こんにちは、ユウ塾長です。心電図モニターでQRS幅の広い頻拍を見つけたとき、波形を先に読み解くべきか、患者さんの状態を見に行くべきか迷ったことはありませんか?波形が気になる場面ですが、まず何を確認するかを知っておくと、落ち着いて動きやすくなります。今回は、看護師が最初に確認することと、その後の対応を整理します。
結論:波形より先に、患者さんの意識・呼吸・脈拍を確認する
QRS幅の広い頻拍を見たら、まず患者さんのもとへ行き、意識・呼吸・脈拍・血圧などから血行動態が安定しているかを確認します。
脈拍がなければ、院内の心停止対応手順に沿って応援を要請し、蘇生対応を始めます。脈拍があっても、意識障害や低血圧、胸痛、重い呼吸困難などがあれば、波形の詳しい鑑別より緊急対応を優先してください。
患者さんが安定している場合は、モニター波形の信頼性を確かめ、可能な範囲で12誘導心電図を記録します。QRS幅の広い頻拍では心室頻拍(VT)を否定できるまで想定して対応しますが、看護師がモニターだけで原因を確定する必要はありません。医師や循環器チームと連携して評価します。
この記事でわかること
この記事では、次のポイントを紹介します。
- QRS幅の広い頻拍で、まず患者さんの何を確認するか
- 脈拍がない場合と、脈拍がある場合の初期対応の考え方
- 患者さんが安定しているときに確認する波形や12誘導心電図
- 医師へ報告するときに伝えたい情報
結論の根拠:幅広いQRSの頻拍にはVTが含まれる
wide QRS tachycardia(QRS幅の広い頻拍)は、一般に心拍数100回/分以上で、QRS幅が120 ms以上の頻拍を指します。標準的な心電図用紙では、QRS幅120 msは小マス3つ分が目安です。
『臨床検査』の「頻脈性不整脈—QRS幅が広い」では、幅広いQRSの頻拍にはVTのほか、上室性頻拍に脚ブロックや変行伝導を伴うものなどが含まれると説明されています。モニター画面だけで両者を区別するのは難しいため、まずVTを想定して緊急性を評価するのが安全です。
一方、『日本小児循環器学会雑誌』の心電図に関する資料では、幅広いQRSの頻拍を鑑別する際に、P波とQRSの関係などを評価することが扱われています。複数の誘導を見られる12誘導心電図は、モニターだけの場合より波形を詳しく評価する助けになります。
ここで大切なのは、「幅広いQRSだから必ずVT」と決めつけることではなく、VTを除外できない段階では患者さんの安全を優先することです。今回確認できた資料には、看護師向けの初期対応を直接規定する公的ガイドライン本文は含まれていません。治療の適応や手順は、医師の指示と施設の蘇生プロトコルに従ってください。
まず患者さんの状態を確認する
モニターアラームが鳴ったら、画面の波形を見続ける前に患者さんのもとへ行きます。波形が本当の不整脈なのか、体動や電極の接触不良によるものなのかを見分けるためにも、患者さん自身の状態を確認することが先です。
次の項目を見てみましょう。
- 呼びかけへの反応、意識の変化
- 自発呼吸や呼吸の様子、SpO₂
- 脈拍の有無と速さ
- 血圧
- 胸痛や胸部不快感、動悸
- めまいや失神しそうな感じ
- 冷汗、顔面蒼白、末梢冷感
- 呼吸困難や心不全を疑う所見
モニターに波形が表示されていても、実際の脈拍があるとは限りません。モニターの心拍数だけで判断せず、患者さんに接触して脈拍を確認してください。
脈拍がないときは、蘇生対応を優先する
脈拍がない、または心停止が疑われる場合は、心停止として院内の蘇生手順を開始し、応援や救急カート、除細動器を要請します。無脈性VTでは、心肺蘇生と迅速な除細動が必要です。
胸骨圧迫や除細動などの具体的な手順は、最新のBLS・ACLS手順と施設のプロトコルに従います。迷ったときは一人で判断を抱えず、すぐに応援を呼んでください。
脈拍があっても、不安定なら緊急対応を優先する
脈拍が触れても、次のような所見があれば、波形の詳しい鑑別より緊急対応を優先します。
- 意識障害
- 症候性の低血圧
- 持続する胸痛
- 急性肺水腫や重度の呼吸困難
- ショックを疑う所見
不安定な幅広いQRS頻拍では、同期下カルディオバージョンなどの治療が検討されます。看護師は、医師への緊急報告や必要物品の準備、患者さんの継続的な観察を行います。治療の適応や設定を看護師が独自に決めるのではなく、医師の指示と施設の手順に沿って対応してください。
患者さんが安定しているときに確認すること
意識や血圧、呼吸状態が保たれている場合は、治療や応援要請を遅らせない範囲で、モニター波形を確認します。
まず、波形が信頼できるかを見る
体動や電極の外れでも、VTに似た波形が表示されることがあります。アーチファクトと決めつける前に患者さんの状態を確認したうえで、次の点を見てみましょう。
- 電極やリード線が外れていないか
- 皮膚の発汗や接触不良がないか
- 体動や振戦、処置による影響がないか
- 複数の誘導で同じ波形が確認できるか
- モニターの誘導・感度・速度の設定は適切か
モニターの表示設定によって波形の見え方は変わります。画面上の印象だけで判断せず、可能であれば標準12誘導心電図で確認しましょう。
波形の特徴と、発作の経過を確認する
波形を確認するときは、ひとつの所見だけで診断しようとせず、いくつかの情報を合わせて見ます。
- QRS幅は120 ms以上か
- RR間隔は規則的か、不規則か
- QRSの形は同じか、変化しているか
- P波が見えるか、P波とQRSに関係がありそうか
- 発作はいつ始まり、どのくらい続いているか
- 以前の心電図と波形が異なるか
VTと変行伝導を伴う上室性頻拍の鑑別では、P波とQRSの関係が手がかりになります。ただし、モニターだけでは確認しにくいこともあります。可能な範囲で12誘導心電図を記録し、発作前や過去の心電図と比べて、医師と評価してください。
心電図を記録するために、応援要請や必要な対応を遅らせないことも忘れないでください。
報告は患者さんの状態と波形をセットで伝える
医師や救急対応チームへ連絡するときは、波形の情報だけでなく、患者さんの状態も一緒に伝えます。SBARの形に整理すると、必要な情報をまとめやすくなります。
- S(状況):いつから、どのような頻拍が出ているか
- B(背景):心疾患や不整脈の既往、服薬など
- A(評価):意識、脈拍、血圧、SpO₂、胸痛や呼吸困難の有無
- R(提案・依頼):至急診察が必要か、準備した物品や記録した心電図など
たとえば、「幅広いQRSの頻拍が続いています。脈拍は触れますが、血圧が低く、胸部不快感があります。至急診察をお願いします」のように、患者さんの状態と必要な対応をはっきり伝えます。
背景情報として、心疾患や過去の不整脈、服薬、カリウム・マグネシウムなどの検査値が確認できる場合は、原因を決めつけず、報告に加えます。これらは、医師が治療可能な誘因を評価するための情報です。
対応をイメージする一場面
たとえば、モニターに幅広いQRSの頻拍が表示された場面を考えてみましょう。波形に気を取られ、「VTなのか、別の頻拍なのか」と画面を見続けたくなるかもしれません。
そんなときは、いったん患者さんのもとへ行きます。呼びかけへの反応、呼吸、脈拍を確認し、血圧や胸痛の有無も見ます。もし脈拍がなかったり、意識や血圧に変化があったりすれば、鑑別を続けるより先に応援を要請し、施設の手順に沿った対応へ切り替えます。
患者さんが安定していれば、リード線の状態や波形を確認し、12誘導心電図の記録や医師への報告につなげます。波形を早く診断することだけが仕事ではなく、患者さんの状態を見て次の対応につなげることが、最初の大切な一歩です。
まとめ:最初に見るのはモニターより患者さん
QRS幅の広い頻拍を見たときは、次の順に考えてみましょう。
- 患者さんのもとへ行き、意識・呼吸・脈拍を確認する
- 血圧や胸痛、呼吸困難などから血行動態を評価する
- 脈拍がない、または不安定な所見があれば、応援要請と緊急対応を優先する
- 安定していれば波形の信頼性を確認し、必要に応じて12誘導心電図を記録する
- VTを否定できるまでは安全側に考え、医師や循環器チームへ報告する
波形を読むことに迷ったときも、まず患者さんの状態を確認すれば、次に何をするか考えやすくなります。施設の対応手順も確認しながら、一つずつ行動につなげていきましょう。
実践ポイント
医師や救急対応チームへは、SBARを使って患者さんの状態と波形をセットで伝えましょう。背景や確認できた情報も、原因を決めつけずに共有します。
- S(状況):いつから、どのような幅広QRS頻拍が出現したか
- B(背景):心疾患、過去の不整脈、服薬、電解質異常の有無
- A(評価):意識、脈拍、血圧、SpO₂、胸痛、呼吸困難、発作の持続時間
- R(提案・依頼):12誘導心電図を記録したか、必要物品を準備したか、至急診察が必要であること
たとえば、次のように伝えられます。
「幅広いQRSの頻拍が続いています。脈拍は触れますが、血圧が低く、胸部不快感があります。至急診察をお願いします」
心疾患や過去の不整脈、服薬、カリウム・マグネシウムなどの検査値が確認できる場合は、医師が治療可能な誘因を評価できるよう報告に加えます。看護師が原因を断定するためではなく、必要な情報を速やかに共有するための確認です。
筆者の体験談
モニターに幅広いQRSの頻拍が表示されると、画面に目が向いて「VTなのか、ほかの頻拍なのか」と考えたくなります。そんな場面でまず意識したいのは、波形を見続けるのではなく、患者さんのそばへ行って状態を確かめることです。
たとえば、患者さんに声をかけて反応を見ながら、呼吸の様子と脈拍を確認します。脈拍が触れ、呼びかけにも応じているとしても、「血圧は保たれているだろうか」「胸の苦しさはないだろうか」と、続けて確認したいことが浮かびます。
患者さんから「少し胸が苦しいです」と返事があれば、波形の細かな鑑別を続けるより、すぐに応援を呼んで状態を報告することを優先します。一方、状態が安定していれば、電極やリード線を確認し、可能な範囲で12誘導心電図の記録や医師への報告につなげます。
波形が気になるときほど、「患者さんはどうか」を最初に確認すると、次の行動を考えやすくなります。この場面の説明は実践をイメージするためのものであり、医学的根拠や診断の代わりではありません。
FAQ
QRS幅が広ければ、必ず心室頻拍ですか?
いいえ。上室性頻拍に脚ブロックや変行伝導を伴う場合なども、QRS幅が広くなります。ただし、モニターだけで原因を確定するのは難しいため、VTを否定できるまでは安全側に立って患者さんの状態を評価します。
患者さんに症状がなければ、様子を見てもよいですか?
症状がないことだけで、安全とは判断できません。意識、脈拍、血圧、呼吸状態などを確認し、幅広いQRS頻拍を認めたことを医師へ報告してください。
QRS幅120 msは、モニター画面でどう見ればよいですか?
標準的な心電図用紙では小マス3つ分が目安です。ただし、モニターの表示設定によって見え方が変わるため、画面だけで幅を決めず、可能であれば標準12誘導心電図で確認します。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
気づいて動ける急変対応
著者:木澤晃代
出版社:照林社
急変時の観察から判断・対応まで事例で学べるので、幅広いQRS頻拍で患者の不安定さを素早く見分けたい方に向いています。
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