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看護師・看護学生向け 口腔ケア 保湿と清拭の役割と順序

看護技術
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口腔ケアで「保湿」と「清拭」を分けて考える根拠 看護師・看護学生向け

こんにちは、ユウです。

みなさんは、口腔ケアで「保湿」と「清拭」をどのように使い分けていますか?

「保湿剤を塗れば口腔ケアは終わり?」「口の中が乾燥しているけれど、先に拭いてよいの?」「清拭のあとだけ保湿すればよいの?」と疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。

保湿と清拭は、どちらも口腔ケアの一部です。しかし、目的は同じではありません。

簡単に言うと、

  • 保湿は、口腔内をうるおし、汚れを落としやすくする
  • 清拭は、歯垢や舌苔、痰などの汚れを取り除く

という役割があります。

今回は、口腔ケアで保湿と清拭を分けて考える理由と、実際のケアでの順番、看護師・看護学生が確認したい観察ポイントについて、できるだけ分かりやすく解説します。


想定読了時間:約12分


この記事でわかること

  • 保湿と清拭の役割の違い
  • 乾燥した口腔内をいきなり拭いてはいけない理由
  • 保湿と清拭を行う基本的な順番
  • 誤嚥リスクがある患者さんへの注意点
  • 口腔ケア後に観察・記録したい内容

保湿と清拭は目的が違う

口腔ケアでは、「口の中をきれいにする」という一つの目的だけで考えてしまうことがあります。

しかし、保湿と清拭では、働きが異なります。

ケア 主な目的 具体的な働き
保湿 乾燥を防ぐ 粘膜をうるおす、汚れを軟らかくする
清拭 汚れを除去する 歯垢、舌苔、痰、食物残渣などを取り除く

保湿は、口腔粘膜の環境を整えるケアです。

唾液が少ない患者さんや、口呼吸をしている患者さんでは、口腔内が乾燥しやすくなります。乾燥すると、粘膜が傷つきやすくなったり、舌や口蓋に分泌物が付着しやすくなったりします。

一方、清拭は、すでに付着している汚れを物理的に取り除くケアです。

歯垢や食べかす、舌苔、痰などは、保湿剤を塗るだけでは十分に除去できません。ガーゼやスポンジブラシ、歯ブラシなどを使って、汚れを取り除く必要があります。

つまり、保湿剤を塗ることと、汚れを取ることは別の作業です。

保湿は「汚れを落としやすくする前処置」になる

乾燥した口腔内では、分泌物や痰などが固まって、粘膜や舌にこびりついていることがあります。

この状態で、いきなりガーゼやスポンジブラシで強くこすると、汚れが取れにくいだけではありません。

次のような問題につながる可能性があります。

  • 口腔粘膜が傷つく
  • 出血する
  • 疼痛が生じる
  • 患者さんが口腔ケアを嫌がる
  • 汚れを無理にこすって粘膜損傷を起こす

そのため、乾燥が強い場合は、まず保湿して汚れを軟らかくすることが大切です。

保湿によって痂皮状の汚れや乾燥した分泌物をふやかすと、その後の清拭で取り除きやすくなります。

これは、乾いた皿にこびりついた汚れを、いきなりこするのではなく、先に水分でふやかすのと似ています。

ただし、口腔内では水分の扱いに注意が必要です。嚥下機能が低下している患者さんに多量の水を使うと、洗浄水や汚染物を誤嚥する危険があります。

したがって、「水をたくさん使って洗い流す」方法が、すべての患者さんに適しているわけではありません。

清拭は汚れと細菌を物理的に取り除く

清拭の目的は、口腔内の汚れを取り除き、清潔を保つことです。

対象となる汚れには、次のようなものがあります。

  • 歯垢、プラーク
  • 食物残渣
  • 舌苔
  • 痰や粘液
  • 剥離した粘膜
  • 乾燥して固まった分泌物

これらの汚れには、細菌が含まれていることがあります。

口腔内の汚染が続くと、口腔内細菌が増えやすくなります。特に、嚥下機能が低下している患者さんでは、口腔内の細菌を含んだ唾液や分泌物を誤嚥することで、誤嚥性肺炎につながる可能性があります。

そのため、口腔ケアでは「保湿して終わり」ではなく、必要な範囲で汚れを除去することが重要です。

なお、歯が残っている患者さんでは、歯垢の除去に歯ブラシが基本となります。

スポンジブラシやガーゼは、舌や頬粘膜などの清掃には使いやすい一方、歯面に付着した歯垢を十分に落とす道具とは限りません。

「口腔粘膜の清拭」と「歯の清掃」は、使用する道具も分けて考えます。

基本は「保湿してから清拭」、最後に必要なら再保湿

口腔内が乾燥している患者さんでは、次のような順番で考えると整理しやすくなります。

1.口腔内と全身状態を観察する

まず、口腔ケアを始める前に患者さんの状態を確認します。

観察したい項目は次の通りです。

  • 意識状態
  • 呼吸状態
  • 嚥下機能
  • 咳嗽反射の有無
  • 口腔内の乾燥の程度
  • 舌苔や痰の付着
  • 出血や口内炎の有無
  • 疼痛の有無
  • 嘔気や拒否の有無
  • 唾液の量や粘稠度

特に、誤嚥リスクの高い患者さんでは、体位や使用する水分量を事前に考える必要があります。

2.必要に応じて保湿する

乾燥が強い場合や、汚れが固まっている場合は、先に保湿します。

保湿剤や湿らせたスポンジなどを用いて、口腔粘膜や汚れを湿らせます。

このとき、保湿剤を大量に使う必要はありません。口腔内に多量の液体が残ると、誤嚥につながる可能性があります。

「しっかり塗る」よりも、「必要な部位に薄く広げる」と考えるとよいでしょう。

3.汚れが軟らかくなったら清拭する

汚れが軟らかくなったら、ガーゼやスポンジブラシなどで清拭します。

強くこするのではなく、汚れを浮かせて取り除くイメージです。

舌や頬粘膜だけでなく、口蓋、歯肉、歯の周囲なども確認します。

歯がある場合は、歯ブラシを使って歯面や歯と歯肉の境目を清掃します。

4.清拭後の口腔内を確認する

清拭後は、汚れが残っていないかを確認します。

同時に、次のような変化も観察します。

  • 出血していないか
  • 粘膜が赤くなっていないか
  • 傷ができていないか
  • 痛みが増えていないか
  • 分泌物が残っていないか
  • 口腔内に水分や保湿剤がたまっていないか

5.必要に応じて再度保湿する

清拭後に口腔内が乾燥している場合は、最後に保湿剤を薄く塗布します。

ケア後の保湿には、口腔粘膜の再乾燥を防いだり、分泌物や残渣が再び付着するのを抑えたりする目的があります。

ただし、前回の保湿剤が残ったまま、何度も重ね塗りするのは避けます。

古い保湿剤や汚れが残っている場合は、必要に応じて清拭してから新しく塗布します。

保湿剤を使えば必ずよいわけではない

口腔内が乾燥していると、保湿剤を使いたくなるかもしれません。

しかし、保湿剤はすべての患者さんに必ず必要というわけではありません。

たとえば、刺激によって唾液が十分に出ている場合や、口腔内の湿潤が保たれている場合には、保湿剤が不要と判断されることもあります。

反対に、次のような患者さんでは、保湿を検討することがあります。

  • 唾液分泌が少ない
  • 口呼吸がある
  • 酸素療法を受けている
  • 発熱や脱水がある
  • 抗コリン薬など、口腔乾燥を起こしやすい薬剤を使用している
  • 経口摂取が少ない
  • 意識障害があり、口腔内のセルフケアができない

大切なのは、「乾燥しているから、とりあえず保湿剤を塗る」と考えるのではなく、乾燥の原因や口腔内の状態を確認することです。

誤嚥リスクが高い患者さんでは水分量に注意する

口腔ケアでは、水を使って口の中を洗い流す方法があります。

しかし、嚥下機能や喀痰機能が低下している患者さんでは、洗浄水や汚れた分泌物を誤嚥する可能性があります。

特に注意したい患者さんは、次のような人です。

  • 意識障害がある
  • 嚥下反射が低下している
  • 咳嗽が弱い
  • 寝たきりで自力で体位を変えられない
  • 誤嚥性肺炎の既往がある
  • 唾液や痰を自分で吐き出せない
  • 嘔吐反射が強い

このような場合は、患者さんの状態に合わせて、吸引の準備をしたり、水分量を少なくしたりします。

ガーゼやスポンジブラシ、保湿剤などを組み合わせ、口腔内に水分をためない方法が選択されることもあります。

具体的な方法は、施設の手順や医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士などの指示を確認します。

状態別に考える保湿と清拭

患者さんの口腔内の状態によって、保湿と清拭の優先順位を考えます。

乾燥が強く、汚れが固まっている場合

まず保湿して、汚れを軟らかくします。

その後、無理にこすらず、少しずつ清拭します。1回で完全に除去しようとすると、出血や疼痛につながることがあります。

分泌物が少なく、粘膜が乾燥している場合

保湿を中心にケアを考えます。

ただし、口腔内に歯垢や舌苔がある場合は、清拭や歯ブラシによる清掃も必要です。

汚れや舌苔が多い場合

清拭による汚れの除去が重要です。

乾燥している場合は、先に保湿してから清拭します。歯がある場合は、歯ブラシを使用して歯垢を取り除きます。

ケア後に口腔内が再び乾燥する場合

清拭だけで終了せず、必要に応じて保湿剤を薄く塗布します。

口腔内の乾燥が続く場合は、口呼吸、脱水、薬剤、酸素療法、唾液分泌の低下など、原因を考えます。

看護学生・新人看護師が注意したいポイント

保湿と清拭を同じものとして考えない

保湿剤を塗ることは、汚れを除去することとは違います。

保湿は口腔環境を整えるケア、清拭は汚れと細菌を取り除くケアです。

この違いを理解しておくと、ケアの目的を説明しやすくなります。

乾燥した汚れを強くこすらない

汚れが取れないときに、力を入れてこするのは危険です。

まず保湿して汚れを軟らかくし、患者さんの痛みや出血を確認しながら、少しずつ除去します。

「きれいにすること」だけを優先しない

口腔ケアでは、汚れを取ることが大切です。

しかし、粘膜を傷つけてしまうと、その後の疼痛や出血につながります。

患者さんの苦痛を最小限にしながら、必要な範囲でケアすることが重要です。

保湿剤を重ね塗りしない

前回の保湿剤や汚れが残っている場合は、そのまま塗り重ねないようにします。

口腔内の状態を確認し、必要に応じて古い保湿剤や汚れを除去してから、新しい保湿剤を使用します。

ケア後の呼吸状態も確認する

誤嚥リスクがある患者さんでは、口腔ケア後に次のような変化がないかを観察します。

  • 咳込み
  • 声の濡れたような変化
  • 呼吸苦
  • SpO₂の低下
  • 痰の増加
  • 喘鳴
  • 発熱や悪寒

異常がある場合は、口腔ケアによる誤嚥だけでなく、患者さんの全身状態の変化も考えて報告します。

記録するときのポイント

口腔ケアの記録では、「口腔ケア実施」とだけ書くのではなく、保湿と清拭の内容を分けて記載すると、状態の変化が分かりやすくなります。

例えば、次のような項目です。

  • 口腔内の乾燥の程度
  • 舌苔や痰、食物残渣の有無
  • 口腔粘膜の発赤・びらん・出血
  • 使用した物品
  • 保湿の有無
  • 清拭の部位
  • 歯ブラシを使用したか
  • ケア中の疼痛や拒否の有無
  • ケア後の呼吸状態
  • 吸引の有無
  • 患者さんの反応

「乾燥強く、舌背に痂皮状の付着あり。保湿後にスポンジブラシで清拭。出血なし。ケア後の咳込みなし」

このように、観察した状態と実施したケア、その後の反応を記録すると、次回のケアにもつながります。

まとめ

口腔ケアで保湿と清拭を分けて考えるのは、両者の目的が違うからです。

保湿は、

  • 口腔粘膜の乾燥を防ぐ
  • 汚れを軟らかくする
  • 粘膜損傷を予防する
  • ケア後の再乾燥を防ぐ

ことを目的に行います。

清拭は、

  • 歯垢
  • 食物残渣
  • 舌苔
  • 痰や粘液
  • 乾燥した分泌物

などを物理的に取り除き、口腔内を清潔に保つことが目的です。

看護学生向けに一言で整理すると、

保湿は「口腔環境を整える」
清拭は「汚れと細菌を取る」

です。

乾燥が強い患者さんでは、まず保湿して汚れを軟らかくし、その後に清拭します。清拭後は、必要に応じて再度保湿します。

ただし、誤嚥リスクが高い患者さんでは、水分量や体位、吸引の準備にも注意が必要です。

「保湿したから清潔になった」「強くこすれば汚れが取れる」と単純に考えるのではなく、患者さんの口腔内の状態に合わせて、保湿と清拭を組み合わせることが大切です。

よくある質問

Q1.口腔ケアは保湿剤を塗るだけでもよいですか?

口腔内の乾燥を防ぐ目的では保湿剤が役立ちますが、歯垢や舌苔、痰などの汚れを十分に取り除くことはできません。

汚れがある場合は、清拭や歯ブラシによる清掃も必要です。

Q2.乾燥していても、最初に清拭してはいけませんか?

乾燥が強く、汚れが固まっている場合は、いきなり強く清拭すると粘膜を傷つける可能性があります。

先に保湿して汚れを軟らかくしてから、やさしく清拭する方法が基本です。

Q3.清拭後は必ず保湿剤を塗りますか?

必ずではありません。

口腔内の乾燥の程度や唾液の分泌状況を確認し、必要な場合に使用します。使用する場合も、口腔内に多量に残らないよう薄く塗布します。

Q4.水で口の中を洗い流せば、清拭は不要ですか?

水で洗い流すだけでは、歯垢などの付着性の汚れを十分に除去できないことがあります。

また、嚥下機能が低下している患者さんでは、水分の誤嚥にも注意が必要です。患者さんの状態に合わせて、ガーゼ、スポンジブラシ、歯ブラシなどを使い分けます。

Q5.口腔ケアで出血した場合はどうすればよいですか?

いったんケアを中止し、出血部位や量、止血の状態を確認します。

強い力でこすっていないか、粘膜損傷や口内炎、歯肉炎などがないかを観察し、出血が続く場合や多い場合は、速やかに報告します。

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