こんにちは、ユウ塾長です。認知症のある方にケアを拒否されたり、声をかけたら興奮が強くなったりして、「このまま続けていいのかな」と迷ったことはありませんか?何度も説明すれば伝わるのか、それとも一度引いたほうがよいのか、判断に悩みますよね。今回は、拒否や興奮が強いときの安全な関わり方と、背景にある不安や苦痛を考えるポイントを整理します。
結論:いったん止めて、安全と拒否の背景を確かめる
認知症の方がケアを拒否したり興奮したりしたときは、無理に説得して続けず、まずケアをいったん止めて安全を確保しましょう。そのうえで、痛みや便秘などの身体的な苦痛、不安、周囲の刺激、声のかけ方を確認します。落ち着いてから、時間・場所・担当者・方法を変え、本人のペースに合わせて再び関わります。
拒否は、単に「ケアを受けたくない」という意思表示とは限りません。何をされるのかわからない不安や、言葉にしにくい痛みを伝えていることもあります。拒否を「わがまま」や「非協力」と決めつけず、本人が何を不安・不快に感じているのかを考えてみましょう。
急な変化や危険がある場合は、声かけの工夫だけで抱え込まず、速やかに報告してください。ケアの緊急性や延期の可否についても、看護師だけで決めず、医師やチームと相談しましょう。
この記事の読了時間
読了時間の目安:約10分
この記事でわかること
- 拒否や興奮が強いときに優先したい安全確保
- 短く具体的で、安心につながりやすい声かけ
- 身体・心理・環境の面から背景を確かめる方法
- 再度関わるときの工夫と、記録・共有のポイント
結論の根拠:拒否や興奮には、さまざまな背景がある
認知症の方の拒否や興奮は、認知機能の低下だけで起こるわけではありません。痛みや発熱などの身体状態、不安や疲れ、周囲の環境、ケアの進め方が関係することがあります。MSDマニュアル「認知症の行動・精神症状」では、行動の具体的な内容や誘因、始まった時刻・おさまった時刻などを評価することが紹介されています。
また、国立長寿医療研究センター「認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント」では、短く、はっきり、具体的に伝えることや、必要に応じて身振り・筆談を使うことが勧められています。大切なのは、決まった言葉で拒否をなくそうとすることではありません。本人の反応を見ながら、伝え方や関わるタイミングを調整することです。
詳しい解説
拒否は「何かを伝えるサイン」かもしれない
入浴や更衣、排泄、内服などを拒むとき、本人には本人なりの理由があるかもしれません。たとえば、ケアの目的がわからない、相手が誰かわからず不安、急に触れられて驚いた、羞恥心がある、といったことが考えられます。
身体の不調が隠れている場合もあります。痛み、かゆみ、便秘、尿意、発熱、脱水、疲労などがないか、様子を見ながら確かめてみましょう。聴力や視力の低下によって説明が届いていない可能性や、周囲の音・人の出入りが負担になっている可能性もあります。
ここでのコツは、「なぜ従ってくれないのか」ではなく、「何が不安・不快なのか」「何を伝えようとしているのか」と考えることです。健康長寿ネット「認知症の看護」でも、認知症の方の感情や個別性をふまえた関わりが解説されています。
興奮が強いときは、安全を先に整える
大声や威嚇、手払い、急な立ち上がりなどがあるときは、声かけを続けて説得するより、本人と周囲の安全を確保することが先です。質問や説明を重ねると刺激が増え、さらに混乱することもあります。
まずは、できる範囲で次のように対応します。
- いったんケアを止める
- 本人との距離を保ち、出口を確保する
- 周囲の人や物品を整理する
- 複数人で取り囲まない
- 短い言葉で安心を伝える
- 必要に応じて応援を要請し、施設の安全手順に従う
暴力や転倒などの危険が迫っている場合は、一人で対応しようとしないでください。安全を確保したあとに、何がきっかけだったのか、どのような言動があったのかを記録し、チームで共有します。MSDマニュアル「認知症の行動・精神症状」も、具体的な行動や誘因、時間経過を評価することを示しています。
声かけは「短く、一度に一つ」が基本
相手が誰なのか、これから何をするのかがわからないと、不安が強まることがあります。まずは本人の視界に入ってから挨拶し、自分の名前と目的を短く伝えてみましょう。
たとえば、「○○さん、こんにちは。看護師の△△です。今から血圧を測ります」のように、一度に一つの内容にします。「それを取って」「あれをして」といった曖昧な言い方より、「右腕を出してください」のように具体的に伝えると、意味が伝わりやすくなります。国立長寿医療研究センター「認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント」では、短くはっきり具体的に伝えることや、必要に応じて身振りなどを使うことが紹介されています。
声の大きさや速さ、表情にも気を配りましょう。急かさず、返事や動作を待つ時間をつくります。話しかけても反応がないとき、すぐに言葉を重ねるのではなく、少し待ってみてくださいね。
本人の話が事実と異なるように感じても、すぐに「違います」と訂正すると、対立につながることがあります。まずは「心配だったのですね」「怖く感じたのですね」と、気持ちに目を向けてみましょう。これは、本人の話をすべて事実として認めるということではありません。本人が感じている不安に応える関わり方です。健康長寿ネット「認知症の看護」では、本人の感情を大切にする関わりも解説されています。
拒否されたら、時間や方法を変えてみる
拒否があった直後に同じ説明を繰り返したり、複数の職員で説得したりすると、本人の不安が強まることがあります。まずは「今はやめておきますね」「少し休んでから、また来ます」と伝え、いったん距離を置く方法があります。
落ち着いてから再度関わるときは、時間や担当者、場所、ケアの手順を変えてみましょう。たとえば、いつもと違う職員の声かけに反応がよいこともあれば、慣れた人のほうが安心できることもあります。どの方法が合うかは人それぞれなので、本人の反応を見て調整します。国立長寿医療研究センター「認知症の定義」資料では、ケア拒否の例や、関わり方を検討するための資料が示されています。
「どちらの服にしますか」「今にしますか、少し後にしますか」のように、本人が選べる場面をつくるのも一つの方法です。できる部分を本人に任せることで、自分で決める機会を保ちやすくなります。なお、緊急性の高い処置や生命維持に関わるケアは、延期できるかを看護師だけで決めず、医師やチームと相談してください。
急な変化は、身体状態やせん妄も確認する
拒否や興奮が急に強くなったときは、認知症の症状と決めつけず、身体状態の変化も考えましょう。発熱や感染症状、痛み、便秘、尿閉、脱水、睡眠不足、薬剤の開始・増量・中止などを確認します。
とくに、急に始まった変化や、時間帯による大きな変動、注意力や意識の変化がある場合は、せん妄などの可能性も考えて速やかに報告・評価につなげます。いつもと違う様子を「認知症だから」と片づけないことが大切です。MSDマニュアル「認知症の行動・精神症状」でも、行動・精神症状の評価では身体状態などの背景を考えることが扱われています。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
拒否や興奮の場面では、「止める・見る・整える・再度関わる」の順に考えると整理しやすくなります。
- 止める
拒否や興奮が強ければ、いったんケアを中断します。 - 見る
表情、姿勢、発言、手払い、視線、呼吸などを観察します。痛みや不快感の訴えがないかも確認しましょう。 - 整える
人数や音、距離、照明、物品の位置を見直します。身体状態や薬剤の変化も確認します。 - 再度関わる
本人の様子が落ち着いてから、時間や担当者、説明方法、ケアの順番を変えて声をかけます。
記録は「拒否あり」だけで終わらせず、具体的に書くと次のケアに生かせます。たとえば、「入浴の声かけ時に『嫌だ』と発言」「腕に触れた後に手を払った」「ケアを中断して距離を置くと表情が落ち着いた」のように、きっかけ・行動・対応・その後の反応を残します。
このテーマについて、声かけの回数や待つ時間などの全国共通の数値基準は、今回確認できた資料では示されていません。「何回声をかける」「何分待つ」と一律に決めず、本人の苦痛や危険、ケアの緊急性、同じ方法で拒否が繰り返されているかを見て判断しましょう。
筆者の体験談
私が看護師として関わっていた頃、入浴の声をかけた途端に「嫌だ」と強く拒まれ、手を払われた場面がありました。最初は、入浴の必要性をもう一度説明すればわかってもらえるかもしれないと思ったのです。
でも、声を重ねるほど表情が険しくなっていきました。「説明が足りないのかな」と迷いながら、私はいったん声をかけるのをやめました。少し離れて様子を見ると、本人は落ち着かない様子で周囲を見ていました。そこで、その場では無理に続けず、スタッフと状況を共有して、時間を変えてから再び声をかけることにしました。
振り返ると、私は「どうすれば入浴してもらえるか」に気持ちが向いていて、本人がその場で何を感じているのかを十分に考えられていませんでした。この経験があってから、拒否されたときには、まず自分の声かけや場の状況を振り返るようになりました。
この体験談は、医学的根拠を示すものではありません。拒否や興奮の背景を考え、本人の反応に合わせて関わり方を調整する場面をイメージするための一例です。
まとめ:拒否を止めるより、背景を探る
認知症の方の拒否や興奮が強いときは、無理にケアを続けず、まず安全を確保しましょう。そのうえで、身体の苦痛、不安、周囲の刺激、声かけの方法を確認します。
短く具体的な言葉で一つずつ伝え、本人の反応を待つことも大切です。拒否があれば、時間や担当者、方法を変えて再度関わり、きっかけや対応後の変化を記録してチームで共有してください。急な変化や危険がある場合は、声かけの工夫だけで抱え込まず、速やかに報告しましょう。
FAQ
拒否されたときは、何度くらい声をかければよいですか?
全国共通の回数基準は、今回確認できた資料では示されていません。同じ声かけを繰り返して本人の不安や興奮が強まる場合は、いったん中断し、時間や方法を変えてみましょう。
本人の言っていることが事実と違う場合も、否定しないほうがよいですか?
すぐに訂正するより、まず本人の不安や恐怖を受け止める関わりが役立つ場合があります。「心配だったのですね」などと気持ちに応じてから、落ち着ける環境や必要なケアを考えましょう。
急に拒否や興奮が強くなったら、認知症の症状として対応すればよいですか?
認知症の症状だけと決めつけず、発熱、痛み、便秘、尿閉、脱水、睡眠不足、薬剤の変化などを確認してください。急な変化や意識・注意力の変化がある場合は、せん妄なども考えて速やかに報告・評価につなげます。
参考文献
- 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント」公開年不明。
- 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「認知症の定義」資料。公開年不明。
- MSD Manuals「認知症の行動・精神症状」2025年更新表示。
- 公益財団法人長寿科学振興財団「認知症の看護」公開年不明。
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
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著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
拒否や興奮時の観察・対応を次のケアに生かすための看護記録の書き方を学びたいときに役立ちます。
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痛みや脱水など身体的な背景を観察して評価するフィジカルアセスメントの力を高めたいときにおすすめです。
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