手術は切ったら縫うというのが基本。縫合糸による接着の限界は手術後7~14日です。
その間に創がくっつかないと縫合不全を起こします。 手術後3日以内に生じた縫合不全は、最初から縫合していない部分に生じたものが多いです。
とくに消化器疾患の術後に発生しやすく、消化管をつないだ部分から消化液が漏れてくることがあり、注意が必要です。
縫合不全
1.出現しやすい時期
縫合不全は、術後4~10日までに起こりやすいと言われます。
多くは一度下がった熱(吸収熱:全身麻酔の手術後、浸出液や壊死組織の吸収をするために起こる発熱)が再燃することによって発見されます。
2.原因
縫合創は通常、術後2~3日ごろに縫合された部位が壊死して、その後、約7日間で線錐芽細胞(皮膚の張りや弾力のもととなるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を作り出す源となる細胞)が活性化して創が塞がります(生理的癒合)。
しかし、何らかの原因で生理的癒合が障害されると、創が哆開(しかい)し、縫合不全となります。
縫合不全を起こしやすいリスク要因には以下の2つがあります。
全身的な要因
栄養障害(低タンパク血症、貧血、ビタミン欠乏症など)、代謝障害(糖尿病、慢性腎不全など)、高齢、免疫抑制薬・副腎皮質ステロイド薬(長期〉の服薬など。
局所的な要因
縫合部の血流状態、縫合技術の不備、不適当な縫合材、縫合部にかかる消化器内圧の上昇、縫合部周辺の感染など
3.症状
縫合不全があると下記のような症状がみられます。
身体的症状
縫合不全があると、限局性の疼痛や圧痛があります。
生理的症状
バイタルサインや検査データでは、発熱、脈拍増加、白血球増加、CRP上昇がみられることもあります。
さらに、縫合不全を起こすと、創部の回復が遅れるだけではなく、敗血症を引き起こして、多臓器不全に進行することもあります。
4.縫合不全への対応
皮膚の縫合不全で感染を起こすこともあれば、消化管の縫合不全で、内容物が腹腔内に漏れ、腹膜炎を合併することもあります。
術後の看護では、その予防と初期症状の観察が必要です。
予防と観察
- 効果的なドレナージを行い、縫合部への圧を減らして癒合を妨げないようにする
- 血糖値が高いと創部治癒を妨げ、感染の原因にもなるため、術後は血糖チェックとインシュリンで血糖コントロールを行う
- 縫合不全を疑う所見があるときには、絶飲食とし、すぐに医師へ報告する
- 縫合不全を起こしたら、再縫合や抗生剤投与を行う
- 内臓の縫合不全の場合は、腹膜炎や腹腔内出血を起こす可能性があるため再手術となる
5.術後合併症まとめ
それぞれの術後合併症について詳しくまとめましたのでご活用ください。 術後合併症の種類と出現時期
6.オススメ書籍「術前・術後ケアの基本」
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ユウのアドバイス
縫合不全が起きると、創部の回復を遅らせるだけでなく、感染、出血、敗血症などを引き起こして、多臓器不全になることもあります。命に関わる重大な合併症なので、注意深く観察しましょう!(`・ω・´)
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