こんにちは、ユウ塾長です。術後に尿道カテーテルを抜いたあと、「まだ排尿がないけれど、どのくらい待てばいいの?」「少し出ているから、尿閉ではないのかな」と迷ったことはありませんか?尿意や痛みがはっきりしない患者さんもいて、判断に悩みますよね。今回は、術後尿閉を見逃さない観察ポイントと、導尿を考えるタイミングを整理します。
結論:排尿の有無だけでなく、残尿と患者さんの状態を合わせて判断する
術後尿閉を見逃さないためには、排尿の有無に加えて、排尿量・排尿間隔・尿意・下腹部の症状を確認し、必要に応じて膀胱スキャンで残尿を評価することが大切です。少量の排尿や尿失禁があっても、膀胱に尿が残っている場合があります。
導尿は、「何時間排尿がなければ必ず行う」「残尿が何mLなら全員に行う」と一律には決められません。症状や経過、膀胱内の尿量、麻酔・薬剤の影響を合わせて評価し、施設の手順や医師の指示に沿って判断します。
判断するときのポイント
- 排尿があったかだけでなく、時刻・量・回数・尿意・下腹部症状を確認する
- 少量排尿や尿失禁があっても、残尿がないとは限らない
- 必要に応じて膀胱スキャンで残尿を確認し、尿閉と乏尿を考え分ける
- 導尿は残尿量だけで決めず、患者さんの状態や施設の手順、医師の指示と合わせて判断する
残尿200mL以上を導尿の目安とする報告もありますが、一施設の実践例であり、全国一律の基準ではありません。数値だけで導尿の要否を決めないようにしましょう。
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この記事でわかること
この記事では、次の点を一緒に確認します。
- 術後尿閉のリスクが高まりやすい状況
- カテーテル抜去後に見たい排尿・身体所見
- 膀胱スキャンや導尿を考えるタイミング
- 尿閉と、尿が十分につくられていない状態を考え分けるポイント
結論の根拠:排尿があっても、膀胱が空とは限らない
術後尿閉では、膀胱に尿がたまっていても、尿意や痛みがはっきりしないことがあります。また、少量の排尿や尿失禁があっても、膀胱が十分に空になったとは限りません。排尿量だけで判断せず、必要に応じて残尿を確認する考え方は、排尿ケアチームの実践報告や、術後排尿障害に関する解説でも扱われています。
消化器外科術後の患者さんを対象とした研究では、400例中43例に術後尿閉があり、発生率は10.8%でした。後期高齢者と硬膜外麻酔が有意なリスク因子として報告されています。硬膜外カテーテルを抜去した後に尿道カテーテルを抜去する運用に変更したところ、改訂後は100例中1例、1%でした。ただし、これは単一施設の報告です。すべての手術や患者さんに同じ結果が当てはまるとは限りません。
カテーテルの使用については、EAUNガイドライン日本語版で、術後の尿量監視や術後尿閉の管理が検討される場面として扱われています。必要性がなくなれば抜去を検討する一方、麻酔や疼痛管理、患者さんの状態も踏まえて時期を考えることが大切です。
術後尿閉に注意したい患者さん
術後尿閉のリスクを高める背景があっても、必ず尿閉になるわけではありません。ただ、当てはまる場合はカテーテル抜去後の排尿状況を丁寧に見ていきましょう。
特に注意したい背景には、次のようなものがあります。
- 高齢、特に後期高齢者
- 脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔の影響が残っている
- オピオイドなどの鎮痛薬を使用している
- 骨盤内・直腸・肛門の手術後
- 尿道カテーテルを抜去した直後
- 疼痛や臥床、移動の制限がある
- 前立腺肥大など、もともと排尿に関する病気がある
- 便秘や腹部膨満がある
リスク因子は、尿閉の診断そのものではありません。背景を確認したうえで、排尿の記録や症状の観察をより丁寧にするための手がかりとして使います。
カテーテル抜去後に見る観察ポイント
カテーテルを抜いてからの経過を追えるように、抜去時刻を記録し、その後の排尿状況と合わせて確認しましょう。
排尿の時刻・量・回数
次の情報を記録すると、経過を整理しやすくなります。
- 最後に排尿した時刻
- 尿道カテーテルを抜去した時刻
- 抜去後の経過時間
- 排尿した時刻・量・回数
- 飲水量や輸液量
- 尿失禁の有無
- 尿意や残尿感の有無
「排尿があったか」だけで終わらせず、どのくらい出たか、排尿後も膀胱に尿が残っていそうかを考えるのがポイントです。
排尿時の痛みや出にくさ、尿線の細さ、血尿なども、患者さんの訴えに応じて確認します。膀胱留置カテーテル抜去後の排尿チャートには、飲水量・排尿時刻・排尿量・失禁・症状などを記録する方法があります。
下腹部の膨満や不快感
尿意があるのに出ない、恥骨の上あたりが張る・痛む、膀胱部に不快感があるといった訴えは、尿閉を考える手がかりになります。落ち着きのなさや苦悶表情など、言葉にしにくい変化も見てください。
一方で、下腹部の膨満や痛みが目立たないからといって、尿閉を否定できるとは限りません。麻酔後や鎮痛薬の使用中など、症状がはっきりしない場合もあります。
麻酔・鎮痛薬・全身状態
どの麻酔や鎮痛薬を使ったか、いつ投与されたかを確認します。あわせて、意識や下肢の運動・知覚の回復状況、疼痛、離床の状況も見ておくと、排尿しにくさを考える手がかりになります。
尿が少ない場合は、膀胱に尿がたまっているのか、尿が十分につくられていないのかを考え分ける必要があります。膀胱スキャンなどで膀胱内の尿量を確認できれば、尿閉と乏尿を考える助けになります。
膀胱スキャンを考える場面
排尿がない、少量しか出ない、尿意がない、下腹部に張りや痛みがあるなどの場合は、施設の手順に沿って膀胱スキャンによる残尿確認を検討します。排尿後に測定すれば、膀胱にどのくらい尿が残っているかを考える材料になります。
ただし、測定値だけで判断するのではなく、症状や排尿の経過と合わせて見ましょう。膀胱スキャンの数値が患者さんの状態と合わないように感じたときは、測定条件や測定方法を確認し、必要に応じて先輩看護師や医師に相談してください。
導尿を考えるタイミング
次のような場合は、尿閉の評価を進め、必要に応じて医師へ報告します。
- カテーテル抜去後、排尿がない
- 尿意や下腹部の張りがあるのに排尿できない
- 少量の排尿を繰り返し、残尿が疑われる
- 尿失禁が続き、膀胱が空になっているか分からない
- 膀胱スキャンで尿の貯留が確認される
- 強い苦痛や不穏など、気になる全身状態の変化がある
導尿を考えるときは、残尿量だけでなく、患者さんの苦痛、膀胱の張り、麻酔・鎮痛薬の影響、排尿が回復しているかどうかも合わせて確認します。実際の手順や実施の判断は、施設のプロトコルと医師の指示に沿ってくださいね。
「残尿200mL以上」は全国一律の基準ではない
排尿ケアチームによる実践報告では、残尿量200mL以上を導尿の目安とする施設運用が紹介されています。
ただし、これは一施設の実践例であり、すべての術後患者さんに適用できる全国一律の基準ではありません。200mLという数値だけで導尿の要否を決めず、患者さんの症状や経過、施設の手順、医師の指示と合わせて判断しましょう。
間欠的導尿か、留置カテーテルか
一時的な尿貯留への対応として間欠的導尿を行う場合があります。一方、尿閉を繰り返す、尿量を厳密に確認する必要があるなど、患者さんの状況によっては留置カテーテルの再留置を含めて検討することもあります。
尿道カテーテルには感染や尿道損傷などのリスクもあるため、必要性があるかどうかを見直しながら管理します。どちらの方法にするかは、患者さんの状態と施設の手順を踏まえて医師と相談してください。
導尿の前に試せる排尿援助
患者さんの状態が安定していて、膀胱に強い尿の貯留が疑われない場合は、排尿しやすい環境を整えることも考えられます。
- プライバシーを確保する
- 可能であれば、トイレやポータブルトイレを使う
- ベッド上で排尿する場合は、無理のない姿勢を整える
- 痛みを確認し、必要な対応を相談する
- 点滴やドレーンが移動の妨げにならないよう整える
- 不安や焦りがないか、患者さんの話を聞く
排尿援助をしても排尿できない場合は、長く様子を見るだけにせず、経過を再評価して報告しましょう。患者さんの状態によっては、排尿を待つことより、残尿を確認して対応を相談することが優先されます。
臨床での申し送り・報告のコツ
報告では、「尿が出ていません」だけでなく、抜去時刻や経過時間、排尿量、症状、膀胱スキャンの値などを添えると、状況が伝わりやすくなります。
たとえば、次のように整理できます。
- S:状況
「尿道カテーテル抜去後、排尿がなく、下腹部の張りを訴えています」 - B:背景
「硬膜外麻酔のカテーテルが留置されています。鎮痛薬の使用状況は〇〇です」 - A:評価
「抜去後〇時間経過し、膀胱スキャンの推定値は〇〇mLです」 - R:相談・提案
「導尿の要否と、次に評価するタイミングを確認したいです」
数値や時間は、実際に記録した情報を使いましょう。判断に迷うときは、ひとりで基準を作らず、施設の手順を確認してください。
判断の流れをイメージする例
カテーテル抜去後、患者さんが「少しだけ出たけれど、まだすっきりしない」と話したとします。このとき、「排尿があったから大丈夫」と決めず、排尿した時刻と量、尿意や下腹部の張りを確認します。
尿が少量でも膀胱に残っている可能性はあるため、必要に応じて膀胱スキャンを行い、結果と患者さんの症状を合わせて報告します。ここで大切なのは、排尿の有無だけで結論を急がず、残尿の可能性を含めて状況を整理することです。
まとめ
術後尿閉を見逃さないために、覚えておきたいポイントは次のとおりです。
- 排尿の有無だけでなく、時刻・量・回数・尿意・下腹部症状を確認する
- 少量排尿や尿失禁があっても、残尿がないとは限らない
- 必要に応じて膀胱スキャンを使い、尿閉と乏尿を考え分ける
- 導尿は残尿量だけで決めず、症状・経過・患者背景・施設の手順を合わせて判断する
- 残尿200mL以上は一施設の実践例であり、全国一律の基準ではない
カテーテルを抜く前から、抜去後に何を記録し、どのような場合に報告するかを確認しておくと、観察の流れをつくりやすくなりますよ。
臨床場面をイメージする
カテーテルを抜去した患者さんが、しばらくして「少し出たけれど、まだすっきりしない」と話しています。排尿があったことに安心したくなりますが、排尿量を確認すると少量で、患者さんは下腹部にも張りを感じている様子です。
「尿意はあるのに、うまく出ない感じですか?」と声をかけながら、排尿した時刻と量、抜去からの経過時間を記録します。麻酔や鎮痛薬の影響、下腹部の状態も確認し、必要に応じて膀胱スキャンを検討します。
この場面では、「少し出たから大丈夫なのかな」「どのタイミングで報告しよう」と迷うかもしれません。排尿の有無だけで判断せず、症状や経過、膀胱内の尿量を合わせて整理し、施設の手順に沿って相談することが大切です。
ここで紹介した場面は、観察の考え方を臨床に結び付けるための例であり、医学的根拠や個別の患者さんへの判断を示すものではありません。
FAQ
カテーテル抜去後、何時間排尿がなければ導尿しますか?
一律に「何時間」とは決められません。抜去後の経過時間だけでなく、症状や膀胱内の尿量、施設のプロトコル、医師の指示を合わせて判断します。
少量でも排尿があれば、尿閉ではありませんか?
少量の排尿があっても、膀胱に尿が残っている可能性があります。排尿量や残尿感、下腹部症状を確認し、必要に応じて残尿を測定します。
残尿が200mL以上なら、必ず導尿しますか?
必ずとはいえません。200mL以上を目安とした報告はありますが、一施設の実践例です。患者さんの症状や経過、施設の手順、医師の指示に沿って判断してください。
参考文献
- 消化器外科術後の尿閉に関する研究報告(2015年)。J-STAGE掲載ページ
- European Association of Urology Nurses(EAUN)『EAUNガイドライン 日本語版』2024年版。PDF
- 排尿ケアチームによる実践報告(掲載年は確認できる資料から特定できず)。J-STAGE掲載PDF
- 「術後排尿障害」掲載情報は提示資料から確認できず。アルメディアWeb
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看護の現場ですぐに役立つ 術前・術後ケアの基本
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
術前・術後の観察や看護ケアの基本を扱っており、術後尿閉のリスクや抜去後の経過観察を学びたいときに適しています。
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