経鼻胃管から栄養投与するときの誤嚥予防|チューブ位置確認と体位・観察のポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、経鼻胃管から栄養剤を投与するとき、「チューブが本当に胃に入っているか」「どのくらい頭を上げればよいのか」と迷ったことはありませんか?
経鼻胃管を使えば、口から食べられない患者さんにも栄養を届けられます。一方で、チューブの位置がずれていたり、投与中にむせたりすると、栄養剤が気道へ入る危険があります。
今回は、経鼻胃管から栄養投与を行うときの誤嚥予防について、チューブの位置確認、体位、投与中・投与後の観察ポイントを中心に解説します。
結論:投与前の位置確認と、頭部挙上・症状観察が最優先
結論からいうと、誤嚥を防ぐために最も重要なのは、次の3つです。
- 投与前に、チューブ先端が胃内にあることを確認する
- 投与中は頭部を30〜45度挙上する
- むせ・咳・呼吸苦・SpO₂低下などがあれば、投与を中止して再評価する
チューブの位置が少しでも怪しい場合は、栄養剤を注入してはいけません。
確認は、外部マーキングの位置、胃内容物の吸引、pH確認などを組み合わせて行います。初回挿入時や位置に不安がある場合は、X線による確認が基本です。
「胃に入っている」と確認できない状態で投与しない。頭を上げ、変化があればすぐ止める
これが基本です。
想定読了時間
約15分
この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 経鼻胃管からの栄養投与で誤嚥が起こる理由
- 投与前に確認するチューブ位置のポイント
- pH確認やX線確認の考え方
- 投与中・投与後の体位と観察項目
- 看護師・看護学生が迷いやすい場面での判断
- 投与を中止して報告する目安
根拠:栄養剤を入れる前に「胃内にあるか」を確認する
経鼻胃管は、鼻から咽頭、食道を通して胃まで挿入します。
正しく胃内に留置されていれば、栄養剤は胃へ入ります。しかし、チューブが抜けかけていたり、気管や気管支側へ迷入していたりすると、栄養剤が気道へ入る可能性があります。
そのため、投与前には「いつも通りに見えるから大丈夫」と判断せず、チューブの位置を確認します。
厚生労働省の「経鼻栄養チューブ取扱い時の注意について」では、胃の中に留置できているかを、できるだけ複数の方法で確認することが示されています。
また、医療安全関連の胃管挿入に関する資料でも、胃内容物の吸引、pH測定、挿入長の確認などを組み合わせ、疑わしい場合は投与しないことが推奨されています。
つまり、位置確認は「投与前に一度行えば終わり」ではありません。
体動、体位変換、咳、嘔吐などによってチューブが移動する可能性があるため、投与のたびに確認することが基本です。
詳しい解説
経鼻胃管の位置確認で見るポイント
1.外部マーキングの位置を確認する
経鼻胃管を挿入したときには、鼻孔付近のチューブに目印をつけます。
投与前には、次の点を確認します。
- 鼻孔付近のマーキング位置が、前回と変わっていないか
- チューブが抜けかけていないか
- 固定テープがはがれていないか
- チューブが強く引っ張られていないか
- 体位変換後に位置が変わっていないか
マーキング位置がずれている場合は、チューブが移動している可能性があります。
「少ししかずれていないから大丈夫」とは考えず、施設の手順に沿って再確認します。
2.口腔内にチューブが巻き込まれていないか確認する
チューブが鼻から抜けていなくても、口腔内でたわんだり、舌の上に巻き込まれたりすることがあります。
そのため、口を開けられる患者さんでは、口腔内を観察します。
特に、次のような変化がある場合は注意します。
- 口腔内にチューブが見える
- チューブが口の中で折れ曲がっている
- 患者さんがチューブの違和感を訴えている
- 咳やむせが増えている
口腔内への巻き込みを確認する方法は、経管栄養の確認方法に関する看護資料でも紹介されています。
3.胃内容物を吸引し、性状とpHを確認する
可能な場合は、胃内容物を吸引して、性状とpHを確認します。
胃内容物であるかを観察し、pHは資料上、5.5以下を胃内確認の目安として用いる方法があります。
ただし、pHは患者さんの状態や使用している薬剤、投与内容などの影響を受けることがあります。また、胃内容物を吸引できないこともあります。
そのため、pHだけで判断するのではなく、次の確認と組み合わせます。
- 外部マーキングの位置
- 患者さんのむせや咳
- 口腔内のチューブ位置
- 胃内容物の吸引結果
- 必要時のX線確認
pHの確認方法や、初回挿入時・再挿入時の確認方法については、日本医療マネジメント学会雑誌の資料にも記載されています。
4.初回挿入時や位置に不安がある場合はX線確認を行う
初回挿入時は、X線による位置確認が基本です。
X線は、チューブ先端の位置を確認する方法として、最も信頼性が高い方法とされています。
特に、次のような場合は、通常の確認だけで投与を開始しないことが重要です。
- 初回挿入後
- 再挿入後
- チューブが抜けた可能性がある
- マーキング位置が変わっている
- 胃内容物を吸引できない
- pHの結果が判断しにくい
- 患者さんに強い咳や呼吸苦がある
日本静脈経腸栄養学会雑誌の資料では、初回のX線確認や、毎回のマーキング確認、吸引などの確認方法が示されています。
投与時の体位:頭部を30〜45度挙上する
チューブの位置確認ができても、体位が不適切だと逆流や誤嚥につながる可能性があります。
投与時は、仰臥位のままにせず、頭部を30〜45度挙上します。
これは、栄養剤が胃から逆流することを防ぎ、気道へ流れ込むリスクを下げるためです。
体位を整えるときは、単にベッドの背上げを行うだけでなく、次の点も見ます。
- 頭部が十分に挙上されているか
- 患者さんがずり落ちていないか
- 苦痛や呼吸苦がないか
- チューブが引っ張られていないか
- 嘔吐時に対応できる姿勢になっているか
経管栄養時の姿勢についての資料や、看護・介護向けの解説資料でも、投与時の頭部挙上が基本的な対策として示されています。
投与中に観察すること
栄養剤を注入している間は、患者さんのそばを離れて終わりを待つのではなく、症状の変化を確認します。
呼吸に関する変化
次の症状があれば、誤嚥やチューブ位置の異常を疑います。
- 咳
- むせ
- 声の変化
- 呼吸苦
- 呼吸状態の悪化
- SpO₂の低下
- 顔色の変化
このような変化があれば、注入を中止して患者さんの状態を評価します。
「少しむせただけ」と考えて、そのまま投与を続けるのは避けます。
消化器症状
次の症状は、栄養剤を受け入れられていないサインとして観察します。
- 嘔気
- 嘔吐
- 腹部膨満
- 腹痛
- 下痢
厚生労働省の経管栄養関連資料では、嘔気・嘔吐、下痢、発熱、意識状態などの観察が挙げられています。
嘔吐がある場合は、逆流した内容物が気道へ入る可能性もあるため、投与を止めて状態を確認します。
投与後もすぐに臥床させない
投与が終わったら、すぐにベッドを水平に戻すのではなく、頭部挙上を続けます。
資料によって幅がありますが、少なくとも30分、場合によっては1時間程度の頭部挙上が示されています。
投与後に確認する項目は、次のとおりです。
- 嘔気・嘔吐がないか
- 咳やむせがないか
- 呼吸状態に変化がないか
- SpO₂が低下していないか
- 腹部膨満や腹痛がないか
- 下痢がないか
- 意識状態に変化がないか
患者さんの状態や施設の手順によって、体位保持の時間や方法は異なることがあります。実際のケアでは、医師の指示や施設のマニュアルを確認します。
「まみむめも」で確認する方法もある
経鼻胃管の確認項目を覚える方法として、「まみむめも」が紹介されることがあります。
施設や教材によって内容は異なりますが、次のような項目を毎回確認する考え方です。
- マーキング:鼻孔付近の位置が変わっていないか
- むせ込み:咳やむせがないか
- 口腔内:チューブが口腔内に巻き込まれていないか
- モニター:SpO₂や呼吸状態に変化がないか
- 記録:確認結果や患者さんの状態を記録したか
ただし、語呂合わせを覚えていても、1つの項目だけで「安全」と判断してはいけません。
マーキングが同じでも、チューブ先端の位置を完全に保証できるとは限りません。必要に応じて、吸引、pH確認、X線確認などを組み合わせます。
実践ポイント:看護師・看護学生が実践するときのチェックリスト
投与前
- [ ] 指示内容と栄養剤を確認した
- [ ] 患者さんの意識状態・全身状態を確認した
- [ ] 鼻孔付近のマーキング位置を確認した
- [ ] 固定状態を確認した
- [ ] 口腔内への巻き込みがないか確認した
- [ ] 胃内容物の吸引とpH確認を行った
- [ ] 必要時にX線確認を行った
- [ ] チューブ位置に疑問がない
投与中
- [ ] 頭部を30〜45度挙上した
- [ ] 咳やむせがないか確認した
- [ ] 呼吸苦がないか確認した
- [ ] SpO₂や顔色の変化を確認した
- [ ] 嘔気・嘔吐がないか確認した
- [ ] 腹部膨満などがないか確認した
投与後
- [ ] すぐに臥床させていない
- [ ] 30分〜1時間程度の頭部挙上を検討した
- [ ] 呼吸状態を再確認した
- [ ] 嘔気・嘔吐や腹部症状を確認した
- [ ] 観察結果と対応を記録した
投与を止めて相談する場面
次のような場合は、自己判断で投与を続けないことが重要です。
- チューブのマーキング位置がずれている
- チューブが抜けた可能性がある
- 口腔内にチューブが巻き込まれている
- 胃内容物を吸引できない
- pHの結果が判断しにくい
- 投与中に咳やむせが出た
- 呼吸苦やSpO₂低下がある
- 嘔気・嘔吐がある
- 腹部膨満や腹痛がある
- 患者さんの意識状態や全身状態が変化した
この場合は、まず注入を中止し、患者さんの状態を確認します。そのうえで、施設の手順に沿って先輩看護師や医師へ報告します。
報告するときは、「チューブが怪しいです」だけではなく、次のように具体的に伝えます。
- マーキング位置が前回より何cm程度ずれているか
- 咳やむせがいつから出たか
- SpO₂や呼吸状態にどのような変化があるか
- 嘔吐の有無
- 胃内容物の吸引結果やpH
- どの時点で投与を中止したか
筆者の体験談
私が看護師をしていた頃、経鼻胃管を留置している患者さんに栄養剤を投与する場面がありました。
いつものように準備をして、鼻の近くにあるマーキングを確認したのですが、前回より少し位置が違って見えました。
最初は、「体位変換のあとだから、テープが少し動いただけかもしれない」と考えました。患者さんの表情も落ち着いていて、強い咳もありませんでした。
それでも、なんとなく気になりました。
「このまま投与してよいのだろうか」と迷い、もう一度、固定テープと鼻孔付近の位置を見直しました。すると、チューブが少し引っ張られたようになっていました。
私は先輩看護師に、「マーキングの位置が前回と違って見えます。投与前にもう一度確認したいです」と相談しました。
先輩からは、「迷ったまま栄養剤を入れないで、確認できるまで止めておこう」と言われました。その後、必要な確認を行い、投与を始める前に医師へ報告することになりました。
そのとき、患者さんに大きな症状がなかったため、私は最初、少し慎重になりすぎているのかもしれないと思っていました。
でも、今振り返ると、症状がないことと、チューブの位置が確実であることは別の話でした。
この経験があってから、私は「患者さんが苦しそうではないから大丈夫」と急いで判断せず、投与前の小さな違和感をいったん止まって考えるようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、実際の看護場面をイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 経鼻胃管から栄養投与を行う前に、チューブ先端が胃内にあることを確認する
- 位置確認は、マーキング・口腔内・胃内容物・pHなどを組み合わせて行う
- 初回挿入時や位置に不安がある場合は、X線確認を優先する
- 投与時は、頭部を30〜45度挙上する
- 投与中に咳、むせ、呼吸苦、SpO₂低下、嘔吐などがあれば、注入を中止して評価する
- 投与後はすぐに臥床させず、30分〜1時間程度の頭部挙上を検討する
- 少しでもチューブ位置が怪しいときは、「とりあえず入れる」のではなく、確認できるまで投与しない
経鼻胃管からの栄養投与は、チューブが胃内にあることを確認し、体位と症状を観察しながら行うことが基本です。
FAQ
Q1.チューブの位置は、マーキングがずれていなければ大丈夫ですか?
マーキングが変わっていないことは、重要な確認項目の一つです。
しかし、マーキングだけでチューブ先端の位置を完全に確認できるとは限りません。胃内容物の吸引やpH確認など、施設の手順に沿って複数の方法を組み合わせます。
Q2.胃内容物を吸引できなければ、栄養剤を投与してもよいですか?
胃内容物を吸引できない場合、それだけで胃内にあると判断することはできません。
外部マーキング、患者さんの症状、pH確認などを組み合わせ、必要に応じてX線確認を行います。位置に不安がある場合は、投与せずに相談します。
Q3.聴診で「ゴボゴボ」と聞こえれば、胃内にあると判断できますか?
聴診だけに頼ってはいけません。
チューブ位置の確認には複数の方法を組み合わせることが示されています。施設の手順に従い、マーキング、吸引、pH確認、必要時のX線確認などを行います。
Q4.投与後は何分間、頭を上げておけばよいですか?
資料によって違いがありますが、少なくとも30分、資料によっては1時間程度の頭部挙上が示されています。
患者さんの状態や施設の手順によって異なるため、医師の指示や施設のマニュアルを確認します。
Q5.少しむせただけなら、投与を続けてもよいですか?
咳やむせは、誤嚥やチューブ位置の異常を考えるきっかけになります。
そのまま続けず、いったん注入を中止して、呼吸状態、SpO₂、顔色、チューブ位置などを確認します。
参考文献
- 厚生労働省「経鼻栄養チューブ取扱い時の注意について」PDF
- 厚生労働省「経管栄養」関連資料 PDF
- 日本静脈経腸栄養学会雑誌「経管栄養チューブの位置確認」に関する資料、2015年 PDF
- 日本医療マネジメント学会雑誌「経鼻胃管の位置確認」に関する資料、2008年 PDF
- 医療安全関連資料「胃管挿入死亡事例の分析」PDF
- 日本経管栄養・静脈栄養関連資料「経管栄養時の姿勢」公式資料
- 看護・介護向け解説「経管栄養時の観察と誤嚥予防」解説記事
- 看護roo!「経管栄養の確認方法」解説記事
- 看護roo!「経管栄養時の体位と観察」解説記事
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
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教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
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