こんにちは、ユウ塾長です。
トリアージで「歩ける人」と「歩けない人」を、どう見分ければよいのか迷ったことはありませんか?「歩けるなら軽症」「歩けないなら重症」と考えてよいのか、判断に悩みますよね。今回は、歩行可否の見方と、その後に確認したいポイントを整理します。
結論:歩行可否は最初の振り分け。重症度の決め手ではありません
災害時などの一次トリアージで用いられるSTART法では、まず安全に自力歩行できるかを確認します。歩行できる人は、いったん緑(待機可能群)に分類します。一方、歩行できない人は、呼吸・循環・意識を優先して評価します。
ただし、歩けることは軽症の証明ではありません。また、歩けないことだけで赤(最優先治療群)と決まるわけでもありません。歩行できるかを最初の手がかりにしつつ、歩行不能の原因や生命に関わる異常を確認し、状態に応じて再評価することが大切です。愛知医科大学のトリアージ資料と日本赤十字社福島県支部の資料でも、この考え方が示されています。
この記事でわかること
- トリアージで歩行可否を確認する意味
- 歩ける人・歩けない人を判断するときの見方
- 歩行可否だけで重症度を決められない理由
- 看護師・看護学生が再評価や記録で意識したいこと
この記事の読了時間の目安:約8分
結論の根拠:START法では、歩行可否は評価の入口
START法は、災害時などに多数の傷病者がいる状況で、治療や搬送の優先順位を短時間で判断するための一次トリアージ法です。一般的な評価の流れは、歩行できるかを確認し、その後、歩行できない人について自発呼吸や呼吸状態、循環、意識・簡単な指示への反応を見ていきます。愛知医科大学の資料では、歩行可能者をいったん緑に分類する考え方と、歩行可能でも軽症とは限らないこと、再トリアージの必要性が説明されています。
ここで押さえたいのは、歩行可否が重症度そのものを示すわけではないことです。歩行はあくまで最初の振り分けに使う情報で、その後の呼吸・循環・意識などの評価と合わせて判断します。
なお、START法の資料は主に災害時・一次トリアージを扱っています。平時の救急外来では、施設が採用している院内トリアージ尺度や手順に従ってくださいね。
「歩けるか」は、本人の返事だけで決めない
患者さんに「歩けますか?」と尋ねるだけでは、実際に安全に歩けるかは分かりません。本人が「歩ける」と答えても、立ち上がったときにふらつくことがあります。反対に、本人が「歩けない」と言っていても、痛みや不安など、歩行以外の要因が関係している場合があります。
周囲の安全が確保され、歩かせても危険がないと判断できる場合は、具体的な声かけに対する反応や、実際の立位・歩行の様子を観察します。たとえば、ふらつき、麻痺、痛み、息切れがないかを見てみましょう。
ただし、歩行能力を確認するために、無理に立たせたり歩かせたりする必要はありません。外傷が疑われる場合や、意識・呼吸・循環に問題がありそうな場合は、歩行の確認より安全確保と生命に関わる状態の評価を優先します。
歩ける人も、緑のまま放置しない
START法では、歩行可能者をいったん緑に分類します。しかし、歩ける人の中にも、見逃せない症状が隠れている可能性があります。歩行できることだけで、内出血や頭部・胸部・腹部の外傷、脳卒中や心筋梗塞の初期などを否定することはできません。
歩行可能者を振り分けた後も、呼吸の様子、会話のしやすさ、顔色、冷汗、痛み、出血、意識の変化などを確認します。歩行中にふらついたり、数歩で息切れしたりする場合も、「歩けたから大丈夫」と決めつけずに再評価しましょう。愛知医科大学の資料では、歩行可能者についても再トリアージが必要とされています。
歩けない人は、原因を考えながら生命危機を確認する
歩行不能には、呼吸や循環、意識に関わる問題だけでなく、骨折、強い痛み、麻痺、めまい、体力の低下など、さまざまな原因があります。ですから、「歩けないから赤」と一括りにするのではなく、まず何が起きているのかを見ていきます。
START法では、歩行できない人について、まず自発呼吸や呼吸状態を確認し、その後、循環や意識・簡単な指示への反応を評価する流れです。日本赤十字社福島県支部の資料でも、歩行不能者は自発呼吸の確認へ進むと説明されています。また、意識や指示への反応を含めた評価の流れは、愛知医科大学の資料でも確認できます。
ここでのコツは、歩行不能という結果だけで判断を終わらせないことです。呼吸・循環・意識を優先して見たうえで、外傷や痛みなど、歩けない原因を整理していきましょう。
看護師・看護学生が実践するときのポイント
歩行の「可・不可」だけでなく、歩き方を観察する
歩けたとしても、安定して移動できているとは限りません。確認するときは、次のような様子にも目を向けてみましょう。
- 立ち上がるときや歩いているときにふらつく
- 壁や人につかまっている
- 痛みをかばって足を引きずる
- 片側に傾く、麻痺が疑われる
- 歩行中や歩行後に息切れする、顔色が悪くなる
- 声かけや簡単な指示への反応が普段と違う
こうした様子があれば、歩けたことだけを根拠に緑のままにせず、呼吸・循環・意識を含めて見直してください。
患者さんを無理に歩かせない
歩行評価は、患者さんの安全を保てる状況で行います。脊椎や骨盤、下肢の損傷が疑われる場合、強い呼吸困難や意識障害がある場合などは、歩かせることより安全確保と状態の評価を優先します。
「歩けるかを確認すること」と「患者さんを歩かせること」は同じではありません。この違いを意識しておくと、歩行評価を急いで患者さんに負担をかけることを避けやすくなります。
待機中も変化を見逃さない
一次トリアージで緑に分類された後も、患者さんの状態は変化することがあります。呼吸が苦しくなる、意識が変化する、出血や痛みが増える、歩けなくなるといった変化があれば、速やかに再評価します。
トリアージは一度分類したら終わり、ではありません。待機中も観察を続け、変化があれば施設の手順に沿って再トリアージしてくださいね。
記録は観察した事実を具体的に
「歩けない」「重症そう」といった言葉だけでは、状態の変化や判断の根拠が伝わりにくくなります。可能な範囲で、立位の可否、ふらつきや痛みの有無、呼吸の様子、意識や指示への反応など、実際に観察したことを記録しましょう。
再評価を行った場合は、評価した時刻と、そのときの変化も残しておくと、経過を追いやすくなります。
筆者の体験談
患者さんが「歩けます」と話していても、立ち上がるとふらつき、数歩で息切れした場面を考えてみましょう。返事だけを聞いて緑と判断してよいのか、迷うところですよね。
私なら、患者さんの表情や顔色、歩いているときの様子を見ながら、呼吸の状態ももう一度確認します。「歩けたから大丈夫」と決めつけるのではなく、ふらつきや息切れがどのように現れているかを観察し、必要に応じて再評価します。
一方、足の痛みで歩けない患者さんがいたとしても、歩行不能だけで赤とは決められません。呼吸・循環・意識を優先して確認し、歩けない原因も整理して判断します。
こうした場面では、「歩けたか、歩けなかったか」だけで答えを出そうとすると迷いやすくなります。歩行の結果を最初の手がかりとして受け止めたうえで、その患者さんの呼吸・循環・意識、そして歩けない理由を順に見直すと、判断を整理しやすくなります。
まとめ
トリアージでの歩行可否は、重症度を決める最終判定ではなく、最初の振り分けです。
- START法では、歩行可能者をいったん緑に分類する
- 歩けることだけで、軽症とは判断できない
- 歩行不能者は、呼吸・循環・意識を優先して確認する
- 歩行不能だけで、赤と決めつけない
- 待機中も状態を観察し、変化があれば再評価する
- 安全に歩ける状況でなければ、無理に歩かせない
まずは「実際に安全に歩けるか」を見て、その後に「なぜ歩けないのか」「生命に関わる異常はないか」を確認する。この順番を意識すると、判断を整理しやすくなりますよ。
FAQ
歩ける患者さんは、必ず緑ですか?
いいえ。START法では、歩行可能者をまず緑に振り分けますが、歩けることは軽症の証明ではありません。呼吸や意識の変化などがあれば、再評価が必要です。
歩けない患者さんは、必ず赤ですか?
いいえ。歩行不能だけで赤とは決まりません。歩けない原因を考えながら、呼吸・循環・意識を優先して評価します。
平時の救急外来でも、START法の判断をそのまま使えますか?
START法の資料は、主に災害時などの一次トリアージを扱っています。平時の救急外来では、勤務先の施設が採用する院内トリアージ尺度や手順を確認してください。
参考文献
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
フィジカルアセスメントの方法と根拠を実習で使える形に整理しているので、歩行の観察や呼吸・循環・意識の評価を深めたい人に適しています。
看護の学びなおし バイタルサイン
著者:白坂友美
出版社:照林社
バイタルサインを単なる測定値ではなく患者の状態を判断する情報として学べるので、歩行後や待機中の呼吸・循環の変化を読む学習に向いています。
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