんが見えなくても、発作が続いていることがある
けいれんが止まったように見えても、意識が戻らないときは注意が必要です。非けいれん性てんかん重積状態では、目立つ全身のけいれんがなくても、脳内で発作が続いている可能性があります。
次のような変化が続いていないか、観察してみましょう。
- 眼球の偏りや、まぶたの細かなぴくつき
- 顔や手指、四肢の小さな反復運動
- 反応の乏しさや、無目的な動きが続く
- 発作を繰り返し、その間に意識が戻らない
こうした所見だけで看護師が原因を確定することはできません。けいれんが止まっても反応が戻らない場合は、その経過を具体的に伝え、医師の評価につなげましょう。必要に応じて脳波による評価が検討されます。和歌山県立医科大学の救急対応資料
片麻痺や失語など、左右差のある症状を確認する
発作後に一時的な片麻痺がみられることはありますが、脳卒中や頭蓋内出血、発作中の外傷などとの区別が必要です。発作後だからと片づけず、新たな左右差がないかを確認してください。
- 片側の手足に力が入らない
- 顔の動きに左右差がある
- 言葉が出にくい、話しにくい
- 瞳孔に左右差がある
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐がある
これらが出現したり、改善しなかったりする場合は、速やかに報告します。発作中に転倒した可能性があれば、頭部の腫れや出血なども確認しましょう。高齢者や抗凝固薬を使用している患者さんでは、外傷の程度が軽く見えても注意が必要です。
血糖や発作の背景も確認する
低血糖は、けいれんや意識障害の原因になることがあります。医師の指示や施設の手順に従って血糖を確認し、糖尿病治療薬の使用、食事摂取の状況なども把握しておきましょう。
そのほか、発熱、頭痛、項部硬直などの感染徴候や、薬剤の飲み忘れ、薬剤・アルコールなどの影響も報告に役立つ情報です。患者さんの背景や発作前後の状況を整理して伝えることで、原因の評価につながります。
発作の経過を記録して、チームに共有する
発作中の様子を本人が覚えていないこともあります。目撃者からの情報は、発作の評価に役立ちます。慶應義塾大学病院 KOMPAS「痙攣」でも、目撃者からの情報が診断に役立つと説明されています。
記録するときは、次の内容を押さえておくと、発作と回復の流れを伝えやすくなります。
- 発作の開始・終了時刻、発作の再発時刻
- 発作前の様子や、前兆の有無
- 意識消失の有無、眼球や頭部の向き
- けいれんの始まり方や広がり
- 呼吸や顔色の変化
- 発作後の意識レベル、呼びかけへの反応
- 片麻痺や発語の変化、嘔吐や外傷の有無
- 体温、血糖、SpO₂などの測定値
- 投与した薬剤と時刻
発作が起きた時刻は、できるだけ時計で確認しましょう。静岡てんかん・神経医療センター「発作の観察と記録」でも、発作の観察と記録が説明されています。写真や動画を活用する場合は、患者さんの安全とプライバシーに配慮し、施設の規定に従ってください。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
現場では、「発作後だから様子を見る」と決める前に、まず緊急性を確認しましょう。5分以上けいれんが続く、発作を繰り返して意識が戻らない、呼吸が不十分、意識が改善しない・悪化する、片麻痺や失語があるといった場合は、速やかな報告や応援要請が必要です。
報告では、発作がいつ始まり、いつ止まったかだけでなく、その後の意識・呼吸・神経症状がどう変化したかを伝えます。たとえば「発作終了後から呼びかけに反応がない」「いったん開眼したが、再び反応が低下した」「右手足の動きが左より弱い」のように、観察した事実を具体的に伝えると、状況を共有しやすくなります。
「発作が止まったか」と「意識が回復しているか」は、分けて確認するのがポイントです。迷ったときは一人で判断を抱えず、施設の手順に沿って早めに相談してくださいね。
私がこの場面で大切にしている視点
発作後に患者さんが眠っているように見える場面を考えると、私もまず「発作の後だから眠っているのかもしれない」と考えたくなります。でも、同時に「呼吸は大丈夫だろうか」「さっきより反応は戻ってきているだろうか」と気になります。
そこで私は、意識の状態を一度だけ見て終わりにせず、呼吸や反応の変化を時間の流れに沿って整理するようにしています。発作の終了時刻を確認し、呼びかけへの反応や左右差がどう変わったかを言葉にすると、「なんとなく眠っている」という印象だけに頼らずに状況を共有できます。
今振り返っても、発作後の場面では「眠っているかどうか」だけでなく、「回復しているか」を見ていくことが、私自身の考えを整理する手がかりになっています。
まとめ
けいれんが止まった後は、まず気道・呼吸・循環を確認し、そのうえで意識が改善しているかを続けて見ていきます。
- 発作後に眠気や混乱がみられることはあるが、回復時間には幅がある
- 意識が戻らない、悪化する、左右差のある神経症状がある場合は、発作後と決めつけない
- 非けいれん性てんかん重積、低血糖、脳卒中、外傷なども考えて報告する
- 発作の開始・終了時刻と、その後の反応の変化を具体的に記録する
まずは「けいれんが止まったか」だけでなく、「呼吸は保たれているか」「意識は回復しているか」を分けて確認してみましょう。
FAQ
発作後に眠っていたら、起こさずに見守ってよいですか?
眠気がみられることはありますが、眠っていることだけで安全とは判断できません。気道・呼吸・循環を確認し、反応や意識が時間とともに改善しているかを観察します。状態が改善しない、悪化する場合は報告してください。
何分くらい意識が戻らなければ報告しますか?
時間だけで一律に判断せず、呼吸や意識の変化、神経症状などを合わせて見ます。静岡てんかん・神経医療センターは、発作後に2時間以上覚醒しない場合などに医療機関へ連絡するよう案内していますが、これは2時間まで待ってよいという意味ではありません。危険な変化があれば、より早く報告します。
けいれんが止まったのに反応がないとき、何が心配ですか?
発作後の意識障害のほか、非けいれん性てんかん重積、低血糖、低酸素、脳卒中、頭部外傷、中毒、感染症などが考えられます。原因を決めつけず、呼吸・意識・神経症状の変化を確認して、速やかに医師へ共有してください。
参考文献
- 日本神経学会「急性意識障害」
- 静岡てんかん・神経医療センター「第1章 発作の観察と記録」
- 静岡てんかん・神経医療センター「第3章 発作の観察と処置」
- 和歌山県立医科大学「救急外来における痙攣重積初期対応」
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「痙攣」
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
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気づいて動ける急変対応
著者:木澤晃代
出版社:照林社
急変時の気づきと判断・対応を事例を通して学べるので、発作後の呼吸や循環の評価・報告力を高めたい方におすすめです。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
バイタルサインを患者状態の判断材料として捉える視点を学べるので、発作後の呼吸や循環の観察を深めたい方におすすめです。
教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
呼吸やSpO₂、酸素療法など呼吸管理の基礎をわかりやすく解説しているので、発作後の気道・呼吸評価を補強したい方におすすめです。
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