経鼻胃管の挿入前に鼻腔の通りと意識レベルを確認する理由|看護師・看護学生が押さえたい安全な考え方
こんにちは、ユウです。
みなさんは、経鼻胃管を挿入する前に「なぜ鼻の通りや意識レベルまで確認するのだろう」と疑問に思ったことはありませんか?
経鼻胃管は、チューブを鼻から入れて胃まで進める処置です。しかし、鼻から入れるだけに見えても、途中には気道と近い場所があります。
鼻の通りが悪いまま進めてよいのか。意識が低下している患者さんに、どのような注意が必要なのか。迷う場面もありますよね。
今回は、経鼻胃管の挿入前に鼻腔の通りと意識レベルを確認する理由を中心に、挿入時・挿入後に看護師や看護学生が確認したいポイントについて解説します。
結論:鼻腔と意識レベルの確認は、誤挿入や誤嚥を防ぐために行う
経鼻胃管の挿入前に鼻腔の通りと意識レベルを確認するのは、安全に挿入できる条件が整っているかを見極めるためです。
確認するときは、次のように考えます。
- 左右の鼻孔を確認し、通りやすい側を選ぶ
- 鼻閉、鼻中隔の弯曲、鼻腔内の腫脹、鼻出血などがあれば無理に進めない
- 意識レベルを確認し、指示理解や手技への協力が得られるかを見る
- 意識低下や鎮静、せん妄などがある場合は、誤嚥や気道迷入のリスクを高く考える
- 挿入中に咳込み、呼吸状態の変化、強い抵抗、苦悶があれば中止して再評価する
- 挿入後は、施設の手順に沿ってチューブの位置を確認してから使用する
ざっくり言うと、
鼻腔の確認は「安全に通せるか」を見るため。
意識レベルの確認は「安全に飲み込めるか、異常に気づけるか」を見るため。
です。
経鼻胃管は、挿入できたように見えても、先端が胃に入っているとは限りません。誤って気道内に入ると、肺への注入や誤嚥性肺炎、窒息などにつながる可能性があります。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 経鼻胃管の挿入前に鼻腔の通りを確認する理由
- 意識レベルが誤嚥や気道迷入に関係する理由
- 挿入前・挿入中・挿入後に確認したいポイント
- チューブの位置確認で注意したいこと
- 看護師・看護学生が起こしやすい見落とし
根拠:経鼻胃管は気道と近いルートを通る
経鼻胃管は、鼻孔から入って、鼻咽腔、咽頭、食道を通り、胃へ進みます。
ここで注意したいのは、咽頭の付近で食道と気道が近接していることです。
本来は食道へ進めるチューブが、誤って気道側へ入る可能性があります。誤挿入された状態で栄養剤や薬剤を注入すると、肺への注入や誤嚥につながるおそれがあります。
NCBI Bookshelfの臨床解説やMSDマニュアルでは、経鼻胃管の合併症として、気道内への誤挿入、誤嚥、肺への注入、気胸、鼻出血などが示されています。
また、日本静脈経腸栄養学会系の資料や医療安全に関する資料では、経鼻胃管の誤挿入や誤注入が医療事故として繰り返し報告されています。
つまり、経鼻胃管は、
入ったかどうかではなく、正しい場所に入ったかどうかを確認してから使う
必要があります。
鼻腔の通りを確認する理由
鼻腔の通りを確認するのは、チューブを通しやすい側を選ぶためだけではありません。
鼻腔が狭い状態で無理に挿入すると、次のような問題につながる可能性があります。
- 鼻粘膜の損傷
- 鼻出血
- 疼痛
- 挿入困難
- 患者さんの不安や抵抗の増加
MSDマニュアルでは、左右の鼻孔の通気性を確認する方法として、片方の鼻孔を閉じて、反対側の鼻孔から呼吸してもらう方法が示されています。
左右を比べて、より通りやすい鼻孔を選ぶという考え方です。
ただし、鼻閉が強い場合や鼻出血がある場合、鼻腔内の腫脹がある場合などは、無理に進めない判断が必要です。
「いつも右から入れる」と決めつけるのではなく、その患者さんのその時点での鼻腔の状態を確認します。
意識レベルを確認する理由
意識レベルは、手技への協力が得られるかどうかだけでなく、誤嚥の危険性を考えるうえでも重要です。
意識が低下している場合、嚥下反射や咳反射が低下していることがあります。嘔吐や胃内容物の逆流が起きたときに、気道を守る反応が十分に働かない可能性があります。
また、次のような問題も考えられます。
- 指示を理解しにくい
- 口を開ける、嚥下するなどの協力が得にくい
- 苦しさや痛みを訴えにくい
- 挿入中の異常に気づきにくい
- 体動や不穏によってチューブがずれる、抜ける
そのため、眠気、鎮静、せん妄、意識障害などがある場合は、「協力が得られにくい患者さん」としてリスクを評価します。
ここで大切なのは、意識レベルが低いから必ず挿入できない、という単純な判断ではありません。
患者さんの状態に合わせて、手技をどのように行うのか、誰に相談するのか、どのような観察が必要なのかを考えることが重要です。
詳しい解説:挿入前に確認したいこと
1.鼻腔の通り
まず、左右の鼻孔の通りを確認します。
片方ずつ鼻孔を閉じ、反対側から呼吸してもらい、どちらが通りやすいかを確認します。
観察したいのは、次のような点です。
- 左右どちらが通りやすいか
- 鼻閉がないか
- 鼻出血がないか
- 鼻腔内に腫脹がないか
- 鼻中隔の弯曲などで通過しにくくないか
- 患者さんが鼻の痛みや違和感を訴えていないか
通りの悪い鼻孔を選ぶと、挿入時の抵抗や疼痛が増える可能性があります。
抵抗があるときに、力を加えて押し込むのは避けます。無理な操作は、鼻粘膜の損傷や出血につながるおそれがあるためです。
2.意識レベルと指示理解
次に、患者さんの意識状態を確認します。
「口を開けてください」「飲み込んでください」などの指示を理解できるか、会話が成立するかを見ます。
ただし、会話ができるかだけで判断するのではなく、次のような状態も確認します。
- 眠気が強くないか
- 声かけへの反応があるか
- 指示に沿って動けるか
- せん妄や不穏がないか
- 鎮静の影響がないか
- 咳込みや嘔吐が起こったときに対応できそうか
意識レベルが低下している患者さんでは、挿入中の咳込みや呼吸状態の変化を見逃さないことが特に重要です。
3.呼吸状態
経鼻胃管を挿入する前後では、呼吸状態も確認します。
挿入中に次のような変化があれば、気道への迷入や強い苦痛などを疑って、手技を中止し再評価します。
- 強い咳込み
- 呼吸困難感
- 呼吸状態の変化
- チアノーゼ
- 苦悶表情
- 声の変化
- 強い抵抗
「少し咳をしただけ」と決めつけず、患者さんの表情や呼吸の様子を含めて観察します。
挿入中は「進むか」より「患者さんの反応」を見る
経鼻胃管を挿入しているときは、チューブの長さや進み具合だけに意識が向きやすくなります。
しかし、実際には患者さんの反応を見ながら進める必要があります。
たとえば、次のような反応です。
- 咳込み
- 嘔吐反射
- 苦しそうな表情
- 呼吸の乱れ
- 声の変化
- 強い抵抗
- 不穏や体動
このような変化があったときは、単に「入りにくい」と考えるのではなく、
今、チューブはどこを通っているのか
患者さんの呼吸は保たれているか
このまま続けてよい状態なのか
を考え直します。
気道迷入が疑われる場合や患者さんの状態が変化した場合は、挿入を続けず、施設の手順に沿って中止・再評価・報告を行います。
挿入後は、位置確認をしてから使用する
経鼻胃管は、挿入できたことだけでは安全性を判断できません。
注入や栄養剤の投与を始める前に、チューブが消化管内にあることを確認します。
位置確認の方法としては、資料によって次のような方法が示されています。
- 胃内容物の吸引
- 胃内容物のpH確認
- 気泡音による確認
- X線による確認
ただし、これらの方法をどのように組み合わせるかは、施設の基準や患者さんの状態によって異なります。
胃内容物のpH測定については、文献でpH 5.5以下が示されています。一方で、pH測定だけではチューブ位置を十分に確認できない場合があり、単独の確認方法としては不十分とされています。
また、ある教材では、胃内容物を吸引できない場合やpH 6以上の場合に、X線確認を行う運用が示されています。
このように、資料によって確認方法や運用が異なる部分があります。そのため、自己判断で確認方法を変更せず、施設の手順に従うことが必要です。
X線確認は、チューブの位置確認において最も信頼性の高い方法とされています。特に、位置に疑いがある場合や、胃内容物を確認できない場合には、医師や施設の基準に従って対応します。
注入前に挿入長のずれも確認する
一度正しい位置に入っていたとしても、患者さんの体動やチューブの固定状態によって位置がずれることがあります。
厚生労働省の資料では、注入前にチューブの挿入長のずれを必ず確認するよう注意喚起されています。
確認するポイントは、次のような内容です。
- 鼻孔付近のマーキング位置
- 前回と比べたチューブの長さ
- 固定テープの状態
- チューブの抜けやずれ
- 患者さんの咳込み、呼吸状態、苦痛の有無
「昨日確認したから今日は大丈夫」とは限りません。
注入前には、その時点の患者さんの状態とチューブの位置を確認します。
看護師・看護学生が起こしやすい見落とし
「いつもの鼻孔」から入れようとする
患者さんによって、左右の鼻腔の通りやすさは異なります。
前回と同じ側が通りやすいとは限りません。鼻閉や鼻出血などがあれば、前回とは状態が変わっている可能性もあります。
毎回、左右を確認してから選択します。
抵抗があるのに、そのまま進める
チューブが進まないと、「もう少し押せば入るかもしれない」と考えてしまうことがあります。
しかし、強い抵抗がある場合は、鼻腔の状態やチューブの位置を再評価する必要があります。
力で解決しようとせず、無理に進めない判断が大切です。
意識レベルを「会話できるか」だけで見る
短い返答ができても、指示が十分に理解できているとは限りません。
眠気やせん妄、鎮静の影響がないか、動作に協力できるかを含めて確認します。
挿入できたことを、胃内留置の証拠にしてしまう
鼻からチューブが入り、決めた長さまで進んだからといって、胃内にあるとは限りません。
挿入後は、施設の基準に沿った位置確認が必要です。
気泡音だけで判断する
JSDRのe-learning教材では、胃内容物吸引、気泡音、X線などの確認方法が示されています。
一方で、気泡音だけではチューブの位置を確実に判断できない場合があります。確認方法の扱いは施設基準に従い、複数の情報を組み合わせて判断します。
看護の実践ポイントを3段階で整理する
経鼻胃管の挿入に関する確認は、次の3段階に分けると考えやすくなります。
挿入前:安全に進められる状態か
- 鼻腔の通りはどうか
- 鼻出血や鼻閉はないか
- 意識レベルはどうか
- 指示に協力できるか
- 呼吸状態に問題はないか
- 状態に応じた手順や相談先が明確か
挿入中:異常な反応がないか
- 咳込みはないか
- 呼吸状態に変化はないか
- 強い抵抗はないか
- 苦悶や嘔吐反射はないか
- 不穏や体動が強くないか
挿入後:使用してよい位置か
- 挿入長にずれがないか
- 固定は保たれているか
- 胃内容物の吸引やpH確認ができるか
- 必要時にX線で確認されているか
- 施設の手順上、注入開始の条件を満たしているか
このように整理すると、経鼻胃管は「挿入する技術」だけではなく、前後の評価を含めた安全管理であることが分かります。
筆者の体験談
チューブが進まないときに、最初に考えたこと
私が看護師をしていた頃、経鼻胃管の挿入を担当したときのことです。
患者さんに声をかけると、返事はありました。ただ、少し眠そうで、指示を出しても反応が遅い状態でした。
私は最初、「眠いだけかもしれない」と考えました。声をかければ反応はあるので、手技は進められるだろうと思ったのです。
鼻腔の通りを確認すると、左右で明らかに差がありました。片側は呼吸がしにくそうで、患者さんも「こっちは詰まっている感じがする」と話していました。
通りやすい側から始めましたが、途中でチューブが進みにくくなりました。
そのとき私は、少し角度を変えれば進むかもしれないと思いました。しかし、患者さんの眉間にしわが寄り、呼吸も少し乱れているように見えました。
「このまま続けてよいのかな」と迷い、いったん手を止めて先輩に相談しました。
先輩と患者さんの呼吸状態や反応をもう一度確認し、チューブの位置と鼻腔の状態を見直しました。その後、必要な報告と相談を行い、施設の手順に沿って対応しました。
その場では、「決めた長さまで入れること」に気持ちが向いていたのだと思います。
今振り返ると、鼻腔の通りや意識レベルを確認することは、手技を始めるための準備ではなく、「今、この患者さんに安全に行えるのか」を考える時間だったのだと感じます。
それ以来、私はチューブの進み具合だけでなく、患者さんの表情や呼吸、返答の速さにも目を向けるようになりました。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
- 経鼻胃管の挿入前に鼻腔の通りを確認するのは、通過しやすい側を選び、鼻粘膜損傷や出血、挿入困難を防ぐため
- 左右の鼻孔を比べ、通りの悪い側へ無理に挿入しない
- 意識レベルの確認は、手技への協力、嚥下・咳反射、誤嚥や気道迷入のリスクを考えるため
- 挿入中に咳込み、呼吸状態の変化、強い抵抗、苦悶があれば中止して再評価する
- 挿入できたことだけで、胃内にあるとは判断しない
- 注入前は挿入長のずれや患者さんの状態を確認する
- 胃内容物、pH、X線などの位置確認は、施設の手順に従って行う
- 経鼻胃管は「入れる手技」ではなく、「挿入前・挿入中・挿入後の確認を含む安全管理」と考える
結局、覚えておきたいのは、
鼻腔の通りと意識レベルを確認してから挿入し、挿入後は位置を確認してから使用する
という流れです。
FAQ
Q1.鼻腔の通りが悪いときは、反対側から挿入しますか?
左右の鼻孔を確認し、より通りやすい側を選びます。
ただし、鼻閉や鼻出血、鼻腔内の腫脹などがある場合は、無理に挿入せず、施設の手順に沿って相談・再評価します。
Q2.意識が低下している患者さんには、経鼻胃管を挿入できませんか?
意識低下があるから一律に挿入できない、ということではありません。
ただし、嚥下反射や咳反射の低下、協力困難、誤嚥、気道迷入などのリスクを考える必要があります。患者さんの状態に応じた手順選択と、必要な相談を行います。
Q3.胃内容物が吸引できれば、位置確認は十分ですか?
胃内容物の吸引は確認方法のひとつですが、それだけで十分とは限りません。
pH確認やX線確認を含め、施設の基準に沿って判断します。胃内容物を吸引できない場合や位置に疑いがある場合は、自己判断で注入を開始しません。
Q4.pHが5.5以下なら、必ず胃内にあると考えてよいですか?
文献では、胃液のpH測定でpH 5.5以下が示されています。
ただし、pH測定だけでは単独確認法として不十分とされているため、施設の手順に従って、必要な確認方法を組み合わせます。
Q5.気泡音が聞こえれば、胃内留置を確認できますか?
気泡音は確認方法のひとつとして示されていますが、気泡音だけでチューブの位置を確実に判断できない場合があります。
X線確認などを含めた施設基準に従い、注入前に位置を確認します。
参考情報
- MSDマニュアル:経鼻胃管の挿入
- NCBI Bookshelf:Nasogastric Tube
- 厚生労働省:医療安全に関する資料
- 日本静脈経腸栄養学会系資料
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 e-learning教材
- 医療事故情報に関する分析資料
- 看護roo!:経鼻胃管に関する学習記事
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
看護技術クイックノート 第2版
著者:石塚睦子
出版社:照林社
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フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
フィジカルアセスメントの根拠と観察方法を実習向けに整理しており、意識レベルや呼吸状態の評価力向上に直結します。
教科書には書いていない! 呼吸と呼吸器のひ・み・つ
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
呼吸や呼吸器の基礎をわかりやすく解説しており、気道迷入や誤嚥リスクの理解を補強できます。
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