酸素投与中の患者さんを観察するときにSpO2だけを見てはいけない理由
こんにちは、ユウです。
みなさんは、酸素投与中の患者さんを観察するとき、SpO2の数値だけを見て安心していませんか?
「SpO2が98%だから大丈夫」「SpO2が100%なら酸素化は十分」と考えがちですが、実はSpO2だけでは、呼吸状態のすべてを判断できません。呼吸数や呼吸の様子、意識状態、酸素の投与量などを一緒に見なければ、患者さんの危険な変化を見逃す可能性があります。
今回は、酸素投与中の患者さんでSpO2だけを見てはいけない理由と、看護師・看護学生が観察するときのポイントを、できるだけ分かりやすく解説します。
「SpO2が高いから大丈夫」と判断してよいのか、どのような観察が必要なのかを確認していきましょう。
読了目安:約12分
この記事でわかること
- SpO2とPaO2・PaCO2の違い
- SpO2が高くても安心できない理由
- 高濃度酸素を続けるリスク
- 酸素投与中に観察するべき項目
- COPDや慢性呼吸不全で注意すること
目次
SpO2は「酸素化の一部」しか見ていない
SpO2とは、パルスオキシメータで測定する酸素飽和度のことです。
簡単に言うと、血液中のヘモグロビンがどのくらい酸素と結びついているかを、皮膚の上から推定した数値です。
一方、動脈血ガス分析で確認できるPaO2は、血液中に溶けている酸素の分圧を示します。つまり、SpO2とPaO2は、どちらも酸素に関係する指標ですが、同じものではありません。
- SpO2:ヘモグロビンと酸素の結びつき具合
- PaO2:血液中に溶けている酸素の程度
- PaCO2:血液中にたまった二酸化炭素の程度
ここで大切なのは、SpO2を見ただけでは、PaO2やPaCO2までは分からないということです。
SpO2が100%でも、酸素化の状態までは分からない
SpO2は、ある程度以上にPaO2が上昇すると、ほとんど変化しなくなります。
例えば、PaO2が100Torrの場合と、150Torrの場合では、血液中の酸素の状態に違いがあったとしても、SpO2はどちらも100%と表示されることがあります。
つまり、SpO2が100%だからといって、
「酸素がちょうどよく補われている」
とは限りません。
実際には、患者さんに必要以上の酸素が投与されていても、SpO2の数値だけでは気づきにくいことがあります。
特に酸素投与中は、SpO2が高い状態で安定していると、肺の状態が悪化していても数値に変化が現れにくい場合があります。
SpO2だけでは「換気」が分からない
呼吸には、大きく分けて2つの役割があります。
1つ目は、酸素を体内に取り込むことです。これを酸素化といいます。
2つ目は、体内で生じた二酸化炭素を外へ出すことです。これを換気といいます。
酸素投与によってSpO2が保たれていても、二酸化炭素をうまく吐き出せているとは限りません。
例えば、呼吸が浅くなっている患者さんに酸素を投与すると、SpO2は高いまま保たれることがあります。しかし、呼吸が浅い状態では二酸化炭素が体内にたまり、PaCO2が上昇している可能性があります。
この状態が続くと、
- 眠気が強くなる
- 意識がぼんやりする
- 頭痛が出現する
- 呼吸がさらに弱くなる
- CO2ナルコーシスに進む
といった変化が起こることがあります。
酸素化が保たれていることと、換気が十分であることは別問題です。
そのため、呼吸状態を評価するときは、SpO2だけでなく、呼吸数や呼吸の深さ、意識状態などを確認する必要があります。
高濃度酸素の「入れすぎ」を見逃してしまう
酸素は、低酸素状態の患者さんにとって重要な治療です。
しかし、必要以上に高濃度の酸素を投与し続けることが、必ずしも良いとは限りません。
高濃度酸素が長時間続くと、活性酸素の増加などによって肺細胞が傷害される「高酸素性肺障害」のリスクが指摘されています。
また、SpO2が100%に近い状態では、酸素を減らしたほうがよい状況でも「まだ酸素が必要なのではないか」と考えてしまうことがあります。
大切なのは、SpO2を100%にすることではなく、患者さんの病態に応じた目標範囲を維持することです。
酸素投与では、次の点を確認しましょう。
- 酸素投与の目的は何か
- 目標SpO2は何%か
- 現在の酸素流量やFiO2はどの程度か
- 酸素を減量・増量する指示はあるか
- SpO2以外の呼吸状態は安定しているか
なお、高酸素性肺障害が問題となる酸素濃度や投与時間は、患者さんの状態や治療状況によって異なります。人工呼吸管理中などでは、FiO2やPaO2を確認しながら、必要最小限の酸素投与を検討します。
COPDでは、SpO2を上げすぎないこともある
COPDや慢性呼吸不全の患者さんでは、目標SpO2が一般的な患者さんと異なる場合があります。
急性増悪時などでは、目標SpO2を88~92%程度に設定することがあります。これは、酸素を過剰に投与すると、二酸化炭素が体内にたまりやすくなる患者さんがいるためです。
もちろん、すべてのCOPD患者さんに同じ目標値を適用するわけではありません。医師の指示や施設の基準、患者さんの普段のSpO2を確認する必要があります。
ここで覚えておきたいのは、
SpO2は高ければ高いほど良い、とは限らない
ということです。
「SpO2が90%だから低すぎる」とすぐに判断するのではなく、その患者さんに設定された目標範囲を確認しましょう。
SpO2が高くても、呼吸状態が悪いことがある
SpO2が98~100%であっても、次のような症状があれば注意が必要です。
- 呼吸数が増えている
- 息をするために肩や首の筋肉を使っている
- 陥没呼吸がある
- 呼吸が浅い、または不規則である
- 会話が続かない
- 強い息苦しさを訴えている
- チアノーゼがある
- 意識がぼんやりしている
- 落ち着きがなく、不安が強い
- 呼吸音が弱い、または異常音がある
例えば、酸素投与によってSpO2は保たれていても、肺炎や肺水腫が進行している可能性があります。
また、気道閉塞や無気肺、ARDSなどでも、初期にはSpO2が大きく変化しないことがあります。
数値が良いから大丈夫なのではなく、患者さんが楽に呼吸できているか、全身状態が安定しているかを観察することが重要です。
SpO2は測定条件によって誤差が出る
SpO2は便利な指標ですが、測定値が常に正確とは限りません。
次のような状況では、誤差が生じることがあります。
- 手足が冷たい
- 末梢循環が悪い
- 血圧が低い
- 体動がある
- センサーがずれている
- マニキュアや汚れがある
- 強い光が当たっている
- 不整脈などで脈拍が安定していない
SpO2の数値だけでなく、モニターの波形や脈拍数も確認しましょう。
例えば、表示されたSpO2は90%でも、波形が不安定で、患者さんの状態と合わない場合は、測定不良の可能性があります。センサーの装着状態を確認し、別の指や耳などで再測定することも方法の一つです。
反対に、SpO2が高く表示されていても、患者さんの呼吸状態が明らかに悪い場合は、数値を過信してはいけません。
酸素投与中に確認したい観察項目
酸素投与中の患者さんを観察するときは、次の項目をセットで確認します。
① SpO2の数値と推移
現在のSpO2だけでなく、過去からの変化を確認します。
- 酸素投与前は何%だったか
- 酸素投与後にどのように変化したか
- 酸素流量を変えた後、どうなったか
- 急に低下していないか
- 100%付近で固定されていないか
一時的な数値よりも、患者さんの状態と合わせた「推移」を見ることが大切です。
② 呼吸数と呼吸様式
呼吸数は、呼吸状態の変化を早期に捉える重要な観察項目です。
- 呼吸数の増加
- 頻呼吸
- 浅い呼吸
- 不規則な呼吸
- 努力呼吸
- 陥没呼吸
- 起坐呼吸
SpO2が変化する前に、呼吸数や呼吸仕事量に異常が出ることもあります。
③ 意識状態
二酸化炭素の貯留や低酸素、循環不全などによって、意識状態が変化することがあります。
- いつもより眠そう
- 呼びかけへの反応が鈍い
- 会話がかみ合わない
- 落ち着きがない
- 不穏になっている
「眠っているだけ」と思わず、普段の状態と比較して確認しましょう。
④ 循環状態
呼吸状態が悪化すると、循環にも影響することがあります。
- 脈拍数
- 血圧
- 皮膚色
- 冷感
- 発汗
- 四肢の循環状態
SpO2を測定している手指が冷たい場合は、測定値そのものにも影響します。
⑤ 酸素デバイスと投与量
酸素の投与状況を確認します。
- 鼻カニューレやマスクが正しく装着されているか
- チューブが折れていないか
- 酸素が実際に流れているか
- 流量設定は指示どおりか
- マスクからの漏れはないか
- 患者さんが口呼吸をしていないか
- 加湿器や配管に問題がないか
SpO2が低下したとき、患者さんの病態が悪化したとは限りません。まずは酸素デバイスの外れやチューブの閉塞など、基本的な部分も確認します。
⑥ 必要時は動脈血ガス分析
SpO2だけでは、PaO2やPaCO2を正確に把握できません。
次のような場合は、医師の指示のもとで動脈血ガス分析が検討されます。
- 酸素投与中でも呼吸苦が強い
- 意識レベルが低下している
- COPDや慢性呼吸不全がある
- 呼吸が浅く、換気不全が疑われる
- SpO2と患者さんの状態が一致しない
- 高濃度酸素を必要としている
- 呼吸状態が急速に悪化している
動脈血ガスでは、酸素化だけでなく、二酸化炭素の貯留や酸塩基平衡も評価できます。
実習や臨床で使えるアセスメントの考え方
酸素投与中の患者さんをアセスメントするときは、次のように整理すると分かりやすくなります。
1.酸素化は保たれているか
- SpO2は目標範囲内か
- SpO2は低下傾向にないか
- チアノーゼはないか
- 酸素投与量に対してSpO2は適切か
2.換気は十分か
- 呼吸数は増えていないか
- 呼吸は浅くなっていないか
- 意識レベルは変化していないか
- CO2貯留が疑われる症状はないか
3.呼吸仕事量は増えていないか
- 努力呼吸はないか
- 肩呼吸や陥没呼吸はないか
- 会話困難はないか
- 呼吸苦の訴えは強くなっていないか
4.酸素投与は適切か
- 投与目的と目標値を確認できているか
- デバイスは適切か
- 流量やFiO2は指示どおりか
- 過剰投与になっていないか
5.病態が悪化していないか
- 発熱や痰の増加はないか
- 呼吸音に変化はないか
- 胸痛や動悸はないか
- 血圧や脈拍に変化はないか
- 意識や全身状態が悪化していないか
SOAPで記録するときのポイント
SOAPで記録する場合も、SpO2だけの記載にならないように注意します。
例えば、次のような記録です。
S(主観的情報)
「息苦しさがあります」「横になると苦しいです」など、患者さんの訴えを記録します。
O(客観的情報)
- SpO2 96%
- 酸素投与:鼻カニューレ2L/分
- 呼吸数28回/分
- 浅表性呼吸
- 肩呼吸あり
- 会話は短文のみ可能
- 意識清明
- 呼吸音に湿性ラ音あり
このように、SpO2と酸素投与量だけでなく、呼吸数や呼吸様式、意識、呼吸音などを記載します。
A(アセスメント)
「酸素投与によりSpO2は目標範囲内であるが、頻呼吸と肩呼吸を認め、呼吸仕事量が増大している。酸素化が保たれていても呼吸状態は安定していない可能性がある」
P(計画)
「呼吸状態、意識状態、SpO2の推移を継続観察する。呼吸苦の増強や意識変化、SpO2低下を認めた場合は、速やかに報告する」
このように記録すると、「SpO2は保たれているが、患者さんの呼吸状態には問題がある」という状況を、チームで共有しやすくなります。
まとめ
酸素投与中の患者さんでは、SpO2はとても重要な指標です。
しかし、SpO2は酸素化の一部を示しているにすぎず、換気状態やPaCO2、呼吸仕事量、病態の進行までは分かりません。
そのため、次のように考えることが大切です。
- SpO2が高くても、呼吸状態が安定しているとは限らない
- SpO2 100%でも、過剰酸素の可能性がある
- SpO2だけでは、二酸化炭素の貯留は分からない
- COPDでは目標SpO2が異なる場合がある
- 呼吸数、呼吸様式、意識、循環、酸素デバイスを一緒に見る
- 必要時は動脈血ガスでPaO2やPaCO2を確認する
- 数値だけでなく、患者さんの「苦しそう」という見た目や訴えを重視する
「SpO2が98%だから大丈夫」ではなく、
SpO2はどうか?
呼吸は楽そうか?
意識や循環に変化はないか?
酸素投与量は適切か?
というように、患者さんを全体的に観察することが大切です。
よくある質問
SpO2が100%なら安心ですか?
SpO2が100%でも、必要以上の酸素が投与されている可能性や、二酸化炭素が体内にたまっている可能性があります。呼吸数、呼吸の深さ、呼吸仕事量、意識状態、酸素投与量などを一緒に確認する必要があります。
SpO2でPaCO2は分かりますか?
SpO2だけではPaCO2は分かりません。PaCO2や酸塩基平衡を確認する必要がある場合は、医師の指示のもとで動脈血ガス分析が検討されます。
COPDの目標SpO2はどのくらいですか?
急性増悪時などでは、目標SpO2を88~92%程度に設定することがあります。ただし、すべてのCOPD患者さんに同じ目標値を適用するわけではありません。医師の指示や施設の基準、患者さんの普段のSpO2を確認してください。
SpO2が低下したら、まず何を確認しますか?
患者さんの呼吸状態や意識状態を確認するとともに、鼻カニューレやマスクの装着状態、チューブの折れや閉塞、酸素が実際に流れているか、流量設定が指示どおりかを確認します。また、センサーのずれや手指の冷感など、測定条件も確認します。
SpO2以外に観察する項目は何ですか?
呼吸数、呼吸の深さやリズム、努力呼吸・陥没呼吸の有無、会話の状態、呼吸苦、意識状態、脈拍、血圧、皮膚色、呼吸音、酸素デバイスと投与量などを確認します。

