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看護師・看護学生向け 口腔ケア 保湿と清拭の役割と順序

看護技術
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口腔ケアで「保湿」と「清拭」を分けて考える根拠 看護師・看護学生向け

こんにちは、ユウです。

みなさんは、口腔ケアで「保湿」と「清拭」をどのように使い分けていますか?

「保湿剤を塗れば口腔ケアは終わり?」「口の中が乾燥しているけれど、先に拭いてよいの?」「清拭のあとだけ保湿すればよいの?」と疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。

保湿と清拭は、どちらも口腔ケアの一部です。しかし、目的は同じではありません。

簡単に言うと、

  • 保湿は、口腔内をうるおし、汚れを落としやすくする
  • 清拭は、歯垢や舌苔、痰などの汚れを取り除く

という役割があります。

今回は、口腔ケアで保湿と清拭を分けて考える理由と、実際のケアでの順番、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて、できるだけ分かりやすく解説します。


想定読了時間:約12分


  1. この記事でわかること
  2. 保湿と清拭は目的が違う
  3. 保湿は「汚れを落としやすくする前処置」になる
  4. 清拭は汚れと細菌を物理的に取り除く
  5. 基本は「保湿してから清拭」、最後に必要なら再保湿
    1. 1.口腔内と全身状態を観察する
    2. 2.必要に応じて保湿する
    3. 3.汚れが軟らかくなったら清拭する
    4. 4.清拭後の口腔内を確認する
    5. 5.必要に応じて再度保湿する
  6. 保湿剤を使えば必ずよいわけではない
  7. 誤嚥リスクが高い患者さんでは水分量に注意する
  8. 状態別に考える保湿と清拭
    1. 乾燥が強く、汚れが固まっている場合
    2. 分泌物が少なく、粘膜が乾燥している場合
    3. 汚れや舌苔が多い場合
    4. ケア後に口腔内が再び乾燥する場合
  9. 看護学生・新人看護師が注意したいポイント
    1. 保湿と清拭を同じものとして考えない
    2. 乾燥した汚れを強くこすらない
    3. 「きれいにすること」だけを優先しない
    4. 保湿剤を重ね塗りしない
    5. ケア後の呼吸状態も確認する
  10. 記録するときのポイント
  11. まとめ
  12. よくある質問
    1. Q1.口腔ケアは保湿剤を塗るだけでもよいですか?
    2. Q2.乾燥していても、最初に清拭してはいけませんか?
    3. Q3.清拭後は必ず保湿剤を塗りますか?
    4. Q4.水で口の中を洗い流せば、清拭は不要ですか?
    5. Q5.口腔ケアで出血した場合はどうすればよいですか?
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この記事でわかること

  • 保湿と清拭の役割の違い
  • 乾燥した口腔内をいきなり拭いてはいけない理由
  • 保湿と清拭を行う基本的な順番
  • 誤嚥リスクがある患者さんへの注意点
  • 口腔ケア後に観察・記録したい内容

保湿と清拭は目的が違う

口腔ケアでは、「口の中をきれいにする」という一つの目的だけで考えてしまうことがあります。

しかし、保湿と清拭では、働きが異なります。

ケア 主な目的 具体的な働き
保湿 乾燥を防ぐ 粘膜をうるおす、汚れを軟らかくする
清拭 汚れを除去する 歯垢、舌苔、痰、食物残渣などを取り除く

保湿は、口腔粘膜の環境を整えるケアです。

唾液が少ない患者さんや、口呼吸をしている患者さんでは、口腔内が乾燥しやすくなります。乾燥すると、粘膜が傷つきやすくなったり、舌や口蓋に分泌物が付着しやすくなったりします。

一方、清拭は、すでに付着している汚れを物理的に取り除くケアです。

歯垢や食べかす、舌苔、痰などは、保湿剤を塗るだけでは十分に除去できません。ガーゼやスポンジブラシ、歯ブラシなどを使って、汚れを取り除く必要があります。

つまり、保湿剤を塗ることと、汚れを取ることは別の作業です。

保湿は「汚れを落としやすくする前処置」になる

乾燥した口腔内では、分泌物や痰などが固まって、粘膜や舌にこびりついていることがあります。

この状態で、いきなりガーゼやスポンジブラシで強くこすると、汚れが取れにくいだけではありません。

次のような問題につながる可能性があります。

  • 口腔粘膜が傷つく
  • 出血する
  • 疼痛が生じる
  • 患者さんが口腔ケアを嫌がる
  • 汚れを無理にこすって粘膜損傷を起こす

そのため、乾燥が強い場合は、まず保湿して汚れを軟らかくすることが大切です。

保湿によって痂皮状の汚れや乾燥した分泌物をふやかすと、その後の清拭で取り除きやすくなります。

これは、乾いた皿にこびりついた汚れを、いきなりこするのではなく、先に水分でふやかすのと似ています。

ただし、口腔内では水分の扱いに注意が必要です。嚥下機能が低下している患者さんに多量の水を使うと、洗浄水や汚染物を誤嚥する危険があります。

したがって、「水をたくさん使って洗い流す」方法が、すべての患者さんに適しているわけではありません。

清拭は汚れと細菌を物理的に取り除く

清拭の目的は、口腔内の汚れを取り除き、清潔を保つことです。

対象となる汚れには、次のようなものがあります。

  • 歯垢、プラーク
  • 食物残渣
  • 舌苔
  • 痰や粘液
  • 剥離した粘膜
  • 乾燥して固まった分泌物

これらの汚れには、細菌が含まれていることがあります。

口腔内の汚染が続くと、口腔内細菌が増えやすくなります。特に、嚥下機能が低下している患者さんでは、口腔内の細菌を含んだ唾液や分泌物を誤嚥することで、誤嚥性肺炎につながる可能性があります。

そのため、口腔ケアでは「保湿して終わり」ではなく、必要な範囲で汚れを除去することが重要です。

なお、歯が残っている患者さんでは、歯垢の除去に歯ブラシが基本となります。

スポンジブラシやガーゼは、舌や頬粘膜などの清掃には使いやすい一方、歯面に付着した歯垢を十分に落とす道具とは限りません。

「口腔粘膜の清拭」と「歯の清掃」は、使用する道具も分けて考えます。

基本は「保湿してから清拭」、最後に必要なら再保湿

口腔内が乾燥している患者さんでは、次のような順番で考えると整理しやすくなります。

1.口腔内と全身状態を観察する

まず、口腔ケアを始める前に患者さんの状態を確認します。

観察したい項目は次の通りです。

  • 意識状態
  • 呼吸状態
  • 嚥下機能
  • 咳嗽反射の有無
  • 口腔内の乾燥の程度
  • 舌苔や痰の付着
  • 出血や口内炎の有無
  • 疼痛の有無
  • 嘔気や拒否の有無
  • 唾液の量や粘稠度

特に、誤嚥リスクの高い患者さんでは、体位や使用する水分量を事前に考える必要があります。

2.必要に応じて保湿する

乾燥が強い場合や、汚れが固まっている場合は、先に保湿します。

保湿剤や湿らせたスポンジなどを用いて、口腔粘膜や汚れを湿らせます。

このとき、保湿剤を大量に使う必要はありません。口腔内に多量の液体が残ると、誤嚥につながる可能性があります。

「しっかり塗る」よりも、「必要な部位に薄く広げる」と考えるとよいでしょう。

3.汚れが軟らかくなったら清拭する

汚れが軟らかくなったら、ガーゼやスポンジブラシなどで清拭します。

強くこするのではなく、汚れを浮かせて取り除くイメージです。

舌や頬粘膜だけでなく、口蓋、歯肉、歯の周囲なども確認します。

歯がある場合は、歯ブラシを使って歯面や歯と歯肉の境目を清掃します。

4.清拭後の口腔内を確認する

清拭後は、汚れが残っていないかを確認します。

同時に、次のような変化も観察します。

  • 出血していないか
  • 粘膜が赤くなっていないか
  • 傷ができていないか
  • 痛みが増えていないか
  • 分泌物が残っていないか
  • 口腔内に水分や保湿剤がたまっていないか

5.必要に応じて再度保湿する

清拭後に口腔内が乾燥している場合は、最後に保湿剤を薄く塗布します。

ケア後の保湿には、口腔粘膜の再乾燥を防いだり、分泌物や残渣が再び付着するのを抑えたりする目的があります。

ただし、前回の保湿剤が残ったまま、何度も重ね塗りするのは避けます。

古い保湿剤や汚れが残っている場合は、必要に応じて清拭してから新しく塗布します。

保湿剤を使えば必ずよいわけではない

口腔内が乾燥していると、保湿剤を使いたくなるかもしれません。

しかし、保湿剤はすべての患者さんに必ず必要というわけではありません。

たとえば、刺激によって唾液が十分に出ている場合や、口腔内の湿潤が保たれている場合には、保湿剤が不要と判断されることもあります。

反対に、次のような患者さんでは、保湿を検討することがあります。

  • 唾液分泌が少ない
  • 口呼吸がある
  • 酸素療法を受けている
  • 発熱や脱水がある
  • 抗コリン薬など、口腔乾燥を起こしやすい薬剤を使用している
  • 経口摂取が少ない
  • 意識障害があり、口腔内のセルフケアができない

大切なのは、「乾燥しているから、とりあえず保湿剤を塗る」と考えるのではなく、乾燥の原因や口腔内の状態を確認することです。

誤嚥リスクが高い患者さんでは水分量に注意する

口腔ケアでは、水を使って口の中を洗い流す方法があります。

しかし、嚥下機能や喀痰機能が低下している患者さんでは、洗浄水や汚れた分泌物を誤嚥する可能性があります。

特に注意したい患者さんは、次のような人です。

  • 意識障害がある
  • 嚥下反射が低下している
  • 咳嗽が弱い
  • 寝たきりで自力で体位を変えられない
  • 誤嚥性肺炎の既往がある
  • 唾液や痰を自分で吐き出せない
  • 嘔吐反射が強い

このような場合は、患者さんの状態に合わせて、吸引の準備をしたり、水分量を少なくしたりします。

ガーゼやスポンジブラシ、保湿剤などを組み合わせ、口腔内に水分をためない方法が選択されることもあります。

具体的な方法は、施設の手順や医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士などの指示を確認します。

状態別に考える保湿と清拭

患者さんの口腔内の状態によって、保湿と清拭の優先順位を考えます。

乾燥が強く、汚れが固まっている場合

まず保湿して、汚れを軟らかくします。

その後、無理にこすらず、少しずつ清拭します。1回で完全に除去しようとすると、出血や疼痛につながることがあります。

分泌物が少なく、粘膜が乾燥している場合

保湿を中心にケアを考えます。

ただし、口腔内に歯垢や舌苔がある場合は、清拭や歯ブラシによる清掃も必要です。

汚れや舌苔が多い場合

清拭による汚れの除去が重要です。

乾燥している場合は、先に保湿してから清拭します。歯がある場合は、歯ブラシを使用して歯垢を取り除きます。

ケア後に口腔内が再び乾燥する場合

清拭だけで終了せず、必要に応じて保湿剤を薄く塗布します。

口腔内の乾燥が続く場合は、口呼吸、脱水、薬剤、酸素療法、唾液分泌の低下など、原因を考えます。

看護学生・新人看護師が注意したいポイント

保湿と清拭を同じものとして考えない

保湿剤を塗ることは、汚れを除去することとは違います。

保湿は口腔環境を整えるケア、清拭は汚れと細菌を取り除くケアです。

この違いを理解しておくと、ケアの目的を説明しやすくなります。

乾燥した汚れを強くこすらない

汚れが取れないときに、力を入れてこするのは危険です。

まず保湿して汚れを軟らかくし、患者さんの痛みや出血を確認しながら、少しずつ除去します。

「きれいにすること」だけを優先しない

口腔ケアでは、汚れを取ることが大切です。

しかし、粘膜を傷つけてしまうと、その後の疼痛や出血につながります。

患者さんの苦痛を最小限にしながら、必要な範囲でケアすることが重要です。

保湿剤を重ね塗りしない

前回の保湿剤や汚れが残っている場合は、そのまま塗り重ねないようにします。

口腔内の状態を確認し、必要に応じて古い保湿剤や汚れを除去してから、新しい保湿剤を使用します。

ケア後の呼吸状態も確認する

誤嚥リスクがある患者さんでは、口腔ケア後に次のような変化がないかを観察します。

  • 咳込み
  • 声の濡れたような変化
  • 呼吸苦
  • SpO₂の低下
  • 痰の増加
  • 喘鳴
  • 発熱や悪寒

異常がある場合は、口腔ケアによる誤嚥だけでなく、患者さんの全身状態の変化も考えて報告します。

記録するときのポイント

口腔ケアの記録では、「口腔ケア実施」とだけ書くのではなく、保湿と清拭の内容を分けて記載すると、状態の変化が分かりやすくなります。

例えば、次のような項目です。

  • 口腔内の乾燥の程度
  • 舌苔や痰、食物残渣の有無
  • 口腔粘膜の発赤・びらん・出血
  • 使用した物品
  • 保湿の有無
  • 清拭の部位
  • 歯ブラシを使用したか
  • ケア中の疼痛や拒否の有無
  • ケア後の呼吸状態
  • 吸引の有無
  • 患者さんの反応

「乾燥強く、舌背に痂皮状の付着あり。保湿後にスポンジブラシで清拭。出血なし。ケア後の咳込みなし」

このように、観察した状態と実施したケア、その後の反応を記録すると、次回のケアにもつながります。

まとめ

口腔ケアで保湿と清拭を分けて考えるのは、両者の目的が違うからです。

保湿は、

  • 口腔粘膜の乾燥を防ぐ
  • 汚れを軟らかくする
  • 粘膜損傷を予防する
  • ケア後の再乾燥を防ぐ

ことを目的に行います。

清拭は、

  • 歯垢
  • 食物残渣
  • 舌苔
  • 痰や粘液
  • 乾燥した分泌物

などを物理的に取り除き、口腔内を清潔に保つことが目的です。

看護学生向けに一言で整理すると、

保湿は「口腔環境を整える」
清拭は「汚れと細菌を取る」

です。

乾燥が強い患者さんでは、まず保湿して汚れを軟らかくし、その後に清拭します。清拭後は、必要に応じて再度保湿します。

ただし、誤嚥リスクが高い患者さんでは、水分量や体位、吸引の準備にも注意が必要です。

「保湿したから清潔になった」「強くこすれば汚れが取れる」と単純に考えるのではなく、患者さんの口腔内の状態に合わせて、保湿と清拭を組み合わせることが大切です。

よくある質問

Q1.口腔ケアは保湿剤を塗るだけでもよいですか?

口腔内の乾燥を防ぐ目的では保湿剤が役立ちますが、歯垢や舌苔、痰などの汚れを十分に取り除くことはできません。

汚れがある場合は、清拭や歯ブラシによる清掃も必要です。

Q2.乾燥していても、最初に清拭してはいけませんか?

乾燥が強く、汚れが固まっている場合は、いきなり強く清拭すると粘膜を傷つける可能性があります。

先に保湿して汚れを軟らかくしてから、やさしく清拭する方法が基本です。

Q3.清拭後は必ず保湿剤を塗りますか?

必ずではありません。

口腔内の乾燥の程度や唾液の分泌状況を確認し、必要な場合に使用します。使用する場合も、口腔内に多量に残らないよう薄く塗布します。

Q4.水で口の中を洗い流せば、清拭は不要ですか?

水で洗い流すだけでは、歯垢などの付着性の汚れを十分に除去できないことがあります。

また、嚥下機能が低下している患者さんでは、水分の誤嚥にも注意が必要です。患者さんの状態に合わせて、ガーゼ、スポンジブラシ、歯ブラシなどを使い分けます。

Q5.口腔ケアで出血した場合はどうすればよいですか?

いったんケアを中止し、出血部位や量、止血の状態を確認します。

強い力でこすっていないか、粘膜損傷や口内炎、歯肉炎などがないかを観察し、出血が続く場合や多い場合は、速やかに報告します。

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この記事を書いた人
ユウ塾長

看護師・看護大学教員としての経験を持ち、これまでに看護関連書籍を約10冊執筆・出版。臨床・教育・執筆で培った知識と経験をもとに、看護師・看護学生が「なぜそうするのか」を理解できるよう、根拠に基づいた看護情報をわかりやすく解説しています。

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