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看護で押さえるVTE予防の弾性ストッキング・IPC禁忌と観察

看護技術
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VTE予防で弾性ストッキング・IPCを使うときの禁忌と観察ポイント

こんにちは、ユウです。

みなさんは、VTE予防のために弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法(IPC)を使うとき、「この患者さんに装着して大丈夫なのだろうか」と迷ったことはありませんか?

下肢を圧迫すれば血栓予防になる、というイメージはありますよね。
しかし、動脈の血流が悪い人や重い心不全がある人、皮膚トラブルがある人に、同じように使ってよいとは限りません。

今回は、弾性ストッキングとIPCを使う前に確認したい禁忌・慎重適応と、看護師・看護学生が観察するポイントを解説します。


  1. 結論:圧迫する前に「足の動脈血流・心不全・皮膚・DVT」を確認する
  2. この記事でわかること
  3. 根拠:弾性ストッキングとIPCは静脈うっ滞を減らすために使う
  4. 弾性ストッキングの主な禁忌
  5. 動脈血流障害があるときは、なぜ注意が必要なのか
  6. 心不全がある場合も、圧迫してよいか確認する
  7. DVTが疑われるときは、予防目的で装着しない
  8. 皮膚状態と装着方法も確認する
  9. IPCは弾性ストッキングと同じように評価する
  10. 看護師・看護学生が使える装着前チェックリスト
    1. 1.足の血流を確認する
    2. 2.DVTを疑う所見を確認する
    3. 3.心不全の状態を確認する
    4. 4.皮膚を確認する
    5. 5.製品と方法を確認する
  11. 装着後に観察したい変化
  12. 筆者の体験談
  13. 実践ポイント
    1. 装着前に必ず下肢評価をする
    2. ABIが測定できるなら確認する
    3. 心不全の重症度を見る
    4. DVTの急性期は特に慎重に判断する
    5. 皮膚トラブルを避ける
    6. 適切な製品を正しく使えているか確認する
  14. まとめ
  15. FAQ
    1. Q1.ABIを測定していない場合は、弾性ストッキングを使えませんか?
    2. Q2.IPCなら動脈血流障害があっても使えますか?
    3. Q3.弾性ストッキングを装着して、足が痛いと言われたらどうしますか?
    4. Q4.VTE予防の指示があれば、すぐに装着してよいですか?
  16. 参考文献
  17. この記事の学習を深めるおすすめ書籍
  18. 実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
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結論:圧迫する前に「足の動脈血流・心不全・皮膚・DVT」を確認する

結論からいうと、弾性ストッキングやIPCは、下肢の静脈うっ滞を減らしてVTEを予防する補助的な方法です。

ただし、装着前には次の項目を確認します。

  • 末梢動脈疾患(PAD)など、動脈血流障害がないか
  • 足背動脈・後脛骨動脈、皮膚色、冷感、疼痛、しびれの状態
  • 重症心不全がないか
  • 下肢の強い疼痛、腫脹、熱感がないか
  • DVTが疑われる状態や、急性期のDVTがないか
  • 潰瘍、壊死、感染、皮膚の脆弱性がないか
  • 製品の添付文書に記載された禁忌に該当しないか

特に、動脈血流が大きく低下している場合は、圧迫によって虚血が悪化するおそれがあります

また、ABIが測定できる場合、資料上は次のように整理されています。

  • ABI 0.5未満:高度下肢動脈疾患として禁忌側に扱う資料がある
  • ABI 0.5以上0.9未満:下肢動脈疾患として慎重適応

ただし、製品や施設によって判断方法が異なる場合があります。迷うときは、自己判断で装着せず、医師や担当者に確認します。

ざっくり言うと、

「VTE予防だから、とりあえず装着」ではなく、圧迫しても安全な足かどうかを確認してから使う

この記事でわかること

この記事では、次の内容を解説します。

  • 弾性ストッキングとIPCを使う目的
  • 弾性ストッキングの主な禁忌
  • ABIから考える動脈血流障害の目安
  • 心不全、DVT、皮膚障害がある場合の注意点
  • 看護師・看護学生が装着前後に確認するポイント

根拠:弾性ストッキングとIPCは静脈うっ滞を減らすために使う

VTEは、深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症を含む病態です。

長時間の臥床や手術後などでは、下肢の静脈血流が滞りやすくなります。
そこで、弾性ストッキングやIPCを使い、下肢から心臓へ戻る静脈血流を促します。

弾性ストッキングは、下肢を外側から圧迫します。
IPCは、空気の入ったカフを周期的にふくらませ、間欠的に下肢を圧迫します。

日本血栓止血学会の予防ガイドラインでは、抗凝固療法ができない場合に、弾性ストッキングやIPCを行う位置づけが示されています。

つまり、これらはVTE予防に使われる方法ですが、すべての患者さんに無条件で使えるわけではありません

弾性ストッキングの主な禁忌

弾性ストッキングの製品添付文書では、次のような状態が禁忌として示されています。

  • 重度の血行障害
  • うっ血性心不全
  • 有痛性青股腫
  • 感染性静脈炎
  • 装着部位の極度の変形

これは、PMDAに掲載された弾性ストッキングの添付文書で確認できます。

別の製品の添付文書では、次のような状態も禁忌として記載されています。

  • 重度の動脈血行障害
  • 壊死・壊疽
  • 皮膚移植後
  • 重度の浮腫
  • 皮膚の化膿性疾患

詳しくは、PMDA掲載の別製品の添付文書を確認してください。

ここで大切なのは、「弾性ストッキング」という名称だけで判断しないことです。
同じように見える製品でも、添付文書に記載された禁忌や注意事項が異なる場合があります。

動脈血流障害があるときは、なぜ注意が必要なのか

弾性ストッキングやIPCは、足を外側から圧迫します。

静脈血流のうっ滞を減らすことが期待される一方で、動脈から足先へ流れる血液がすでに少ない場合、圧迫によって末梢の血流がさらに減る可能性があります。

その結果、次のような状態につながるおそれがあります。

  • 足の冷感
  • 皮膚色の変化
  • 疼痛
  • しびれ
  • 虚血の悪化
  • 皮膚障害や壊死

日本フットケア・足病医学会誌掲載資料では、ABIについて次のように整理されています。

ABI 圧迫療法の考え方
0.5未満 高度下肢動脈疾患として禁忌側に扱う資料がある
0.5以上0.9未満 下肢動脈疾患として慎重適応

ABIは、足首と上腕の血圧を用いて、下肢の動脈血流を評価する指標です。

ただし、ABIの数値だけで機械的に決めるのではなく、足の冷感や疼痛、皮膚色、脈拍なども一緒に確認します。

心不全がある場合も、圧迫してよいか確認する

下肢を圧迫すると、下肢にたまっていた血液が心臓へ戻りやすくなります。

そのため、心臓のポンプ機能が低下している患者さんでは、循環への負担が問題になることがあります。

日本フットケア・足病医学会誌掲載資料では、NYHA分類について、Ⅳを絶対的禁忌、Ⅲを慎重適応とする整理が示されています。

また、弾性ストッキングの添付文書でも、うっ血性心不全は禁忌として記載されています。

観察では、次のような変化を確認します。

  • 息切れ
  • 起坐呼吸
  • 浮腫
  • 体液貯留の悪化
  • 心不全の重症度
  • 医師の指示や治療方針

心不全の患者さんに圧迫療法を行う場合は、病状や重症度を踏まえて、医師や施設の基準に沿って判断します。

DVTが疑われるときは、予防目的で装着しない

片足だけの腫脹や疼痛、熱感などがあるとき、「VTE予防のために」と考えて弾性ストッキングやIPCを装着するのは危険です。

すでにDVTがある可能性や、急性期のDVTが考えられる場合は、まず装着してよい状態かを確認します。

製品によっては、DVTへの装着によって肺血栓塞栓症を起こす可能性がある患者を禁忌として記載しています。詳しくは、PMDA掲載の医療機器添付文書を確認してください。

また、強い疼痛や著明な腫脹、熱感がある場合は、圧迫の可否を自己判断せず、医師の指示と施設基準を確認します。

皮膚状態と装着方法も確認する

禁忌に該当しない場合でも、装着方法が不適切だと皮膚障害につながります。

装着前後には、次の項目を確認します。

  • 発赤
  • 水疱
  • びらん
  • 潰瘍
  • 皮膚の脆弱性
  • しわやずれ
  • 締め付けが強すぎないか
  • しびれや疼痛が出ていないか
  • 足先の色や冷感に変化がないか

PMDAの「弾性ストッキング取扱い時の注意について」でも、サイズや装着方法、皮膚状態の確認が重要とされています。

特に、しわが寄ったまま装着すると、一部に圧が集中します。
「装着できたか」だけで終わらず、足の状態とストッキングの位置を確認することが大切です。

IPCは弾性ストッキングと同じように評価する

IPCは、ずっと圧迫し続ける弾性ストッキングとは異なり、空気圧を周期的に加える方法です。

そのため、弾性ストッキングより絶対禁忌が少ないとする文献もあります。
しかし、だからといって、動脈血流や皮膚状態の確認を省略してよいわけではありません。

日本フットケア・足病医学会誌掲載資料でも、圧迫療法を行う際には、患者さんの状態を評価する必要性が整理されています。

IPCを使う場合も、次の点を確認します。

  • 下肢の動脈血流障害
  • 足の疼痛やしびれ
  • 皮膚の発赤や損傷
  • DVTが疑われる所見
  • 心不全の状態
  • カフのサイズや装着位置
  • 機器が正しく作動しているか

看護師・看護学生が使える装着前チェックリスト

装着前は、次のように整理すると確認しやすくなります。

1.足の血流を確認する

  • 足背動脈、後脛骨動脈の触知
  • 皮膚色
  • 冷感
  • 疼痛
  • しびれ
  • 左右差
  • ABIの結果

脈拍が触れにくい、足が冷たい、皮膚色が悪いなどの変化があれば、圧迫を開始する前に相談します。

2.DVTを疑う所見を確認する

  • 片側性の腫脹
  • 強い疼痛
  • 熱感
  • 急な下肢の変化

「VTE予防の指示があるから装着する」と短絡せず、現在の下肢所見を確認します。

3.心不全の状態を確認する

  • 息切れ
  • 起坐呼吸
  • 浮腫
  • 心不全の重症度
  • 医師の指示

重症心不全がある場合は、圧迫療法の可否を確認します。

4.皮膚を確認する

  • 発赤
  • 潰瘍
  • 壊死・壊疽
  • 感染
  • びらん
  • 皮膚の脆弱性
  • 装着部位の変形

5.製品と方法を確認する

  • 製品の種類
  • サイズ
  • 圧迫圧
  • 装着方法
  • 使用時間
  • 着脱のタイミング
  • 添付文書の禁忌・注意事項

禁忌がないかだけではなく、その患者さんに合った製品を正しく使えているかも確認します。

装着後に観察したい変化

装着後は、患者さんの訴えを聞きながら、装着前と比べて変化がないかを見ます。

  • 足の疼痛が増えていないか
  • しびれが出ていないか
  • 足先が冷たくなっていないか
  • 皮膚色が変化していないか
  • 発赤や水疱がないか
  • 圧迫部位にずれやしわがないか
  • 下肢の腫脹や左右差が悪化していないか

患者さんから「痛い」「きつい」「しびれる」と訴えがあった場合は、我慢してもらうのではなく、装着状態と下肢の血流を確認します。

筆者の体験談

私が看護師をしていた頃、術後の患者さんに弾性ストッキングを装着する場面がありました。

患者さんの足には軽い浮腫があり、装着の指示も出ていました。私は最初、「術後で動けない患者さんだから、早めに装着するのがよい」と考えていました。

ところが、ストッキングを準備しながら足を観察すると、片側のふくらはぎが少し張っているように見えました。患者さんに聞くと、「さっきから、こちらの足だけ少し痛い」と話されました。

そのとき私は、術後の浮腫なのか、体位の影響なのか、それとも別に確認が必要な変化なのか、すぐには判断できませんでした。

「指示があるから装着する」と進めることもできましたが、先に先輩看護師へ相談しました。先輩からは、「装着前に気づけてよかった。まず左右差と疼痛の変化を確認して、医師にも共有しよう」と言われました。

その後、下肢の状態を記録し、医師へ報告しました。弾性ストッキングは、その場では装着せず、指示を確認することになりました。

この経験があってから、私は「予防目的の物品ほど、装着前の観察が大切だ」と感じるようになりました。指示があることと、今この瞬間に安全に使えることは、同じではないのだと学んだ場面でした。

この体験談は医学的根拠を示すものではなく、装着前の観察を臨床場面と結び付けて考えるためのものです。

実践ポイント

装着前に必ず下肢評価をする

足背動脈・後脛骨動脈、皮膚色、冷感、疼痛、しびれ、浮腫、潰瘍、感染、左右差を確認します。

ABIが測定できるなら確認する

ABI低値や明らかな動脈血行障害があれば、圧迫療法は安易に開始しません。

心不全の重症度を見る

息切れ、起坐呼吸、浮腫、BNP、NYHA分類などを踏まえ、重症心不全では圧迫療法の可否を医師と共有します。

DVTの急性期は特に慎重に判断する

強い疼痛、著明な腫脹、熱感がある場合は、圧迫が適切かを先に確認します。

皮膚トラブルを避ける

しわ、ずれ、締め付け過多、装着不良は褥瘡や神経障害につながるため、サイズ確認と皮膚観察が重要です。

適切な製品を正しく使えているか確認する

“禁忌がないか”だけでなく“適切な製品を正しく使えているか”も重要です。圧迫圧、サイズ、装着方法、着脱のタイミングを確認します。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 弾性ストッキングとIPCは、下肢の静脈うっ滞を減らし、VTEを予防する補助的な方法です。
  • 最も重要なのは、動脈血流障害がないかを確認することです。
  • ABIが0.5未満は禁忌側、0.5以上0.9未満は慎重適応とする資料があります。
  • 弾性ストッキングでは、重度の血行障害、うっ血性心不全、有痛性青股腫、感染性静脈炎などが禁忌として添付文書に記載されています。
  • DVTを疑う強い疼痛、片側性の腫脹、熱感などがある場合は、予防目的で安易に装着しません。
  • 装着前後は、足の血流、疼痛、しびれ、皮膚状態、サイズ、ずれ、しわを確認します。
  • 判断に迷う場合は、製品の添付文書、医師の指示、施設の基準を確認します。

FAQ

Q1.ABIを測定していない場合は、弾性ストッキングを使えませんか?

ABIを測定していないからといって、必ず使用できないとは限りません。
ただし、足の冷感、皮膚色の変化、疼痛、脈拍の触知不良など、動脈血流障害を疑う所見がないかを確認します。

明らかな異常がある場合や判断に迷う場合は、自己判断で装着せず、医師や施設の基準を確認します。

Q2.IPCなら動脈血流障害があっても使えますか?

IPCは弾性ストッキングより絶対禁忌が少ないとする文献もありますが、動脈血流障害があっても無条件に使用できるという意味ではありません。

足の血流、疼痛、皮膚状態などを確認し、製品の添付文書と医師の指示に従います。

Q3.弾性ストッキングを装着して、足が痛いと言われたらどうしますか?

装着を続けるのではなく、ストッキングのサイズ、しわ、ずれ、締め付け状態を確認します。あわせて、足の色、冷感、しびれ、腫脹などを観察し、必要時は装着の継続可否を相談します。

Q4.VTE予防の指示があれば、すぐに装着してよいですか?

指示があっても、装着前に患者さんの状態を確認します。

動脈血流障害、重症心不全、皮膚感染、強い疼痛や片側性腫脹などがある場合は、圧迫してよい状態かを確認してから実施します。

参考文献

推定読了時間:約15分

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