抗凝固薬を飲んでいる患者の打撲・出血|看護師・看護学生が最初に見る観察ポイント
こんにちは、ユウです。
みなさんは、抗凝固薬を飲んでいる患者さんに打撲や出血を見つけたとき、「どこまで観察すればいいのだろう?」と迷ったことはありませんか?
皮下出血が少しあるだけに見えても、頭を打っていたり、体の中で出血していたりする可能性があります。反対に、見た目が派手でも、局所の出血にとどまっている場合もあります。
今回は、抗凝固薬内服中の患者さんに打撲や出血があったとき、看護師・看護学生が最初に確認したい観察ポイントと、医師へ報告するときの考え方を解説します。
結論:出血部位だけでなく、全身状態と臓器出血のサインを確認する
まず結論をいうと、抗凝固薬を内服している患者さんの打撲・出血では、皮下出血の大きさだけで判断しないことが重要です。
最初に、次の順番で確認します。
- 意識レベル、呼吸、血圧、脈拍、SpO₂などの全身状態
- 頭部を打っていないか
- 頭痛、嘔気・嘔吐、眠気、麻痺、しびれ、構音障害などの神経症状
- 出血している部位、量、広がり、持続時間
- 圧迫して止血できるか、再出血していないか
- 血尿、黒色便・血便、鼻出血、口腔内出血などがないか
- 抗凝固薬の種類、最終内服時刻、併用薬など
特に、頭部打撲、意識や神経症状の変化、血圧低下、呼吸困難、止まりにくい出血がある場合は、重篤な出血を疑って速やかに医師へ報告します。
ざっくり言うと、見るべきなのは「青あざが何cmあるか」だけではありません。
局所の軽い出血なのか、全身性・臓器出血や頭蓋内出血を疑う状態なのかを見極めること
が大切です。
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この記事でわかること
この記事では、次の内容を解説します。
- 抗凝固薬内服中の打撲・出血で最初に見ること
- 頭部を打った場合の観察ポイント
- 鼻血、血尿、下血、創部出血などの確認方法
- 出血時に確認したい検査や服薬情報
- 看護師・看護学生が医師へ報告するときの情報整理
根拠:抗凝固薬内服中は「見えない出血」にも注意する
抗凝固薬は、血液を固まりにくくする薬です。
血栓を予防する一方で、出血したときに止まりにくくなったり、出血が広がったりすることがあります。そのため、目で見える皮下出血だけでなく、深部出血や臓器出血の可能性も考えます。
厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでは、皮下出血斑、鼻血、口腔内出血、血尿、下血、採血後の止血困難、創部やドレナージからの出血などが、出血を疑う所見として示されています。
また、意識障害、麻痺、呼吸困難、血圧低下などの臓器症状がある場合は、出血を疑い、画像診断などで評価する必要があるとされています。
つまり、出血の観察では、
出血している場所を見る
+
出血によって全身状態が変化していないかを見る
という2つの視点が必要です。
詳しい解説
頭部を打った場合は、症状が軽くても経過を見る
抗凝固薬を飲んでいる患者さんが頭を打った場合は、特に注意が必要です。
転倒直後は会話ができていても、その後に頭痛や眠気が強くなったり、意識や神経症状が変化したりすることがあります。
抗凝固薬・抗血小板薬内服中の頭部外傷に関する提言資料では、意識レベル、麻痺、瞳孔所見などの神経学的所見と、バイタルサインを経時的かつ頻回に観察することが示されています。
また、日本血栓止血学会の資料でも、頭部を強く打った場合は医療機関を受診し、CTやMRIで頭蓋内出血の有無を評価することが重要とされています。
頭部打撲後に確認したいこと
次のような項目を確認します。
- 意識レベルの変化
- いつもより強い眠気
- 頭痛の有無と増悪
- 嘔気・嘔吐
- 見当識の変化
- 麻痺やしびれ
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 歩行のふらつき
- 瞳孔不同などの瞳孔所見
- 血圧、脈拍、呼吸、SpO₂の変化
「今は症状がないから大丈夫」と決めつけず、打撲した時刻や受傷機転も含めて報告します。
出血部位と量を具体的に確認する
出血を見つけたときは、「出血あり」とだけ記録するのではなく、次のように具体化します。
- どこから出血しているか
- いつから出血しているか
- 量はどの程度か
- 出血範囲が広がっているか
- 圧迫で止血できるか
- 一度止まっても再出血していないか
- 疼痛や腫脹があるか
- ほかの部位にも出血がないか
確認したい出血の例
- 皮下出血、紫斑
- 鼻出血
- 歯肉や口腔内の出血
- 血尿
- 黒色便、血便
- 創部からの出血
- ドレーン排液の血性変化
- 採血後の止血困難
- 腫脹を伴う打撲部位
PMDAの資料や厚生労働省の資料では、出血の確認に関連して、血小板数、PT-INR、APTT、フィブリノゲン、FDPなどの検査項目が挙げられています。
ただし、検査値だけで重症度を判断するのではありません。検査結果は、症状やバイタルサイン、出血の経過と合わせて確認します。
鼻血や創部出血では「止血できるか」を見る
鼻血や創部からの出血では、出血量だけでなく、圧迫によって止血できるかを観察します。
服薬指導資料では、鼻出血は約5分、傷の圧迫止血は約10分を目安に、止血できない場合は医療機関へ連絡するよう案内されています。抗凝固薬内服患者への服薬指導資料
ただし、これはすべての患者さんに一律に適用する判断基準というより、受診・相談の目安として示されたものです。
出血が止まらない、何度も再出血する、出血範囲が広がる、全身状態に変化がある場合は、時間を記録したうえで速やかに報告します。
抗凝固薬の種類と最終内服時刻を確認する
出血時には、薬の名前も重要です。
確認したい情報は次のとおりです。
- ワルファリンかDOACか
- 具体的な薬剤名
- 最後に内服した時刻
- 飲み忘れや重複内服がないか
- 抗血小板薬などを併用していないか
- 腎機能に関する情報
- 直近の検査結果
ワルファリンではPT-INRが抗凝固効果の評価に重要です。一方、DOACでは薬剤の種類や最終内服時刻、腎機能なども対応を考えるうえで参考になります。
出血の程度によっては、休薬、止血、輸液、降圧、中和などが検討されます。日本血栓止血学会の出血対応資料では、DOAC内服中の軽度出血では経過観察や1回または1日分の休薬、中等度から重度の出血では休薬、止血、輸液、十分な降圧、中和などが対応候補として整理されています。
ただし、抗凝固薬を休薬するかどうかは、出血の重症度だけでなく、血栓症のリスクなども含めて医師が判断します。
看護師が自己判断で中止を指示するのではなく、患者さんの状態と服薬情報を整理して、医師へつなげることが重要です。
実践ポイント
1.まず全身状態を確認する
打撲部位を観察する前に、患者さんの全身状態を確認します。
- 意識レベル
- 呼吸状態
- 血圧
- 脈拍
- SpO₂
- 顔色や冷汗
- 呼吸困難の有無
意識障害、呼吸困難、血圧低下などがあれば、局所の皮下出血だけでは説明できない状態の可能性があります。
2.頭部打撲の有無を確認する
患者さんが「転んだ」と話していても、頭を打ったかどうかが分からないことがあります。
本人への確認に加えて、転倒した場所や姿勢、目撃者の情報なども確認します。
頭部打撲があれば、意識や神経症状を経時的に観察し、必要時は医師へ報告します。
3.出血の変化を記録する
「右前腕に皮下出血あり」だけでなく、次のように記録すると経過が分かりやすくなります。
- 発見時刻
- 部位
- 大きさや範囲
- 色調
- 腫脹や疼痛の有無
- 増大傾向
- 圧迫で止血できたか
- 再出血の有無
数値化できる場合は、施設の記録方法に沿って大きさを記録します。
4.異常があればSBARで報告する
報告では、次のように整理すると伝わりやすくなります。
S:状況
「抗凝固薬を内服中の患者さんが転倒し、頭部を打撲した可能性があります。現在、嘔気と眠気があります」
B:背景
「ワルファリンを内服中で、最終内服は今朝です。転倒した時刻は10時頃です」
A:評価
「意識レベルに変化があり、右手のしびれを訴えています。血圧も普段より低下しています」
R:依頼
「診察と画像検査の必要性について確認をお願いします」
このとき、「あざがあります」だけで終わらせず、全身状態、頭部打撲の有無、神経症状、出血の経過を合わせて報告します。
筆者の体験談:小さな皮下出血に見えて、もう一度確認した場面
私が看護師をしていた頃、抗凝固薬を内服している患者さんの前腕に、青紫色の皮下出血を見つけたことがありました。
大きさとしては目立つものではなく、患者さんも「昨日、ベッドの柵に少しぶつけただけ」と話していました。最初、私は局所の打撲として経過を見ればよいのではないかと思いました。
ただ、記録を確認すると、その患者さんは数日前にも別の部位に皮下出血がありました。
「また、あざができているな」と思った一方で、単に皮膚が弱くなっているだけなのか、それとも出血が続いているのか、少し迷いました。
そこで、前腕だけでなく、下腿や腹部、背部も確認しました。鼻血や歯肉出血がないか、尿や便の色に変化がないかも聞きました。患者さんは「そういえば、今朝の尿が少し赤く見えた」と話しました。
その時点で、私は局所のあざだけとして報告するのは違うと感じました。出血の部位と経過、抗凝固薬の名前、最終内服時刻を整理して、先輩看護師と一緒に医師へ報告しました。
その経験があってから、私は皮下出血を見つけたとき、「このあざはどのくらい大きいか」だけでなく、「ほかにも出血はないか」「患者さんの全身状態に変化はないか」と考えるようになりました。
この体験談は医学的根拠を示すものではなく、抗凝固薬内服中の患者さんを観察する場面を具体的にイメージするためのものです。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 抗凝固薬内服中の打撲・出血は、皮下出血の大きさだけで判断しない
- まず意識、呼吸、血圧、脈拍、SpO₂などの全身状態を確認する
- 頭部を打った場合は、意識レベル、麻痺、瞳孔、頭痛、嘔吐などを経時的に観察する
- 鼻血、口腔内出血、血尿、下血、創部・ドレーン出血、採血後の止血困難にも注意する
- 出血の部位、量、持続時間、広がり、止血の可否を記録する
- 抗凝固薬の種類、最終内服時刻、併用薬、腎機能などを確認する
- 意識障害、神経症状、呼吸困難、血圧低下、止まらない出血があれば速やかに報告する
- 休薬や中和は自己判断で行わず、医師の指示につなげる
抗凝固薬内服中の患者さんを観察するときは、「局所の出血」から「全身状態と臓器出血の可能性」へ視点を広げることが大切です。
FAQ
Q1.抗凝固薬を飲んでいる患者さんに皮下出血があったら、すぐに薬を中止しますか?
自己判断で中止することはしません。
出血の程度や薬剤の種類、血栓症のリスクなどによって対応が異なるため、患者さんの状態と服薬情報を確認して医師へ報告します。
Q2.頭を打ったものの、意識が清明なら問題ありませんか?
意識が清明でも、頭部打撲後の経過観察が必要になることがあります。
意識レベル、頭痛、嘔気・嘔吐、眠気、麻痺、しびれ、瞳孔所見、バイタルサインなどを確認し、受傷状況と合わせて報告します。
Q3.ワルファリンを飲んでいる患者さんでは、どの検査を確認しますか?
PT-INRが抗凝固効果の評価に重要な指標として扱われます。
ただし、PT-INRだけで判断せず、出血症状、全身状態、血小板数、APTTなど、施設で確認されている検査結果を合わせて評価します。
Q4.あざが小さければ、医師への報告は不要ですか?
小さく見えても、出血が増えている、ほかの部位にも出血がある、血尿や下血がある、全身状態に変化がある場合は報告が必要です。
見た目の大きさだけで判断せず、経過と全身状態を確認します。
参考文献
- 厚生労働省関連資料「重篤副作用疾患別対応マニュアル」:厚生労働省資料
- 厚生労働省関連資料:厚生労働省資料
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)資料:PMDA資料
- 日本血栓止血学会「抗凝固療法中の出血対応に関する資料」:日本血栓止血学会資料
- 日本血栓止血学会「抗凝固療法中の頭部打撲に関する資料」:日本血栓止血学会資料
- 抗凝固薬・抗血小板薬内服中の頭部外傷に関する提言資料:頭部外傷時の観察提言資料
- 抗凝固薬内服患者への服薬指導資料:服薬指導資料
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