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自傷をほのめかす患者への最初の声かけと安全確認の進め方

緊急時の対応
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こんにちは、ユウ塾長です。患者さんから「もう消えてしまいたい」「自分を傷つけてしまうかも」と言われたとき、最初に何と声をかければよいのか、迷ったことはありませんか?否定したらいけないと思いつつ、どこまで聞いてよいのか不安になりますよね。今回は、最初の声かけと安全確認の進め方を整理します。

結論:落ち着いて直接尋ね、安全を確保してチームにつなぐ

自傷をほのめかす患者さんには、否定や説得、叱責をせず、まず落ち着いて話を聴きましょう。そのうえで、身体的な緊急性と、「死にたい気持ちがあるか」「今すぐ自分を傷つける危険があるか」を確認します。

具体的な計画や実行する意思がある、手段が近くにある、自分で衝動を抑えられない、または重い外傷や中毒が疑われる場合は、ひとりにせず、担当看護師や医師へすぐに報告してください。安全確認を一人で抱え込まず、チームで対応することが大切です。

自傷の程度だけで判断せず、本人の気持ち、現在の切迫性、手段へのアクセス、支援の状況を合わせて考えましょう。直接尋ねることをためらわず、身体面の確認とチームへの共有も同時に進めてください。

この記事でわかること

  • 患者さんに最初にかける言葉
  • 自傷の意図や現在の切迫性を確かめる質問
  • 身体面で見落としたくない緊急性
  • 看護師・看護学生が報告・記録するときのポイント

読了時間の目安

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結論の根拠:直接尋ね、複数の情報を合わせて判断する

厚生労働省の「自殺未遂患者への対応」では、誠実に話しかける(Tell)、自殺についてはっきり尋ねる(Ask)、評価や説教をせずに聴く(Listen)、安全を確保する(Keep safe)という「TALK」の考え方が示されています。

また、厚生労働省の看護師向け対応資料では、希死念慮や今回の行為が自殺企図だったかを複数回確認する必要性が述べられています。意識状態や不安、恐怖などの影響で、最初の返答だけでは状況を十分につかめないことがあるためです。

日本精神神経学会の「日常臨床における自殺予防の手引き」は、本人の現在の様子、背景事情、本人の対処能力と周囲の支援力を合わせて考える枠組みを示しています。ひとつの質問への返答や傷の程度だけで判断せず、複数の情報を集めることが大切です。

自殺について直接尋ねると、かえって自殺念慮を生じさせるのでは、と心配になるかもしれません。しかし、直接尋ねることで自殺念慮を生じさせるという根拠は確認されていません。曖昧な問いかけだけで終わらせず、本人の気持ちを確かめましょう。

最初の声かけは、気づいたことを具体的に伝える

まずは、患者さんの発言や様子を受け止め、責めるためではなく安全を確認するために話していると伝えます。

たとえば、こんな声かけができます。

  • 「先ほど『消えてしまいたい』と話していましたね。今、どんな気持ちですか」
  • 「傷のことが気になっています。話せる範囲で教えてもらえますか」
  • 「あなたを責めるためではなく、安全を確認するために聞かせてください」
  • 「話してくれてありがとうございます。一緒に安全を考えたいです」

自傷を打ち明けたことを受け止め、頭ごなしに「やめなさい」と言わない対応は、文部科学省の自傷行為に関する資料でも示されています。いきなり助言や説得を重ねるより、まず本人の言葉を聴いてみましょう。

自殺念慮と「今すぐの危険」を直接確認する

「大丈夫ですか」「死ぬつもりはないですよね」と聞くと、患者さんが「大丈夫です」と答えやすくなることがあります。誘導する形ではなく、短く、具体的に尋ねてください。

  • 「死にたいと思うことはありますか」
  • 「今回、自分を傷つけたとき、死にたい気持ちはありましたか」
  • 「今も自分を傷つけたい気持ちはありますか」
  • 「今すぐ実行するつもりはありますか」
  • 「実行する方法を考えていたり、そのために使う物が近くにあったりしますか」
  • 「今、自分ひとりで安全を保てそうですか」

質問を続けて投げかけると、尋問のように感じられることがあります。患者さんの様子を見ながら一つずつ確認し、答えにくそうなときは「安全のために確認しています」と目的を伝えてください。

身体的な緊急性も同時に確認する

自傷の意図を尋ねることに集中しすぎて、外傷や中毒などを見落とさないようにしましょう。まず、意識や呼吸、循環の状態、出血の有無を確認します。薬や化学物質を摂取した可能性がある場合は、薬剤名や量、時刻が分かるかも確認します。

重い外傷、意識障害、中毒の可能性など、身体的に不安定な状態が疑われるときは、聞き取りを続けるより救急対応や医師への報告を優先します。NICEの自傷に関するガイドラインも、自傷後の患者について、傷の重症度や緊急治療の必要性、精神状態、直ちに安全上の懸念があるかを早期に確認するよう勧めています。

自傷の意図と背景を、決めつけずに整理する

自傷と自殺企図は、本人の意図を確認しないまま分けられるものではありません。「傷が浅いから死ぬつもりはない」「リストカットは自殺企図ではない」と決めつけず、今回の行為について本人に尋ねてください。

確認したいのは、たとえば次のようなことです。

  • 何が起きたのか、いつ行ったのか
  • そのとき死ぬことを考えていたか
  • 今も同じ行為を繰り返したい気持ちがあるか
  • 過去にも自傷や自殺企図があったか
  • いま相談できる人や、支援を受けられる環境があるか

本人の話だけですべてを判断するのではなく、必要に応じて家族や支援者から情報を得ることも検討します。本人の現在の様子、背景、本人の対処能力や周囲の支援力を合わせて考えるという視点は、日本精神神経学会の手引きにも示されています。

ひとりにせず、チームで安全を整える

今すぐ実行する意思や具体的な計画がある、使う物が近くにある、衝動を自分で止められない、または身体的な緊急性がある場合は、ひとりにせず、直ちに担当看護師・医師・責任者へ報告してください。病棟の手順に沿って観察体制や環境を整え、必要に応じて精神科チームなどにつなぎます。

危険につながる物へのアクセスを制限するときは、患者さんと協力して安全な環境を整えることが基本です。ただし、切迫した危険がある場合に、安全管理を本人だけに委ねないようにしましょう。NICEの自傷に関するガイドラインでも、本人と協働して自殺手段へのアクセスを制限し、安全な環境を整えることが勧められています。

「もうしないと約束してください」と約束だけを求めたり、「家族が悲しむ」と罪悪感を持たせたりする対応は避けましょう。リスク評価票の点数だけで安全かどうかを決めるのも適切ではありません。患者さんの発言や観察した事実をチームで共有し、対応を相談してください。

看護師・看護学生が実践するときのポイント

看護師は、聞き取ったことを本人の言葉に近い形で記録し、観察した事実、患者さんの発言、看護師の判断、実施した対応を分けて整理しましょう。報告では、「自傷の発言があった」という情報だけでなく、現在の希死念慮や実行意思、身体状態、手段へのアクセス、ひとりで安全を保てそうかも伝えます。

看護学生は、危険度を一人で判断しないでください。患者さんの発言や行動に危険を感じたら、すぐに指導者や受け持ち看護師へ報告しましょう。自殺について尋ねることをためらうときも、学生だけで抱えず、指導者と一緒に確認する方法があります。

筆者の体験談

患者さんが「もう消えてしまいたい」と話した場面を考えてみます。最初に「そんなこと言わないでください」と返したくなるかもしれません。けれど、そこで気持ちを否定せず、「そう思うほどつらいんですね。今、死にたい気持ちはありますか」と尋ねてみます。

患者さんが「今は分からない」と答えたら、その言葉だけで安全と決めず、身体状態や今すぐの危険を確認し、担当看護師や医師に共有します。こうした場面では、声をかける側も迷いや緊張を感じるものです。大切なのは、完璧な言葉を探すことより、患者さんの言葉を受け止め、安全確認をチームにつなげることです。

この場面を振り返ると、患者さんの言葉にどう返すかだけでなく、身体状態や今すぐの危険を確認し、ひとりで抱えずに報告することも大切だと考えられます。体験場面は医学的根拠ではなく、声かけや連携をイメージするためのものです。

まとめ

自傷をほのめかす患者さんには、まず落ち着いて話を聴き、自殺念慮や今すぐの危険を直接確認しましょう。同時に、出血や意識障害、中毒などの身体的な緊急性も見ます。

具体的な計画や実行する意思がある場合、または身体的な危険が疑われる場合は、患者さんをひとりにせず、すぐにチームへ報告してください。自傷の程度だけで判断せず、本人の気持ち、現在の切迫性、手段へのアクセス、支援の状況を合わせて考えることが安全につながります。

最初の声かけに迷ったときは、「責めるためではなく、安全を確認するために聞かせてください」と伝えるところから始めてみましょう。

FAQ

自殺について直接尋ねてもよいのでしょうか?

はい。自殺について直接尋ねることで、自殺念慮を生じさせるという根拠は確認されていません。曖昧にせず、本人の気持ちを落ち着いて確かめましょう。

患者さんが「死ぬつもりはない」と答えたら、安全と考えてよいですか?

その返答だけで安全と決めることはできません。身体状態や現在の気持ち、行為の背景、過去の経過、支援の状況も合わせて確認し、必要な情報をチームで共有してください。

看護学生が患者さんに自殺念慮を尋ねてもよいですか?

危険を感じたら、指導者や受け持ち看護師へすぐ報告してください。学生だけで判断・対応を続けず、指導者と相談しながら安全確認を進めましょう。

参考文献

  • 厚生労働省「自殺未遂患者への対応」資料(公開年は資料掲載ページで要確認)
  • 厚生労働省「Ⅲ.対応の流れ(看護師編)」資料(公開年は資料本文で要確認)
  • 日本精神神経学会「日常臨床における自殺予防の手引き」資料(公開年は資料本文で要確認)
  • National Institute for Health and Care Excellence. “Self-harm: assessment, management and preventing recurrence.” Recommendations, 2022.
  • 文部科学省「児童・生徒における自傷行為の理解と援助」資料, 2016.

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